I. 原子力発電環境整備機構の概要

1.業務の内容

(1) 目的

 発電に関する原子力の適正な利用において、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分は、最重要課題の一つである。
 原子力発電環境整備機構(機構)は、特定放射性廃棄物の最終処分の実施等の業務を行うことにより、発電に関する原子力に係る環境の整備を図ることを目的とする。

(2) 業務内容

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)及び同法第20条の規定に基づく別の法律で定める安全規制に従って、次の業務を行う。

  • 1) 最終処分業務(同法第56条第1項第1号および第2号)
    • [1] 概要調査地区等の選定を行うこと。
    • [2] 最終処分施設の建設および改良、維持その他の管理を行うこと。
    • [3] 特定放射性廃棄物の最終処分を行うこと。
    • [4] 最終処分を終了した後の当該最終処分施設の閉鎖および閉鎖後の当該最終処分施設が所在した区域の管理を行うこと。
    • [5] 拠出金を徴収すること。
    • [6] 上記[1]から[5]に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
  • 2) 委託を受けて行う業務(同法第56条第2項)
    • [1] 経済産業大臣の認可を受けて、受託特定放射性廃棄物について、特定放射性廃棄物の最終処分と同一の処分を行うこと。
    • [2] 上記1)[1]から[4]および2)[1]に掲げる業務のために必要な調査を行うこと。

2.事務所の所在地

東京都港区芝4丁目1番23号 電話番号(03)6371-4000

3.役員の状況

2015年3月31日現在の役員は、次のとおりである。

理事長 近藤 駿介  
副理事長 藤 洋作  
専務理事 西塔 雅彦  
理事 梅木 博之  
理事 関 浩一  
理事 安田 明彦  
理事(非常勤) 井手 秀樹 (慶應義塾大学商学部 教授)
理事(非常勤) 廣江 譲 (電気事業連合会 副会長)
監事 長谷川 直之  
監事(非常勤) 鳥井 弘之 (株式会社日本経済新聞社 社友(元 論説委員))

4.評議員の状況

2015年3月31日現在の評議員は、次のとおりである。

高橋 恭平(議長) 昭和電工株式会社 取締役会長
山地 憲治(議長代理) 東京大学名誉教授
公益財団法人地球環境産業技術研究機構 理事・研究所長
大江 俊昭  東海大学工学部原子力工学科 教授
西川 正純  元 柏崎市長
崎田 裕子  ジャーナリスト・環境カウンセラー
特定非営利活動法人持続可能な社会をつくる元気ネット 理事長
城山 英明  東京大学公共政策大学院 教授・院長
住田 裕子  弁護士
田中 裕子  フリーアナウンサー
元 NHKアナウンサー
長辻 象平  株式会社産経新聞社 論説委員
西垣 誠  岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授
東原 紘道  東京大学名誉教授
元 独立行政法人防災科学技術研究所
地震防災フロンティア研究センター センター長
松浦 祥次郎  独立行政法人日本原子力研究開発機構 理事長
八木 誠  電気事業連合会 会長

5.職員の状況

 2015年3月31日現在の職員数は、88名である。

II. 業務の実施状況

 

 2014年度は、「2014事業年度事業計画」に基づき、複数の自治体から文献調査への応募をいただくことを目指し、地層処分事業に関する広範な理解の獲得に向けた「対話活動」を実施するとともに、長期にわたる処分事業の安全確保のための「技術開発」ならびに機構の総合力発揮とガバナンスの徹底のための「組織運営」に取り組んだ。しかしながら、自治体から文献調査への応募をいただくまでには至らなかった。
 また、国の審議会(総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物WG及び地層処分技術WG)における議論に対応するために、地域における合意形成のあり方や科学的有望地の選定等に関する検討を行い、説明・提案した。

 「対話活動」については、より多くのみなさまと直接対話を行うという活動の原点に立ち返り、積極的に全国各地へ出向き、シンポジウム開催や地層処分模型展示車の巡回展示等を実施して、多くの方々とフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを行った。具体的には、多くのみなさまに地層処分事業への関心を持ってもらい、理解を深めていただけるよう、シンポジウム等において、特定放射性廃棄物の最終処分方法として地層処分方式が選ばれた経緯や、地層処分の技術的信頼性、事業プロセス、地域共生への取組み等に関する説明を行うとともに、みなさまからの様々な意見や疑問等に対し、誠実に対応した。

 「技術開発」については、地層処分の技術的信頼性の向上に向けて、これまでに得られた最新の科学的知見や技術開発成果を基に、わが国における安全な地層処分の実現性を体系的に示す「包括的技術報告書」の取りまとめの検討を行い、基盤研究開発機関1等の専門家からなる「タスクフォース2」の評価を得つつ、作成方針を設定し、第1次ドラフトを作成した。
 また、地層処分事業は、およそ100年間にわたって段階的・長期的に進められることから、各事業段階に必要となる技術を的確に準備すべく、2013年度に機構が策定した今後5年間の技術開発計画である「地層処分事業の技術開発計画-概要調査段階および精密調査段階に向けた技術開発」(中期技術開発計画)に基づき、地質環境の調査・評価に関する技術開発等を着実に進めるとともに、その成果を「包括的技術報告書」の第1次ドラフトに適宜反映した。

 「組織運営」については、組織目標の明確化及び組織ガバナンスの一層の強化を図るために、経営の拠り所となる「経営理念」を策定するとともに、「業務の適正を確保するための体制の整備について」の理事会決議(2014年10月31日)を行ない、その実効性を確保するために、定款の変更、諸規程の改定等、所要の措置を講じた。また、PDCAサイクルの定着化及び業務の高度化を図るために、評議員会において、評議員会による的確な評価の仕組みについて累次ご 議論いただき、2014年度事業から評価を受けることとなった。

1.2014事業年度における個別業務の実施状況

(1) 地層処分事業を進めるための対話活動

 地層処分事業を進めるためには、全国のみなさまとの直接対話を通じて事業に対する広範な理解と信頼を得ることがなによりも重要である。
 このため、2014年度は、全国各地におけるシンポジウム及び地層処分模型展示車の巡回展示等の実施により、地域のみなさまに直接情報提供・意見交換を行ない、地層処分事業に対して関心を持っていただくことに努めた。
 また、地層処分事業が、長期にわたる事業であることから、現世代のみならず、次世代層・若年層にご理解を深めていただくことも重要である。このため、教育関係者向けのワークショップや、大学でのディベート授業などを通じて、情報提供を行った。
 より多くのみなさまに地層処分事業や機構に関する情報に接していただけるよう、報道関係者に対し、積極的に情報発信を進めた。更に、情報発信の強化に向け、2015年度において機構ホームページのリニューアルや双方向型コミュニケーションツールとしてSNS(フェイスブック)の運用を開始すべく検討を行った。

