事業報告書

I. 原子力発電環境整備機構の概要

1.業務の内容

1-1 目的

 原子力発電環境整備機構(以下、「機構」という。)は、発電に関する原子力の適正な利用に資するため、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分の実施等の業務を行うことにより、原子力発電に係る環境の整備を図ることを目的とする。

1-2 業務内容

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)及び同法第20条の規定に基づく別の法律で定める安全規制に従って、次の業務を行う。

  • 1) 最終処分業務(同法第56条第1項第1号及び第2号)
    • 概要調査地区等の選定を行うこと。
    • 最終処分施設の建設及び改良、維持その他の管理を行うこと。
    • 特定放射性廃棄物の最終処分を行うこと。
    • 最終処分を終了した後の当該最終処分施設の閉鎖及び閉鎖後の当該最終処分施設が所在した区域の管理を行うこと。
    • 拠出金を徴収すること。
    • 上記01.から05.に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
  • 2) 委託を受けて行う業務(同法第56条第2項)
    • 経済産業大臣の認可を受けて、受託特定放射性廃棄物について、特定放射性廃棄物の最終処分と同一の処分を行うこと。
    • 上記1)01.から04.および2)01.に掲げる業務のために必要な調査を行うこと。

2.事務所の所在地

東京都港区芝4丁目1番23号 電話番号(03)6371-4000

3.役員の状況

2017年3月31日現在の役員は、次のとおりである。

理事長 近藤 駿介  
副理事長 藤 洋作  
専務理事 中村 稔  
理事 地域交流統括 宮澤 宏之  
理事 梅木 博之  
理事 伊藤 眞一  
理事 小野 剛  
理事(非常勤) 井手 秀樹 (慶應義塾大学 名誉教授)
理事(非常勤) 廣江 讓 (電気事業連合会 副会長)
監事 上野 透  
監事(非常勤) 鳥井 弘之 (株式会社日本経済新聞社 社友(元 論説委員))

4.評議員の状況

2017年3月31日現在の評議員は、次のとおりである。

高橋 恭平(議長) 昭和電工株式会社 相談役
山地 憲治(議長代理) 東京大学名誉教授
公益財団法人地球環境産業技術研究機構 理事・研究所長
井田 多美子  弁護士
大江 俊昭  東海大学工学部原子力工学科 教授
勝野 哲  電気事業連合会 会長
久住 静代  中間貯蔵・環境安全事業株式会社 監査役
児玉 敏雄  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 理事長
西川 正純  元 柏崎市長
崎田 裕子  ジャーナリスト・環境カウンセラー
特定非営利活動法人持続可能な社会をつくる元気ネット 理事長
城山 英明  東京大学公共政策大学院 教授・院長
田中 裕子  フリーアナウンサー
元 NHKアナウンサー
長辻 象平  株式会社産経新聞社 論説委員
西垣 誠  岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授(特任)
東原 紘道  東京大学名誉教授
元 独立行政法人防災科学技術研究所
地震防災フロンティア研究センター センター長

5.職員の状況

2017年3月31日現在の職員数は、117名である。

Ⅱ.業務の実施状況

【概要】

 2016年度は、「2016(平成28)事業年度事業計画」に基づき、情報発信方法を工夫して全国のみなさまや社会各層を対象に地層処分事業に関する広範な理解獲得に向けた「対話活動」を実施するとともに、「包括的技術報告書」(案)の取りまとめや長期事業展開を見据えた「技術開発」及び機構の総合力発揮とガバナンス徹底のための「組織運営」に取り組んだ。

 また、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(以下、「基本方針」という。)の改訂(2015年5月閣議決定)、総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物ワーキンググループ及び地層処分技術ワーキンググループで進められた諸々の審議、最終処分関係閣僚会議(2015年12月)において了承された2016年中に科学的有望地※の提示を目指すとの方針ならびに原子力委員会による機構を含む関係行政機関の活動状況に対する評価(2016年10月)等を踏まえ、それらの決定・審議・指摘内容等を事業活動へ反映し、遂行に努めた。

 「対話活動」については、全国のみなさまの理解促進を図るために全国シンポジウムの開催、地層処分模型展示車の巡回、諸団体・地方新聞社等への訪問説明、クロスメディア広報、次世代層への取組み等多様な全国対話を継続するとともに、少人数形式により双方向対話を充実させる目的から、新規に地層処分セミナー、地層処分意見交換会の開催に取り組み、社会各層の関心事の聴取と各層へのリーチ・発信方法の工夫を行った。実施後のアンケート調査では総じて地層処分に肯定的な意見が増える一方、安全性への関心がなお高いことが明確となった等、取組みの有効性・課題が確認された。

 「技術開発」については、わが国における安全な地層処分を実施するための技術的取組みを明らかにする「包括的技術報告書」(案)の完成に向け、技術アドバイザリー委員会やワークショップにおける外部専門家等のご意見、上記地層処分技術ワーキンググループにおける審議等に基づき必要な修正等を行い、報告書の信頼性の向上を図った。また、2013年度に策定した「地層処分事業の技術開発計画―概要調査段階及び精密調査段階に向けた技術開発(以下、「中期技術開発計画(2013年~2017年)」という。)に基づき、地質環境特性の調査・評価、工学的対策や閉鎖後長期の安全性評価等に関する技術開発に取り組み、その結果を適宜「包括的技術報告書」(案)の作成に反映した。

 「組織運営」については、科学的有望地に関するマップの提示から文献調査の円滑な実施までを最初の中期事業期間と位置づけ、この間の取組み目標を「中期事業目標」として定めたほか、理事会の3か月毎の開催、評議員会による評価・提言の事業への速やかな反映等を通じてガバナンスの強化に努めた。また、地域交流部の増員による体制の増強、放射線基礎研修及び対話活動のシミュレーション研修等の実施により職員のスキル向上を図った。

