国際セミナー「地層処分の安全性に関するコミュニケーション」

国際セミナー
「地層処分の安全性に関するコミュニケーション」

開催日:2016年6月2日(木)

 kokusai_0602_01.jpg

地層処分を進めていく上では、その安全性について国民や地域の方々にご理解をいただくことが不可欠です。これまでの全国の皆様との対話活動の場においても、安全性への関心が非常に多く寄せられてきました。今回はこうした関心に応えるべく、"安全性"に関するコミュニケーションということに焦点を当てました。高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力を利用してきた全ての国に共通する課題です。各国の技術者・研究者はどのような対話活動を行ってきたのでしょうか。諸外国の経験から学び、今後の活動に生かすため、各国における地層処分事業の技術開発等に長く携わってきた専門家をお迎えして、地層処分に関する国際セミナーを開催し、150人の参加をいただきました

 

このページでは、基調講演・パネルディスカッションの概要・当日の模様(動画)をご紹介します。

 

>開催挨拶および日本の状況説明
>ショートプレゼンテーション
>パネルディスカッション
>当日の模様(映像)
>当日使用した資料

 

 開催挨拶および日本の状況説明

 

「日本の地層処分計画の最新動向」
近藤 駿介(原子力発電環境整備機構(NUMO) 理事長)

 

近藤理事長

開会挨拶に引き続き、日本では地層処分の実現に向けて、2015年に国の最終処分に関する基本方針が改定され、2016年中に処分場の立地適性の高い地域(科学的有望地)の提示を目指して、地層処分の重要性や安全確保の考え方に関する対話や国民理解の醸成等の取り組みが行われていること、そこでは地層処分の安全性に関する質問が多いといった状況等を説明しました。そこで、この国際セミナーで、NUMOの技術アドバイザリー委員会に出席のため来日された各国の専門家の皆様に、地層処分の科学的・技術的課題、特にその安全性に関する一般の方々との対話に関する各国の経験を伺い、会場からの質疑に対する回答を含む意見交換を行なうものとして企画したことを紹介し、日本でのサイト選定プロセスにおける対話活動に役立てたいと述べました。

 

 ショートプレゼンテーション

 

パネルディスカッションに先立ち、各国の専門家から、「安全性に関するコミュニケーションにおける専門家の役割」に関して、それぞれの国における取り組みについて、ご紹介いただきました。

 

「安全性コミュニケーションにおける技術的専門家の役割に関するスウェーデンの視点」

ヨハン・アンダーソン(スウェーデン/SKB 核燃料部解析ユニットヘッド)

 

ヨハン・アンダーソン氏

将来の原子力利用の有無に関わらず、既に放射性廃棄物は存在し、その管理は我々の使命です。このために地層処分を進めるには、まず人々の心配の理由を理解する必要があり、地域住民や政治家、メディアと継続的な対話活動を行い、信頼醸成を図ることが重要と述べられました。

特に処分場閉鎖後の安全性に関するコミュニケーションは、技術的な安全性の説明、例えばキャニスターの腐食対策や評価、地震時の影響評価結果が規制値に比べ十分低いなどの説明も必要だが、同時にメッセージやメッセンジャーが信頼されていることも重要であると指摘されました。公衆との対話においてSKBでは、コミュニケーション部門が人々の心配や関心事項を確認し、専門家がプレゼンテーションを行うこと、またメディア対応ではコミュニケーション部門が活動すべき地域の特定やメディアのフォローを行い、コミュニケーション部門が報道官として適切な技術的専門家を選任し、専門家が情報発信をしているとのことでした。安全コミュニケーションにおいて技術的専門家が情報を発信することは、信頼と真剣さを伝える非常に重要な要素であり、コミュニケーション教育も行っているが、すべての技術的専門家が「コミュニケーション能力」を持っているとは限りません。そこでSKBには25名のコミュニケーションの専門家がおり、技術的専門家への教育や、技術的専門家とともに情報発信を行っており、このような取り組みにはコミュニケーションのプロの支援が不可欠であるとされました。

