事業報告書

I. 原子力発電環境整備機構の概要

1.業務の内容

1-1 目的

 発電に関する原子力の適正な利用において、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分は、最重要課題の一つである。
 原子力発電環境整備機構(以下、「機構」という。)は、特定放射性廃棄物の最終処分の実施等の業務を行うことにより、原子力発電に係る環境の整備を図ることを目的とする。

1-2 業務内容

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)及び同法第20条の規定に基づく別の法律で定める安全規制に従って、次の業務を行う。

  • 1) 最終処分業務(同法第56条第1項第1号及び第2号)
    • 概要調査地区等の選定を行うこと。
    • 最終処分施設の建設及び改良、維持その他の管理を行うこと。
    • 特定放射性廃棄物の最終処分を行うこと。
    • 最終処分を終了した後の当該最終処分施設の閉鎖及び閉鎖後の当該最終処分施設が所在した区域の管理を行うこと。
    • 拠出金を徴収すること。
    • 上記01.から05.に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
  • 2) 委託を受けて行う業務(同法第56条第2項)
    • 経済産業大臣の認可を受けて、受託特定放射性廃棄物について、特定放射性廃棄物の最終処分と同一の処分を行うこと。
    • 上記1)01.から04.及び2)01.に掲げる業務のために必要な調査を行うこと。

2.事務所の所在地

東京都港区芝4丁目1番23号 電話番号(03)6371-4000

3.役員の状況

2018年3月31日現在の役員は、次のとおりである。

理事長 近藤 駿介  
副理事長 藤 洋作  
専務理事 中村 稔  
理事 地域交流統括 宮澤 宏之  
理事 梅木 博之  
理事 伊藤 眞一  
理事 小野 剛  
理事(非常勤) 井手 秀樹 (慶應義塾大学 名誉教授)
理事(非常勤) 廣江 讓 (電気事業連合会 副会長)
監事 上野 透  
監事(非常勤) 鳥井 弘之 (株式会社日本経済新聞社 社友(元 論説委員))

4.評議員の状況

2018年3月31日現在の評議員は、次のとおりである。

高橋 恭平(議長) 昭和電工株式会社 相談役
山地 憲治(議長代理) 東京大学 名誉教授
公益財団法人地球環境産業技術研究機構 理事・研究所長
大江 俊昭  東海大学工学部原子力工学科 教授
勝野 哲  電気事業連合会 会長
久住 静代  中間貯蔵・環境安全事業株式会社 監査役
児玉 敏雄  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 理事長
西川 正純  元 柏崎市長
崎田 裕子  ジャーナリスト・環境カウンセラー
特定非営利活動法人持続可能な社会をつくる元気ネット 理事長
城山 英明  東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院 教授
田中 裕子  フリーアナウンサー
元 NHKアナウンサー
長辻 象平  株式会社産業経済新聞社 論説委員
中村 多美子  弁護士
西垣 誠  岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授(特任)
東原 紘道  東京大学 名誉教授
元 独立行政法人防災科学技術研究所
地震防災フロンティア研究センター センター長

5.職員の状況

2018年3月31日現在の職員数は、116名である。

Ⅱ.業務の実施状況

【概要】―― 中期事業目標の実現に向けた取組み状況について

(対話活動)

 社会のみなさまに地層処分事業に対するご理解を深めていただき文献調査の受け入れの実現を目指す対話活動においては、まず、国からの科学的特性マップ(以下、「マップ」という。)の提示に向けて、複数の新聞広告や全国シンポジウムによる情報提供を重点的に実施した。また、マップ提示後には理事長からの挨拶文と新たなパンフレットを全国の自治体等へ送付し、「科学的特性マップに関する意見交換会」(以下、「意見交換会」という。また、「全国シンポジウム」と「意見交換会」をあわせて「意見交換会等」という。)を開催するなどして、マップ並びに地層処分事業に対するご理解の醸成に努めた。意見交換会等の開催に際しては、地方新聞社や大学、各地域の諸団体等への訪問、WebメディアやSNSメディアを活用した告知広報等を連動して実施した。

 また、地層処分の実現を「我が事」として考えていただくことを期待して、各地域の諸団体が行う学習活動への支援を拡充した。学習の進展に伴い諸団体との意見交換等も重ねてきており、いただいたご意見は適宜、対話活動全般や学習支援の拡充策等に反映した。

 更に、地層処分事業は現世代を超えて長期にわたることに鑑み、夏休みの親子見学会の開催、地層処分模型展示車の全国巡回、教育関係者によるワークショップへの支援、大学等における出前授業、大学のディベート授業への協力等により次世代層を対象とする対話活動にも積極的に取り組んだ。

 また、これら諸活動の目的を明確化し、その進め方を機構全体で共有するため、中期事業目標に基づいて定める「対話活動計画」を策定するとともに、2016年度の対話活動成果の自己評価と評議員会による評価・提言を踏まえた新たな活動目標の設定や対話活動要員の育成等にも取り組んだ。

 こうした多様な対話活動においては、多くの参加者から「地層処分事業に協力する地域の人々に対して敬意や感謝の気持ちを持つことが重要と思う」との声が聞かれた。このため、中期事業目標に定めた「文献調査を受け入れていただく地域に対する敬意や感謝の念が国民の間で共有される」ことに関しては、対話活動への参加者においては一定の理解が得られつつあるものの、今後もより広く国民のみなさまのご理解が得られるよう、一層努力していく必要があると考える。

