国際講演会「スイスのサイト選定におけるコミュニケーション活動」

国際講演会
「スイスのサイト選定におけるコミュニケーション活動」


開催日:2016年7月8日(金)
場 所:大手町サンケイプラザ3階

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わが国では、今年、地層処分における科学的有望地の提示を目指し、より積極的に対話活動を進めています。今回、スイスの放射性廃棄物処分の実施主体NAGRA(ナグラ;放射性廃棄物管理共同組合)の最高経営責任者(CEO)であるトーマス・エルンスト氏をお招きし、段階的なサイト選定プロセスが進められているスイスにおいて、NAGRAが実施している一般の方々を対象とする理解活動や地域住民への説明などについて、ご講演いただきました。
また「NAGRAのコミュニケーション活動」と題し、同氏に加えて、エネルギー問題の専門家である竹内純子氏、当機構の近藤理事長による座談会を行い、日本の今後の地層処分事業における一般の方々との対話の進め方などについて意見交換が行われました。当日は応募された約130名にご出席いただき、会場からの質疑・応答も行われました。

 

以下に、講演や座談会の概要、当日の模様(映像)、講演資料をご紹介します。

 

【以下、敬称略】

>開催挨拶
>講演「スイスにおける放射性廃棄物管理 サイト選定プロセス -進捗、経験と展望」

トーマス・エルンスト(NAGRA CEO)

>質疑応答
>座談会「NAGRAのコミュニケーション活動」

トーマス・エルンスト
竹内 純子(NPO法人国際環境経済研究所 理事・主席研究員、筑波大学客員教授)
近藤 駿介

>当日の模様(映像)

>当日使用した資料

 

 開催挨拶

 

近藤 駿介(原子力発電環境整備機構(NUMO) 理事長)

 

近藤理事長

日本では地層処分の実現に向けて、2015年に国の最終処分に関する基本方針が改定され、昨年末の関係閣僚会議では、2016年中に処分場の立地に関して適性の高い地域(科学的有望地)の提示を目指すこと、地層処分の重要性や安全確保の考え方に関する対話や国民理解の醸成等の取り組みを継続・充実していくことの重要性が示されました。これを踏まえ、NUMOは、全国的な対話活動を引き続き進めていくとともに、有望地提示後には、そうした取り組みと並行して有望地に含まれる自治体における対話活動や関心を有する人々の学習活動を支援していく取り組みを進めていくこととなります。

 

このたび、エルンストさんが来日されるとお聞きし、NAGRAよりスイスでの一般の方々への対話活動について皆様にご紹介いただくことをお願いしましたところ、快諾をいただき、今日の会合を開催することができました。このことに感謝し、今後の日本での対話活動に役立てたいと思います。

 

 講 演

 

「スイスにおける放射性廃棄物管理 サイト選定プロセス -進捗、経験と展望」
トーマス・エルンスト(NAGRA(ナグラ;放射性廃棄物管理共同組合)CEO)

 

背 景

トーマス・エルンスト氏

スイスは小さな国で工業化は進んでいるが天然資源がない。山脈に囲まれ限られた平野に人口が集中しており、欧州の交通の要所でもある。スイス特有の直接民主制のため、重要な意志決定の多くは国民投票や州民投票で決められる。私どもは、そういう環境において深地層処分を行う必要がある。

 

NAGRAは1972年にスイスの全ての放射性廃棄物管理の実施主体として設立され、原子力発電事業者が97%、連邦政府が3%を出資。予算は6,000万米ドル/年。2ヵ所の地下研究所を持っている。そこでは国際共同研究を行っており、日本も参画している。

 

放射性廃棄物には、使用済燃料およびガラス固化された高レベル放射性廃棄物(HLW)と低中レベル放射性廃棄物(L/ILW)があり、いずれも深地層処分することにしている。

 

既にある廃棄物は集中中間貯蔵施設(ZWILAG)で保管されている。施設は、深地層処分できるまでの間、これらを十分に保管できる容量がある。以前は使用済燃料をイギリスやフランスで再処理し、高レベル放射性廃棄物を受け取っていたが、原子力法で2006年以降再処理は凍結され、使用済燃料を直接処分することとなった。原子力法に基づき、数十年間監視を行う監視付き地層処分を行なう。また、将来世代が最良の処分方法を選択できるよう回収可能性を維持することになっている。放射性廃棄物処分は国レベルの問題であるとされ、連邦政府によって深地層処分場サイトを決定するための特別計画が策定された。 

 

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特別計画

 

・サイト選定に向け3段階のアプローチとなっている

第1段階 サイト候補地域を選定 2008~2011年

第2段階 2箇所以上の候補サイトを選定 2012~2018年 

第3段階 処分場サイトの選定と概要承認手続きの開始 約6年

 