※ 「科学的有望地」という表現については、2017年4月14日に開催された放射性廃棄物ワーキンググループにおいて「科学的特性マップ」という表現に置き換えられることとなったが、本報告書においては、2016年度の事業報告であることから「科学的有望地」という表現を使用する。

1.2016事業年度における個別業務の実施状況

1-1 文献調査実施に向けた対話活動

  • 1) 全国を対象とした対話活動
    • 全国シンポジウム
       国と共催で全国の主要都市においてシンポジウム等を実施し、科学的有望地の提示等、最終処分事業の実現に向けた今後の取組み等について理解を深めていただくことを目的に、2016年度は、全国各地でシンポジウムや地層処分セミナー等の対話活動を展開した。全体で延べ40都市3,133人に対し、地層処分事業の概要、科学的有望地の検討状況、対話活動の進め方等について専門家を交えて説明するとともに、参加者との質疑応答、意見交換を行うことにより、地層処分事業に対する理解促進を図った。
       特に地層処分セミナー、地層処分意見交換会(第二部)では、少人数のグループに分かれてフェイス・トゥ・フェイスの質疑応答、意見交換を行い、きめ細かな対話活動を実施した。
      • 「全国シンポジウム」
        「いま改めて考えよう地層処分」~科学的有望地の提示に向けて~
        (9都市、参加者数:1,561人)
        (主催) 国と機構の共催
        (定員) 200人又は300人
        (時期) 2016年5~6月
        (開催都市) 東京、秋田、松江、高松、札幌、福井、大分、名古屋、大阪
        (概要) 地層処分事業の現状・課題、科学的有望地の選定、地域との対話活動の進め方等について説明し、パネルディスカッションや質疑応答を実施。

        全国シンポジウム(東京)
      • 「地層処分セミナー」
        高レベル放射性廃棄物について考える (17都市、参加者数:483人)
        (主催) 機構
        (定員) 50人
        (時期) 2016年7~10月
        (開催都市) 神戸、さいたま、長野、佐賀、鳥取、甲府、岐阜、鹿児島、盛岡、山口、大津、宮崎、長崎、山形、徳島、前橋、松山
        (概要) 地層処分事業の概要、科学的有望地の検討状況等について説明し、少人数のグループに分かれて質疑応答、意見交換を実施。

        地層処分セミナー
      • 「地層処分意見交換会」
        高レベル放射性廃棄物について考える (9都市、参加者数:834人)
        (主催) 機構
        (定員) 150人又は250人
        (時期) 2016年10~11月
        (開催都市) 東京、仙台、名古屋、広島、福岡、大阪、高松、札幌、富山
        (概要) 第一部で機構・国から地層処分事業の概要、エネルギー政策の現状等について説明。第二部では少人数のグループに分かれて質疑応答、意見交換を実施。
      • 「地層処分セミナー」
        高レベル放射性廃棄物について考える (5都市、参加者数:255人)
        (主催) 機構
        (定員) 50人
        (時期) 2017年2~3月
        (開催都市) 静岡、奈良、横浜、水戸、高知
        (概要) 地層処分事業の概要、科学的有望地の検討状況等について説明し、少人数のグループに分かれて質疑応答、意見交換を実施。
      少人数のグループに分かれて実施したセミナー等でのアンケート(※1)では、機構職員や地層処分の専門家が車座で参加者の質問や意見に丁寧に対応したこと等により、説明前は肯定的意見(※2)の割合が低かった設問(地層処分が日本で安全に実施できることに関する設問等)が、説明後には10ポイント程度上昇する結果となった(表1)。
      また、機構職員に対する肯定的意見の割合はほぼ6割以上の評価をいただいた(表2)。
      地層処分模型展示車の巡回展示 地層処分模型展示車の巡回展示 ※1.「イ.地層処分セミナー」、「ウ.地層処分意見交換会A席(意見交換会でグループ質疑に参加する方を対象とした席)」及び「エ.地層処分セミナー」を合わせた集計結果を示す。回答者数は966名。
      ※2.肯定的意見=「そう思う。」+「どちらかといえばそう思う。」

