雑誌「Energy for the Future」に当機構 近藤理事長の記事が掲載されました

雑誌「Energy for the Future」(第41巻第1号通巻161号、2017年1月5日 ナショナルピーアール社発行)に、近藤理事長のインタビュー記事が掲載されました。「地層処分問題解決のエッセンス」と題して、高レベル放射性廃棄物の最終処分問題について語っています。

[参考:雑誌記事 PDF(内容は同一)]

 

地層処分問題解決のエッセンス

~近藤駿介理事長(原子力発電環境整備機構)に聞く~ 

 

 

全国行脚で言っていること 

 

 2015年5月に最終処分法に基づく基本方針が改定され、対話の重要性が強調されたこともあり、熱心に全国を回って説明しておられますが、手応えは如何ですか。(*E・・・Energy for the Future 記者)  

 

近藤 原子力発電環境整備機構(NUMO)は、2014年は単独で、2015年からは国と共催するものも加え、全国各地で高レベル放射性廃棄物の地層処分実現の重要性とその安全確保の考え方、処分事業の姿、処分場の立地に至る手続き等に関して説明し、質疑応答の時間を持つ「地層処分シンポジウム」を行ってきました。その結果、この事業の実現を目指すには、皆さまに私どもの人となりを知っていただき、地域の発展に気配りする、技術的に信頼できる「良き隣人」と思っていただけることが大事であると考えるに至り、2016年の夏からは「地層処分セミナー」、秋からは「地層処分に関する意見交換会」というタイトルのもと、私どもの職員が、専門家の支援も得て、参会の皆さまとテーブルを囲んで対話する取組みに力を入れるものに変更しました。

2000年に最終処分法が制定され、処分事業の実施主体としてNUMOが設立され、2002年から文献調査の受け入れ自治体の公募を開始して以来、2007年に高知県東洋町から文献調査に応募があったのが唯一の動きです。福島事故以来、原子力に関係する多くのことに懐疑の目が向けられる社会的雰囲気の中ですが、この取組みを前進させることは現世代の責任であり、自分たちはその取組みの担い手として力を尽くす覚悟であることを対話を通じて国民の皆さまに伝え、またご要望を伺いなさい。誠意は必ず伝わりますと職員を激励して、これまでに全国26箇所で行なってきました。

手応えは?というご質問ですが、今は、専門家の協力を得ながら最新の知見を踏まえて取組みをしていること、様々な可能性を考えながら慎重に進めようとしていること、実施段階では地域の一員として生きていくことを対話を通じて伝えています。そうすると熱心に聞いてくださり、鋭い質問が投げかけられます。そして若い人や主婦の中には、一緒に考えようと議論をリードしてくださる方も出てきています。そういう状況を見て、どの会場でも感謝の気持ちで一杯になります。 

  

 参加者からは、どんなことを言われますか。

 

近藤 大別すれば、危険なものなら地上の目の届くところで管理するべきなのにどうして地層処分なのか、どうして今なのか、一箇所なのか、4万本のガラス固化体を処分する処分場なのかというご質問、それから火山、地震が頻発し、欧州大陸と比べて地質が若い日本列島で安全な地層処分ができるのかという安全性に関するご質問、廃棄体の性質や輸送方法、地層処分場の規模、処分方法、地下の坑道における湧水の問題、閉鎖後のモニタリングなど、処分場そのものについてのご質問、そして、海外ではどうしているかという質問を含む、私どもが予定している立地プロセスに関するご質問となります。さらには日本学術会議の提案に「総量規制」という言葉があったことを受けてか、核のゴミをこれ以上出さないことをまずは決めるべきではないか、という原子力政策に関するご意見もあります。

このことも踏まえ、この頃は冒頭挨拶で、「NUMOは原子力発電で発生する放射性廃棄物のうち、発熱性及び半減期が長いものの地層処分を使命にしています。地下深いところは一般に物質の移動が大変遅く、地上の自然現象や人間活動の影響が及びません。そこで、こうした性質が長期間、安定に維持される岩盤を選んで、300mより深いところにこの廃棄物を金属容器に入れ、周りを粘土で囲って埋設するのが地層処分です。

この廃棄物の放射能は当初は大変高いのですが、時間とともに減衰し、岩盤の種類にもよりますが、2万年位経ちますと、そのほとんどは粘土のところに止まっていると予測されますが、処分場の地上から地下1000mまでの岩盤に含まれている天然放射性物質の総放射能より低くなります。ですから、この地層処分に今から取り組んで実現させますと、原子力発電にエネルギーを依存しなくなった将来の人々にこの廃棄物の管理の負担を残しません。そこで、原子力発電の利益を享受してきている世代にとっては倫理面からも合理的な処分法ということで、世界各国で推進されています」と申し上げています。 

 

