地層処分技術について

2008年3月12日
原子力発電環境整備機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分について、これまで「地層処分の技術は確立されていない」などの報道がなされております。

皆さまの中にも、地層処分技術等について不安に感じている方がいらっしゃるかもしれませんが、原子力発電環境整備機構(以下、「NUMO」という。)としては、既に地層処分の技術的基盤は整備されており、現在の知見・技術で安全に地層処分できると考えております。

地層処分技術等につきましては、1976年以降研究開発等が進められ、1999年に、その成果が核燃料サイクル開発機構([現]日本原子力研究開発機構)により取りまとめられ、「わが国においても地層処分を事業化の段階に進めるための、信頼性のある技術的基盤が整備されたものと総括」しており、これを受けた国の原子力委員会も、この取りまとめを「地層処分の事業化に向けての技術的拠り所となる」と結論付けました。

では、なぜ、現在の知見・技術で安全に地層処分できるにも関らず、今もなお、地層処分の技術・研究開発が進められているのでしょうか。
現在進めている地層処分の技術・研究開発は、経済性や効率性の向上等を目指すとともに、安全に関する信頼性をより一層向上し、地層処分に対する皆さまの一層のご理解や信頼を得ることを目指して実施しているものです。

また、高レベル放射性廃棄物の処分につきましては、地層処分が最適な方法であることが世界共通の認識となっており、諸外国においても、確立した技術基盤に基づき地層処分事業を具体的に進めておりますが、その一方で、わが国と同様に、地層処分の技術・研究開発は続けられています。

以下に、地層処分技術の検討経緯や研究開発等につきまして、その概要を、ご説明申しあげます。

1. 地層処分の技術基盤は既に整備されています

わが国における高レベル放射性廃棄物の処分方策については、当面、地層処分に重点をおくとした1976年の原子力委員会方針を受けて、これ以降、動力炉・核燃料開発事業団(核燃料サイクル開発機構の前身)を中核として、関係研究機関が協力し、当面の対象とすべき地質環境を幅広く想定して進められてきました。

これらの研究成果を取りまとめ、国内外の専門家によるレビューを受けたものが1999年11月に核燃料サイクル開発機構([現]日本原子力研究開発機構)が発表した「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 - 地層処分研究開発 - 第2次取りまとめ - 」(以下、「第2次取りまとめ」という。)です。

「第2次取りまとめ」は、わが国における地層処分についての技術的な成立性と信頼性を提示したものであり、地層処分について、これまでの研究開発により、

  1. 「地層処分概念の成立に必要な条件を満たす地質環境がわが国に広く存在し、特定の地質環境がそのような条件を備えているか否かを評価する方法が開発された」
  2. 「幅広い地質環境条件に対して人工バリアや処分施設を適切に設計・施工する技術が開発された」
  3. 「地層処分の長期にわたる安全性を予測的に評価する方法が開発され、それを用いて安全性が確認された」

ことなどから、最終的に、「わが国においても地層処分を事業化の段階に進めるための、信頼性のある技術的基盤が整備されたものと総括」しています。

別紙-1 [PDF:190K] 

「第2次取りまとめ」を中心とした地層処分の技術基盤の整備等を踏まえて、国は、2000年5月に、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立し、同法に基づき、同年10月に、最終処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立されました。

以上のとおり、地層処分の技術基盤が整備されたことなどから、わが国においても、地層処分事業が開始されることとなったのです。

また、「第2次取りまとめ」については、国の原子力委員会においても評価しており、

  • ・原子力委員会の専門部会である原子力バックエンド対策専門部会が、約1年にわたり幅広く調査審議した結果、

    1. 「地質環境を選定するために必要となる調査手法や調査機器についても、その技術的基盤が整備されていると判断できる」
    2. 「現実的な工学技術により合理的に処分場を構築できる見通しが得られたものと判断できる」、また、「処分場の管理に関する技術的基盤は整ったものと判断できる」
    3. 「地層処分システムの安全性を評価する手法が整備されており、かつ解析評価の結果から地層処分の安全性が確保できる見通しが示されていると判断できる」

    ことなどから、「第2次取りまとめにおいて地層処分の技術的信頼性が示されていると評価」し、

    別紙-2 [PDF:191K] 

  • ・同部会から上記評価結果の報告を受けた原子力委員会は、「第2次取りまとめには、わが国における地層処分の技術的信頼性が示されるとともに、処分予定地の選定と安全基準の策定に資する技術的拠り所が与えられており、これが地層処分の事業化に向けての技術的拠り所となる」

    別紙-3 [PDF:195K] 

    と結論付けています。

2. 現在進めている地層処分の技術・研究開発は、経済性や効率性の向上等を目指すとともに、安全に関する信頼性をより一層向上し、地層処分に対する皆さまの一層のご理解や信頼を得ることを目指して実施しているものです

前述のとおり、地層処分の技術基盤は既に整備されており、現在の知見・技術で、高レベル放射性廃棄物を安全に地層処分することは可能ですが、今も、地層処分の技術・研究開発が続けられています。

これは、原子力委員会も指摘しているとおり、「高レベル放射性廃棄物の地層処分は、国民の理解と信頼を得つつ進められていくべきものであり、引き続き、第2次取りまとめの成果を踏まえた技術的課題や基礎的な研究開発の継続などを通じて、技術的信頼性をさらに向上させることに努めることが重要」という観点を踏まえて実施しているものです。

別紙-3 [PDF:195K] 

現在、地層処分の技術・研究開発については、原子力政策大綱に示されているとおり、

  • ・地層処分の実施主体であるNUMOは、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業の安全な実施、経済性及び効率性の向上等を目的とする技術開発を行う
  • ・日本原子力研究開発機構を中心とした研究開発機関は、深地層の研究施設等を活用して、深地層の科学的研究、地層処分技術の信頼性向上や安全評価手法の高度化等に向けた基盤的な研究開発、安全規制のための研究開発を行う

など、適正な役割分担の下で進めています。

別紙-4 [PDF:192K] 

また、地層処分事業が長期にわたるものであることなどから、技術・研究開発については、原子力委員会が「処分事業の進展に応じ、適切な時期に最適の技術が着実に提供されるよう」進める必要があるとの見解を示しています。

別紙-5 [PDF:195K] 

3. 諸外国においても地層処分に取り組んでいます

高レベル放射性廃棄物の処分方法について、数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけることができ、かつ、実現可能な方法を考えると、地層処分が最適な方法であることが世界共通の認識となっており、諸外国においても、処分の実施主体の設立や処分地の選定など、地層処分に向けた具体的な取組みが展開されています。
例えば、フィンランド、アメリカにおいては処分地が既に決まっており、スウェーデンにおいては処分場候補地の2ヶ所でサイト調査が進められています。

諸外国においても、確立した技術基盤に基づき地層処分事業を具体的に進める一方で、地層処分の技術・研究開発については、わが国と同様に、地下研究所などを活用して、処分技術開発実証研究や処分の安全に関する研究等を継続しています。

また、地層処分の研究開発等を効率的に実施するため国際協力も行われており、NUMOにおいても、各国の実施主体で構成される「放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)」に参画し、技術開発等について積極的に情報交換を行っています。

別紙-6 [PDF:195K] 

以上