関連機関としては、指導する連邦エネルギー庁(SFOE)、独立した監督機関の連邦原子力安全検査局(ENSI)がある。またスイスの各州や自治体に加え、国境沿いのドイツの地域自治体も関与する。

 

・サイト選定の安全基準

特別計画の13の安全基準に基づきサイトを選定する。この基準を大別すると1.母岩の特性、2.長期安定性、3.地質情報の信頼性、4.建設のための適性の4つに分類される。

基準ともに、利用可能な地質情報も決定要因である。NAGRAは40年以上、現地調査を行い、2ヵ所の地下岩盤研究所で日本も含めた国際共同研究も行って、知見を蓄積してきている。

 

・第1段階

トーマス・エルンスト氏NAGRAは、適性のある母岩のある地域について安全性と技術的要件の観点から検討し、2008年に3か所のHLWと6か所のL/ILWの処分場サイト候補地域を提案し(うち3か所はHLWの地域と同じ)、2011年に政府がこれを承認した。例えばアルプスはアフリカ大陸に押されて1mm/年で隆起しているから、100万年で1km隆起し、地下が地下でなくなる可能性があるので、アルプスはHLWの地層処分場に向かないといった検討を行った。この段階では社会的要素や地域の受入などは考慮していない。

 

・第2段階

 現在は第2段階の終盤である。この第2段階では、この候補地域に関係する自治体や関連団体、一般市民で構成される地域会議が、NAGRAが提案したこれらの候補地域に開設される地層処分場にアクセスする地上施設の設置場所の30を超える案が評価された。また6つのサイト候補地域に地層処分場を設けた際の将来の地上における線量が評価されたが、それらには大きな差がなかった。一方、ENSIが定義した地質バリアの有効性や長期安定性などの定性評価で明らかな差があったので、2014年12月に「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」の2ヵ所を提案し、4か所は予備候補とした。このことに関する報告書はインターネットで閲覧可能である。

また昨冬、三次元地震探査を実施したが、98%の地権者が調査に同意し、広範な地域が評価でき、信頼性の高い調査結果となった。第3段階で実施予定のボーリング孔掘削調査のための土地利用について9月末までに地権者と調整し、ボーリング孔掘削の申請を行う。

 

・現状の検討状況

現在、ENSIがNAGRAの提案を審査中だが、サイト候補地域のうち「北部レゲレン」のオパリナス粘土層を900mの深度まで掘削し、坑道を設置することの工学的成立性に関する補足説明を求められており、今月提出予定。

今年2月、州の専門家グループが連邦政府へ報告書を出した。NAGRAの判断を概ね支持するものであったが、予備候補扱いの「北部レゲレン」も候補となる可能性があるとして調査を要求した。今後ENSIから調査指示が出た場合の計画遅延を回避するため、NAGRAは当該地域を調査する計画を開始した。

 

・第3段階

ボーリング孔掘削開始で第3段階となる。2021~2022年頃に処分場として申請する場所を表明し、2024年には概要承認の申請を行いたい。

 

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公衆との対話

 

トーマス・エルンスト氏

2012~2014年に「TIME RIDE」というバーチャルエレベータで深度600mのオパリナス粘土層へ降下し2億年前までの世界を体感する展示を実施。スイスの人口700万人のうち20万人が体験した。2015年より処分場へのバーチャルな旅行ができる小型の展示物を活用し、イベント会場や学校、チューリッヒの中央駅など、人が集まる場所で積極的に対話活動を行っている。世論調査では7割が近隣に処分場を受け入れるとし、サイト選定の決定要因は9割が安全性と回答し、地域の同意や地域の利益と回答した人は数%であった。

 

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まとめ

 

経験より学んだことは、適切な枠組みの構築の重要性、段階的なアプローチ方法や基準を事前に明確にして途中で変えないこと、透明性と公正さを心がけ、安全優先で科学的な事象を分かりやすく発信すること、様々な立場の考えがあり、時間をかけることも重要である。

 

<質疑応答>
皆様より事前にいただいたご質問からエルンスト氏にお聞きします。

 

事前質問1

ヴェレンベルグでの失敗(*)から改善された点は何ですか?
*スイスでは、1993年に低中レベル放射性廃棄物処分場のサイトとしてヴェレンベルグが選定されたが、州民投票により否決された。それを踏まえて、2005年に原子力法が改定され、地層処分場立地プロジェクトの手続やこれに関する州の拒否権の廃止などが盛り込まれた。

 

エルンスト氏
当時は、連邦政府が地層処分場の立地に前向きでなかったため、立地活動はNAGRAが単独で行ったのですが、廃棄物処分場の立地は国レベルの問題です。実施主体だけでは無理です。様々な主体者がそれぞれの所掌する責任を果たしてこそ解決に結びつきます。州民投票では、候補地域は賛成でしたが離れた隣接地域が反対し、州レベルでは否決となったわけです。しかし国レベルの問題を3万人程で否決できることが問題視され、この経験から、処分場検討のプロセスの規定や州の拒否権の廃止などが盛り込まれた原子力法に改正されたわけです。

 

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事前質問2
長期安全性はどのように説明していますか?

