I. 原子力発電環境整備機構の概要

1.業務の内容

(1) 目的

 原子力発電に伴う使用済燃料の再処理後に生ずる特定放射性廃棄物の地層処分は、原子力発電を進めていく上で残された最重要課題の1 つである。
 原子力発電環境整備機構(以下「機構」という。)は、第一種及び第二種特定放射性廃棄物の地層処分の実施等の業務を行うことにより、発電に関する原子力に係る環境の整備を図ることを目的とする。

(2) 業務内容

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(以下「法」という。)に基づき、次の業務を行う。

  • 1) 地層処分業務(法第56 条第1 項第1号及び第2号)
    • [1] 概要調査地区等の選定を行うこと。
    • [2] 地層処分施設の建設及び改良、維持その他の管理を行うこと。
    • [3] 特定放射性廃棄物の地層処分を行うこと。
    • [4] 地層処分を終了した後の当該地層処分施設の閉鎖及び閉鎖後の当該地層処分施設が所在した区域の管理を行うこと。
    • [5] 拠出金を徴収すること。
    • [6] 上記[1]から[5]に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
  • 2) 委託を受けて行う業務(法第56条第2項)
    • [1] 経済産業大臣の認可を受けて、受託特定放射性廃棄物について、特定放射性廃棄物の地層処分と同一の処分を行うこと。
    • [2] 上記1)[1]から[4]及び2)[1]に掲げる業務のために必要な調査を行うこと。

      ただし、上記1)[3][4]及び2)[1]の業務は、法第20条で規定している安全の確保のための法律に基づき行うものとする。

2.事務所の所在地

東京都港区芝4丁目1番23号 電話番号(03)6371-4000

3.役員の状況

2012年3月31日現在の役員は、次のとおりである。

理事長 山路 亨  
副理事長 樋口 正治  
理事 渡部 寿史  
理事 武田 精悦  
理事 平野 鉄也  
理事(非常勤) 眞部 利應 (九州電力㈱代表取締役社長、電気事業連合会副会長)
理事(非常勤) 木村 滋 (東京電力㈱取締役、電気事業連合会副会長)
理事(非常勤) 佐藤 佳孝 (北海道電力㈱取締役会長、電気事業連合会副会長)
監事 弘田 精二  
監事(非常勤) 濱田 康男 (日本原子力発電㈱取締役社長)

4.評議員の状況

2012年3月31日現在の評議員は、次のとおりである。

河野 光雄(議長) 内外情報研究会 会長
森嶌 昭夫(議長代理) 名古屋大学 名誉教授、特定非営利活動法人 日本気候政策センター 理事長
内山 洋司  筑波大学大学院システム情報工学研究科 教授
各務 正博  (財)電力中央研究所 理事長
神津 カンナ  作家
小島 圭二  東京大学 名誉教授、地圏空間研究所 代表
鈴木 篤之  (独)日本原子力研究開発機構 理事長
東嶋 和子  科学ジャーナリスト
鳥井 弘之  元 東京工業大学原子炉工学研究所 教授
並木 育朗  (公財)原子力環境整備促進・資金管理センター 理事長
服部 拓也  (社)日本原子力産業協会 理事長
八木 誠  電気事業連合会 会長

5.職員の状況

 2012年3月31日現在の職員数は、76名である。

II. 業務の実施状況

   

 2011(平成23)事業年度は、2011 年3 月に発生した東北地方太平洋沖地震に起因する東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故後の社会情勢を鑑みて、機構の活動を一部見直して実施した。
 広聴・広報活動については、マスメディア等による広報活動は自粛し、マスコミ等からの問い合わせへの対応や情報提供に重点を置いて実施した。
 一方、行政刷新会議「提言型政策仕分け」の提言に基づき、資源エネルギー庁長官から、概要調査地区等の選定に真につながるものとなるよう広報活動を見直すべきとの要請を受け、外部有識者からなる「広聴・広報アドバイザリー委員会」を設置し、今後の広聴・広報活動についての意見を伺い、次年度に反映することとした。
 技術開発については、地層処分事業を円滑に進めるため、その基盤となる技術開発および国際的連携の推進に引き続き取り組んだ。また、技術報告書「地層処分事業の安全確保(2010 年度版)~確かな技術による安全な地層処分の実現のために~」を公表し、地層処分事業を実現するための準備が着実に進んでいることを示した。
 さらに、東北地方太平洋沖地震を踏まえて安全確保の考え方の再確認を行い、巨大地震・津波等の自然現象による影響や安全対策について検討した。

 