 

line.gif

「放射性廃棄物地層処分の安全性に関するコミュニケーション」

イリーナ・ガウス(スイス/ NAGRA研究開発総括プロジェクトマネージャー)

 

イリーナ・ガウス氏スイスのサイト選定では、3段階の段階的アプローチをとっており、各段階で適切な研究開発を行うとともに、意思決定プロセスのあらゆる段階で、重要な質問に対し既存の知識に基づき明確に答えることを重視していると述べられました。安全確保の柱は、安定した地質環境(十分な深さ、安定した地質、有用な資源がない等)、優れた母岩であるオパリナス粘土の特性、適切な工学バリア、システム全体において好ましい特性、優れた調査やシステム予測を挙げられました。NAGRAのコミュニケーション手法は、広告や書籍といった一方向のものが70%、世論調査やFAQなど傾聴が5%、展示やフォーラムなど双方向の手法が25%とのことでした。スイスは日本同様、国土が狭くどこでも住民が近隣にいるため住民の関与は大きく、地域との対話においては、その基礎となるステークホルダーグループの構築も重要であり、国レベルの支援、建設的態度も必要であること、これらには技術的専門家も多く関与していることが紹介されました。長期安全性に関するコミュニケーションにおいては、長期にわたって専門性、透明性、独立性、一貫性を継続して示すこと、また明確な法的枠組みの必要性、地下研究所を視察し実際に地層処分場のなんたるかを体験していただくことの重要性の指摘もいただきました。

 

line.gif

「放射性廃棄物の地層処分の安全性に関するコミュニケーション:フィンランドの経験」

ユハニ・ビラ(フィンランド/元Posiva 理事))

 

ユハニ・ビラ氏環境影響評価やパブリックヒアリングののち2001年にフィンランド議会がKBS-3方式(使用済燃料、キャニスター、緩衝材および地層により多重バリアを構成する地層処分概念)によって使用済燃料をオルキルオトに地層処分するという「原則決定」を可決しました。そこに至る住民との対話活動は、サイト調査の初期段階では人々に調査目的や内容を直接会合で伝えるものだったが、その後、対話を通じて人々の心配事を理解していく活動に変わっていったことが紹介されました。放射性廃棄物の問題の解決策を見出そうという本来の建設的な対話の実現には参加のための肯定的な動機づけが必要であり、有意義な対話とは当事者が信頼できる専門家と相談でき、等しい位置にいると感じることのできる当事者間で成り立つものであること、良い対話に決まった答えはなく、また絶対的リスクの議論は難しく相対的リスクは把握されやすい、などの経験が紹介されました。

 

line.gif

「放射性廃棄物の地層処分に関するコミュニケーション」

シルビー・ボワニス(フランス/ ANDRA Cigéoプロジェクト核安全担当副部長))

 

シルビー・ボワニス氏

高レベル放射性廃棄物や中レベル長寿命放射性廃棄物の地層処分プロジェクトCigéoの取り組みにおいては、安全性の説明ツールはウェブや出版物、報告書と様々だが、初心者向け、中間層、専門家向けと分けていること、また説明する専門家は一般の方にわかりやすい説明を考慮する必要があること、一般の方は閉鎖後より操業中の安全を懸念していることも認識して説明を行う必要があることなどを紹介いただきました。また透明性確保の観点では、毎年公開イベントを行い安全の専門家からも説明し、多くの疑問に答えていること、メディアへは信頼できるスポークスマンから説明している旨、説明がありました。Cigéoプロジェクトでは2014年に公開討論が行われ、公開討論で得られた一般の方からの期待や意見を考慮して、操業開始時にパイロット操業フェーズを組み込むこと、定期レビューの実施、スケジュールの見直し、市民の更なる参画など、方針が見直され、住民の意見を取り入れつつプロジェクトを進めていることが紹介されました。

