フランスの放射性廃棄物管理機関ANDRA(アンドラ) アバディCEOによる講演会

フランスの放射性廃棄物管理機関ANDRA(アンドラ)のアバディCEOによる講演会

開催日:2015年11月12日(木)

 

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日仏原子力協議ご出席のためフランス放射性廃棄物管理機関ANDRAのピエール‐マリー アバディCEOが来日されたことに伴い、「フランスにおける地層処分産業センターの立地経験(French experience of siting Cigéo, geological disposal facility project for high-level radioactive waste management)」をテーマにご講演をいただきました。

ご講演では、フランスにおける地層処分の進捗状況について、(1)調査研究段階、(2)事業化を控えた現在の段階、(3)将来を見据えた今後の展開、(4)地域への情報発信、対話活動と振興・共生の取組みの4テーマでご説明いただき、ANDRAが積み重ねてきたこれまでの取組みと今後の課題などについて分かりやすくご紹介いただきました。

ご講演につづき、ジャーナリストの崎田裕子氏と近藤理事長も加わって、経済波及効果や地域から信頼されるための取組みなどについて、アバディCEOにお話しを伺い、さらに会場の方々からもご質問をいただきました。

 

>アバディCEO講演要旨
>鼎談(同CEO、崎田裕子氏、近藤理事長)および会場からの質疑応答
>講演会資料
>参考

 

 アバディCEO講演要旨

 

(1)調査研究段階
我々ANDRAは1991年の設立以来、調査研究段階から現在の産業化段階まで25年にわたりプロジェクトを進めてきました。その長い期間において、地域・国レベルのステークホルダーとの関わり、漸進的で透明性のあるロードマップ、多くの研究機関との連携が必要でした。

まず、ステークホルダーについてです。我々は国や地方の関係者だけでなく、廃棄物発生者、研究開発機関、NGO、地域住民といった様々なステークホルダーと関わっています。特に重要なのは、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)、原子力安全機関(ASN)、国家評価委員会(CNE)といった我々の業務を科学的観点から評価するレビューワーです。このように、政府の監督の下で恒久的な機関と議会の明確な関与が必要であったということが、最初にお伝えしたいことです。特に議会の関与は重要であり、その支援は強力なものでした。

次にロードマップについてです。我々は1991年にロードマップを公表し、これに従って2~5年ごとに設定した段階ごとに25年間にわたり、レビューワー、意思決定者、安全当局と協議を行ってきました。この明確なロードマップと段階的なアプローチなしに、事業を進めることはできませんでした。

そして、他機関との連携なしに事業を進めることもできません。地層処分は、地質学、科学、原子力科学、そして産業技術的側面があり、これら全ての知見を統合する必要があります。そのため我々は、原子力・代替エネルギー庁(CEA)や地質・鉱山研究所(BRGM)といった他機関とのネットワークを活用しながら、研究・開発・実証を実施しています。

 

次に我々のサイト選定の経緯についてです。1991年に研究を開始した当初、4サイトを対象としました。研究の結果、我々は粘土層のビュール地下研究所に研究を集中することにしました。その後、2005年に地層処分の実現可能性を実証するフィージビリティ報告書を作成し、公開討論と議会における審議の末、ビュール地下研究所周辺250km2の区域を候補サイトとして選定しました。そして、2005年から2010年の間、地質調査を行うとともに、地域のステークホルダーや住民と議論及び対話を進め、その結果対象区域を30km2に縮小し、地下施設及び地上施設の位置の選定を行いました。現在は、基本設計を終え、詳細設計の段階まで進んでいます。 このように、これまで我々は漸進的なアプローチによりサイト選定を進めてきました。今後も、地下研究所を活用して段階ごとにより多くの知見と情報を蓄積し、その結果を追加研究の実施や設計の修正にフィードバックするという、反復的、漸進的なアプローチで事業を進めていきます。

 

(2)事業化を控えた現在の取組み
andra_r_161112_04.jpg現在、我々の地層処分プロジェクトCigéoは詳細設計の段階に入っており、ANDRAの350人の従業員のうち300人がCigéoに専念しています。また、我々は協力企業(エンジニアリング会社)にも業務を委託しており、350人がプロジェクトに従事しています。現在、地下研究所、設計研究費も含めた事業費は2億2千万ユーロです。