 地下には天然の放射性物質が含まれていて、それが発する自然放射線による人の被曝は年間0.33mSvと聞いていますが、地層処分とはそういう性質の地下が有する物質を閉じ込める特性に放射性物質を委ねることなんですね。そうすると肝心なことは、安定した地盤を見出すことですね。 

 

近藤 ええ、ですから火山や活断層の近傍を避けて、処分場に適した地下環境のある場所に処分場を設置したいので、そのための調査を行いたいのです。でも、たとえ文献資料を集めて机上で調査をするにしても、他人の土地のことを勝手に調べるわけにはいかないので、自治体に「私たちの地下を調べてもいいですよ」と言ってもらいたいのです。その許可をもらったら、晴れて「文献調査」という段階に入ります。ただ"文献"だけでは本当の地下のことは分かりませんから、学術文献でこの辺は火山からも遠く、地下には活断層もなさそうだし、地形から見て深いところの地下水の流れも速くなさそうだと判断できたら、その辺りの10〜20kmの範囲で物理探査やボーリング調査を行うという計画書、これ、次の段階である「概要調査」の計画書になりますが、そのようなものに調査結果をまとめ、次にこういう調査をやらせていただきたいとお願いすることにしています。 

 

 ただ、なかなか「調べてもいいよ」とは言ってくれません。何故でしょうか。 

 

近藤 一つには、放射性廃棄物に対する不安感です。特に福島事故の後ですから、処分場の事故が怖いという声をよく聞きます。そして、10万年も管理するなんて「人間のおごり」という人も多く、おっしゃった自然に委ねるのだという共通理解が成立していません。

ただ、この処分に向けての取組みの必要性は多くの方にご認識いただいていますので、スウェーデンやフィンランドで処分場を受け入れた自治体の皆さまは、これをどういうものと考えているのか、聞いていただいたらと思って、そうした取組みも行ってきています。今、各自治体は地域創生に取組んでおられますから、その一環として、海外視察の計画にこうしたところへの立ち寄りをお考えいただけたらとも思っています。

もう一つは、行政サイドには、文献調査受け入れのお願いの書類を送られただけで、都市計画の観点から中身をきちんと学習しないで調査を受け入れたら、何がなんだかわからないうちに処分場を押し付けられるのではという心配や、原子力問題はどうしても人々を駆り立てやすいから、そもそも検討対象にすることすら面倒、したくないとの考えもあるのでしょう。私どもは、学習にはできるだけ協力しますし、かつて高知県東洋町で当時の町長から文献調査の応募をいただき、調査の準備を開始しましたが、その後反対派の町長が誕生して応募が取り下げられたため、調査に入りませんでした。このようにダメだと言われたら止めますので、心配にはおよびませんと申し上げています。

それから全国に1700自治体がある中で、どうして自分たちが手を挙げなくてはいけないのかという感覚もあると思います。他方で、私どもとしても、科学的、技術的に安心して事業ができる場所を決めなければいけませんから、何箇所かで調査を行い、その途中で地域社会から「処分場を受け入れますよ」と言われても、いろいろな調査を突き合わせて、安全最優先の観点からここが一番いいというところ以外には「残念ながらできません」と言わなくてはいけないということもお伝えしています。 

 

  

◆科学的有望地に関するマップ 

 

 そこは、これから国が示す「科学的有望地に関するマップ」に関係しますね。 

 

近藤 そうです。海外の事例も参考にしながら、日本地図を調査に適さない土地、調査する意味のある土地、より調査する意味がある土地の3色に色分けして公表し、自治体が都市計画を考えるときに、地域発展手段の選択肢にこの処分場の受け入れを加えるかどうか検討するための調査のきっかけになればと、国はその色分け基準の整備を進めてきましたが、今は最終段階です。 

 

 その基準って、具体的にはどういうものでしょうか。 

 

近藤 「処分後の長期の安全性」の観点からは、火山から半径15km内や活断層の近傍を避けること、「建設・操業時の安全性」の観点から、軟弱な地盤や火砕流の影響範囲を避けること、また、「輸送時の安全性」の観点からは、海岸からの距離が短い方が良いといったことです。 

 

 鳥取西部地震のように、活断層があるとは知られていない場所でも地震が起きますよね。そういう想定外というか、未知の問題についてはどのように答えておられるのですか。 

 

近藤 大事な点です。まず、活断層については、地表に割れ目が出ている活断層は、マグニチュード7以上の地震を引き起こすもので、もっと小さな地震を引き起こす活断層は地上では見えていないことが多いのです。そこで、原子力発電所の立地と同様に、概要調査段階で様々な物理探査法を用いて周辺一帯の地下の断層調査を行い、活断層と思われるものが地下深くまで調べて見つからないところで事業をするように、最善の努力をします。

その上で、施設の設計にあたっては、想定外のことが起きても破局的な結果には至らないことを"what if"シナリオの解析等を通じて慎重に確認することにしています。これが福島事故の最も重要な反省ですから、設計チームには、この分析に関して絶えず研鑽を積み、その成果を人々の伝えるように言っています。