 

line.gif

「閉鎖後安全性のための技術的コミュニケーション:米国の事例」

エリック・ウェッブ(米国/サンディア国立研究所 地科学研究応用部長)

 

エリック・ウェッブ氏 地層処分の安全性を市民に伝える際に重要なことは、各サイトの地質はそれぞれ異なっており、主な被ばく経路を特定することと、その経路に関しわかっていることと不明な点を科学的に明示することであり、米国のWIPP(廃棄物隔離パイロットプラント)では石油やガス、カリウム鉱石の採掘に伴う人間侵入のリスクがあり、使用済燃料の処分場プロジェクトYMP(ユッカマウンテンプロジェクト)では、地下水による被ばくリスクがあることをきちんと示した旨、説明がありました。米国では、事業フェーズによりコミュニケーションの責任者が異なり、WIPPでは、事業許可申請前はそれを提案する責任を担っているDOE(米国エネルギー省)がコミュニケーションの責任を負っており、申請後はそのサイトを受容する、合意するということでEPA(米国環境保護庁)がコミュニケーションの責任を担うとのことです。YMPでは事業許可前はWIPPと同様、DOEがコミュニケーションの責任者ですが、許可申請レビュー時はNRC(原子力規制委員会)が責任者であり、現在移行の段階にあり、それぞれのHPで連携を図って情報が飛ぶようなリンクが張ってあるとのことでした。規制当局はその決定の正当性に関してコミュニケーションの責任を有していると紹介されました。

  

line.gif

「安全性についてのコミュニケーション:国際的な観点」

イアン・マッキンレー(MCM コンサルティング 共同経営者)

 

イアン・マッキンレー氏国際的には、IAEA(国際原子力機関)、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)およびEC(欧州委員会)という主な3つの組織が協力して、地層処分の安全性についての国際的合意に関する出版物を出す中で、地層処分の安全確保の考え方を説明してきており、様々な処分のコンセプトを対象にコンセンサスを構築していることが紹介されました。これら組織によるコミュニケーションの仕方はいろいろありますが、長期間にわたる安全性を説明しなければならないので、数学的なモデルを用いそれの理解を示すとともに、それを科学的に支えるための地下研究所での試験や、いわゆるナチュラルアナログといわれる自然界の天然のガラスや天然原子炉の事例を踏まえて長期的な安全性を説明していくこと、またそれらを用いた信頼性のあるセーフティケース(安全性を提示するための論拠を体系化したもの)の構築と、その国際レビュー等が必要であるとのことでした。国際機関によるコミュニケーションのアプローチとしては、専門家を集めて知見を共有する専門家会合や、一般の方やメディア対象に作られた出版物やWEBページもあり、また各メディアにあったメディア向けのセミナーも重要と考えていることが述べられました。各国のプログラムは同じではなくとも、コミュニケーションでは協力できる点がたくさんあり、国際機関としてもいかにコミュニケーションするかという教育活動にも力を入れていると紹介されました。

 

 パネルディスカッション

 

【テーマ1 処分場閉鎖後長期の安全性について】

 

-国際的な議論について
パネルディスカッション 布目
処分場閉鎖後の長期安全性の議論を始めるにあたり、廃棄物を人間の管理下から地層の閉じ込める能力に託すということに不安を感じる方もいますが、長年、地層処分に携わっているマッキンレー氏に国際的な議論や考え方をお伺いします。

 

マッキンレー氏
40年以上この分野に携わり、放射性廃棄物を安全に地層へ処分することに自信を深めていますが、これに関心のある人々の質問に答えるのは難しいものです。非常に長い間、自然なシステムによって廃棄物を閉じ込めてもらうわけですが、日本は地震活動等により処分場が損傷する可能性があり長期保管は難しいと思われるかもしれません。しかし、そんな日本にも数千年も地層が安定している事実として、東濃のウラン鉱床があるわけです。安全に関する対話の際は、このようなナチュラルアナログの説明も有用であり、こういう質問に答えていくことが今後重要な意味を持つと考えています。

 