      これらシンポジウム、セミナー等については、参加されなかった方々にも実施内容を情報提供するため、機構ホームページで動画や当日資料を掲載し、メールマガジン、フェイスブックで報告する等の事後広報に努めた。
    • 全国の方々との関係作り
       職員自らがあらゆる機会をとらえて全国各地の経済団体等を訪問し、地層処分事業の内容等に関心を持っていただくことに努めた。このうち154団体を対象に説明会や施設見学会を開催したほか、多くの方々に地層処分セミナー等へ来場していただき、地層処分事業の内容や機構の役割について知っていただく等、率直かつ継続的に対話ができるような関係づくりを行った。
    • 地域における勉強会の支援
       広く全国のみなさまに関心を持っていただくため、学習の機会を提供し、その学習団体からも情報発信していただけるよう、活動の支援に取り組んだ。地層処分事業に関する勉強会等を自主的に行う地域団体(105団体)に対し、講演会や施設見学会等に係る活動支援を行った(学習の機会提供事業:勉強会94件、施設見学会87件、意見交換会24件)。また、年度末には各団体の代表者等が一堂に会する交流会を東京で開催し、活動成果の発表やグループ討議を実施することで、地域団体同士および機構職員との関係づくりを行った(64団体参加)。
    • 地層処分事業に関する海外情報の発信
      • 講演会の開催
         国民のみなさまから多くの関心を寄せられた海外における取組み事例等を関係者から直接発信してもらうため、スウェーデン、スイス、ドイツ、カナダの地層処分関係者を招へいし、講演会等を開催した。また、当日の来場者以外とも情報を共有するため、ホームページやフェイスブック等に実施結果を掲載したほか、一部については2015年度の国際シンポジウム(3/28、スウェーデン・エストハンマル市長)の実施内容と合わせて冊子にまとめ、地層処分意見交換会で配布する等の事後広報にも努めた。
        • 国際セミナー
          「地層処分の安全性に関するコミュニケーション」
          (主催) 機構
          (開催日) 2016年6月2日
          (開催場所) 東京・建築会館ホール
          (参加者数) 150人
          (概要) ヨハン・アンダーソン氏(スウェーデン/スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社<SKB社>核燃料部解析ユニットヘッド)、イリーナ・ガウス氏(スイス/放射性廃棄物管理共同組合<NAGRA>研究開発総括プロジェクトマネージャー)、ユハニ・ビラ氏(フィンランド/ポシヴァ社<Posiva>元理事)、シルビー・ボワニス氏(フランス/放射性廃棄物管理機関<ANDRA>Cigéoプロジェクト核安全担当副部長)、エリック・ウェッブ氏(米国/サンディア国立研究所地科学研究応用部長)、イアン・マッキンレー(MCMコンサルティング共同経営者)の6名の技術者・研究者と機構理事長によるショートプレゼンテーション及びパネルディスカッション。
        • 国際講演会
          「スイスのサイト選定におけるコミュニケーション活動」
          (主催) 機構
          (開催日) 2016年7月8日
          (開催場所) 東京・大手町サンケイプラザ
          (参加者数) 133人
          (概要) トーマス・エルンスト氏(スイス/放射性廃棄物管理共同組合<NAGRA>CEO)によるプレゼンテーションと、同氏、竹内純子氏(NPO法人国際環境経済研究所理事)及び機構理事長との座談会。
        • 「ドイツの地層処分計画について」
          (主催) 機構
          (開催日) 2016年12月16日
          (開催場所) 東京・TKP田町カンファレンスセンター
          (参加者数) 89人
          (概要) ボリエス・ラプケ氏(ドイツ/ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社<DBE社>社長)によるプレゼンテーション。
        • 「カナダにおける地層処分計画の現状と今後」
          (主催) 機構
          (開催日) 2017年3月10日
          (開催場所) 東京・建築会館ホール
          (参加者数) 126人
          (概要) ケン・ナッシュ氏(カナダ/核燃料廃棄物管理機関<NWMO>前理事長によるプレゼンテーションと、同氏、竹内純子氏(NPO法人国際環境経済研究所理事)及び機構理事長との座談会。
      • メディアを活用した情報発信
         後述する若年層を対象とした情報発信力の強化の取組みにおいて、フィンランドの地層処分の現状を現地取材し、同世代の目線から捉えた地層処分事業について、若年層に対して問題提起をする内容の番組を制作し、BS放送やWeb等で発信した(下記⑦イ参照)。
    • 次世代層・女性層向けの対話活動
       地層処分は極めて長期にわたる事業であるため、次世代層やその家族、教育関係者を対象として、教育の場・夏休み・各種イベント等において、以下の取組みを行ない、次世代層にも理解を深めていただくよう努めた。
      また、これまでの全国シンポジウム等の説明会への参加が少ない女性層に対して、全国各地で活動する女性団体等を訪問し、地層処分事業の必要性、安全性等について説明を行い、意見交換した。
      • 出前授業の実施
         全国の小学校・中学校・大学の授業等に機構職員が出向き、ベントナイト実験等を取り入れながら、高レベル放射性廃棄物の処分に関する説明と情報提供を行った(31回、約1,500人参加)。また、今年度より一般社団法人日本原子力産業協会と協働して、合同での出前授業や同協会が行う出前授業への機構資料の提供等、学生や教員等へ情報提供する機会を拡大した(45校、約2,900人)。
        教育現場で若年層へフェイス・トゥ・フェイスで情報提供をすることが出来たほか、学生へのアンケート結果等にも地層処分に対する理解が進んでいることが表れていた。

        リケジョ(理系女子)説明会
      • ディベート授業支援
         千葉大学ほか1大学が実施する地層処分をテーマにしたディベート授業(受講者数は計140人)に対し、事業説明、資料提供及び関連施設見学会等の協力を行った。受講後のアンケート調査では90%以上の学生から講義内容について高評価を得るとともに、特に、千葉大学においては、将来教員となって地層処分を教えたいと答えた学生が95%と、多くの学生の関心を喚起することができた。
      • 出前授業
         全国の小学校・中学校・大学の授業、教育関係者の会合等に職員が出向き、ベントナイト実験などを取り入れながら高レベル放射性廃棄物の処分問題に関する説明と情報提供を行った。(22回、延べ約1,400人参加)
         受講者からは「この問題の存在を初めて知った」「体験型授業は興味・関心が湧きやすい」等の声を得た。

        女子中学生夏の学校 2016

        経済産業省子どもデー
      • 地層処分模型展示車(ジオ・ミライ号)等による出展
         次世代層及びその家族との対話機会拡大を図るために、全国各地において地層処分模型展示車等の出展や次世代層向けのイベントを開催した。3Dアニメの上映やベントナイトを用いた実験等を通じて体験型で親しみやすい情報提供を行った。(39か所(21都府県、32都市)、80日間、延べ約38,000名参加)