次にプロジェクトの全体像ですが、地上には、廃棄物の受け入れ・検査等を行う原子力施設、建設作業のための複数の立坑等の非原子力施設の2つの施設があります。地下には、長寿命中レベル放射性廃棄物区画、高レベル放射性廃棄物区画とそのパイロット区画、廃棄体の受け入れ区画などのいくつかの区画があります。廃棄物の取り扱いは高度に自動化されており、多くのロボットや遠隔操作装置が使用されています。地上の受け入れ施設から地下500mに降りるための斜坑(4.5km、12%の勾配)は、火災リスクを検討し、ケーブルカーを使用することにしています。また、廃棄物の定置と回収も完全に自動化されています。

 

(3)将来を見据えた今後の展開
現在は、2018年予定の事業許可申請に備え、詳細設計の段階に入ったところです。許可申請、許可を得て、建設を開始し、2025年にはパイロット操業、2020年代後半には最初のパッケージの処分を開始します。このように、操業に向けたプログラムは漸進的なものとしています。

さらに、その後の閉鎖に向けたアプローチも経済産業機構原子力機関(OECD/NEA)が第1段階から第6段階に分類したように漸進的であり、それに応じて回収可能性が失われる(費用が増加する)のも漸進的なものとなります。つまり、段階ごとにその世代が次の段階に進むのかどうかの判断を行いますので、最後の閉鎖の判断は4、5世代後が行うことになります。しかし、そのような将来の判断を現世代が実施することは合理的ではありません。したがって、現世代は、各段階における選択の自由を将来世代に残しておくために、取りうる全てのオプションを残しておく必要があります。

廃棄物の回収技術は、我々が残すべきオプションに幅を与えるツールの一つです。これにより、我々のプロジェクトはスケジュール、設備の側面から柔軟性を持つことができます。現世代は、このようなツールを準備する一方、その費用については、その選択をする将来世代が負担しなければなりません。なぜならば、現世代の我々のプロジェクトは、最終的に受動的安全性を確保する唯一の方法である地層処分を実施することだからです。

このような考え方のもとに、我々はCigéoの計画を進めています。具体的には、2025年からの第1建設段階を産業化パイロットフェーズと呼んでおり、その間、追加情報や操業経験を蓄積します。それらを踏まえ10年後には処分場の本格操業に関して議会と協議を行います。つまり、遠い将来を議論するのではなく、その段階で得られた情報を提供することで今日の我々の決定内容に安心感を持っていただき、次の段階への協議をすることが重要と考えています。

 

(4)地域への情報発信、対話活動と振興・共生の取組み
住民やステークホルダーとのコミュニケーションについて、3つの課題があります。

第1に対話によって説明を行うこと、第2に意思決定に際して助言を求めること、第3にプロジェクトへの参加を促して協働してプロジェクトを進めること、です。

第1は、対話です。まずは、住民やステークホルダーと会って話すことです。我々は、相手の関心事に耳を傾けて適切に応えること、一方通行のコミュニケーションではなく意見交換の精神で対話を重ねること、を大事にしています。

第2は、意思決定において住民やステークホルダーの助言が必要ということです。地域中心による地域のためのプロジェクトを行うため、関心を持つ様々な団体の助言を得て意思決定できるようにしています。

まず、我々は住民やステークホルダーとのコミュニケーションや対話のために必要なツールを検討する前に、ステークホルダーを3つの団体群に分類しました。そして、それぞれの団体に対して効果的なツールを、漸進的なプロジェクトの段階に応じて準備してきました。例えば、情報発信ツールとして、地域の行政向けの月刊ニュースレター、地域住民に郵送する季刊情報冊子などです。さらに、ウエッブサイト、研究所への見学者受け入れや移動展示車による情報提供、メディアによる情報発信も行っています。

第3には、地域への溶け込みです。地域住民とともに地域の将来に向けた準備を進めながら、地域の1つの産業としてプロジェクトを進めるためには、地域の日常生活に深く関わっていく必要があります。そのため、地域住民参加の講演会の開催、地域住民の雇用や地域内で物資等の調達を行っています。また、地域住民と一緒に狩りを行うなど、地域の人々の暮らしにも参加します。