-地下の安定性について
布目
地下の安定性についてフィンランドではどのように説明していますか。

 

ビラ氏
フィンランドの岩盤は非常に長い間安定しており活火山もなく、地震も限られています。一万年前は氷河期であったため将来氷河期が処分場にどう影響するかの説明が重要と考え、1980年代にグリーンランドで大陸の氷床の影響を検証したところ、その影響は限定的であったため安全性は問題ないと考えられています。更に氷河期を考慮した設計によりリスクを低減できると考えています。

 

布目
フランスでは地下研究所と同じ地質環境に処分場を建設すると伺いましたが、地下の安全性をどのように説明されていますか。

 

ボワニス氏
地下研究所は粘土質の岩盤層にありこの地層は30km2圏内で均一であることも調査でわかっており、同じ地質に建設する処分場も地下研究所と安定性は同じであると説明しています。

 

-地震について
布目礼子布目
スウェーデンでは地震に関する対話もしていると伺いましたが、一般の方の懸念とそれに対する説明について教えてください。

 

アンダーソン氏
地震の影響について不安に思う人もいます。ただスウェーデンでの地震は限定的で内陸での氷解が原因と言われています。このため地震を考慮した設計も考えており、対話する際は地震を理解した上でお答えするよう心がけています。

 

-火山について
布目
米国のユッカ・マウンテン周辺には過去に活火山があったと伺っていますが、米国では火山の懸念に対しどのように説明していますか。

 

ウェッブ氏
ユッカ・マウンテンの岩盤は古代の火山活動による火山灰が堆積したものです。NRCの支援により、許容されるリスクレベルが確立され、その結果、リスクが非常に低いとわかりました。古代の火山にも立地可能ということです。物理探査によりサイト特有の情報や岩石の年代評価もできますし、工学的設計により更にリスクを低減できます。これらより、許容できるほどの小さなリスクであると示せました。これは日本と同じような事例だと思います。

 

-人工バリアについて
布目
地層処分は、安定な地質環境と人工バリアの組み合わせで安全性を説明しますが、各国では人工バリアの安全性をどのようにご説明していますか。

 

ガウス氏
人工バリアの性能が大きく影響するということです。人工バリアの評価研究は40年前から国際的規模で行われ、ベントナイトの腐食率の推定等が実施されました。次に重要なのは地下研究所です。初期は小規模実験でしたがその後、18年間、実物大での人工バリアの性能試験を実施し、サンプルを20の国際的研究所で分析・評価しました。現在はモンテリで15年~20年かかる実物大の実験を実施中です。数十万年ではないですがこのような長期的実験を国際レベルで協力して行い、バリア性能の予測をできるだけ最適に行おうとしています。

 

布目
スウェーデンのKBS-3でのご説明はいかがでしょうか。

 

アンダーソン氏アンダーソン氏
多重バリアの原則はKBS-3でも重要な概念です。使用済燃料の溶解性が低いこと、キャニスターの強度や耐食性、ベントナイトによる外部事象から保護機能などがあります。私もアドバイザーとして日本の高レベル放射性廃棄物のプログラムを見ており、この多重バリアが高レベル放射性廃棄物および使用済燃料に対しても有効であり、最適な人工バリアと安定した地層による天然のバリアにより、非常に安全な処分システムが可能と考えています。

 

布目
スウェーデンではエスポの地下研究所で得られた成果を人工バリアの説明にどのように活かしていますか。

 

アンダーソン氏
様々な実験が行われており、特にベントナイトの短期的な挙動確認として、熱影響や銅の腐食への影響等の実験では相当のデータを得ています。これら小規模から実物大の実験結果を示すことで、かなりの信頼性を構築しています。

 

-安全評価について
布目
地層処分の長期安全性は実証が難しくシミュレーションも活用することになりますが、安全評価の専門家のボアニスさんはどのようにご説明していますか。

 