 

エルンスト氏

リスクの説明も必要だが、地層の役割について説明が必要です。一般の方は100万年という長さの持つ意味を理解しにくく、そのため、そのような長期間の安全確保は無理ではないかと思われるわけです。このため私たちは、「TIME RIDE」を用い、母岩は100万年以上も安定に存在することを認識してもらう一方、放射性物質はそれぞれの持つ半減期という期間で放射能が半分になる性質があり、千年も経つと、放射能、すなわちリスクがかなり低減していくと説明しています。なぜ地上保管より地層処分がより安全なのかを理解していただくためには、このようにして、重要な科学的情報を可視化し、わかりやすく示すことも大切です。 

 

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会場からの質問1
事前質問

原子炉の安全評価と同様、確率論的な安全評価(*)をされていますか?また日本では、原子力発電所に対してのテロ対策が規制要件にありますが、テロ対策の検討はされていますか? 

 

エルンスト氏
主に決定論的な安全評価(*)を行っています。確率論的リスク評価手法を原子炉安全評価のように使っているとは言えませんが、非現実的な想定シナリオを数多く検討しており、実質は同様な評価と思っています。また原子力法では原子力施設に対してテロ対策を要求しておりますので、処分場も同様に考慮します。航空機の落下事故も原子力発電所同様に検討します。ただ、テロに対する一番よい防護は深地層処分です。地下700mにある施設をテロリストが攻撃するというのは無理でしょう。

 

*決定論的安全評価と確率論的安全評価
決定論的安全評価とは、代表的な事故が起きると想定し、基準や指針等に基づき保守的に評価し、基準値以下ならば安全性が確保されていると判断する手法。一方、確率論的安全評価は、考えられる全ての事故に関して、発生確率と影響を評価し、その積であるリスク(危険度)で安全性を判断する手法。

 

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会場からの質問2
会場からの質問

行政、地元、事業者の三者の合意形成は難しいと思いますが、スイスでは達成されていますか?達成のためにはどうすればよいとお考えですか? 

 

エルンスト氏
スイスでも完全な合意が形成されているわけではありません。特別計画とこれまでのサイト選定過程には合意がありましたが、この先の決定段階でそういくかどうはわかりません。直接民主制ですから、今後の合意に保証があるわけではありません。民主主義では科学的で合理的な情報をきちんと提供し、それに基づき議論がなされ、感情に流されずに意見が醸成されることが必要です。

 

 

 座談会 「NAGRAのコミュニケーション活動」

 

【テーマ1 全国を対象とした理解活動】

 

座談会 竹内氏
全国を対象とした対話活動についてお伺いします。

 

エルンスト氏
全国を対象とした対話活動は対話戦略の中でも重要です。廃棄物の話は関心を持たれないため、「TIME RIDE」を用いて興味を持ってもらう必要がありました。イベント会場や展示場に持参すると好評で列ができ、チューリッヒの中央駅で実施した際は大勢の人が集まり、メディアにも報道されました。

 

竹内氏
スイスと日本の対話活動の違いについて近藤理事長にお伺いします。

 

近藤理事長

違いを論ずるレベルになっていませんが、「TIME RIDE」に似たようものとして、私どもは「ジオ・ミライ号」という車で東京タワーなど人の集まる所やイベント会場に行き、3Dシアターやベントナイトの実験をしています。

ところで、私からの質問ですが、誘致失敗後から特別計画の実現に至る期間、これに対する人々の支持を得るために、どのような広報を行ったのでしょうか?

 

エルンスト氏
(誘致に失敗した)当時の活動は広報(PR)とは言いたくなく、重要な負の経験と呼びたいです。人や社会は、失敗や負の経験から学んでよりよいものにしていくものです。ショーを催す必要はないのですが、魅力的な展示と科学的な情報の間での妥協も必要です。こちらから出向いていき分かりやすく伝える必要があります。

 

竹内純子氏

竹内氏

"こちらから出向く"と"分かりやすく伝える"がキーワードのようですが、近藤理事長はどうお感じでしょうか?