  • 1) 全国を対象とした対話活動

    [1] 全国のみなさまとの直接対話

    • (a) シンポジウムの開催
       地層処分事業の理解促進を図るために、全国29都市において、地域のみなさまに対して説明を行い、意見交換等を行うシンポジウムを開催した。
       シンポジウムは、機構からの説明のあと、地域の方(地元マスコミ関係者、大学生等)に登壇してもらい、ご意見・ご質問をいただくパネルディスカッション形式とし、また、会場の参加者との質疑応答を行った。
       開催後のアンケート結果では、「一般の人達に理解してもらう場として何より有効」、「いろいろな立場の人の声が聞けて良かった」など、約9割の参加者から「地層処分への興味・関心が深まった」との回答を得た。
       一方、「専門用語が多く、内容が難しかった」、「リスクの説明が少なく不安が残る」、「安全性に不安」との意見もあり、参加者が求める情報・知識を分かりやすくお伝えする観点から、説明の工夫やプログラム構成と内容の見直し等、改善すべき点が明らかとなった。
       また、シンポジウム開催にあたっては、メディアに対する情報提供、機構ホームページの掲載、ウェブ広告等により事前周知を図ったが、来場者数は、各会場100名の募集に対し平均6割程度にとどまった。2015年度は、事前周知の強化や、みなさまが参加しやすい工夫を検討し、より多くの方々にご参加いただけるよう努める。

    • (b) 地層処分模型展示車の巡回展示
       シンポジウムには、地層処分事業について関心を有する方々が多く参加されるが、それ以外の方々にも地層処分について理解と関心を持っていただく機会を広く提供することが重要である。
       このため、シンポジウム開催地近郊の中核都市や全国の科学館・商業施設等へ地層処分模型展示車を派遣(27回。38日間)し、若年層向けに制作した3D映像の上映やベントナイトを用いて手軽にできる実験等を通じて、より多くのみなさまへ分かりやすく情報提供することに取り組み、フェイス・トゥ・フェイスの対話活動を実施した。来場者の多くは、年少者とその家族であったことから、シンポジウム参加者とは異なる年齢層への直接対話の機会となった。
       会場でのアンケート結果では、「地層処分への取組状況について理解が進んだ」、「地層処分を国民的課題として広く議論すべきと認識した」等の回答を得たことから、具体的な展示物等を利用する対話活動が、地層処分への理解・関心を深めていただくことに一定の効果を有することが確認できた。
       一方、一部の会場においては、周知不足や来場に不便な立地条件であったことから、来場者数が想定を下回った。2015年度は、他のイベントとのコラボレーションが可能な科学館を中心とした巡回を目指すとともに、事前周知の強化や展示内容の見直しを行う。

    • (c) 全国の諸団体への訪問
       対話活動は、様々な業界の代表や地域に根ざした諸団体に対しても幅広く行い、地層処分事業へのご理解・ご意見を各層からいただくことも重要である。このため、在京及び在阪の経済団体等(19団体)に対し、機構職員による説明会を実施した。説明会を実施した経済団体のうち、1団体の広報誌に地層処分事業に関する広告を掲載していただいた。また、シンポジウムなどのイベント開催地域の自治体や経済団体等(175団体。延べ349回)を訪問し、シンポジウム等の紹介と参加のお願いをするとともに、地層処分事業や機構業務に関する説明を行った。
       今後も、諸団体への地層処分事業の理解促進を図るために、訪問先の拡充を図るとともに、関わりの出来た団体への訪問を重ねて情報の提供や意見交換を進める。
  • [2] 次世代層に対する活動

    • (a) 教育関係者向けワークショップへの支援
       教育関係者及び教員を目指す学生のみなさまに、高レベル放射性廃棄物の最終処分問題が国民的課題であることを知ってもらい、学校の授業で扱っていただくことを目的として、授業研究(学習指導案作成、教材開発等)を行う全国10ヶ所の教育研究会組織が実施するワークショップ(参加者:計239名)の活動に対し、ワークショップの開催費用の助成、事業概要説明や資料提供等の支援を行った。  また、2015年3月、各ワークショップの活動成果を共有する場として、全国大会(受講者:91名)を東京都(日本科学未来館)において開催した。
       大会後のアンケート結果では、ワークショップを通じた情報提供に対し、「今後の授業づくりに生かしていきたい」、「今回の指導案や事例を使用したい」、「授業の実践に参考になった」等の回答を得ており、一定の成果を確認した。
       更に、こうした取組みを広く知ってもらうために、事前に報道関係者へ情報発信するとともに、全国大会の様子を教育関係紙(2紙)に記事掲載し、全国の教育関係者へ情報発信した。また、各ワークショップの議論や発表及び質疑応答の内容を機構ホームページで詳しく掲載するとともに、ワークショップで作成された「学習指導案(18)」、「副教材(12)」、「実践授業動画」については、全国の授業で採用してもらえるよう、機構の教員向けポータルサイト(エネルギー教育支援サイト:http://numo-eess.jp/)に掲載した。
       2015年度は、より実践的な理解促進を図るため、ワークショップ参加者から要望の多かった関連施設見学を支援メニューに加えるとともに、全国へ波及させることを目的として、これらの活動内容をマスメディアに対してより積極的に紹介していく。また、授業を行う際に有用と考えられる具体的な教材や指導案の作成等の要望を踏まえ、それらの新規作成等について検討を進める。
    • (b) 地層処分を題材としたディベート授業への支援
       2012年度に千葉大学教育学部教授からの要請を受けて、千葉大学教育学部が実施した高レベル放射性廃棄物の処分問題をテーマとするディベートの授業に対して事業概要説明や関連施設見学等の協力を行なったことを契機として、機構は、若者層(10代後半~20代前半)の関心を喚起し、現世代で解決すべき国民的課題として捉え、自発的に考えていただく機会の創出を図るために、大学のディベート授業に処分問題をテーマとして取り上げてもらうことを働き掛けてきている。
       2014年度は、千葉大学においてディベート授業のテーマとして取り上げていただき、当該授業において、事業の概要説明及び資料提供や関連施設見学会の開催等の支援を行った(受講生:51名)。受講生からは、「機構からの情報提供やディベート試合の準備等を通じて地層処分事業に関連する様々な知識が習得でき、この問題に対する興味・関心が高まり、自発的に考えるきっかけとなった」等の感想を得ており、一定の成果を確認した。
       2015年度は、より効果的な支援策を検討し、新しい大学へのアプローチを図るとともに、多くの方々に関心をもっていただけるよう、前述のワークショップと同様に、活動内容をマスメディアに対してより積極的に紹介していく。
  • [3] 幅広い情報発信