ボワニス氏
数値シミュレーションは有用なツールですが、唯一の根拠ではなく、我々の報告書でも最後にあるのみです。ボワニス氏やはり多重バリアに係る論理的なプロセスの説明が重要です。まずは様々な構成要素でバリアが成立ちその機能を説明し、そして非常に堅牢な粘土層の地層について説明します。その上で廃棄物の特性に応じた人工バリアの設計について説明します。数値シミュレーションを行う前にそれぞれのバリアの研究を行い、それらより最新の知見を用いてシミュレーションの前提を作るのです。また報告書にはある知識に基づいた設計であると記述しておくことです。またそれだけが安全指標ではなく追加的安全指標も重要です。数値の算出根拠も重要で、それらが安全性評価の信頼性につながります。

 

布目
ビュール地下研究所では安全評価データの採取も行っていますか。

 

ボワニス氏
粘土質の形成に関する議論の根拠となるデータ収集や工学的な試験等、様々な活動を行っています。また地下研究所に加えて地上施設でも試験を行い、これらを組み合わせて評価しています。

 

布目
スイスでは長期的な安全評価の結果についてどう説明されましたか。

 

ガウス氏
報告書は非常に分厚くそれで説明はできませんので、いろいろなレベルの対話を行い人工バリアの安全性を説明しています。人工バリアの外観は実際に地下研究所で体感してもらっています。また若年層が安全性に関しあまり納得していなかったので彼らとの対話が重要と考え、数年前には600m下がるエレベーターのシミュレーションを作り、最近は7~9歳の子供向けの3D映画を作りました。こういう取り組みで長期安全性の情報が伝えやすくなるかと思います。

 

-日本での取り組み
布目
近藤理事長は、日本における長期安全性に関するコミュニケーションで重要な点はどのようなところとお考えでしょうか。

 

近藤理事長
私はここにおられるような専門家ではありませんが、今日のプレゼンテーションを聴き、安全性のコミュニケーションについては、社会的側面が強く関わっていると考えました。近藤理事長人々は地層処分の話を聞いて、なぜそこまで考えなければならないのか、またそれをなぜわざわざやるのかというある種の不快感・不愉快さを感じ、それゆえにリスクを感じるということがリスクの専門家の指摘するところです。地層処分のように不確実性が小さくないことをやることに対して、人々は不快感、リスクを感じるということを念頭に置く必要があると思います。日本学術会議が超長期の安全性やリスクに対処するにあたっては独立した科学者による開かれた議論が必要と表明したのも、そうした人々の心情に対する配慮かと思っています。そのことを念頭に、国やNUMOは様々な判断を行う際にその根拠を明確にして、様々な専門家の批判を受けながら進めるというやり方をしています。科学的有望地の判定基準の設定には様々な専門家集団の意見を聞き、セーフティケースレポート作成においては国際的専門家の意見を取り入れています。地層処分の選択は社会的選択の一つ。我々はこれまでも、皆さんそう意識していないかもしれないが、産業廃棄物の処分等、長期のリスクを伴う社会的選択を行ってきています。実は地層処分の選択もそうした国民の皆様との対話による政治的、社会経済的な選択であるべきことを改めて確認し、その選択にまつわる不快感・不愉快感を共同して克服していこうという心構えが重要と思っています。

 

line.gif

【テーマ2 処分場閉鎖前(操業期間)の安全性について】

 

-操業安全について
布目
フィンランドでは処分場の建設から操業へと移行するところですが、操業安全に関する説明で重要な点はお聞かせ下さい。

 

ビラ氏
人々の関心は地層処分場が日常生活へどう影響するかであり、よく聞かれるのは操業時の安全や、事故が起きた時にどうなるのかです。最も一般的な質問は、過酷事故、例えばスリーマイル島やチェルノブイリ、福島第一原子力発電所のような事故が処分場でも起こるのかということです。これは物理的な理由で起こりえないと容易に説明できます。処分場近傍の原子力発電所が30年以上安全に操業しており、近隣に住む住民はもはや操業中の安全については心配していません。おそらく現在は使用済燃料の輸送に関する安全性がより重要になっていると思います。我々はロビーサ発電所の使用済燃料を半島の反対側にある処分場まで輸送する必要があります。輸送中のリスクに関する質問があるのですがリスクの議論は難しいのです。このため輸送のリスクに関しどういう影響があるかを説明しています。