        ジオ・ミライ号での実験
      • 夏休み親子ツアーの実施
         全国から親子20組40名を招待し、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、「JAEA」という。)の瑞浪超深地層研究所見学と実験教室を実施した(7月29日、8月3日)。
        地下研究施設の見学に加え、地層処分に関する説明や実験等の関連性の高い情報提供を行ったことにより、参加者の満足度が高いイベントとなった。
      • 教育関係者ワークショップの開催
         次世代層への関心喚起と知識の普及に繋げるために、授業で「高レベル放射性廃棄物の処分問題」を取り上げていただけるよう、全国の教育研究会組織等(9地域10団体)が行う授業研究に係るワークショップ活動(約330人参加)に対し、資料の提供、関連施設の見学(8月2日-3日、JAEA幌延深地層研究センター、12名)等の支援を行った。その結果、小中学生向けに学校授業で使用する教材を新たに共同で制作し、全国の教育委員会、教科別研究会及びエネルギー教育モデル校ほか約2,500校に配布した。また、年度末には、全国研修会(3月5日、東京、参加者218名)を開催し、小中学校12校による授業での実践例の報告や意見交換等を行った。
      • 女性団体への説明会
         地域の婦人連盟等、全国各地の女性団体等を訪問し、地層処分に関する説明会、施設見学等を実施し、関心を持っていただく機会の拡大を図った(44団体、2,314人)。
         女性団体等の訪問にあたっては、地域の婦人会にご協力をいただきながら行い、新たな関係の構築を行った。
    • 報道関係者との勉強会と情報提供
       地層処分事業に関する話題を報道で取り上げていただくため、個別取材に誠実に対応したほか、中央及び地方の記者を対象に勉強会や施設見学会を開催した(勉強会:16回、73名、施設見学会:3回、11名)
       全国各地における地層処分セミナー等では、現地の記者クラブを事前に訪問して取材案内を行うとともに、地元記者に地層処分の現状や当機構の取組みについて説明した。その結果、地層処分セミナー等の開催に関する記事や実施結果に関する報道・記事掲載を得た(告知記事掲載11紙、記事掲出141社[新聞113社、テレビ28社])。また、地元新聞社やテレビ局の本社を訪問し、論説委員、報道局長等の幹部と機構幹部との意見交換を実施した(訪問社数:45社)。
       一方、海外における先進的な取組みについてもご理解をいただくため、国際講演会等に、多くの記者の方々にご参加いただいた。
    • 情報発信力の強化
       マスメディアやインターネットの活用により全国に幅広く発信するとともに、次世代層や女性層といった特定層を対象とする効果的な情報発信にも取り組んだ。また、関心を持っていただいた方々に対しては、メールマガジンやフェイスブックの発信頻度を高め、お届けする情報の内容を充実させることで、関心をより高めてもらうよう努めた。
      • テレビCMによる情報発信
         地層処分セミナー開催の告知CMをローカルテレビ局で放映した(放映テレビ局数:18局)。
      • クロスメディア方式による広報
         BS放送、新聞、雑誌、ラジオ、Web等を相互に連携させて集中的に情報発信するクロスメディア方式の広報を行った(上期4~5月、下期11~12月)。
         上期は、全国シンポジウムの開催時期に合わせ、全国の幅広い層に向けて実施した。
         また、下期はこれまで地層処分に関する情報があまり届いていなかった「10代後半から30代前半の若年層」「女性層」を対象に、それぞれの関心に応じてテーマや内容を工夫してテレビ番組を制作し、これを核とした多様な媒体による情報発信を行った。
      • ホームページ
         対話イベントの開催告知や実施報告、プレスリリース等を迅速にアップデートし、タイムリーな情報発信に努めた。英語版ホームページの更新や次世代層向けの夏休み特集ウェブページを制作する等、特定層を対象とする効果的な情報発信にも取り組んだ。
         また、FAQコンテンツを整備、拡充するため、対話活動でいただいた「よくあるご質問」について、回答内容を見直し、カテゴリーを整理することで、分かりやすく、探しやすいFAQページの作成を行った。
      • メールマガジン
         月2回の定期的な発行により、機構ホームページの更新情報、対話活動の各種イベントの開催案内や実施結果報告を掲載する等、機構を取り巻くタイムリーな情報の発信を行った(発信回数:25回、読者数:約6,600人)。
      • フェイスブック
         週1~2回の投稿により、対話活動の各種イベントの開催案内や実施結果報告等を掲載する等、タイムリーな情報発信を行い、多くのファン数(「いいね」を押して下さった方の人数)を獲得した(投稿回数:89回、ファン数約14,800人)。
      • パンフレットの作成・改定等
         地層処分に関する総合的なパンフレットや安全確保策に特化したパンフレット類を検討し、科学的有望地に関するマップ提示までに作成することとした。
         また、機構の取組み内容を広く発信するため、国際シンポジウム等で発信した海外の取組み状況やクロスメディア方式による広報で行った新聞や雑誌の記事内容について、それぞれをまとめた冊子を作成し、対話活動の訪問時に配布した。
         さらに、地層処分模型展示車の巡回等ではヒト型ロボットを新たに広報展示ツールとして使用し、次世代層を中心に参加者の増加に結び付けたほか、次世代層に対しては小中学生の学校授業向けに作成した教材をパンフレットとして、地層処分を知っていただくきっかけに活用した。
    • 対話活動の効果測定と評価
       今後の対話活動の高度化に向けて、高レベル放射性廃棄物の処分問題に対する関心度や、地層処分事業の必要性、安全性等に関する意識ほかについて、インターネット調査(サンプル数:10,000、対象:全国20~60才代の男女)により測定した(11月及び2月の2回)。その結果、高レベル放射性廃棄物に対する認知度は8割強と高いが具体的な内容に関する知識は少なく、基本的な知識の一層の普及が必要であることが分かった。
       また、前述のとおり、地層処分セミナー等では、イベント前後の意識の変化をアンケート調査で確認し、説明内容の改善等を行った。さらに、ホームページにおいては、アクセス分析から新規訪問者数の推移や、流入経路等について把握し、より見やすく、分かりやすいページ更新を継続している。
       さらに、地層処分模型展示車等のイベントにおいてもアンケート調査を行っており、展示により参加者の理解が進んだことを確認した。
    • 対話活動の効果測定と評価
      • 職員のリテラシー向上を始めとした対話活動の高度化
         地層処分セミナー等における少人数グループに分かれての質疑応答、意見交換の場で、機構職員が的確に対応できるよう、リテラシーや対話能力の強化を目指した研修等を行い、コミュニケーションスキルのブラッシュアップに努めた。
         地層処分セミナー等の資料等の作成にあたっては、来場者のご意見やアンケート結果を反映し、来場者のニーズ等に係る知見の蓄積に取り組んだ。
         また、将来的なファシリテーター育成の一環として、地層処分セミナー等において機構職員がファシリテーター役を担い、そのスキルの向上に努めた。
      • 社会的側面に関する調査研究
         基本方針に基づく「社会的側面に関する調査研究」への支援実施に向け、海外における地層処分事業に係る社会科学的研究事例及び国内における地層処分に類似した事業に係る研究事例の2つについて、調査と体系的取りまとめを行った。
  • 2) 科学的有望地提示後の対話活動の準備
     科学的有望地提示後の地域のみなさまからのお問合せ等に適切に対応するため、地域に根差す電力会社と緊密な連携体制を整備した。
     また、提示後に行う対話活動の具体的内容について、上記対話活動の実績やいただいたご意見等を踏まえて検討し、「対話活動計画(仮称)」として提示までに策定することとした。

