国際講演会「ドイツの地層処分計画について」

国際講演会
「ドイツの地層処分計画について」

開催日:2016年12月16日(金)
場 所:TKP田町カンファレンスセンター2階

 国際講演会

NUMOは諸外国における放射性廃棄物の地層処分の取り組みについて、海外の専門家を招いてシンポジウムや講演会を開催してきています。今回、ドイツの放射性廃棄物処分の実施責任を有する連邦放射線防護庁(BfS)の委託を受けて実質的に処分事業を進めているドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)のボリエス・ラプケ社長をお招きし、講演会を開催しました。

ドイツでは、1979年にゴアレーベンにおいて、高レベル放射性廃棄物処分の候補地としての探査が開始されましたが、2013年のサイト選定法により、その探査活動は中断となり、白紙からサイト選定を行うこととなりました。

また現在、ドイツでは放射性廃棄物処分に関する組織再編や、放射性廃棄物の処分費用を確保する公的基金の設立などの法改正が行われています。ご講演では、ドイツの放射性廃棄物処分の取り組みと最近の法改正などについて、ご紹介いただきました。

当日は応募された約100名にご出席いただき、会場との質疑・応答も行われました。

以下に、講演の概要、講演資料をご紹介します。

>講演「ドイツにおけるDBEの放射性廃棄物処分事業に関わる経験」

ボリエス・ラプケ DBE社 社長

>質疑応答

当日の講演資料はこちら

 挨 拶

近藤 駿介(原子力発電環境整備機構(NUMO) 理事長)

2000年に法律で高レベル放射性廃棄物を地層処分することとなりNUMOが設立された。しかし、2007年に文献調査に唯一応募した東洋町がその後取り下げるなど、アプローチ手法に課題がある中、2011年に原子力発電所の過酷事故が起こり、原子力への信頼が失われた。このため、新たな政府の基本方針では、適地を科学的に見出せることを再確認し、地層処分への取り組みは現世代の責任とし、将来の回収可能性を担保し、協力いただく自治体に国民が感謝と敬意の念を持つことが大切と示された。

理事長

国は科学的により適性の高い地域(科学的有望地)を示す方針を定め、現在検討している。NUMOは、地域の皆様と少人数での意見交換会を開催しているが、科学的有望地の提示後も継続して、地層処分の重要性、安全確保、地域共生のあり方など、丁寧にご説明していく。
このたび、DBE社とNUMOが協力協定を締結するために来日したDBE社のボリエス・ラプケ社長より、ドイツにおける地層処分事業の現状や取り組みについて、ご講演をいただけることとなり、ラプケ社長には心から感謝する。

 講 演

「ドイツにおけるDBEの放射性廃棄物事業に関わる経験」

ボリエス・ラプケ

ボリエス・ラプケ(DBE社(ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社)社長)

ドイツの放射性廃棄物処分
ドイツでは1963年にすべての放射性廃棄物は岩塩層へ深地層処分する方針が出された。廃棄物は発熱の有無で分類され、70年代に旧東ドイツのモルスレーベンで非発熱性廃棄物の処分が開始されたが、現在は閉鎖予定で、今後は建設中のコンラッドに処分される予定。

発熱性放射性廃棄物には、英国やフランスに委託し、使用済燃料が再処理された後に返還されるガラス固化体の高レベル放射性廃棄物と、使用済燃料があり、1979年にゴアレーベンの探査が開始されたが、現在、探査は中断となっている。

2022年までに原子力発電をやめるという政策となり、2013年のサイト選定法では、これまでの発熱性放射性廃棄物用処分場のサイト選定の検討を白紙とし、新たに行うこととなったが、ゴアレーベンは今後の検討プロセスで候補の対象外と確定するまで、一部の坑道が維持されることとなった。