 

-自然災害に対する安全性
布目
自然災害への対策もよく質問がありますが、米国の原子力発電所では竜巻やハリケーン等の自然災害を考慮していますが処分場はどのように検討しますか。

 

ウェッブ氏
運転中の原子力施設と処分場の地上施設に適用される原則は全く同じです。
ウェッブ氏ハリケーン、竜巻、洪水等の災害は、社会が直面する共通な事象で、建物、橋、道路などの工学設計では共通の設計基準があります。更に原子力施設は極端な条件を使用します。ハリケーン、竜巻などの風害に関しては風速560km/hの基準を設け、自動車が投げつけられるほどの力を想定して評価しています。更に実物大の輸送コンテナを高速で地上に落下させる実証試験も行っており、日本とも連携して実施したものもあります。これらにより極端な事象にも耐えられると証明しています。

 

布目
自然災害の多い日本で、施設の安全性をどのように説明すると一般の方の理解を得ることができると近藤理事長はお考えでしょうか。

 

近藤理事長
先ほどウェッブさんもおっしゃったとおり、日本でも自然現象や気候条件に関しては、原子力安全規制体系が確立しているので、それに基づいて、設計、建設、運転を行うこととし、その妥当性を規制当局が判断します。そのことについては、規制当局が説明責任を果たすのが普通です。放射性廃棄物処分施設は核暴走や炉心溶融という現象の発生する可能性はないのですが、世論調査やアンケート調査で、例えばあなたは地層処分施設が20年以内に爆発すると思うかと聞くと相当な割合でイエスという答えが返ってきます。これは処分場に対する私共の説明がいかに不十分であるかの証明だと受け止めるべきと思っています。人々は原子力という名がつくと色々な施設を同じに考えてしまいます。それが生き方として合理的だからですが、それではわれわれとしては困るわけで、こうした人間の性質を踏まえて高レベル放射性廃棄物を扱う施設のリスク、事故の可能性やその対策を説明し、信頼を得ていく必要があります。そのためには、「そうか、ちょっと待てよ」と考えてもらえるための謙虚な取り組みが大事と考えています。

 

<質疑応答>
会場にご参加いただいている方からも安全性についてのご質問をいただきました。

 

質問者1
会場からの質問 長期安全性の原則は"Passive Safety"(受動的安全性)と言われるが一般にはわかりにくい。操業安全は明確で厳格な管理だが、埋設後は人間が関与しない安全の仕組みを持つというギャップを各国ではどう説明していますか。

 

アンダーソン氏
確かに難しいと思います。"Passive Safety"という言葉はあまり使いません。直接、課題に関する説明をします。非常に安定的であるということ、つまりキャニスターがあり、地下水の流れも限定的であると説明します。また多重バリアの性能や役割がどういったものかという説明を行います。

 

マッキンレー氏
アンダーソン氏と同意見です。強調しているのは多重バリアの機能です。選定されたサイトが地質学的に安定している、廃棄物自体も安定である、非常に長持ちする容器に入れる、頑強な地層で守るということを自信を持って説明することです。また地下研究所での内容も説明することです。"Passive Safety"について話すのではなく、多重バリアによって安全性がもたらされると積極的に説明するほうがよいでしょう。

 

ビラ氏
マッキンレー氏の説明への補足ですが、"堅牢性"が処分場設計の鍵です。ハイテクに頼って長期安全性を提供するのではなく、できるだけ単純な物理的な事実に頼っているということです。

 

line.gif

質問者2
会場からの質問 各国での適地の検討において、定量的な評価をした「ものさし」または「採点表」を見たことがないのですが、あるのでしょうか。

 