1-2 地層処分に関する技術開発等

  • 1) 「包括的技術報告書」(案)の外部レビューと情報発信
    • 「包括的技術報告書」(案)の外部レビュー
       国内外の機関による外部レビューに向け、技術アドバイザリー委員会((3)①参照)や外部の専門家ワークショップ((3)①参照)、日本原子力学会秋の大会企画セッション(9月8日)での議論・助言を踏まえて追加的な情報収集や解析を行い、これらを反映して、「包括的技術報告書」(案)の技術的品質の向上を図った。これにより、レビュー機関に提示する「包括的技術報告書」(案)の準備を整えた。
       国内のレビューについては日本原子力学会にレビューを依頼し、2017年度からのレビュー開始に向けてスケジュール等の調整を進めた。また国外レビューについては、その準備として「包括的技術報告書」(案)の英訳を進めるとともに、経済協力開発機構/原子力機関(以下、「OECD/NEA」という。)をレビューの依頼先候補機関として協議を開始した。
    • 積極的な情報発信
       「包括的技術報告書」(案)の主要な検討成果について、国内外の関連学会等に発表((3)②参照)を行った。また、専門家以外の方々に対しても地層処分選択の歴史的経緯や安全性等をわかりやすくお伝えするため、同報告書の導入編の作成を進めた。
  • 2) 長期にわたる事業展開を見据えた技術開発
     地層処分事業の安全かつ円滑な実施、経済性及び効率性の向上のため、「中期技術開発計画(2013年~2017年)」に基づき、基本方針や地層処分技術ワーキンググループで示された諸課題等も踏まえ、技術開発を実施した。
    • 地質環境特性の調査・評価
       脆弱層をはさむ堆積岩層を対象としたボーリング調査技術の整備に向け、掘削試験等を実施し、有効な掘削泥水や掘削方法等を選定した((4)①参照)。
       火山性熱水・深部流体の影響とその時間変化について、モデル化の考え方・手順等を事例研究に基づいて整理し、体系的な調査・評価フローを見直した。また、地下深部の情報を用いた活断層の調査・評価手法の高度化に向けて、岩盤変形解析手法の検討等を進めた。更に、将来数十万年以上の長期にわたる隆起・侵食による影響を評価するための手法の信頼性向上に向けて、過去の地形面が残っている山地の長期間の変動と場所による違いに着目した検討を実施した。
    • 工学的対策(人工バリアの設計・施工技術等)
       炭素鋼オーバーパックの合理的な代替材料の可能性を検討するため、鋳鋼製実規模オーバーパックの試作を行った。試作品の非破壊検査により鋳造欠陥の発生傾向を把握するとともに、強度特性や偏析の傾向性等、オーバーパックの安全機能に与える影響を評価するためのデータを取得した。
       将来的に地層処分に供給することが可能と見込まれるベントナイト材料の選択肢を拡げるための調査の一環として、国内外のベントナイト製品及びベントナイト鉱床に関する情報を収集するとともに、性能の見込み等に基づき選定したベントナイト材料の基本物性(鉱物組成、陽イオン交換容量、膨潤力等)を取得した。