    • (a) 情報発信の充実と多様化
       2014年度は、幅広い層へのアプローチの拡大と理解の底上げを図るために、以下のとおり情報発信の取組みの充実に努めた。
      • これまでは報道関係者中心であったメールマガジンの読者を一般層へ拡充することとし、発信内容の充実及び発信回数の強化を図った。(2015年3月末現在メルマガ登録者1,539名(前年同期比約700名増)・発信45回(前年度比10回増)
      • シンポジウム等の場において海外での事例について質問を受ける機会が多かった経験を踏まえ、先進諸外国の地層処分事業への取組みに関する概要を紹介するDVDを製作した。
      • 機構ホームページの本格的リニューアルの検討を進め、2015年度における更新に向けた準備を整えた。
         また、情報発信の多様化に向けて、新たな双方向型コミュニケーションツールとしてSNS(フェイスブック)の検討を進め、2015年度からの運用開始に向けた準備を整えた。
    • (b) 報道関係者への情報発信
       報道に役立てていただくために、在京の記者クラブに対し、定期的な訪問(40回)とメールマガジンの発信(45回)を行い、「シンポジウム」「教育関係者向けワークショップ」「ディベート授業」等の対話活動に関する情報や「組織改編」「役員人事」など組織運営に関する情報をタイムリーに発信した。
       また、科学論説委員や経済部長を対象とした意見交換会(各1回)と記者を対象とした勉強会(18回)を実施し、報道関係者とのコミュニケーションを深めた。
       地方においては、シンポジウムの開催に合わせて当該地の県政記者会や市政記者会等を訪問(45回)し、事業の説明と取材案内を行った。
       今後は、より実践的に理解を深めてもらうために、関連施設見学会や地方記者クラブを対象とした勉強会の開催を提案するとともに、より多く取材していただけるよう、メールマガジンを活用した情報提供をより強化する。
  • 2)応募をいただくための対話活動

     前述1)による広範な対話活動を通じて事業に関心を深めていただいた方々に対しては、地域における応募の検討へと繋げてもらえるよう、より詳細で有用な情報の提供を行った。
     具体的には、お問合せをいただいた方々に、地層処分事業の必要性・安全性のみならず、地域共生への取り組みや事業が地域経済に与える影響等についても丁寧に説明するとともに、関連資料(パンフレット、DVD)を送付し、直接訪問して説明する機会をもらえるように努めた。
     訪問させていただいた地域に対しては、事業の技術的信頼性から経済効果等に至るまで、先方の様々なニーズに即して説明内容を工夫し、事業と地域社会の共存などをイメージしてもらいながら、応募の検討に繋げていただけるように努めた。

    また、事業に関する理解を深める目的で自主的な勉強会などを行う地域団体等の活動を支援するために、「地層処分事業に関する地域の自主的な勉強会等支援事業」を2013年度に引き続き実施した。
     2014年度は、全国の自治体・諸団体等(計4,300団体)に参加を呼び掛け、応募いただいた団体の中から9団体に対して、活動費用の助成、関連資料の提供や団体勉強会への説明、施設見学会のアレンジ等の支援を行った。
     更に、本事業の成果をより高めるために、支援開始時(4月)と年度末(2月)に各団体の代表者らによる交流会を東京(AP 浜松町)で開催(4月:15名、2月:13名参加)し、団体間での情報や意見の交換と交流を進めた。年度末の交流会におけるアンケート結果では、「他の団体の活動が参考になった」「活動状況を知って励みになった」等の意見をいただき、この交流会が団体活動の活性化に向けて一定の効果を有することを確認した。
     今後は、年間を通じて応募いただける仕組みへの改善、募集枠や支援内容の拡大等、本事業の拡充策について検討し、本事業をより利用しやすくし、より多くのみなさまの参加を得られるようにする。

(2) 地層処分に関する技術開発等

 2014 年度は、「地層処分の技術的信頼性の向上」を目指し、「包括的技術報告書」の取りまとめに向けた作業を重点的に実施した。
 また、「中期技術開発計画」に基づき、現段階において優先して取り組む必要がある「長期にわたる事業展開を見据えた技術開発」を実施した。
 更に、最新の科学的知見及び地層処分技術の進展を踏まえて、地層処分の安全性や技術的信頼性についての検討を行うとともに、これらの成果も含め、国が進める科学的有望地選定に関する検討に関し、地層処分技術WGの審議に資する技術情報を提供した。

  • 1) 地層処分の技術的信頼性の向上

     地層処分事業の技術的信頼性の向上に向けて、「第2次取りまとめ3」以降の最新の科学的知見や地層処分に関する国際的な議論を反映して、わが国における安全な地層処分事業の実現性を示す「包括的技術報告書」を2015年度末までに取りまとめることとしている。
     2014年度は、本報告書の作成方針について、地層処分の安全性を提示するための方策として国際的に認知されている「セーフティケース4」の概念を踏まえることとし、後段で述べる個別の技術開発成果も考慮しつつ、以下のとおり設定した。

