NUMOトップ  >  地層処分に関する技術開発  >  講演会・勉強会  >  米国・カナダにおける地層処分プログラムに関する講演会

米国・カナダにおける地層処分プログラムに関する講演会(2015年6月10日)について

 当機構では、2015年6月10日(水) に、米国エネルギー省ブルーリボン委員会(※1)において首席アドバイザーなどを務め、現在、米国ローレンス・リバモア国立研究所戦略顧問のトム アイザック氏をお招きし、「米国およびカナダにおける地層処分事業の現状(Recent Status of Geological Disposal Programs in the U.S. and Canada)」をテーマに、米国における処分場選定の歴史、カナダにおける開発計画、米国のブルーリボン委員会の報告書などについてご講演いただきました。アイザック氏は冒頭、「処分場サイトの選定が進んでいる国も、そうではない国もある。国により選定に向けたアプローチも異なるが、各国で成功した共通点が、日本にとっても参考になればよいと考えている」と述べました。

【講演会資料】

【講演要旨】
 米国における処分場サイト選定の経緯について
10~20万年に及ぶ放射能の危険性を日々監視することは期待できないため、ほとんどの国は、廃棄物を深地層へ処分する方法を考えています。

 米国では、放射性廃棄物の処分のために、「中間貯蔵施設」と「最終処分施設」の2つの施設が必要であるという前提から議論がはじまりました。
 1983年の放射性廃棄物政策法により、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)は地層処分すると決定し、1998年を目途に、2ヶ所の処分場候補地を選定、その後1ヵ所に処分場を建設することが計画されました。しかし、この計画により、政治的な対立や住民間の衝突などが生じたため、科学的判断が求められることとなりました。米国エネルギー省が、費用などの追加を条件に3ヶ所の候補地を決定したことや、議会による調査が政治的思惑で進められたため、プロセスは膠着状態となってしまいました。

 1987年の修正法により、ネバダ州のユッカマウンテンを唯一の調査実施候補サイトとしました。その後、ユッカマウンテンを最終処分地に決定し、建設許可申請の安全審査が行われていましたが、オバマ政権は計画を中止、ブルーリボン委員会が代替案を検討し報告書を出しています。

カナダにおける処分開発計画について
 カナダでは、カナダ原子力公社(AECL)により進められてきた使用済燃料の処分計画について、シーボーン委員会(※2)により検討が行われ、1998年に勧告が提出されました。その勧告では、地層処分概念の安全性は実証されているが、社会的な観点からは実証されていないとして、以下のような内容が示されました。

幅広い国民の支持を得る
先住民(アボリジニ)の支持を得る
他のオプションとのリスク、コスト、利益と比較した後に選択する
信頼できる規制当局や安定した信頼できる推進組織があること

 この結果2002年に、カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立され、計画の見直しが行われ、2009年にNWMOが廃棄物の地層処分による隔離、順応性のあるサイト選定プロセスの採用、可逆性と将来世代の選択肢を残すための回収可能性などを示した報告書をとりまとめました。これらの内容について、全国レベルで議論を行い、処分政策が決定しました。2010年から、サイト選定を開始し、21の自治体から関心表明があり、現在は、9ヶ所において調査や自治体との協議を実施しています。最終的には、1ヶ所か2ヶ所の候補地で詳細調査を行い、2035年頃に操業を開始する予定です。

〔提供:(公財)原子力環境整備促進・資金管理センター〕

米国のブルーリボン委員会報告書について
 ブルーリボン委員会では、将来の施設立地のために、8つの基本的な勧告を示しました。そのなかには、同意をベースとしたアプローチが重要、一定の独立性を持つ組織が必要、1つまたは複数の処分施設の開発に迅速に取り組む、操業開始までの貯蔵施設の必要性、活力ある研究開発のための長期的な支援などが含まれます。

まとめ
 処分事業を進めるには、オープンで透明性のある意思決定プロセスを公平性と社会的同意を尊重して進めることが必要であり、また、プロセスを変更したり逆戻りする可能性も残しておくべきだと思います。
 また、早く進めようとするならばなおさら、必要な時間を取りゆっくりと進めること、安全性は常に最優先されそのための技術的な配慮も重要、そして、地域の声を聞き、尊重し、応えていくことが地域社会との信頼関係を築くことになると思います。