ガウス氏
サイト選定プロセスで重要なのは、関係者の役割が最初に規定されていることです。政府が積極的な役割を果たし、NAGRAは技術的な解決策を提示しサイト選定は行いません。NAGRAのWEBサイトに英文で掲載されているスイスの特別計画「地層処分場」(セクトラル・プラン)の中に、踏むべきプロセスや考慮すべき事項が明記されています。各基準を満足しているかの技術的な実証はNAGRAが行い、規制当局がどう受入れたかも説明します。

 

ビラ氏
1980年代のサイト選定プログラムの初期段階では採点方式を採用し、Posivaの報告書にまとめられておりウェブサイトで見ることができます。しかし、最終選定の際には定量評価は採用できませんでした。どちらでもいいのか、厳密にこちらがよいといえるのかなど順番付けが難しいものもあったわけです。このため、やはり議論をして賛否両論をみることとなりました。

 

アンダーソン氏
スウェーデンとフィンランドには地層処分に適した結晶岩盤が豊富にあり、それがKBS-3という処分概念に反映され、その報告書には地層処分に望ましいまたは望ましくない地質特性も明記されています。2か所のサイトに絞られた際は、安全性や建設性、社会的要素、輸送、その他要因について、スコアリングシステムを用い、フォルスマルクが選定されました。SKBからいくつか報告書がでていますが2011年に提出したものはダウンロードが可能です。

 

ボワニス氏
ビュールの地下研究所の歴史を振り返ると、当時、我々は2種類の岩盤に関する安全評価報告書を学会や国の審議会、規制当局に提出し、政府により政治的、社会的な側面も考慮して、ビュールが選定されました。

 

マッキンレー氏
その方式はスイスの初期段階で行われました。スイスでは低・中レベル放射性廃棄物の地層処分のためにまず100の候補地から20に絞り、更に詳細な比較により3つに絞りましたが政府に少なすぎると指摘し4サイトになりました。この4サイトで現地調査を行い最終的に1サイトに絞りましたが、1980年代初期であり文書が見つからないのはドイツ語で書かれていることと、ネット上にはないからでしょう。NAGRAに依頼すればコピーが入手できるかと思います。

 

line.gif

質問者3
会場からの質問サンディア国立研究所に勤務していますが、アメリカでは処分計画に関する再認証が5年ごとにありましたが、各国も再認証システムがありますか。これが長期安全性を伝える方法の1つではないかと思います。

 

アンダーソン氏
そのとおりです。スウェーデンでは原子力施設は安全評価報告書を10年毎に再審査するよう規制で定められています。地層処分においては、事業が順調に進んでいても、安全評価報告書の提出はまだもう少し先の話です。現在、社会的に重要な処分地建設許可にかかる安全審査の段階に入っていますが、これは強力な安全評価に支えられています。今後はサイトの具体的な条件で詳細検討した安全評価報告書を提出しなければ操業許可が得られません。このようなことは少し専門的な内容にはなりますが、できる限り一般の方に伝えることが必要と考えています。

 

ガウス氏
スイスでは再認証はまだ実施していません。なぜなら2060年に処分場が操業開始予定で、まだ多くの段階があります。この段階的アプローチはアンダーソン氏の説明のとおりで、我々も安全評価報告書の精緻化をしています。スイスでも各段階で暫定的な安全評価が行われ、認可申請が行われることになります。

 

ビラ氏
フィンランドではこれを再認証とは呼びません。しかし安全評価報告書の見直しは規制要件にあり、確か10年毎の見直しが求められています。事業者は操業の継続が規制当局によって受容されるレベルかを定期的に確認するということです。

 

ボワニス氏
フィンランドとほぼ同様で、フランスでは建設開始や操業開始のライセンスがあっても、次の段階に進むには新たな申請が必要です。今後Cigéoプロジェクトにてマイルストーンを設け、原子力発電所の基準のように毎年なのか、規制当局が必要な時に調査を実施するということになると思います。

 