      鋳鋼製オーバーパック(鋳込み)
    • 閉鎖後長期の安全性評価
       TRU廃棄物の安全性評価において、硝酸塩や発生するガスが処分場の性能に及ぼす影響を評価するため、これらの物質の移行挙動を解析できる二次元解析モデルの開発、これを用いた解析、三次元地下水流動・物質移行解析コード用インターフェースの導入を実施した。また、ガラスの溶解試験を実施し、モデルの高度化とデータ拡充を行った((4)①参照)。
       生活圏評価のための核種移行プロセスモデルについて、既存モデルに帯水層領域を加えて地表の水理状況をより具体的に反映し、かつ、これまで別々に扱っていた地下水の流出点(河川、深井戸、沿岸域海底)を統合してひとつの包括的モデルで取り扱えるよう改良した。また、被ばく経路の多様性による被ばく線量への影響を考慮するため、従来の被ばく評価対象者である第一次生産者に加え、屋内作業者や都市生活者の被ばくプロセスモデルを設定した。
    • 事業期間中の安全確保
       換気設備については、「包括的技術報告書」(案)の作成過程で2015年度に検討した地下施設レイアウトに対して、換気ファンの効率化を図るとともに、火災解析と避難シミュレーションを実施し、これらの結果に基づき、作業員の安全確保に必要な避難設備等の設計対応策を整理した。
       排水設備の設計に重要な湧水量評価については、単一坑道に対する湧水量評価の理論式に対して、三次元解析により坑道径、坑道離間距離、グラウト改良幅等をパラメータとした解析を実施し、理論式の改良を行い、坑道の連接効果を湧水量評価に取り込むことができるようにした。
    • 回収可能性に関する技術課題の検討
       国の基盤研究開発として進められている回収技術の高度化に関する委員会及び可逆性・回収可能性の論点整理に関する委員会にアドバイザーとして出席し、機構としての研究へのニーズの提示や助言を行った。これらを通じて、2017年度から、国の委託事業としてJAEAの幌延深地層研究施設で実施予定の回収技術の実規模実証試験において、機構が「包括的技術報告書」(案)で検討した吹付け工法による隙間埋め戻しや高圧水噴射による埋め戻し材の定置・除去を試験の対象に追加することとなった。
    • 品質保証
       概要調査段階までの実施内容とそれに関連する解析コードを調査・分析し、機構自ら解析・評価が実施可能となるコードの導入計画を策定した。
       サイト調査に適用するための品質マネジメントシステムの整備に向け、スイス放射性廃棄物管理共同組合(以下、「NAGRA」という。)との共同研究を通じて、文献調査を対象とした地質環境データの品質評価の考え方・進め方及び基準を策定するとともに、ボーリング孔を利用した水理試験及び採水調査に係る品質管理・保証の方策を具体化した((4)②参照)。
       JAEAとの共同研究により、長期試験によって取得すべき人工バリア材料の長期変遷に関するデータや、人工バリア材料の長期変遷を考慮した安全評価の実施のための核種移行特性データを特定した。また、それらデータの取得計画をJAEAと協働で策定し、一部試験を開始した((4)①参照)。
  • 3) 技術開発のマネジメント強化
    • 外部専門家による指導・助言等による信頼性向上
       技術アドバイザリー委員会を以下のとおり開催し、「包括的技術報告書」(案)や技術開発計画に対する指導・助言等を得ることによって、機構の技術開発の進め方の妥当性を確認し、内容の適正化を図った。
      技術開発計画・成果等に関する第三者による指導・助言
       また、「包括的技術報告書」(案)の取りまとめに向けて、地層処分技術に関連する学会に所属する専門家を対象とした「NUMOセーフティケースに関する外部専門家ワークショップ」を開催(9月21日大阪:60人参加、9月23日東京:101人参加)し、様々な分野の専門家から有益なコメントをいただくことで、報告書のさらなる充実を図った。
       更に、関係機関の専門家の参加を得たタスクフォースにおいて、「包括的技術報告書」(案)の取りまとめに向けた検討を、適宜実施した。

      包括的技術報告書ワークショップ(大阪)
    • 技術開発成果の積極的活用
       技術開発の成果については、学会等での発表、個別技術報告書の公表等、地層処分の専門家に向けた発信とともに、異分野の専門家との積極的な交流を進めた。具体的な取組みは以下のとおり。
      • 個別の技術開発成果について日本原子力学会や土木学会等、国際会議等において発表(39件)した。また、日本原子力学会秋の大会の企画セッション(9月)において、「包括的技術報告書」(案)の紹介を行い、意見交換を実施した。
      • 個別技術報告書として、「将来10万年を超える超長期の天然事象の確率論的な影響評価手法の検討 -ITM-TOPAZ手法の適用に向けて-」(NUMO-TR-16-04)を機構のホームページ上で公表した。
      • 全国各地の技術士会等への講演(8件)を行い、異分野の専門家との技術交流を進めた。
       なお、これまでは技術年報として公表してきた個別の技術開発成果については、NUMO-TR-16-04以外は「包括的技術報告書」(案)に含めて公表することとした。

      技術士会での説明
    • 「中期技術開発計画(2013年~2017年)」の改定
       「包括的技術報告書」(案)の取りまとめを通じて明らかになった技術課題や地層処分技術ワーキンググループの「中間とりまとめ(2014年5月)」で示された諸課題等を踏まえ、「中期技術開発計画(2013年~2017年)」の改定に向けて検討を進めた。
    • 技術情報の体系的整理
       「包括的技術報告書」(案)をWeb上で公表するためコミュニケーションツール(安全な地層処分の実現性(仮称))を作成し、技術アドバイザリー委員会委員やタスクフォースメンバーを対象に試験的な運用を行ってレビュー機能を改善する等、本格的な運用に向けた準備を完了した。また、外部発表資料や「包括的技術報告書」(案)に基づく参考文献情報リストを共有サーバーに集約することでデータベース化を促進した。
       「包括的技術報告書」(案)で検討した施設の設計に対して、国内外の地下研究所等で得られた最新の技術的知見や成果を踏まえ、調査、建設、操業に係る具体的な施工計画及び現時点におけるリスクや不確実性を整理し、「中期技術開発計画(2013年~2017年)」の改定へ反映することとした。
  • 4) 地層処分に関する技術連携・交流と人材育成
    • 国内関係機関との情報交換、共同研究等
       地層処分に関する技術開発の効果的・効率的推進を図るため、国内関係機関との情報交換や技術連携に努めた。具体的な取組みは以下のとおり。
      • 資源エネルギー庁委託調査事業に関する委員会にアドバイザーとして出席し、研究成果の共有と機構の技術開発ニーズの提示を行った。
      • JAEAとの共同研究により、JAEA核燃料サイクル工学研究所の研究施設を利用したガラス/鉄共存系でのガラス溶解速度及び鉄腐食データ取得試験、人工バリアの長期性能に関するデータ取得試験、核種移行データベースの拡充のためのデータ取得試験を開始した。
      • 一般財団法人電力中央研究所との共同研究により、大深度ボーリング孔調査に適用する掘削泥水や掘削方法の選定に向けた室内試験及びボーリング孔掘削試験を実施し、協力協定に基づく技術連携を推進した。