我々は、これら3つのコミュニケーションを行いながら、意思決定において、地域の代表者、住民と協議し、連携して進めてきました。例えば、我々が選んだ場所は、周りにはほとんど人が住んでおらず、全く何もない場所でした。産業、施設、公共サービス等もありません。そのため、我々は地域の代表者や住民とともに、漸進的にインフラなどを整備してきました。今後、我々は地域の1つの産業として、職業訓練、産業発展、インフラの発展等を支援することにより、地域とより深く関わっていきます。

 

最後になりますが、このプロジェクトは、地域、国レベルでの長期のコミュニケーション、対話が必要となっています。我々は、今後、最後の課題である産業化の段階に本格的に入っていきますが、段階的に改善、改良を重ねていきます。プロジェクトは、地域にお願いして始まったプロジェクトから、地域とともに作っていくプロジェクトへと変化を遂げているのです。

 

 鼎談(同CEO、崎田裕子氏、近藤理事長)および会場からの質疑応答

 

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質問1 崎田氏

[1]本日の講演を拝聴して、フランスでは確固とした仕組みを整備し、地域と対話するだけでなく、しっかり地域と共生して行く様な視点を明確に持っていることが印象的でした。日本ではこれからになりますので、地域とどうやって関わって行くかについて質問したいと思います。

 

[2]2009年にビュール研究所を視察させていただいた際に、地域のいろいろな方にお話を伺いました。その時、地域社会の様々な課題を解決するための取り組みとして、老人ホーム、薬局、保育所ができるなど地域の生活環境が徐々に整えられていったこと、そのことでポジティブな感想を持っている方が非常に多かったこと、に感銘を受けました。こういった地域社会の生活基盤の向上、地域の将来に対してANDRAはどの様に取り組んできたのでしょうか?また、これは政府の取り組みになりますが、フランスにはGIP(公益事業共同体)という仕組みがあり、地域の将来に対してきちんと取り組む動きがあると聞いています。そういった動きにANDRAや政府はどの様に取り組んでいるのでしょうか?

 

アバディCEO)

[1]地域との「対話」にあたっては、コミュニケ―ションの仕方や内容を事業のステップ毎に適応させていくことが重要です。我々は当初、研究所周辺に設置された地域の委員会におけるコミュニケーションに焦点をあてていました。現在、我々は産業的段階に進んでいることから、それに見合ったコミュニケーションが求められます。また、我々はコミュニケーションにおいて事業の全体計画を示しています。これは言わば「仕掛中」なものであり、過去の経緯や決定内容を踏まえ、今後どういった段階でどの様な決定をしていくか、地域住民とコミュニケーションを取りながら、順次修正して行くことで、地域住民の期待と懸念に対処することができます。

 

[2]フランス政府は、事業への参画を表明した地域のサポートのため、GIPを設置し、助成金を交付することを決定しました。助成金は、政府がその金額を決定し、廃棄物発生者が負担し、県が管理しています。具体的には、道路だけではなく学校などの公共施設、公的サービス等のインフラ整備に使用されています。 一方、地域の振興・発展の計画については、様々な能力を持つ人材の力を合わせる必要があることから、フランス政府、県が調整において強い役割を担っています。我々も地域に直接的に影響を与えるステークホルダーとして、「段階ごとにどのような雇用が発生するのか」「地域住民を雇用するためにどのような職業訓練が必要なのか」「どのように地域企業の能力を上げ、関連企業として育てていくのか」「どのようにインフラを整備していくのか」といった役割を担っています。

 

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質問2 会場

日本では風評被害が問題視されるがフランスではどうでしょうか?また、日本においてはどのような対策をとるのでしょうか?

