ワークショップ開催レポート(中国)

ワークショップの概要

開催日時 平成25年2月24日(日)9:30~13:00
会場 ホテルチューリッヒ東宝2001 3階 アイネクライネ
広島県広島市東区光町2-7-31
プログラム 9:30~9:35 開会挨拶
9:35~9:45 オリエンテーション
9:45~10:30 エネルギー環境教育の今日的課題
山下 宏文氏
京都教育大学教育学部教授
10:30~11:00 情報提供 原子力発電環境整備機構(NUMO)[4.4MB]PDFファイルが開きます。
11:00~11:10 休憩
11:10~12:15 グループディスカッション
12:15~12:35 全体シェア
12:35~12:50 講評
12:50~13:00 おしらせ・閉会挨拶

ワークショップ当日の様子

平成25年2月24日(日)広島県広島市のホテルチューリッヒ東宝2001において、ご応募いただいた、広島市及び近郊の教職員の方々(25名)にご参加いただき、第10回電気のゴミワークショップを開催しました。

冒頭、一昨年の3月11日に起きた福島第一原子力発電所の事故について、関連事業に携わるものとしてのお詫びから始まり、『高レベル放射性廃棄物やそれを取り巻く現状を皆様に知っていただき、一緒に考えていただきたい』という趣旨説明をしました。

ワークショップでは、はじめにNUMOより、「高レベル放射性廃棄物について」「高レベル放射性廃棄物の処分方法」「火山や地震の多い日本で地層処分はできるのか」「地層処分場」「諸外国の状況」などについて、DVD映像を交えながら説明を行い、その後、参加者の皆さんが6~7人のグループに分かれ、活発な議論が行われました。参加者の皆さんからは、「地層処分は日本のこの地層において300メートルで本当に大丈夫なのか」「学校現場にエネルギーについての正しい知識は届いていないと思う」「正しい知識理解をもとに子どもたちが議論をしたり考えたりして、思考力や判断力をしっかり育成するような授業をやっていきたい」「エネルギー環境教育は、系統立てたカリキュラムをしっかり作らないとできない」「講演で、スウェーデンのエネルギー教育や、授業化を作る視点は大変参考になった」などの多くの質問や意見があげられました。

グループ発表

Q&A

ワークショップ(中国)では、グループ討議・発表の後、全体でのふりかえり(まとめ)を行いました。

【司会 広島修道大学 金沢先生からのコメント】
各グループの発表の中で3つのキーワードが出てきました。
①正しい知識理解とはいったい何を意味するのか、それが各学校レベルではどのように違ってくるのかという疑問。
②思考力、判断力を育成するのにエネルギー教育は有効なのかという視点においては、むしろ有効であろうという考え方。
③教育を実生活に活かすということ。もっと言えば、問題意識を持ったり、意味を考えながら実生活に活かすためにはどのような教育内容であるべきかということ。
以上の3つの視点から議論を進めていきたいと思います。
【広島大学 大学院 蔦岡先生からの質問】
思考力についての話、私は理科に携わる者としての見解ですが、学校教育では各教科の中で思考力の育成を図る内容が盛り込まれており、エネルギー問題を特に取り上げなくても、基本的には義務教育のなかで思考力というものは自然に育成されるべきものだと思います。そうしたなかで敢えて皆さんの考えをお聞きするのは、小・中・高のなかで、自分たちの教科でエネルギーのような、取り入れることによるメリットと言ったら変ですが、そういうプラス面について何かお考えがあるようでしたら、お聞かせ願いたいと思った次第です。
【小学校グループからの回答】
この問題をカリキュラムに取り入れることによって、教科に深まりが出てくるかなと思うことがあります。これまで、子ども達は、感覚的に原子力は危険、風力、水力は省エネでいいと思っていました。ですが、いろいろな立場からの見方、考え方にふれることによって、本当に原子力を使わない生活が自分たちの生活に合うのかというような疑問が出る。そして自分たちで調べるという活動や、自力で解決していこうとする流れのなかで自分なりに一番いい方向を見つけようとする時に判断力がつくのではないかと思います。

【中学校グループからの回答】
思考力、判断力について中学生の段階では、これから生きていく社会、実際の生活の中で自分たちがこの問題を解決していくためにどう考えてどう判断していくのか、そういったところまでの力をつけさせていきたいと考えます。

【高校グループからの回答】
高等学校で物理を担当していますが、理科では合理的な批判精神を養うことが最大の目的だと考えます。センター試験のように教科書で得た知識をそのまま書けばいいというものとは違う教材、例題があると非常に役に立ちます。エネルギー環境問題だけではなく、少子高齢化、食糧問題などを考えることは、高校生が有権者になったときのために判断力、思考力、表現力を養う上で、大変有効であると考えました。

【管理職グループからの回答】
思考力、判断力、表現力については、くり返しカリキュラムに入れていくことが必要ではないかという意見が出されました。具体的なカリキュラムといったことでは、小学校5、6年生ぐらいであれば、ある程度やっていけるのではないかという話が出ました。