放射性廃棄物管理に関する国家計画

2011年EU理事会指令に基づき、2015年に放射性廃棄物管理に関する国家計画を策定した。概要は、放射性廃棄物を自国の責任で処分・管理する、2つの処分場を設ける(非発熱性放射性廃棄物用処分場のコンラッドと、サイト選定法により将来決まる発熱性放射性廃棄物用処分場)、定期的なレビューを行う、などである。現在の発熱性放射性廃棄物は、原子力発電所の使用済燃料を格納する貯蔵キャスク1100基、英仏から返還されるガラス固化体の貯蔵キャスク291基、研究炉からの使用済燃料の貯蔵キャスク481基。非発熱性放射性廃棄物は、2080年まで発生するものとして、廃止措置から300,000m³、アッセⅡ鉱山からの回収廃棄物200,000m³と、濃縮プラントから発生する劣化ウラン100,000m³。

KfK委員会と国の責任による放射性廃棄物管理

2022年までに原子力発電をやめるという政策を実現するために、脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会(以下KfK委員会)が設置され、今年4月に政府へ勧告が出された。事業者の健全なビジネスの維持や、国の責任による放射性廃棄物の管理の観点から、資金と施設の管理を国の責任とすること、及びそれに付随する体制の見直しや公的基金の新設を勧告し、現在法改正がなされている。

放射性廃棄物事業の所掌の見直しについては、以前はサイト選定のみ政府の所管であったが、今後は、事業者が廃止措置しパッケージングした廃棄物を、政府が輸送・貯蔵・処分を担う。

資金の見直しについては、現在事業者は、①中間貯蔵費用や処分場への輸送費;47億ユーロと、②処分場費用;125億ユーロを引当金として見込むが、これに加え、価格上昇や費用が算定できない項目等のリスクに備えるための予備費として、①②の総額172億ユーロの35.5%にあたる③61億ユーロを新設するよう勧告した。さらにこれらを公的基金とし、①から③の全額を事業者が支払い終えた時点で、その後発生する費用等は全て国の責任となり、事業者の債務負担はなくなる。事業者の中間貯蔵施設は、発熱性放射性廃棄物が2019年1月1日、非発熱性放射性廃棄物が2020年1月1日に国に移管される。

廃止措置の解体や資金管理は現状事業者の責任であり、試算額は④255億ユーロである。しかし、事業者のバランスシートによる引当金額は383億ユーロであり、①~④の総額488億ユーロに対し、約100億ユーロ不足する。その分を2022年の脱原子力までに7基でまかなう必要があるが、そのうち何基かは2020年までに廃炉予定である。現在、事業者から連邦政府への複数の訴訟があるが、政府は一部の責任を放棄することで訴訟を取り下げるよう事業者に要請し、関連法案が準備されている。

高レベル放射性廃棄物処分委員会の勧告と体制の見直し

Stand AG(サイト選定法)は、発熱性放射性廃棄物のための処分施設に関するサイトの調査・選定に関する法律で、100万年間の安全性に関する“最適なサイト”(Best Suitable Site)“を、科学的かつ透明性をもったプロセスで選定するとし、2013年7月23日制定された。今年、このサイト選定法を評価した、高レベル放射性廃棄物処分委員会から勧告が出された。勧告はサイト選定を3段階とし、第1段階は利用可能なデータによる検討、第2段階は適合基準を定め、2023年までに地上探査を実施し地下探査候補を2、3か所に選定、第3段階では2031年までに地下探査を行い、処分場サイトを選定、としている。また体制が見直され、処分施設の計画、許認可申請、建設操業の所管が、BfSから新たに連邦政府の100%所有の実施主体BGEに移る。Asse鉱山を管理するAsse Gmbhや、DBE社もBGEに統合される。

∗ BfS(連邦放射線防護庁)

∗ BGE(連邦放射性廃棄物機関)

新しい廃棄物管理機関・・・処分施設の計画、許認可申請、建設と操業を担当

DBE社

設立:1979年

年商:約1億4千万ユーロ

職員:約900名(技術系80%)