    • 処分施設を建設するサイトを選定する上で対象となり得るわが国の地質環境を、最新の科学的知見に基づき地層処分に関連する特性の観点から類型化して、それらの特徴(断層の存在等)を現実的に考慮した上で地質環境モデルの作成を行う。
    • 作成された地質環境モデルに対応した処分場の設計(後述の2)[2]参照)、及び処分場の閉鎖前と閉鎖後の両期間について安全評価(後述の2)[3](a)(b)(d)、及び[4]参照)を行う。
    • これらの作業を通じて、サイト選定で想定される多様な地質環境に対応するための地質環境の調査・評価や、処分場の設計、安全評価の手順や方法等の信頼性を確認する。また、わが国の多様な地質環境に対して、地層処分を実現するための準備が整っていることを示すとともに、処分場の閉鎖前、ならびに閉鎖後の長期の両方において、安全性を確保できる見通しがあることを示す。
     本作成方針に則り、2014年度は、地層処分に関わる重要な特性を考慮した上で、わが国の多様な岩種を、深成岩類、新第三紀堆積岩類、先新第三紀堆積岩類の3つに分類し、そのうち、深成岩類について、地質環境モデルを作成するとともに、これを対象として処分施設の設計及び安全評価などを行い、その成果を第1次ドラフトとして取りまとめた。
     また、「包括的技術報告書」の内容を踏まえた、安全な地層処分事業の実現性に関し、国民や地域のみなさまに説明する分かりやすい資料(「地層処分の現状と展望(仮称)」)の構成等について検討した。
     第1次ドラフトの作成にあたっては、個別分野の最新の科学的知見や報告書に関する意見等を適切かつ効率的に取り込み、技術的品質を確保するために、基盤研究開発機関等の専門家の参画を得て「タスクフォース」を設置した。また、ドラフト案の検討の段階から、国内外有識者(延べ41名)の参加を得てワークショップを開催(2回)するなど、幅広い専門家から意見を聴取し、報告書の目的や趣旨、作成方針、盛り込むべき内容の妥当性などを確認しつつ取りまとめ作業を進めた。
     今後は、第1次ドラフトの専門家レビューを行い、その結果を踏まえた課題に取り組むとともに、新第三紀堆積岩類及び先新第三紀堆積岩類についても、地質環境モデルの作成、処分場の設計及び安全評価などを実施して第2次ドラフトを取りまとめ、その後更に専門家によるレビューを受けた上で、最終的に「包括的技術報告書」を完成させる。
  • 2) 長期にわたる事業展開を見据えた技術開発

    [1] 地質環境の調査・評価

    • (a) 精密調査地区選定上の考慮事項の検討
       概要調査の実施に先立ち、最新の情報の収集・分析等を踏まえ、概要調査地区の中から精密調査地区を選定するために考慮する事項(地震・断層活動、火山・火成活動、地下水の水流など)とその評価の考え方(判断指標)について「精密調査地区選定上の考慮事項」の整備を進めている。
       概要調査においては、断層活動について当該地域に分布する個々の断層や破砕帯(断層等)に関する規模・活動性を把握し、その長期的な挙動(変位等)を推定する。また、この推定結果を踏まえた上で、処分施設の設計と安全評価を行う。これらの結果に基づき、断層等が処分施設に安全上著しい悪影響を及ぼす可能性があるか否かを判断する。
       2014年度は、こうした断層等を精密調査地区の選定において避けるかどうかを判断するために、最新の科学的情報や知見等を踏まえ、断層等の変位等を主体とする判断指標を導入することとした。更に、この指標を適用する上で、断層や破砕帯の調査方法に基づく活動性の推定方法、その精度、活動による処分施設への安全評価上の影響(力学的、水理学的など)について検討を行った。
       今後は、「包括的技術報告書」の作成を通じて提示する地質環境モデルの構築から処分施設設計、安全評価の一連の手続きを念頭に置き、適用する断層活動の調査手法を踏まえて、上記指標に対する判断基準の具体化を図る。また、現在進められている科学的有望地に関する地層処分技術WGの審議も踏まえながら、最新の科学的知見を反映しつつ、断層、その他の事象等の考慮事項としての取り扱いについて検討を進める。
    • (b) 概要調査計画策定のための実務手引書の更新
       適切で合理的な概要調査計画を策定するために、自然現象の影響や地質環境特性の調査・評価手法についての実務的な調査の手引書(実務手引書)を取りまとめている。実務手引書は、日々進歩する調査技術や最新の科学的知見を逐次取り入れ、また、本手引書に基づいた概要調査計画策定の試行等を踏まえて、適宜記述内容の見直しを行っている。
       2014 年度は、前項(a)「精密調査地区選定上の考慮事項の検討」において変更した考慮事項の考え方との整合性の確認を行い、断層の変位を調査・評価の主体とするように、本手引書の記述内容を変更した。
    • (c) 調査・評価技術の体系化・実証
       地上からの調査技術に関する原位置での適用性を確認するために、電力中央研究所(横須賀)の敷地内で、2012年度から掘削に着手したボーリング孔を活用した実証作業に、電力中央研究所と共同して取り組んでいる。
       2014年度は、ボーリング調査と孔間試験5を実施し、地質環境モデルの構築・更新に必要な地質環境データ(水理特性、岩盤力学特性、水質など)を取得した。取得した情報に基づいて、地質環境モデルの更新を行い、地下水流動解析の結果と調査結果を比較することで、孔間水理試験などの既存技術により地質環境を適切に把握できることを確認した。

       また、本実証作業で掘削したボーリング孔を利用し、沿岸部における透水性の異なる地層ごとに地下水圧をモニタリングする技術の適用性の確認を2010年度から行っている。
       2014年度は、観測したデータから、ボーリング孔内の多連式のパッカーシステムが、気圧変動や地球潮汐の影響を除去した上で、地層の地下水圧変動をモニタリングできることを確認した。
       更に、これまでの全ての作業成果と総合評価を踏まえて、地上からの調査技術・評価手法の体系化を行い、総括報告書として取りまとめるべくドラフトを作成した。
       今後は、国内外有識者による技術レビュー会議の開催等、本実証作業で取得したノウハウ、判断根拠などの知識・情報の品質管理への利用も含めて評価を受けつつ、総括報告書の完成に向けて作業を進める。
  • [2] 工学的対策