1.当該事業年度の業務の実施状況

(1) 概要調査地区等の選定

 応募が得られた際に的確に対応するため、文献等から得られる情報・データを管理する地質環境データ管理システムおよび地理情報システム(GIS)のデータの拡充等を引き続き進めた。

(2) 地層処分に関する理解活動

 地層処分の理解活動については、当初、ワークショップや座談会といった草の根レベルでの相互理解活動をはじめ、マスメディアを活用した広報活動など、積極的な理解活動を展開することとしていたが、震災後の社会情勢を鑑みて、当初計画を大幅に見直して実施した。
 また、より効果的な理解活動を展開していくため、外部有識者からなる「広聴・広報アドバイザリー委員会」を設置し、今後の広聴・広報活動のあるべき姿について提言を受けた。なお、地層処分事業に対する問い合わせに対しては、パンフレットに基づいて説明するなどわかりやすく丁寧な対応に努めた。

  • 1) 応募をいただくための積極的な理解活動
    • [a] 全国のみなさまに対する広聴・広報活動

       テレビCM、新聞広告といったマスメディアを活用した広報活動は、震災後の社会情勢を鑑みて自粛したが、草の根レベルでの相互理解活動については、これまでのワークショップの参加者と意見交換会を開催するなど、当初計画と形式や内容を見直して実施した。
       また、エネルギー問題や原子力に対する関心の高まりに伴い地層処分事業に関するマスコミの取材が増加したが、高レベル放射性廃棄物と災害廃棄物の違いに関する資料を作成して説明する等、地層処分事業の正しい理解と正確な報道につながるよう丁寧な対応に努めた。
       さらに、科学技術館「ジオ・ラボ」については、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を踏まえて展示パネルを改修するとともに、運営方法を見直した。
       なお、ホームページについては、より見やすく分かりやすい情報提供の観点から、動画を取り入れるなど当初計画どおり見直しを行った。

    • [b] 広聴・広報活動の見直し

       外部有識者からなる「広聴・広報アドバイザリー委員会」を4回開催し、今後の広聴・広報活動のあるべき姿について提言を受け、ホームページに公開した。
       提言に基づく具体的な施策については、次年度以降の活動に反映し、より効果的な理解活動を展開することとした。

    • [c] 応募促進に向けた理解活動と地域における広報活動の充実

       地層処分事業の必要性、安全性や地域共生への取り組み等についての問い合わせに対しては、パンフレットに基づいて説明するなどわかりやすく丁寧な対応に努めた。なお、地域の自主的な勉強会等に対する支援は実施を見送った。

    • [d] 情報公開制度の適切な運用

       情報公開請求(1 件)に対して、情報公開審査委員会の審議・答申を受け、個人情報等を除き資料の開示を行った。
       また、行政刷新会議「提言型政策仕分け」の提言に基づいた資源エネルギー庁長官からの要請を踏まえて、新たに最終処分積立金の使途や入札契約情報も公開し、情報公開の一層の充実に努めた。
       なお、情報公開規程の運用方法について、職員への教育を継続して実施した。

(3) 地層処分に関する技術開発等

 第一種特定放射性廃棄物および第二種特定放射性廃棄物について、概要調査地区等の選定に必要な技術の整備を行うとともに、長期にわたる地層処分事業を的確かつ効率的に推進するため、長期的展望に立った機構自らの技術開発を継続して実施した。あわせて、事業主体として地層処分事業に必要な技術に関する要求事項を基盤研究開発調整会議を通じて提示し、成果の的確な確認等を行った。これらより、地層処分事業の事業主体としてリーダーシップを発揮して、国の行う基盤的技術に関する研究も含め地層処分技術全体の整備を着実に推進した。
 これらの技術開発により得られた技術情報に関して、信頼性の向上、理解活動に資するため、品質保証活動に取り組むとともに、技術開発成果については、技術報告書の作成・公表、各種学会等への発表を行った。
 昨年度取りまとめた技術報告書「地層処分事業の安全確保(2010 年度版)~確かな技術による安全な地層処分の実現のために~」については、ホームページで公表し、地層処分事業を実現するための準備が着実に進んでいることを示した。さらに、2011 年3 月に発生した東北地方太平洋沖地震を踏まえて安全確保の考え方の再確認を行い、巨大地震・津波等の自然現象による影響や安全対策について検討した。

  • 1) 段階的な事業の展開に必要な技術開発

     技術事項に関わる意思決定の過程やその際の検討内容を事業の各段階において的確に管理していくために、処分場概念等に関わる各要件やその関連情報をデータベース化した要件管理システムの試験的運用を実施するとともに、その利便性の向上を図った。さらに、処分場概念の段階的な構築に向けた戦略と計画に関する検討を引き続き行った。