【高校グループからの回答】
思考力、判断力という話の中で、教育の中に入るのかはわかりませんが、リスクということも考えなければいけないのではないでしょうか。新しい技術で解決するにしても、100%の技術というものは現実では考えられない。さきほど実社会という話も出ましたが、リスクのない実社会というものはありません。ですから、完全な結論はないという前提で教育を実践していく必要もあるかと思います。
【ワークショップ事務局からの質問】
このワークショップは、札幌や沖縄などいろいろなところで先生方に議論していただいておりますが、必ずどこでも出ることが、まず教師が正しい知識を身につけ、それをもとに子どもたちに教えていくことが重要だということです。そこでで伺いたいのですが、その正しい知識とは、先生方に本当に届いてないのか、あるいはそれが教育現場にどのくらい届いているのでしょうか。
【管理職グループからの回答】
はっきり言って届いていないと思います。学校にはいろいろな資料が届きます。その中でこれは知らせたほうがいいなと思うものは知らせていますけれども、ほとんどはスルーだろうと思います。資料は届けられていても、エネルギー環境教育を学校の中で取り入れようと管理職が思わなければ、取り上げないのが現状です。

【ワークショップ事務局】
情報発信する側からすると、資料はいっぱい出していると思っているはずです。しかしどこへ行っても情報の受け取り側である先生方からは正しい情報がないと言われます。そのギャップをどうしたらいいのかいうことについて、今のお話を伺うと、やはり管理職の先生方が、エネルギー教育を前向きに捉え、実践するということを考えていただかない限りは、どんなに情報を出しても届かないのかなぁということ、そして、先生方たちとの今日のワークショップのような話し合いというものの重要性を再認識した次第です。
【京都教育大学 山下先生からのまとめ】
いくつかの質問の形で出てきたことにお答えしたいと思います。
ヨーロッパにおいて、エネルギー環境教育という観点で共通していることは、エネルギーの問題、環境の問題もその扱いは中立だということです。しかし、教育的な中立と社会的関心への対応というのは、これは別です。教育的には中立だが、社会的な関心の高いものは積極的に、教育の重要な内容として取り上げていくということです。

今日、講演で紹介したスウェーデンやフランスでの原子力に対する立場や考え方は対照的です。スウェーデンは脱原子力という政策、フランスは原子力推進という政策です。しかし、そうした政策の異なる両国ではありますが、その教育は非常に似ています。選択するのは国民である、子どもであるという問題の扱い方、しかし、教育的には中立といった点。さらに、社会的な関心が高い今こそ、この問題を教育に携わる者として重視していかなければならないという姿勢は一緒です。

そういう意味ではこの問題を本当に中立的に扱える場というのは、教育の場だと思います。国にはいろいろな利害があって、それぞれの立場がありますから、なかなか中立ではいられない。ですが、教育の場こそ、中立的な立場に立たなければならないと思います。社会的関心の高いものは、教育がきちんと取り上げていくというのが責務であると考えます。

日本のこれからのエネルギー環境教育は非常に大事だということはわかったけれども、今までどうだったのかということについてですが、エネルギー環境教育が大事だという考えがようやく入ってきたのが1990年代の後半です。つまり1990年代の前半までは、日本では、ほとんどこのエネルギーの問題に関して、教育で扱っていない。1970年のはじめのオイルショックで省エネが社会的に話題になった。そこで脱石油ということで、石油の率を減らしたことはあります。しかし、その時にも教育は、対応できなかったという反省があって、1990年代後半からエネルギー教育への関心が高まってきたのです。それが、東日本大震災、3.11で急にまた下がってしまった。

マスコミはエネルギー環境教育のとらえ方に対する信念がなくて、何かエネルギー環境教育というのは原子力推進ではないか、そんなイメージと重なってよくないというような論調のように感じます。
でもそうした論調は誤りではないかと思います。先ほどの外国は非常に熱心だということですが、ひとつの体系的なカリキュラムに基づいてやっているかというと、決してそうではありません。小学校、中学校、高校ではそれぞれこうですというように、それぞれの段階で別々なものではありますが日本でいう学習指導要領にあたるものはフランスにもあります。だから同じようなことは日本でもできるはずです。アメリカは、幼稚園から高校というカリキュラムを作っていますから、体系的と言えますが、ドイツやスウェーデンも体系的なのはありません。しかし無いにも関わらず熱心にやっていくのはなぜか。それは教師が問題意識をもっているからです。教師が社会的なことを見て、これは大事なんだ、だから伝えなくてはならないということで、小学校も中学校も高校生もそういう意識で授業の中のどこで扱えるのかというのを教師自身が判断して扱っていくということではないでしょうか。