 

 

近藤理事長

人には聞かない自由もありますから、我々の聞いてほしいことをきちんと聞いてもらうのは簡単ではありません。そういう意味で、それは極めて大事なキーワードと思います。主要駅で展示を行うことの有効性はよく理解できますが、我が国にそれをどう応用するか、方法論の開発も必要と感じました。伝えるものは科学ですが、どのようにしたら伝わるのか、工夫しなくてはと思います。

 

エルンスト氏
おっしゃるとおりです。2012年に地域会議ができた当初、原子力発電所の操業に関する感情的な発言なども多く、半年近くは廃棄物の話ができませんでした。電気を使った我々の責任として、廃棄物の問題は将来に委ねてはいけないと時間をかけて地域議会で説明をしてきました。

 

竹内氏
耳を閉ざしてしまう人との対話についてはどうお考えですか?

 

トーマス・エルンスト氏

エルンスト氏
聞く耳を持たず一方的な主張がなされるならば、それは根本的に困難なことであり簡単な解決策はありません。一方で多くの方は解決策を模索したい、知りたい、協力したいと思っており、公正に情報提供することです。いろいろな意見があるのが民主主義です。

 

竹内氏
解決しなければならないという認識を共有してもらうことがまず重要ですね。候補地域が絞り込まれた第2段階でも全国広報を行う意義についてお伺いします。

 

エルンスト氏
概要承認は連邦政府が出し、上下両院が決定を出します。その後、5万人以上の国民が要求すると国民投票となるため、全国も対話の対象となるわけです。

 

竹内氏

全国民が解決への強い意志を持つことが必要であり全国が対話の対象とのことですが、日本でも立地に貢献する地域の方々に全国民が敬意と感謝の念を持つ必要がある(*)と示されています。日本も全国を対象に対話活動を進めている、進めていく、ということでしょうか?

*昨年改定された特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針では「事業の実現が社会全体の利益であるとの認識に基づき、その実現に貢献する地域に対し、敬意や感謝の念を持つとともに、社会として適切に利益を還元していく必要があるとの認識が、広く国民に共有されることが重要である。」と示されています。

 

近藤理事長
我々がこれまで電気を享受してきたわけでその一方、自国で放射性廃棄物を処分する方策しかない以上、どこかの地域で受け入れていただく必要があり、これを進んで検討してくださったり、受け入れてくださる地域に対して、敬意や感謝の気持ちを持つのは当然と思いますが、強制できるものではありません。議論や意見交換を通じて、感謝する気持ちになることが大事で、それが敬意や感謝の念が醸成されていくことかと思います。

 

竹内氏
原子力発電所の立地地域の方の声を伺っていると、最終的に立地地域に同意されたのは「国策への協力」、「国への貢献」だったのだろうと感じることが多くあります。いまそれへの感謝が感じられないところに忸怩たる思いを持たれている方も多いと思います。放射性廃棄物の処分場であればなおさら感謝と敬意を持つことが必要であり、今後のコミュニケーション活動のなかで自然と醸成がなされることを願っています。

 

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【テーマ2 地域での対話活動】

 

座談会

竹内氏
事前質問にもありましたが、地域会議において、連邦政府、州、NAGRAや規制当局は最初から明確な役割分担ができたのか、また理解活動における役割分担の意義についてお伺いします。

 

エルンスト氏
手順の整備までは試行錯誤でした。例えば、説明会には連邦エネルギー庁、ENSI、州や地域やNAGRA、地域会議の代表者も出席するので、質疑応答の際、誰がその質問に責任を持って答えるのかとなります。エネルギー庁はガイドラインを決め、人々に遵守させ、ENSIは安全を所管し、州は地層処分以外の方法や他の州での可能性も考え、自治体は影響を考えるなど役割があり、関係者が各自の役割に責任を持って答えることです。責任所掌のないことに関して対話をしてはいけません。

 

竹内氏
試行錯誤とありましたが、日本の役割分担で改良するとよい点はありますか?