    • (a) バリア材の長期挙動評価を踏まえた人工バリアの設計手法の整備
       人工バリアは、閉鎖後の長期間にわたってその安全性に関する機能(安全機能)を維持する必要があることから、構成材料の長期的な特性変化(長期挙動)を把握した上で、設計する必要がある。
       このため、人工バリアの設計による安全機能の確保に関する信頼性を正しく把握することを目的として、人工バリアの長期挙動のみならず、安全機能を阻害する要因やそれに対する対応策などに関する最新の科学的知見を取り入れた設計手法の整備を進めている。
       2014年度は、「第2次取りまとめ」以降に得られた最新の科学的知見を踏まえて、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の人工バリアの設計を行った。
       具体的には、オーバーパック(ガラス固化体を格納する金属製の容器)については、ガラス固化体からの放射線によるオーバーパックへの影響(腐食等)を考慮し、必要な厚さを設定するために、オーバーパックによる放射線遮へい解析を実施した。その結果、「第2次取りまとめ」において遮へいのために設定された厚さには余裕があることを確認した。これにより、現在のオーバーパックの仕様は、最新の科学的知見に基づいても、安全性を確保でき、また、サイトの地質環境の条件が特定されれば、安全性の確保を前提として、合理的に薄くできる見通しを得ることができた。
       また、緩衝材については、要求機能の一つである物理的緩衝性が巨大地震によって損なわれることがないかどうかを確認するために、東北地方太平洋沖地震の観測波等を用いたシミュレーションを行い、人工バリアの耐震性を評価した。その結果、巨大地震に対しても人工バリアの構造健全性は十分に確保され、緩衝材に対する要求機能が損なわれる可能性は低いことを確認した。
    • (b) 回収技術の整備
       特定放射性廃棄物の回収可能性の工学的実現性の見通しを得ることを目的として、基盤研究開発機関との役割分担のもと、人工バリアの施工方法に応じた回収技術の整備を実施している(基盤研究開発機関では、先行して竪置き・ブロック方式を対象とした実規模回収技術実証試験を実施)。
       機構においては、横置き・PEM方式6を対象として、回収手順、回収技術について検討を行い、回収装置の概念的な設計(装置の機能、性能、仕様等の検討)を実施した。その結果、既存の技術の組み合わせで設計が可能であることが確認でき、この方式についても回収可能性の工学的実現性の見通しを得た。
       今後は、上記の機構における技術開発や基盤研究開発の成果を踏まえ、回収可能性を維持する期間が長引いた場合の影響について、基盤研究開発機関と連携して検討を行い、これらの成果を取りまとめて「包括的技術報告書」に反映する。
    • (c) 地下施設の設計技術
       多様な地質環境に柔軟に対応した処分場の設計を可能とすることを目的として、地層処分システムが所要の安全機能を確保することだけでなく、工学的実現可能性や品質保証、回収可能性(上記(b)参照)、経済性、環境影響などの因子を総合的に考慮する設計の考え方、手順及び方法について体系的に整備を進めている。
       2014年度は、その一環として高レベル放射性廃棄物処分場の竪置き・ブロック方式を対象として、地下施設のレイアウトの設計方法を検討した。具体的には、断層を含む地質を対象に安全性や操業性を確保するための要件を設定するとともに、当該要件を具備するレイアウト設計の考え方を取りまとめ、その考え方に基づき、深成岩類の地質環境モデル(後述③(c)参照)を対象として、地下施設のレイアウト及び坑道の設計を実施した。
       また、坑道閉鎖技術に関して、止水のためのプラグ7(止水プラグ)の設置位置に関する検討を水理解析により実施し、埋め戻した坑道の透水係数を母岩相当にまで低減するためには単一のプラグ配置では効果がないことを確認し、止水プラグは局所的に透水性を改良する必要のある箇所に集中して設置することが合理的であることを確認した。
  • [3] 閉鎖後長期の安全評価