      ボーリング試験(横須賀・電力中央研究所)
    • 国際的技術交流
       諸外国の地層処分実施主体や関係機関との交流、国際プロジェクトへの参加等を通じて、国際的な技術情報を収集するとともに各組織との協力関係の維持・強化に努めた。具体的な取組みは以下のとおり。
      • OECD/NEAの放射性廃棄物管理委員会(RWMC)、セーフティケース統合グループ(IGSC)等の会議体や関係プロジェクトの下で、国際的な重要課題(操業安全性(6月、2月)、粘土層・堆積岩処分概念(9月)等)への取組みに参画した。また、OECD/NEA及びフランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が主催した地層処分国際会議ICGR2016(12月)に日本の実施主体として参加した。

        ICGR(パリでの展示)
      • 国際原子力機関(IAEA)の技術会議・専門家会議に出席し、国際的な重要課題(サイト調査技術(4月、11月、2月)、ステークホルダー関与(6月)、地下研究施設の活用(10月)等)への取組みに参画するとともに、放射性廃棄物処分場のサイト選定に係る専門家ミッション(9月)や放射性廃棄物管理の安全性に関する国際会議(11月)に参加した。

        国際会議への参加(IAEA)
      • 各国の実施主体で構成される放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)の春季会合(5月)・冬季会合(12月)等において情報交換を行った。
      • グリムゼル国際共同プロジェクトにおけるコロイド生成・移行挙動(6月)、セメント系材料変質挙動(6月)、岩盤中マトリクス拡散(7月)、材料腐食(7月)の各プロジェクトの検討会合に参加し、プロジェクトの進捗状況の把握と機構ニーズとの調整を行った。また、ベントナイトの高温変質挙動に関する新規プロジェクトHotBENT準備会合(5月、10月、11月)に出席した。
      • エスポ国際共同プロジェクトパートナー会議を開催(8月)し、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)、JAEA及び電力中央研究所とともに今後の活動検討のための情報共有を進めた。
      • 地質環境調査・評価の品質マネジメントシステムに係るNAGRAとの共同研究を、技術検討会議(11~12月、1~2月、3月)を開催しながら効果的に実施し、着実にこれを進めた。
      • 地震に伴う断層及び断層周辺の水理特性や力学特性の変化に係る米国ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)との共同研究を、技術検討会議(1月、3月)及びTV会議を通じて、進捗状況や技術的な課題等を確認しつつ着実に進めた。
      • ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE)との協力協定を新規締結(12月)した。また、協力覚書あるいは協力協定に基づき、台湾電力(10月)、韓国原子力環境公団(KORAD)(10月)、DBE(12月)との情報交換会議をそれぞれ実施した。

        台湾電力公司(TPC)技術協力覚書
    • 長期的な事業展開を見据えた人材育成
       長期的な事業展開を見据えて育成プログラムを作成し、国内外の関係機関との共同研究や技術協力等の場へ積極的に若手技術者を派遣して、人材育成を進めた。主な育成プログラムは以下のとおり。

1-3 組織運営

  • 1) 事業目標の明確化とPDCAサイクルの定着
     事業目標の明確化については、科学的有望地に関するマップの提示から文献調査の円滑な実施までを最初の中期事業期間と位置づけ、この間の「対話活動」、「技術開発」、「組織運営」の取組み目標を「中期事業目標」として設定した。策定にあたっては、評議員による検討委員会にて議論していただいた。またこの目標を実現するための計画として「対話活動計画(仮称)」、「中期技術開発計画」、「中期人材育成計画(仮称)」を別に定めることとした。
     PDCAサイクルの定着については、昨年度に続き、2015年度に実施した事業活動に関し自己評価したうえ、「対話活動評価委員会」と「技術開発評価委員会」における個別の評価を経て評議員会において評価・提言を総合的に取りまとめていただき、ホームページにて公表した。これらの評価・提言内容は、機構の業務実施状況を確認し自己評価するための点検会議(7月、10月、3月)を通じて業務改善へ速やかに活かすとともに、「2017(平成29)事業年度事業計画」の策定に反映した。
     また、基本方針に基づいて原子力委員会が行った機構を含む関係行政機関等の活動状況に係る評価の場で、機構の事業運営状況等について説明を行った。同委員会からは「おおむね適切に取組みが進められており」、「個別に改善が必要な事項はあるものの、総じて、明瞭性・透明性・応答性が高い水準で確保されている」と評価されるとともに、「今後も国民理解醸成のための活動を継続することが必要」、また「長期的視点を重視しつつ」「関係行政機関、実施機関等はより連携を密にし、必要な準備を十分に行う」ことが不可欠である、との指摘を得た。
  • 2) 内部統制・ガバナンスの強化
     定款、「リスクマネジメント規程」、「情報セキュリティ規程」、「業務の適正さを確保するための体制の整備について(理事会決議)」等に基づき、下記に示す一連の内部統制・ガバナンスに関する施策を実施した。
    • 理事会による業務実施役員の職務遂行状況の確認
       定款の規定に基づき、理事会を開催して業務執行理事から職務執行状況について報告を定期的に行うことにより(3か月に1回)、役員の職務執行を監督した。
    • リスクマネジメント活動
       「リスクマネジメント規程」に基づき、リスクマネジメント委員会を定期的に開催し(4回/年)、業務遂行上発生が予想されるリスクを抽出し、その対応方策の検討及びリスクの監視・管理を行うことにより、リスク顕在化の防止に継続的に努めた。
    • 情報セキュリティ
       「情報セキュリティ規程」に基づき、なりすましメールへの対応訓練を行うとともに、ウイルスによる不正な通信の検出・防止機能を備えた最新のファイアーウォールや不正なファイル操作ログ検索システムの導入を図った。
    • 内部監査の実施
       職員の職務執行が法令及び規程類に適合していることを確認するため、上期及び下期に内部監査を実施した。(上期:コンプライアンスに関するアンケート及び職員からのヒアリング、下期:物品(固定資産・高額消耗品)の管理状況を確認)。
    • 業務効率化ワーキンググループによるコスト検証
       コストダウンを進める観点から、7月にワーキンググループを立ち上げ、検討対象として、全国シンポジウムに係る費用や技術開発委託費用をはじめ5項目の業務を選定し、コストの検証を行い、改善策を取りまとめた。今後、改善策が着実に実施されるよう継続してフォローしていく。
  • 3) 適切な人材確保と育成
    • 中長期視点に基づく人材確保・育成計画
       中期事業目標に基づき、事業の進捗を見据えた中長期視点から各部門が必要とする人材像を明確化するとともに、階層別及び部門別研修等について概要を定める等、人材の確保・育成に関する計画(中期人材育成計画(仮称))を検討した。
    • 人材確保
       新卒の職員(事務系2人、技術系2人)を採用し、即戦力となる専門性の高い職員(事務系1人、技術系1人)を中途採用した。また、翌年度以降、定期採用を確実に確保するため、学校内企業説明会等に参加した。
    • 各種研修の実施
       2015年度に引き続き、コミュニケーション研修(初級:9月、17人)(中級:11月、24人)を実施した。また、放射線基礎教育研修(7月、8月、99人)、コンプライアンス研修(2月、110人)を実施した。