【質疑応答】

    [1]
  • 質問)地層処分のような500mといった深度ではなく、深孔処分で直接処分するという考え方について、将来世代に様々な選択を残すといった観点の回収可能性の確保は困難だと思いますが、米国がこの選択肢を選択する可能性はあるのでしょうか。
    回答)深度3000~4000mの深孔に処分する方法については、回収可能性は考慮していないと考えます。私個人の考えでは、新しい概念の検討には2つの時期があると考えます。それは、初期の研究開発に取り組む美しい未来を夢見る時期と、費用などの課題に取り組む現実的な時期です。深孔処分については、現時点では、美しい未来を夢見る時期(現実的な検討にたどり着く前段階)にあると考えます。
  • [2]
  • 質問)技術的課題、不確実性、回収可能性などについてどう考えていますか。
    回答)メリットとデメリットの考えを持った様々な専門学者が必要です。我々は何をわかっていて、何をわかっていないのかを説明する義務があります。処分事業に携わる者は、信頼されなければなりません。講演でもお話したように、カナダでは社会の受け入れという点に関して、過去に大変な苦労をしたという経験があるため、NUMOは、「この人たちは信頼できる」と思ってもらえることが重要であると言っています。これは簡単なことではないですが、自ら責任を持ち活動する必要があるということです。
  • [3]
  • 質問)カナダでは、地層処分事業について全国レベルで色々議論をしたとのことですが、次世代へのメリットとは具体的にはどのようなことでしょうか。
    回答)カナダの基本的な姿勢は、現世代でこの課題を解決すべきだけれども、私たちは将来がどのようになっているか予測できないため、次世代が別の最善策を考えた場合、その考えを妨げないというものです。カナダが、次世代の選択肢を残すために回収可能性を取り入れることを検討したり、地域の方々に地域の将来像について継続的にご意見を聴いたりしているのは、次世代が求める価値を実現するため、事業を進める際に次世代の要望に応えられるよう柔軟性を持たせるためです。カナダは、こうした取り組みが次世代へのメリットになると考えています。
  • [4]
  • 質問)福島の子供達にとって、今は美しい未来を夢見る時期ではないのが現実です。福島の子供達が、未来を夢見ることをできるようになれば、メリットにつながると思います。そのようなアプローチの仕方を知りたいです。
    回答)福島のような状況においては、福島の人にただ事実を伝えるだけでなく、福島の人がそこで起こった事実を受け止めることができるように、福島の人たちに、何が起こったのかを丁寧に説明し、将来どのようになるのかを伝え、必要な支援を提供することなどが大切であると思います。その取組は、時に困難であり長期戦になると思います。私は、そのようなプロセスに対するロードマップを持っていませんが、私がお伝えできることがあるとすれば、信用と信頼を獲得するには基本に帰るのが大切であること、また福島の子供達が未来を夢見ることができるようになるまでには非常に長い時間を要するということです。
  • [5]
  • 質問)米国やカナダの経験から、どのようにすれば風評被害を防ぐことができると思いますか?
    回答)風評が広がる前に、「これは実はこういうことです。なぜなら理由はこうだからです。」と伝えることです。信頼を得るという事は、約束をしたらそれをすぐきちんとやる事です。風評を止める事はできません。ですから、風評を出している人を止めに行くのではなく、自分たちで活動を拡げ行動することが必要です。
  • [6]
  • 質問)公共事業で、地域の要望に応えた例があれば教えてください。
    回答)イギリス-フランス間の海底海峡トンネルの例があります。トンネル出口のデザインは、フランス側は普通のデザインですが、イギリス側は城塞のようなデザインになっています。「フランスからトンネルを通じて狂犬病を持った野良犬が渡ってくるのではないか」というイギリスからの不安に応えるため、そのようなデザインにしたと聞いています。

本講演会については、原子力産業新聞に、記事が掲載されています。こちらよりご覧ください。

    ※1
  • ブルーリボン委員会:
    米国において、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物管理のための安全で長期的な解決策を検討し勧告するために政府により設置された委員会です。
  • ※2
  • シーボーン委員会:
    カナダにおいて、カナダ原子力公社(AECL)の核燃料廃棄物管理および処分の考え方を評価するために政府により設置された委員会です。