    • (a) 安全評価技術の信頼性向上
       閉鎖後長期の安全評価は、放射性廃棄物が将来にわたって人間の生活環境に有意な影響を及ぼさないことを確認することを目的としている。
       安全評価技術の信頼性を向上させるため、「第2次取りまとめ」以降の国内外の評価技術の進歩や新たな知見を踏まえ、わが国における実際の地質環境とそれを踏まえて設計された処分施設の特徴をできるだけ現実的に反映し、不確実性の程度をより明確に示すための評価技術の検討を進めている。
       2014 年度は、これまでの成果を適用しつつ、深成岩類(後述(c)参照)を対象として、安全評価の枠組みの構築、シナリオ開発、モデル及び評価用データベースの開発、これらを用いた解析・評価の試行という以下の一連の作業を実施した。
      • 安全評価の枠組みの構築に関しては、国際的な潮流となっているリスク論的な考え方を導入し、「国際放射線防護委員会(ICRP)」や各国の安全規制、旧原子力安全委員会の余裕深度処分の評価の考え方等の情報を調査分析し、発生の可能性に基づく4つのシナリオ(基本シナリオ、変動シナリオ、稀頻度事象シナリオ、人為事象シナリオ)8区分とその定義を明確にするとともに、これら区分ごとに想定される線量めやす値の設定の考え方を整理した。また、安全評価の評価期間についても同様の調査検討に基づいて設定の考え方を取りまとめた。
      • シナリオ開発にあたり、日本原子力研究開発機構との共同研究を通して、近年注目されている安全機能に基づいて展開する方法と、FEP9から構築する古典的な手法を統合した方法を構築した。この方法に沿って、上記リスク論的な考え方に基づくシナリオ作成と分類作業を、追跡性を持って実施するためのツール群を整備した。
        具体的には、安全機能については、処分システムに関する基本的なものとして「国際原子力機関(IAEA)」の文書などに提示されている「隔離」と「閉じ込め」を起点として、深成岩類を対象とする地質環境モデルと処分施設の設計に拠って構築される処分システムを対象としてシステムの構成要素ごとに安全機能を明らかにした。そして、次項(b)で述べる開発中のFEPデータベースの中から、安全機能へ影響を与えると考えられるFEPを関連付け、現状の科学的知見に基づき将来の発生可能性を整理した上で、基本シナリオと変動シナリオの構築を試行した。また、稀頻度事象シナリオや人為事象シナリオに関しては、定量的な評価に必要となる、評価対象とする事象の選択や選択された事象の発生規模を様式化の考え方も含めて定めるため、国内外のこれまでの検討事例の調査を行い、事例的に火山活動やボーリングに関する事象を抽出して、シナリオの作成を試行した。
      • モデルや関連するデータベースの開発に関しては、深成岩類の岩種を対象として、わが国で実際に観察される断層や亀裂の頻度等の条件を踏まえた地質環境モデルとそれに対応する設計仕様の特徴を現実的に表現した三次元水理及び物質移行モデルを作成するとともに、国内外の研究開発成果に基づく最新の科学的知見に基づいてモデル解析に必要な核種移行データの更新などを行った。これらに基づいて、核種移行解析を試行した。
       以上の成果は、「包括的技術報告書」の安全評価に反映するとともに、引き続き、安全評価技術に関する信頼性について更に確かなものとするため、上記一連の作業過程・評価結果について専門家のレビューを受けるとともに、他の対象岩種への適用するために必要となる改良や新たな研究開発を進めていく。
    • (b) 安全性の論拠の拡充
       超長期にわたる安全評価を適切に行い、その信頼性を確保するため、評価技術の適用にあたって論拠となる情報やデータベースの整備・拡充を図っている。
       2014年度は、シナリオ開発に利用するFEPに関するデータベースを、処分場の安全性に関与する事象等を取りまとめたFEPリストとそれぞれのFEPに関する最新の科学的知見などの関連情報を記述したFEPシートから構成するものとして、FEPデータベースの開発に着手した。FEPリストに関しては、サイト選定においてわが国で想定される様々な地質環境や処分概念を考慮した適用性の広い一般的なものとして、「第2次取りまとめ」等、国内の研究開発で作成された既存のリストや「経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)」の国際FEPリストを参考にして作成(約230項目)することにより信頼性の確保を図った。更に、このリストに基づき、FEPシートの作成に着手した。
       また、開発中のFEPデータベースを参照しつつ、FEPと安全機能との関連付けについて、超長期の緩衝材の安定性やコロイドによる核種移動への影響を事例として、FEPシートの記述内容のレビューも含め専門家を交えた議論を行い、現時点での安全評価における取扱方法と、その論拠となる解析結果やナチュラルアナログ等の観測結果、課題について取りまとめた。
       以上の成果は、「包括的技術報告書」に反映するとともに、引き続き、安全性の論拠について国内外の専門家との意見交換やレビューを通じた信頼性の確認を行いつつ、拡充を図る。
    • (c) 適切な地質環境特性の設定にかかわる情報整理と解析
       「包括的技術報告書」においては、処分場のサイト選定にあたって想定される地質環境を、実際の観察データや最新の科学的知見に基づいて類型化した地質環境モデルとして作成し、これを対象として処分施設の設計や安全評価をより現実的に試行することとしている。
       この方針に沿って、2014年度は、3つに分類した岩種(深成岩類、新第三紀堆積岩類、先新第三紀堆積岩類)のうち、深成岩類に係るデータ(断層や亀裂の頻度、岩盤の透水係数等)を収集・整理し、地質環境モデルの作成及び地下水流動解析を実施した。その結果得られた流量分布、流速及び移行経路長などの情報を取りまとめ、安全評価における物質移行モデルの作成に反映した。
       また、新第三紀堆積岩類及び先新第三紀堆積岩類については、最新のデータや知見の収集・整理を進めつつ、モデル化の方針を検討した。
       以上の成果は、「包括的技術報告書」に反映するとともに、引き続き、深成岩類に対するモデル化の専門家レビューを進めるとともに、他の岩種分類についても、専門家のレビューを受けつつモデル化及び水理解析を行い、流量分布、流速及び移行経路長などの情報を取りまとめて安全評価における物質移行モデルの作成に反映する。
    • (d)将来の地質環境特性が自然現象により影響を受ける変動幅の検討
       地質環境の長期安定性に関し、現在のプレート運動の予測において、特に不確実性が大きくなる10 万年を超える超長期の期間について、隆起・侵食、火成活動や断層活動等の天然事象の長期変遷に関する評価手法の整備を進めている。
       2014 年度は、火山フロントの前弧側及び背弧側での火山の新生の可能性について、東北日本弧の火山発生に関する文献を調査した。この調査結果を基に、安全評価において稀頻度事象シナリオ区分の基礎となる、火山新生に対する確からしさの評価を行うとともに、分布する火口の規模や噴火における火山灰や溶岩の噴出量等の情報を取りまとめ、安全評価における物質移行モデルの作成に適用した。
       また、東北日本弧の活断層を対象として、断層の分岐・伸展に関する文献を調査し、既存の活断層が将来地層処分に影響を与える可能性について検討した。
       以上の成果は、「包括的技術報告書」に反映するとともに、引き続き、専門家のレビュー等を通じて手法としての信頼性を高め、安全評価への適用について更に検討を進める。
  • [4] 事業期間中の安全確保

    •  地層処分場の操業安全に関する施設の設計要件の設定や安全対策立案に資することを目的として、類似の原子力施設の安全規制や一般産業の例を参考に、地上施設及び地下施設の各々について、電源喪失、廃棄体の落下など、放射線防護上重要と考えられる事態を想定し、その影響評価を実施している。これまでの検討の範囲では、いずれの事態もガラス固化体やオーバーパックの持つ閉じ込め機能等に著しい影響を及ぼす可能性はないことを確認している。
       2014年度は、地下施設において燃料が漏れ、車両火災が発生したことを想定し、その影響評価を伝導・伝達・輻射を考慮した熱解析により実施した。その結果、火災発生直後は、一時的に温度は上昇するものの、短時間に燃料が燃え尽きること等から、火災によるオーバーパックの温度の上昇は、操業安全上問題がない程度であることを確認した。
       以上の成果は、「包括的技術報告書」に反映するとともに、引き続き、操業期間中の異常事態等が処分場閉鎖後長期の安全性に影響を与える可能性などについて事例分析を進める。
  • [5] 廃棄体とインベント

    •  閉鎖後長期安全性や操業時安全性の評価において、重要となる核種を予め把握するために、廃棄体製造時等の関連情報を整備しておく必要がある。この重要核種の候補やその選定方法については、2013年度から、関係機関と情報交換を実施しながら検討を行っている。
       2014年度は、2013年度に引き続きガラス固化体などの核種インベントリ(放射性核種の種類及び放射能濃度等)を関連情報に基づいて設定するとともに、操業時及び閉鎖後長期に考慮すべき線量、発熱率等に関する評価によって重要核種候補を抽出する方法を検討し、これを適用する場合の課題を取りまとめた。
       この方法は、「包括的技術報告書」の安全評価に用いるとともに、引き続き、上記課題について、関係機関とともに取り組み、専門家のレビューなども踏まえて抜け落ちのないように重要核種の選定を行うことが可能となるように改良を行っていく。
  • [6] データベースの整備