今でも強く印象に残っているのは、スウェーデンの中学校の理科の先生の授業を見たときのことです。理科の時間にエネルギー政策について子どもたちと討論していました。その授業は日本ではどう見ても社会科の授業でした。終わってから、社会科的な内容を理科でやることは、スウェーデンの理科教育の中では一般的なのかという質問をしました。通訳の関係もありましたが意味が通じなくて、スウェーデンの先生は何を言っているのかというような感じだったのですけど、何回か言ってようやくわかってもらえました。すると、今度は何を言っているのかとあきれた顔をされました。そして彼が言うには、私たちは、これから社会に出て行く子どもたちにとって何が大事なのかという観点から理科であれ、社会であれ考えていく。理科と社会を区切るようなことはしないと。
このようにスウェーデンにおいてでさえ体系的にエネルギー環境教育が進められているわけではない。しかし、私は、日本ではエネルギー環境教育が体系的なものを基に進められるのではないかと思います。要は教師の意識の持ちようということです。

リスクや安全のとらえ方が大事だろうという指摘が出ましたが、その通りだと思います。リスクのとらえ方は、外国では基本的に100%の安全というものはないというのが当たり前です。だから、いかにリスクを減らすか、減らすけどもゼロにはできない、そういうなかでどういう選択をするのかということを当たり前に考えることができるのだと思います。

正しい知識理解とは何か。これはいろいろなところで質問をされます。専門家でも言うことが違う。どちらが正しいのか。正しい知識と言いますが、それ自体がゆがんでいるのではないかいうようなことも言われます。そういう部分も非常にあると思います。しかしそうなると、どちらがより正しいのかということ自体を、生徒が、学ぶ側が、自分で判断する、そこまで必要なところもあるのかなと思います。

思考力、判断力という言葉が取り上げられましたが、いろいろな意見の中にもあったとおり、実生活を生きることと、実生活に活かすということとは表裏の問題だと思います。なぜ思考力、判断力なのかというと、OECD(経済協力開発機構)におけるキー・コンピテンシー(優れた結果へと導く個人の能力や特性)という考え方からきているはずです。このキー・コンピテンシーという考え方を、教育というものに当て嵌めて考えると、問題状況への対応、問題解決の力ということになるのではないでしょうか。各教科で、それぞれの場面で、問題解決の方法はたくさんあると思いますが、それが積み重なってどこに向かうかというと、社会や自分を取り巻く生活環境の中で自分自身が問題をどう解決していくかということだと思います。であるならば、今、どういう問題がより重要なのか、この社会の中で子どもたちが生活していくうえで必要なのは何なのかと考えるとき、エネルギーの問題は極めて重要なことであるとと思います。
広島ではエネルギー教育、エネルギー環境教育の全体的なカリキュラムのモデルがあったと思います。そういうモデルを基に、今回の地層処分というものを、どこで扱っていくのかという観点から検討していただくと、体系的なエネルギー環境教育として詰められるのではないかなと思いました。
【広島大学 大学院 蔦岡先生のまとめ】
以前から小・中・高の理科を中心にエネルギー教育を実際の授業でやるのであればどういうカリキュラムが必要かということを考え、作った経緯もあり、この会で一緒に考えさせていただきました。私は大学で防災学習論という講義をもっています。放射線の環境と実際に原子力事故が起こったらどうなるかということをここ7~8年、大学の4年生に講義をしています。シーベルトとかベクレルについても話します。ベクレルは1秒間に1個放射性崩壊をするといった単位なのですが、以前は4年生になっても学生は知らない状況だったのです。ですけれども、2011年以降、シーベルトとともにこのベクレルという単位についも非常に関心が高くなってきたせいなのか、学生にも理解が浸透してきているようです。正しい知識を持って判断しましょう、ということはこの10年間言い続けてきたことなのですが、状況が変わっても、エネルギー教育においてこのことは変わらないと思います。

2年前の事故が起こったことで皆がシーベルトを知っている。我々の取り巻く環境がそうであるなら、何らかのかたちで学校教育に取り入れていく必要があると考えます。高レベル放射性廃棄物は電気のゴミとして取り上げられていますが。それだけしか皆さん知らないと思います。小・中・高の先生には機会があれば、原子力発電に伴い放射性廃棄物は必ず生じるということ、将来を担う小・中・高校生も、その処分について考えなければならないということを話していきたいと思います。

これを機会に、ぜひ各学校現場でも、新指導要領での表現力、思考力を養って、子どもたちが大人になったときに自ら判断できるような能力を養っていただきたい。中立の立場は非常に大切です。広島では60年代から90年代に学生に原子力の話をすると、原爆のことがあるので先生も含めて原子力が悪であるということになっていました。90年代半ばになって、ようやく薄れてきました。エネルギー問題は非常に大切、今から解決しなければならないということで、90年代半ばから2000年にかけて、エネルギー教育をやろうと声をかけたらいろいろな先生に集まっていただいた。エネルギー教育は北海道で関心が高いのですが、広島もそれに次ぐ県だと思います。今後ますます学校教育の中でいろいろな形で子どもたちを育てていかなければと思っています。

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