1-4 拠出金の徴収

 2016年度の拠出金納付対象事業者は5法人であり、拠出金(103億円:第一種最終処分業務分45億円、第二種最終処分業務分57億円)を徴収し、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた。

2. 当該事業年度の理事会の開催状況及び主な議決・報告事項

 2016年度は、6回の理事会を開催し、経済産業大臣への認可・承認申請に関する事項等、機構の業務運営の基本的な事項について議決した。理事会の開催状況及び主な議決・報告事項は、次のとおりである。

  • 第72回理事会(2016年4月27日)
    • 職員給与規程の改定(案)
    • 2015年度業務執行状況及び今後の取組み
    • 機構業務に関連する最近の状況
  • 第73回理事会(2016年6月15日)
    • 2015(平成27)事業年度財務諸表(案)
      (添付書類:事業報告書、決算報告書、監事意見書、監査報告書)
    • 役員候補者の評議員会への提案について(案)
    • 監査報告
    • 評議員会による評価・提言の進捗状況について
    • 機構業務に関連する最近の状況
  • 第74回理事会(2016年7月20日)
    • 中期事業目標
    • 経営理念の見直しについて
    • 「業務の適正を確保するための体制の整備について」の決議について
    • 2015年度業務実施結果に対する評価・提言について
    • 2016年度業務執行状況及び今後の取組み
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第75回理事会(2016年9月20日)
    • 中期事業目標の決議について
    • 2016年度業務執行状況及び今後の取組み
    • 第4回リスクマネジメント委員会について
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第76回理事会(2016年11月22日)
    • 2017年度 事業計画策定の方向性について(案)
    • 2016年度業務執行状況及び今後の取組み
    • 第5回リスクマネジメント委員会について
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第77回理事会(2017年2月23日)
    • 2017(平成29)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • 2016年度業務執行状況及び今後の取組み
    • 第6回リスクマネジメント委員会について
    • 業務効率化ワーキンググループの活動状況について
    • 評議員会の評価プロセスについて
    • 評価委員会の委員選任について
    • 機構業務に関連する最近の状況について

3. 当該事業年度の評議員会の開催状況及び主な審議事項

 2016年度は、5回の評議員会を開催し、機構の運営に関する重要事項について審議した。評議員会の開催状況及び主な審議事項は、次のとおりである。

  • 第42回評議員会(2016年5月19日)
    • 2015年度業務実施に対する評価・提言(案)について
  • 第43回評議員会(2016年6月17日)
    • 2015(平成27)事業年度 財務諸表(案)
      (添付書類:事業報告書、決算報告書、監事意見書、監査報告書)
    • 中期事業目標策定の進め方について(案)
    • 役員の選任について(案)
    • 2015年度業務実施に対する評価・提言について
    • 2015事業年度監査報告書
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第44回評議員会(2016年9月15日)
    • 中期事業目標(案)
    • 業務執行状況について(NUMOの対話活動の取組み)
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第45回評議員会(2016年11月30日)
    • 2017年度 事業計画の方向性について(案)
    • 2016年度上期業務執行状況及び今後の取組み
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第46回評議員会(2017年2月21日)
    • 2017(平成29)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)について
    • 評議員会の評価プロセスについて
    • 評価委員会の委員選任について
    • 業務効率化ワーキンググループの活動状況について
    • 機構業務に関連する最近の状況について

Ⅲ.2016年度資金計画実績表

Ⅲ.2016年度資金計画実績表 Ⅲ.2016年度資金計画実績表

(お断り)
本事業報告書は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(第六十五条)に基づき、経済産業大臣の承認を得ておりますが、画像(写真)及びその説明は、承認を得た事業報告書には含まれておりません。