    •  文献調査の円滑かつ的確な実施に向けて、概要調査地区としての適性の評価に資するために、文献等から得られるデータを管理する目的で機構が開発した「地理情報システム(GIS)」の定期的整備(全国規模の文献・データの更新と座標系の整備等)を実施した。また、調査・解析情報の登録・管理と地質環境モデル作成等を支援するシステム(地質・解析情報管理支援システム)を構築した。
       また、全国を対象とした水理場に関する情報のデータベース化に着手し、2014年度は、太平洋沿岸の約14万平方キロメートルを対象として、水理地質構造モデルを作成、地下水流動解析を実施し、当該領域に係る水理場に関する情報を整備した。
  • 3) 技術開発のマネジメント

     機構の技術開発への取り組みに関し、その計画と成果を、第三者による評価を経て品質や信頼性を確保した上で、積極的に公表した。
     2014年度における具体的な取り組みは、以下のとおり。

    • 2014年6月、機構が設置している国内の学識経験者から構成される「技術開発評価会議」(2012年度設置)において、2013年度成果と2014年度計画 について指導・助言をいただいた。また、2015年2月には、これまでの指導・助言に対する機構の対応状況について説明し、総括を行っていただいた。
    • 「包括的技術報告書」の作成方針や骨子の策定等にあたり、機構が設置している国内外の学識経験者から構成される「技術アドバイザリー委員会」委員より、適宜ご意見をいただき、その妥当性を確認した。
    • 年度ごとの技術開発計画・成果について、昨年度と同様、「技術年報(2013年度)」及び「技術開発年度計画書(2014年度)」を作成し、2014年6月、機構ホームページで公表するとともに、技術開発成果報告会を開催(124名参加)して普及に努めた。
    • 地下施設の耐震性評価、地層処分低レベル放射性廃棄物の処分の安全性向上に関わる技術報告書を5件発行した。
    • 個別の技術開発成果について、原子力学会や土木学会などの学会や国際会議などに、29件投稿・発表した。
  • 4) 地層処分に関する技術協力

     地層処分に関する技術を的確かつ効率的に整備・更新するために、国内外の関係機関が有する最新の技術開発成果等に関する情報交換を行った。
     また、共同研究や国際プロジェクトへの参画等によって、効果的な技術開発・整備に加え、人材育成や機構への技術移転の促進を図った。

    [1] 国内関係機関との技術連携の強化

    •  国内関係機関との技術連携を強化するために、協力協定を締結している日本原子力研究開発機構、電力中央研究所との間で、処分施設建設地選定に必要な地質環境の調査・評価、地層処分の工学、安全評価等に関する技術情報の交換や、ボーリング調査等の地上からの調査技術の実証や概要調査における設計・性能評価手法に関する共同研究等を実施した。
       基盤研究開発として進められている地下研究施設を利用した研究開発に対する機構のニーズについて、日本原子力研究開発機構のURL国際レビューワークショップ及び地層処分基盤研究開発調整会議において報告し、これらのニーズの反映について調整を行った。
  • [2] 海外関係機関との技術協力

    •  海外関係機関との技術協力を維持・強化するため、協力協定に基づく活動として、海外実施主体やその支援研究機関との協定運営会合(3回)、セミナー(2回)等を実施し、それぞれの国における地層処分計画の現状に関する情報交換や今後協力の可能性のある課題について検討を行った。また、スウェーデンのエスポ地下研究所における国際共同プロジェクトに引き続き参画し、プロジェクト運営会議や個別課題に関するワークショップにおいて、わが国の技術開発の状況を発信するとともに、今後国内で検討すべき技術情報を得た。
  • [3] 国際機関等との協力

    •  国際機関等との協力を維持・強化するため、OECD/NEA の「放射性廃棄物管理委員会(RWMC)」、「セーフティケース統合グループ(IGSC)」等の会議体や関係プロジェクトの下で、国際間の重要課題(極端な地質事象の取り扱い、操業安全性、国際FEP データベースの開発等)を検討する具体的な活動に参加するとともに、IAEA のステークホルダー関与をテーマとした技術会議において、わが国の公募方式に関わる経緯や最近の政策動向について情報提供した。また、各国の実施主体を構成員とする「放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)」については、横浜会合(春季)のホスト実施主体としての共催、ハンブルグ会合(冬季)への出席、ならびに、個別課題に関する共同調査への参加により、各国実施主体との緊密なネットワークを強化した。

(3) 組織運営

 放射性廃棄物WGや地層処分技術WGにおいては、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(2008年3月閣議決定)の改定、科学的有望地の選定要件・基準に関する基本的考え方、地域における合意形成に向けた仕組みの整備等の検討が進められた。
 2014年度は、このような事業環境の変化に迅速かつ的確に対応しつつ、機構が総合力を発揮できるように、また、適正な業務遂行により社会から信頼される組織となるために、組織ガバナンスの強化等に取り組んだ。

  • 1) 組織体制の強化と人材の育成

     より効果的な対話活動を推進するために、広報部と立地部を統合して地域交流部へ改組するとともに、計画立案機能の強化等を図るために、企画部を事業計画部へ名称変更し、それぞれ拡充を行った。
     また、組織力を強化するために、職員の意識改革に向けたワークショップ(4月及び6月開催。延べ73名参加)、社会の合意形成をテーマとした講演会(3月開催。50名参加)、コミュニケーショントレーニング(3月開催。13名参加)を実施した。

  • 2) 内部統制・ガバナンスの強化

     組織目標の明確化及び組織ガバナンスの一層の強化を図るために、業務運営の拠り所となる「経営理念」を制定するとともに、この経営理念に基づき、下述の「業務の適正を確保するための体制の整備について」を理事会で決議した。
     これを受けて、「理事会機能の強化」、「評議員会の機能・権限の見直し」、「監事の独立性・監査機能の強化」等を図るために、定款変更を行うとともに、「コ ンプライアンス規程」、「情報セキュリティ規程」及び「災害対策規程」の策定並びに「文書取扱規程」等の改定を行った(いずれも2015 年4 月1 日施行)。
     また、職員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保する体制を整備するために、内部監査(各部間の相互チェック)の仕組みを整備し、2015年度から定期的(年2 回)に実施することとした。
     更に、情報セキュリティの強化を図るために、外部専門機関の診断を受け、その結果を基に具体的強化策(事務所フロアの入域管理、情報システムのセキュリティ対策等)を策定し、2015 年度からの着手に向けて準備を整えた。