もう一つは、マップで適性があるとされた地域であっても、実際に地下の様子を調査したら、ここは適していないと結論しなくてはならない場合もあります。このマップの準備の最終段階と申し上げましたが、そこでの最大の課題は、そんな可能性があるのに適地といって、国民から参考になったと言ってもらえるのか、誤解されないかについての見極めと聞いています。 

 

 最終処分のコストについて聞かれることはありませんか。 

 

近藤 ありますよ。私どもは、4万本のガラス固化体と長半減期低レベル廃棄物の処分を行うこと、その処分事業の総費用は3.7兆円と想定していることを申し上げています。処分場の概略設計で費用を試算した際に、処分場の規模を大きくしていくと一本あたりの処分費用が小さくなっていきますが、4万本を超えるともうあまり変わらないので、これ以上処分できる処分場を作ることにしたのです。当時の予測では、高レベル放射性廃棄物の発生量が4万本に到達するのは2030年代になると予想されたと記憶していますが、現在のように原子力発電規模が収縮した状態が続けば、そうした発電量になるのはもっと先になるでしょうね。

そう説明すると、「今の電力会社に4兆円も払えないのではないか」とおっしゃる方もいます。これに対しては、2000年にこの処分を実施するための費用を原子力発電量1kWhあたり10銭程度と試算し、お支払いいただいた電気料金の中から、相当分を私どもの事業のために拠出いただいており、既に1兆円を超える金額を積み立てていますと説明しています。 

 

 国や機構への信頼問題を言う人はいませんか。 

 

近藤 原子力発電の恩恵を享受した世代の責任として、この事業に今から取組むことは重要だとの認識は、多くの人々が持っていただけると思っています。他方、人々は、こうした公共業務に従事する者を信用しなければ、社会は成立しないことも認識しています。だからこそ、失敗や不祥事があると、何たることか、しっかりしてくれとなじり、時には、お前はもう信用できないから、担当者を変えろという。それは当然のことでしょう。

ですから、私たちは、人々との対話を通じて、様々なオプションや曖昧な点を協議し、事業を設計し、これに対する目配り、気配りをこれでもかと徹底し、それをよく説明して、人々から信頼していただけるようにする義務があるのです。対話の輪を広げ、研鑽に研鑽を重ねて、信頼に足る組織だと言っていただけるよう、努力しているところです。 

 

  

迷惑施設のイメージ払拭は我々の責務 

 

 原子力発電の現場では、六ヶ所再処理工場が稼働しないから使用済み燃料の搬出が叶わず、サイト内貯蔵の余裕がなくなってきていることから、早く中間貯蔵をやりたいという切迫した理由があるわけです。でも、地元には「なし崩し的に最終処分場になるのではないか」という心配があります。 

 

近藤 それは誤解です。私どもは高レベル放射性廃棄物、つまり再処理工場で発生した廃棄物を処分するのが仕事です。他方で、使用済み燃料の最終処分は、国際常識では、やはり地層処分によるのが合理的であるとされていますから、それを行うとすれば、私たちが苦労しているような取組みをきちんと行なって適地を見つけなければならないのです。

六ヶ所再処理工場がまだ稼働しないのは、新規制基準に対応するのに時間を要しているからです。その製品を使う原子力発電所がきちんと稼働しないことには、再処理工場が稼働しても意味ありませんので、基準適合性審査のこの順番は正しいのです。

そのようにおっしゃるのが、約束を違える者と見ての不信の故なら当事者間の問題ですが、最終処分場は迷惑施設とのお考えがそこにあるとしたら、私どもとしては悲しいですね。私どもは私どもの施設を地域の皆さまと相談しながら、知恵と工夫で地域の持続的発展に役立つ施設にしたい、そうできなくては受け入れられることはないと、職員を叱咤激励しています。ですから、国民の皆さまには迷惑施設と決めつけないで取組みを応援していただけることを希望しています。

ただ、施設への廃棄物の搬入で一般道路を使用するとすれば、道路を一時的に占有しますから、市民生活に迷惑が生じることは確かです。ですから、地形にもよりますが、月に2回ほどならいいかと言っていただけるのか、あるいは港湾から処分場まで専用道路を作るかは地元の皆さまと相談して決めたいと思っています。

先日、来日されたスウェーデンのエストハンメル市の市長は、早い段階に行われた経済社会影響調査で、地層処分場の受け入れは処分事業者の投資による雇用や生活インフラの充実、各国からの来訪者の増加等から、地域がその周辺も含めてハイテクが集積する工業地帯になるという展望を持っていると強調していました。

国内でも、最近の廃棄物処分場には経営者の美意識が感じられるものが生まれています。国民の生活必需施設である以上、それを美しいもの、地域が誇りに思えるものにすることは、事業者に対する地域の、そして国民の信頼の源泉ではないかと、絶えず考えています。 

 

 ありがとうございました。