 

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アバディCEO)

地域には高い期待と懸念があるという話をしましたが、まさにこの質問と直結しています。我々のサイトも農業地帯にあり、農業製品の評判に懸念が生じる可能性がありました。我々の地上施設はオーブ県にあり、ここはシャンパンの生産地のすぐ近くです。そこで、シャンパン生産者に定期的に回って、安全性や農作物へ影響がないことを説明しています。また、風評被害があれば、それに対処する準備もできています。さらに、処分実施の前の、地上施設での約25年間の運営実績も、地域への安心の提供につながると考えています。

 

近藤)

NUMOとしても、風評被害は重要な問題として捉えています。現在は、サイトが決まっていないことから具体的なことは申し上げられませんが、六ヶ所村の再処理工場を参考例として、我々としても対応できるものと考えています。いずれにしましても、その問題の存在を理解し、地域の皆さんと十分話し合って、取るべき対策を考えていく、ということを基本方針としています。

 

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質問3 崎田氏

現在、日本ではフランスの地域情報フォローアップ委員会(CLIS)の仕組みに注目しています。ANDRAはCLISに対して情報を提供して行く立場だと思いますが、CLISの場で地域との共生の話などをする機会があるのでしょうか。

 

アバディCEO)

情報提供は非常に重要です。危機が発生してから組織を設立するようであってはなりません。ビュールはまだ原子力施設ではないのですが、CLISが設置されています。目的は、研究を監視し、安全性、研究の進展、地域への影響、地域の発展といった課題に対応することです。地域に根差し、定期的に会合を開き、報告や情報提供・交換を行います。また、国レベルでは、原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)があります。

 

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質問4 会場

4つの候補地から1つの研究所を選んだということですが、どのようにしてその根拠を説明したのでしょうか。複数の基準があったのであれば、それら複数の基準の中でどのようにバランス、調整を取り、それをどのように説明したのでしょうか。

 

アバディCEO)

フランスでは、80年代末に政府主導で地質調査に着手しましたが、地元の反対のため失敗しました。その経験を踏まえ、我々は広く公開しながら岩盤調査を行ってきました。この調査の中で、花崗岩については、我々が必要な面積を確保できないこと、政治的な反対があったことから、粘土層に集中することにしました。その後、南フランスの粘土層については、その深度が深いためにコストがかかりすぎることと気候変動等といった科学的な理由、さらに政治的な反対により選定しませんでした。

 

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質問5 近藤

今、ANDRAは他のカテゴリーの廃棄物(低レベル放射性廃棄物)の処分場を探していますが、これにはかなり時間が掛かっている様に思います。なんらかの問題があるのであれば教えてください。

 

アバディCEO)

25年もかかったのはなぜかと言う質問と思います。25年を掛けることを無駄だと感じる人もいるかと思いますが、我々としてはその時間が無駄だったとは考えていません。2~5年ごとのロードマップを整備し、議会、国民、レビューワー等と討議をしたうえで、次の段階に移行します。このように一歩一歩進んでいくことが大事なのです。時間を無駄にするのでもなく、プロジェクトを急速に進めるのでもなく、段階的に着実に進めていくことが重要なのです。

 

 

 講演会資料

 

フランスにおける高レベル放射性廃棄物管理のための地層処分施設プロジェクトCigéoの立地経験 PDF

 

 参 考

 

*ANDRA(アンドラ)とは、情報交換、施設訪問、共同研究、人事交流等の協力に関する協定を結んで、適宜、交流を進めています。 詳しくは、こちら

 

*また、ご参考に、日仏の政府間の最近の動向を紹介します。

・「原子力エネルギーに関する日仏委員会第5回会合」が、2015年11月10、11日に東京において開催されました。その中で、10月に行われた日仏首脳会議での協議の際の「原子力分野における日仏協力の状況と展望に関するファクトシート」が引用されています。

 

・「ファクトシート」では、廃棄物の最終処分に関して以下のように記載されています。日仏両国は、地方自治体や市民社会に十分配慮しつつ、放射性廃棄物の最終処分場の場所を特定し、建設、運転することを長年の政策としてきた。両国の実施機関であるフランス放射性廃棄物管理機構及び原子力発電環境整備機構は、長年にわたり関係を築いてきた。フランスの最終処分場候補地であるビュールは、日本の政府関係者や専門家を数多く受け入れている。日仏両国は、この分野における成熟した協力及び情報交換を継続することにコミットしている。詳しくは、こちら