  • 3) PDCAサイクルの定着

     PDCAサイクルを定着させるとともに、機構業務の高度化を図るために、評議員会により機構の事業活動に対し大所高所から評価を受ける仕組みについて検討を行い、評議員会において累次ご審議いただいた。その結果、2014年度事業から評価を受けることとなった。
     特に、対話活動と技術開発に関しては、評議員会の下に「対話活動評価委員会」及び「技術開発評価委員会」を設置し、個別の事業ごとに具体的な評価を行っていただくこととなった。

(4) 情報公開制度の適切な運用

 情報公開請求(請求件数:1件)に対し、外部の有識者で構成する情報公開審査委員会の審議・答申に基づく非公開部分を除いた機構資料の公開を決定し請求者に通知したが、公開の実施方法等に関する申出書の提出が期限内になかったことから公開には至らなかった。
 また、情報公開規程の運用方法について、職員への教育を継続して実施し、情報公開制度の適切な運用に努めた。

(5) 拠出金の徴収及び指定法人への積立

 2014年度の拠出金納付対象事業者は2法人であり、拠出金(52億円:第一種最終処分業務分0円、第二種最終処分業務分52億円)を徴収し、原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた。

2.当該事業年度の理事会の開催状況及び主な議決・報告事項

 2014年度は、6回の理事会を開催し、経済産業大臣への認可・承認申請に関する事項等、機構の業務運営の基本的な事項について議決した。理事会の開催状況及び主な議決・報告事項は、次のとおりである。

  • 第61回理事会(2014年6月16日)
    • (1) 2013(平成25)事業年度 財務諸表(案)
    • (2) 「定款の変更案」について(案)
    • (3) 役員候補者の選任について(案)
    • (4) 規程類の改定について
      • [1] 組織改編とそれに伴う規程類の改定について(案)
      • [2] 「監査規程」の改定について(案)
      • [3] 「役員給与規程」及び「役員退職金支給規程」の改定について(案)
    • (5) 評議員会の評価機能の強化について
    • (6) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第62回理事会(2014年8月6日)
    • (1) NUMO事業を巡る最近の状況
    • (2) NUMO事業の当面の課題と検討の方向
  • 第63回理事会(2014年10月31日)
    • (1) 経営理念(案)
    • (2) 業務の適正を確保するための体制の整備について(理事会決議案)
    • (3) 評議員会の評価機能強化について(案)
    • (4) 2014年度上期業務実施状況と下期の取組みについて
    • (5) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第64回理事会(2014年11月20日)
    • (1) 2015年度事業計画策定の方向性について(案)
    • (2) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第65回理事会(2015年2月5日)
    • (1) 「定款変更」について(案)
    • (2) 評議員会の評価機能強化について(案)
    • (3) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第66回理事会(2015年3月4日)
    • (1) 2015(平成27)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • (2) 定款変更等に伴う規程の制定・改廃について(案)
    • (3) 評議員会の評価機能強化について(報告)
    • (4) 機構業務に関連する最近の状況について

3.当該事業年度の評議員会の開催状況及び主な審議事項

 2014年度は、3回の評議員会を開催し、機構の運営に関する重要事項について審議した。評議員会の開催状況及び主な審議事項は、次のとおりである。

  • 第35回評議員会(2014年6月18日)
    • (1) 2013(平成25)事業年度 財務諸表(案)
    • (2) 「定款」の変更について(案)
    • (3) 役員の選任について(案)
    • (4) 「評議員会運営規程」の改定について(案)
    • (5) 組織体制の見直しについて
    • (6) 評議員会の評価機能の強化について
    • (7) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第36回評議員会(2014年11月25日)
    • (1) 評議員会の評価機能強化について(案)
    • (2) 2015年度事業計画策定の方向性について(案)
    • (3) 経営理念の策定について
    • (4) 業務の適正を確保するための体制の整備について(理事会決議)
    • (5) 2014年度上期業務実施状況と下期の取組みについて
    • (6) 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第37回評議員会(2015年2月24日)
    • (1) 定款の変更及び関連規程の制定について
    • (2) 評議員会の評価機能強化及び関連規程の改定・制定について
    • (3) 2015(平成27)事業年度の事業計画・予算・資金計画について

III. 2014年度資金計画実績表

1 基盤研究開発機関:日本原子力研究開発機構、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人放射線医学総合研究所、一般財団法人電力中央研究所、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター
2 タスクフォース参画機関:基盤研究開発機関、電気事業連合会、日本原燃株式会社、原燃輸送株式会社
3 第2次取りまとめ:「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」(核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)が、1999年11月に地層処分にかかわる研究開発の成果を集大成した報告書)。
4 セーフティケース:例えば国際原子力機関(IAEA)の安全基準SSG-23では、「処分施設の安全性を支える科学的、技術的、制度的及び管理上の論拠や証拠を集約したものであり、その範囲はサイト及び処分施設の設計・建設・操業の適切性、放射線学的リスクの評価、処分施設の安全に係る全ての作業の品質と妥当性の保証に及ぶ」と定義されており、処分の実施主体が事業期間を通じて作成、更新して恒常的に安全性に対する信頼性を高めていくものであり、安全規制に応じて規制機関が行う許認可の審査の対象となるとともに、安全性に関する多様なステークホルダー間のコミュニケーションの基盤となるものとされている。
5 孔間試験:ボーリング調査で掘削した複数のボーリング孔の間で、計測装置を用いて地下深部の地質環境データを取得する試験。
6 PEM方式:高レベル放射性廃棄物の人工バリア施工方法の一つで、地上施設であらかじめ廃棄体を含むオーバーパック、緩衝材を専用の容器内に格納し、一体化したものを地下施設に定置する方法をいう。PEMは、Prefabricated Engineered barrier system Module の略語。
7 プラグ:坑道の中間部や端部をふさぐために設置される構造物。埋め戻し材や緩衝材の移動や流出を防いだり、水の通りやすい経路を分断したり、不用意な人間侵入を防ぐ目的で設置される。
8 基本シナリオ:通常想定されるシナリオ、変動シナリオ:発生可能性が低いシナリオ、稀頻度事象シナリオ:発生可能性が著しく低い自然現象を考慮したシナリオ、人為事象シナリオ:偶発的な人間活動による処分施設の損傷等による影響を確認するシナリオ。
9 FEP:地層処分システムの各要素の特性(Feature)、特性に影響を与える事象(Event)、地層処分システムの時間的変遷に係る過程(Process)をまとめた略称。