ウェッブ氏
我々はWIPPにて3回の許認可再認証プロセスを実施してきました。2000年に操業許可を受け、それから5年周期で実施されています。その間、当初の想定と異なる現象が起これば説明が求められますが、各期間で多少想定と異なる事象が出るのは、継続的なモニタリングにより理解度が深まっているからです。こうしたアプローチにより科学的知見が改良され、自治体が国民へ説明します。この反復のプロセスは非常に重要です。

 

布目
こういった点を国際機関の場で議論することはありますか。

 

マッキンレー氏
このプロセスは国際機関のベストプラクティスのガイドラインの中にもあります。定期的な安全性の再評価を行うことで理解が深まり、科学の発達も考慮するということは一般的に期待されることです。処分場の操業が終わるのは一世紀も先かも知れないのでこれが最も推奨される方法の要件となっています。

 

 

line.gif

【テーマ3 海外の取り組みから学ぶこと】

 

布目
最後にマッキンレーさん、本日の議論の総括をお願いします。

 

マッキンレー氏
各国のパネリストから日本に対し、重要なメッセージを一文でお願いしました。

・継続的に専門知識の実証をし、それを一貫して伝えること(スイス)
・情報説明、地域への溶け込み、そして対話(フランス)
・コミュニケーションにおける技術的専門家の参画(スウェーデン)
・人々に学びたいと思ってもらえるようにすること(フィンランド)
・様々な要素を組み合わせ、信頼できる話を構築すること(米国)


これらに共通したポイントは、全ての専門家は地層処分の安全性について強くそれが安全だと信じていることです。各国で固有の点もあり日本独自の文化にあわせて適用が可能です。また対話を重視し、効果的なコミュニケーション方法を取り入れ、国際的なパートナーシップをとっていくことが重要です。

 

布目
では、最後に皆さんから一言ずつお願いします。

 

アンダーソン氏
対話が重要、特に人々の懸念に対し対話をすることです。対話において技術的専門家は重要な役割を果たしますが、説明を複雑にしないことです。

 

ガウス氏
トップメッセージを伝えることが重要で、地域社会において専門的知識を確立することが必要です。同等に話し合いができる所までもって行くことが重要です。

 

ビラ氏
説明を始める前に人々が何に興味を持っているか最初に聴くことです。その上で明確に回答することです。

 

ボワニス氏
処分場の操業に至るまでには長い時間を要すため、国民にこれまでどういう情報を出してきたかということを記憶しておくことが重要です。

 

ウェッブ氏
私からのコメントは哲学的ですが人間と他の動物との違いは、物語を語る能力の有無です。処分場は複数の世代に渡るものであり物語を語る手法を用い、情報を受け継いでいく必要があるということです。

 

マッキンレー氏
我々のプレゼンテーションが役に立つことを祈念します。また日本のプログラムの成功も祈念しています。特に日本を手本にしている東アジア地域において、日本の成功体験が役立てばとても素晴らしいと思います。

 

近藤理事長
大変貴重な示唆をたくさんいただきました。それぞれが非常に重要なポイントをついていると感じました。よく勉強してこれからの取り組みに反映したいと思います。日本が今、置かれているのは、大事故の後であり原子力界が人々から信頼されていないという状況です。現在様々な世論調査やご意見をいただく機会がたくさんあります。そのたびにいかに信頼されていないかという壁にぶつかります。それをどう克服していくか絶えず悩んでいるところです。最近は"Trust does not exist but act to deserve it." ということで信頼というものは存在しないのだけれど、しかし、大事なことは、それを受けるに値するように行動することだとNUMO職員には言っており、今やらなければならないのはそういうことだと思っています。本日いただいた様々な示唆はそういう取り組みに極めて役立つ、大変有益なものでした。本当にありがとうございました。

 

 

 当日の模様(映像)

 

 当日の映像は下記よりご覧いただけます。

 

 

 当日使用した資料

 

 国際セミナー「地層処分の安全性に関するコミュニケーション」参考資料 PDF