ドイツ国内の放射性廃棄物処分場の計画、建設、操業(ゴアレーベン、コンラッド、モルスレーベン)

DBEテクノロジー社

設立:2000年

年商:約6百万ユーロ

職員:約50名

ドイツの放射性廃棄物処分場以外を対象に、公的および民間組織の科学、技術およびマネジメントに関する能力の開発(各国の地下施設での研究開発、仏Cigeo プロジェクト等に協力)

<質疑応答>

質問1

講演資料P6の国家計画の要点として“2つの処分サイト”とある意味を教えてほしい。

ラプケ氏

‘70~80年代にコンラッド鉱山と決まっていた低中レベルの放射性廃棄物処分場と、もう一つはこれから選定する高レベル放射性廃棄物用の処分場の2つである。

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質問2

StandAGや処分委員会の活動に関する市民の認知度と、認知度向上の施策を教えてほしい。

ラプケ氏

当初のStandAGに関する活動は法律に基づき2013年半ばに終わった。長期にわたり30~40回もの会合が行われたが公開放送されていた。重要な点は協議の過程で、公衆の意見を募り参画を促しており、多くの意見があったわけではないが、意思表示できる機会が設けられていたことである。

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質問3

“100万年の安全性”と説明されていた点だが、100万年間地上に放射性物質が出てこないという意味か、または漏れても安全が担保されているという意味か、教えてほしい。

ラプケ氏

放出が一定レベル以下になるということが安全基準である。ゴアレーベンも同様である。完全に放出が0となることはあり得ないが、0に限りなく近づけるということである。

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質問4

“Best Suitable Site”とあるが、ゴアレーベンもそう思われ選ばれたと思うが中断している。同じやり方では、今後も中断ややり直しがあり得るのではないか。

ラプケ氏

処分委員会では何度も会合が行われ、“Best Suitable Site”についても議論された。幅広い意見を集める試みもなされたが、最終的には全ての意見やあらゆる側面を考慮した結論は出せないとわかった。但し、将来実際に作られる現場であり、公衆が理解する必要があり、次世代のことを考えようと言えば、反対派も同じ立場であり、より真剣に議論することができた。委員会は超党派や科学者、教会など様々な人で構成され、一般的な理解のもとで検討がなされた。

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質問5

2011.3.11の福島での事故をドイツの一般の方々は当時と今、それぞれどう思っているか。

ラプケ氏

事故を契機にメルケル首相が、複数の原子力発電所を止めると発表した。実際は津波と地震が原因だったにも関わらず、原子力事故で何万人も亡くなったという報道さえなされた。このような報道が国民に強くイメージされ脱原発の動きが高まった。

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質問6

“100万年間の安全性”について、教育現場ではどのように説明しているか。

フォン・ベルレプシュ氏(随行者、DBEテクノロジー社 国際部長)

体系的なアプローチはなく理科の先生次第である。環境省が教育用の資料を提供している。

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質問7

以前NUMOが主催したスイスのNAGRAエルンスト氏の講演で、スイスと日本の国民的合意形成の違いを質問したら、直接民主主義と間接民主主義と言われた。ここでNUMOの合意形成のあり方は間違っていると思うが、どう思うか。

ラプケ氏

スイスに関する個人的な見解としてひとつ言えるのは、ヨーロッパは原子力発電所を持つ小さな国が集まっており、原子力を支持するかは文化と心構えの問題と思う。スウェーデンでは2つの地域が最終処分場の候補を希望し、1つは選ばれ1つは却下された。スウェーデン政府は却下された地域に補償金を出しており、人の意識の違いというのがある。ドイツでは一時期、私の組織名をいうと、挨拶をしてくれないような感じで、ちょっと特殊な人だと思われる時期もあった。

 当日使用した資料

「ドイツにおけるDBEの放射性廃棄物処分事業に関わる経験」(57KB)pdf