 

近藤理事長近藤理事長
現在、国が科学的有望地を提示しようとする過程であり、この段階でルールを変更することはよくありません。今、重要なのは人々と何を共有し、最後の目的にどうつなげていくかというプロセスです。NUMOも世論調査をしていますが、NAGRAほど我々が認知されていないわけであり、まず我々が努力すべきこと、できることがたくさんあります。

 

竹内氏
日本で同じ調査をすると、数値にカンマが入り(10分の1程になり)そうです。(笑)

 

近藤理事長
なかなか手厳しい。数分の1と思いますが、プレゼンスの不足は問題で、努力不足と職員を叱咤激励しています。

 

竹内氏
伝える工夫について伺います。先週、廃炉の研究所に行き、福島第一原子力発電所の中を歩くシミュレーションを体験し、バーチャル体験は非常に理解が深まると思いました。NUMOの「ジオ・ミライ号」やその他のツール等もあれば内容をお聞かせ下さい。

 

近藤理事長

「ジオ・ミライ号」も体験型展示です。年間、約50-60日の実働日数で各地を移動して歩いていますが、もっと出会う機会を増やすとともに、わかりやすく扱いやすい新技術を活用した展示も検討しています。その点で、講演で紹介された説明手段にとても興味を持ちました。私ども、三浦半島の地下を500mまでボーリング調査して、採取した地下水の事を研究論文にしています。その論文にはその地下水が100万年以上昔の水であるとわかったことなども記載しています。しかし、私どもの身近な地下がそんなに安定であるという情報も皆さんには伝わっていないわけで、こうした我々の身近な地下の情報の発信努力も必要と感じています。

 

竹内氏
エルンスト氏に今後のスイスでの対話活動と日本へのご助言をお聞きします。

 

エルンスト氏
国ごとに状況や文化的背景、政治体制も違い、他の国のものをそのまま活用はできませんが、様々な国の良いところを参考にすればよいと思います。スイスは、バーチャル体験を当面続ける予定で、利点は容易に運べることです。特に子供がよく興味を示しています。将来の意思決定をする若い世代に、より多く説明する機会を設けたいと思っています。

 

<質疑応答>

 

会場質問1
会場からの質問 広報という言葉を使いたくないといわれた背景をご説明ください。

 

エルンスト氏
言葉の選び方には注意が必要です。広報(Public Relations)という言葉には宣伝という意味あいが入り、科学的な情報を伝えることとは違います。なお科学的な情報を伝えるにあたり、わかりやすく単純化する場合、正直でないやり方は慎むべきです。
政治的背景ですが、昔、各州が独立しており緊張関係があったため、国家的問題と各州の関心との間で、妥協点を見出す必要があり、人口も少ないので直接民主制となりました。国民投票は英国のEU離脱という予想しない驚く結果もあり得るわけですが、地層処分の国民投票においてNOとなると大変な問題なのでYESとなることを望みます。

  

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会場質問2
会場からの質問

地域会議での中身の濃い議論の結果が地域の方に共有され、判断材料となるのはとても有意義と思います。この情報の共有の仕方や会議の仕切り方について教えてください。
(竹内氏)あわせて、地域会議の人選の際、主張の強い人だけでなく、幅広い意見の方々をどう選出するのか、また活動期間についてもお聞かせ下さい。 

 

エルンスト氏
賛成派と反対派では原理原則の主張となり建設的議論になりません。特別計画に地域会議の構成が定められており、各州の意見が反映できる規定となっています。前回選挙の政党の得票率や男女比も考慮されます。具体的な人選は各地域会議の指導グループが行います。情報共有の方法ですが、地域会議は公開・非公開の場合ともWEBサイトに結果を掲載します。また地域会議は、広く周知させる手法としてメディアを活用しており、議論過程や決定を周知する方法として記者会見などを行っています。

 

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会場質問3
会場からの質問この事業はNUMOだけでは無理と感じます。人類は宇宙や地球など未知なものに憧れるもので、もっと地球を学ぶ場を各所に協力して増やす取り組みが必要ではないですか。

 

近藤理事長
科学技術館にNUMOの事業に関係する展示がありますが、もう少し、地球や地層に関する展示も含める工夫を科学技術館にお願いしています。また日本科学未来館の毛利館長にも地球に関する展示をお願いしたところです。おっしゃる通り、子供から大人までが学ぶ場所で地球科学を学べる機会を増やすべきと思って、様々な機会にそうした取り組みの主催者に働きかけています。叱咤激励のご発言いただき感謝します。

 

竹内氏
コミュニケーションには正解はありませんが、今回学んだことは解決に向けての強い意志を国民全体で共有する、透明性・公平性あるルール、明確な役割分担をそれぞれが果たすことが3要件であり、相手に対する敬意、感謝、尊重をベースに顔の見えるコミュニケーション活動を地道に行うことが現世代の責務と感じました。
これで座談会を終わります。

  

 

 当日の模様(映像)

 

 当日の映像は下記よりご覧いただけます。

 

 

 当日使用した資料

 

 国際講演会「スイスのサイト選定におけるコミュニケーション活動」参考資料 PDF

 地層処分場 放射性廃棄物の安全な処分(スイス 連邦原子力安全検査局 (ENSI)) PDF