  • 2) 精密調査地区選定段階の計画を進めるための技術開発
    • [a] 精密調査地区選定において考慮すべき事項および概要調査計画の検討

       概要調査の計画立案から調査報告書作成までの一連の業務に係る実施方法の確立に向けて、概要調査計画の策定方針を検討するとともに、精密調査地区を選定するために考慮すべき事項について検討した。また、概要調査に関する品質保証活動について検討を行った。

    • [b] 概要調査技術・評価手法の開発・実証

       概要調査における火成活動等の地質環境の長期評価手法、および断層の水理特性の調査技術・評価手法の検討を進めるとともに、地下水モニタリングの調査技術・評価手法の実証を進めた。また、概要調査の現場管理等に関する検討を引き続き行った。

    • [c] 概要調査に対応する処分場の設計・性能評価手法の開発

       概要調査結果に対応する処分場の概念設計やその性能評価を行うため、地下施設の耐震評価手法や人工バリアの設計に関わる技術、ならびに廃棄体製作方法等の建設・操業・閉鎖に関わる技術について、概念設計への適用性および信頼性について検討した。また、概要調査段階で実施する予備的安全評価に向けて必要な性能評価手法の検討を行った。

    • [d] 安全確保に向けた方策の整備、信頼構築方策の検討

       精密調査地区選定段階等における機構としての安全確保の自主基準の立案に向けた検討を進めるとともに、放射性廃棄物処分の技術要件等の策定に係る検討を行った。また、地層処分事業の理解増進活動に資するため、安全性に対する信頼獲得に向けた技術的課題に関する対話活動方法について検討を行った。

  • 3) 技術情報の品質確保と品質保証体系の運用

     技術情報の客観性・中立性を担保するため、技術アドバイザリー委員会等において、技術的業務の品質について助言を受けるとともに、技術情報の信頼性を確保するため、品質マネジメントシステムを適切に運用した。

  • 4) 地層処分に関する技術協力

     国内外の関係機関と情報交換を行うことにより最新の技術開発の成果を反映し、概要調査地区選定に必要な知見や概要調査以降に必要な技術の的確かつ効率的な整備を行った。

    • [a] 国内関係機関との技術連携の強化

       協力協定を締結している独立行政法人日本原子力研究開発機構および財団法人電力中央研究所、ならびにその他の国内関係機関との間で、サイト選定に必要な地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する技術情報の交換、共同研究等を引き続き実施した。

    • [b] 海外関係機関との技術協力

       地層処分に関する技術は国際的に共有できるものも多いことから、協力協定を締結している海外の実施主体等との間で、地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する情報交換、共同研究等の技術協力を引き続き実施した。

    • [c] 国際機関等との協力

       各国の地層処分実施主体で構成される放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)において、実施主体間における積極的な情報交換を行った。国際原子力機関(IAEA)および経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等が進める国際共同プロジェクトに積極的に参画した。
       また、日本において開催予定であった地層処分国際会議(ICGR2011)が中止となったが、2012 年のカナダ開催に向けた準備に参画した。

  • 5) 拠出金の徴収

     12の発電用原子炉設置者等から拠出金(約556億円:第一種508億円、第二種48億円)を徴収し、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた。

2.当該事業年度の理事会の開催状況および主な議決・報告事項

 2011 事業年度においては、3 回の理事会を開催し、認可・承認申請、業務運営の基本的な事項について議決した。理事会の開催状況および主な議決・報告事項は、次のとおりである。

  • 第50回理事会(2011年6月15日)
    • (1) 2010(平成22)事業年度 財務諸表(案)
    • (2) 役員候補者の選任について
    • (3) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第51回理事会(2012年2月22日)
    • (1) 2012(平成24)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • (2) 機構業務に関連する最近の状況
  • 第52回理事会(2012年3月27日)
    • (1) 2012(平成24)事業年度 事業計画・予算・資金計画について

3.当該事業年度の評議員会の開催状況および主な審議事項

 2011事業年度においては、2回の評議員会を開催し、機構の運営に関する重要事項について審議した。評議員会の開催状況および主な審議事項は、次のとおりである。

  • 第27回評議員会(2011年6月22日)
    • (1) 2010(平成22)事業年度 財務諸表(案)
    • (2) 役員の選任について
    • (3) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第28回評議員会(2012年2月14日)
    • (1) 2012(平成24)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • (2) 機構業務に関連する最近の状況

III. 2011年度資金計画実績表