 しかしながら、後述する「意見交換会の不適切な参加者募集に関する事案」(以下、「事案」という。)の発生により、今回の意見交換会の実施方法は2017年12月にいったんリセットし、対話活動の改革を喫緊の課題として対応策の検討を進めた。具体的には、評議員会及び「対話活動改革チーム(若手職員を含む部門横断チーム)」から改革に向けた提言を得て「対話活動改革アクションプラン」を定めた。2018年度以降も地域における関心の高まりを社会全体で支援していただけるよう環境を整えるため、引き続き全国を対象とする対話活動に取り組みつつ、中期事業目標に定めた「地域の方々への積極的な情報提供と意見交換」、すなわちマップに示されたグリーン沿岸部地域を中心に、地域特性に応じて多様な説明会等を柔軟に開催し、一層きめ細く対話活動を実施することで、事業への関心喚起に努めることとなった。

(技術開発)

 長期の事業展開を見据えて技術的信頼性の向上を目指す技術開発の取組みにおいては、「包括的技術報告書」の公表に向けて、その内容を更に充実させた。あわせて関連する技術開発成果の学会発表や論文発表を積極的に行い、関係学会等の専門家との情報交流に努めた。同報告書の公表を念頭に置いて中期事業目標に定めた「一般の方々を含めて広く分かりやすく積極的にコミュニケーションを図る」ことについては、実施には至らなかったが、同報告書の内容を基に地層処分の技術について幅広い読者を対象に解説した冊子(導入編)のドラフト版の改訂を進めるとともに、日本原子力学会によるレビューの準備などを進めた。

 また、「地層処分事業の技術開発計画」(「中期技術開発計画(2013年度~2017年度)」)に基づき、機構の技術力及び品質管理能力の向上を図る観点等から実施内容や実施時期を適宜見直しつつ、地質環境特性の調査・評価、人工バリアの設計・施工技術等の工学的対策、事業期間中の安全確保、閉鎖後の長期安全性評価等に関する各種技術開発を計画的に進めた。

 更に、同報告書の作成過程で得られた知見を基に、今後実施すべき技術開発の課題等を整理して、国による地層処分研究開発調整会議等に報告した。同会議では、機構のリーダーシップのもと、専門家の評価・提言を踏まえつつ関係機関が協議・調整し、「地層処分研究開発に関する全体計画(平成30年度~平成34年度)」(以下、「全体計画」という。) を策定した。全体計画は経済産業省ホームページで公開された。これを踏まえて機構の新たな「中期技術開発計画(2018年度~2022年度)」の策定に取り組み、ドラフトを策定した。

 これらのことから、中期事業目標に定めた「文献調査、概要調査等の事業展開の各段階に備えた技術開発に関する総合的な計画を随時見直し、これを着実に推進する」こと及び「実施主体としてのリーダーシップと企画力をもって我が国における処分技術に係る技術開発全体を俯瞰し、その整備と向上を牽引する」ことに関しては、今後とも継続的に取り組んで一層向上させていく必要はあるものの、概ね進展しつつあると考える。

 このほか、技術マネジメントに関しては、委託業務や地質環境調査・評価に係る品質保証活動の充実に努める一方、2016年度の技術開発成果の自己評価と評議員会による評価・提言、技術アドバイザリー委員会等からの助言を得て、地層処分技術の品質と信頼性の更なる向上を図った。更に、人材育成に関しては、特に若手職員を国内外の関係機関等との共同研究や国際共同プロジェクトへ参画させるとともに、対話活動へも技術系職員を積極的に参加させて対話力の研鑽に努めた。また、こうした技術マネジメントの今後の進め方については、地層処分研究開発調整会議に報告し、全体計画及び中期技術開発計画(2018年度~2022年度)に反映するとともに関係機関の協力も得ながら2018年度以降に一層強化していくこととした。

(組織運営)

 人材育成など事業基盤の高度化を目指す組織運営においては、中期事業目標を実現するための各種計画を策定・検討したほか、理事会の定期的な開催、評議員会による評価・提言の事業実施への速やかな反映、機構自身による自己点検、内部監査の実施、後述の事案発生を踏まえた理事長直属のリスク管理室の設置を含むリスクマネジメント活動の展開、労働時間管理の適正化等に係るコンプライアンスの徹底、サイバー攻撃への対応に係る情報セキュリティ対策の強化等、様々な施策を通じてガバナンスの一層の強化に努めた。

 また、新卒者の採用や出向者のプロパー化等により人材確保を着実に進めるとともに、部門別の長期的な人材育成計画である「目指すべき人材像と部門別育成計画」を策定したほか、eラーニングの導入や自己啓発支援の拡充を進めた。更に、コスト低減を意識した取組みや一者応札を改善する取組みを部門横断のチームで進めたほか、社会の動向を踏まえてワークライフバランスを意識した働きやすい職場環境作りを進めた。

 これらのことから、中期事業目標に定めた「必要となる人材の規模や職能を明らかにし(中略)計画的に要員の確保と育成を進める」こと及び「様々な手立てを通じて事業効率化を徹底する」ことに関しては、取組みに一定の進展が得られつつあると考えられる。しかしながら、「組織体制の整備と充実ならびにリスク管理などを含めた的確な運営等を通じて、ガバナンスの高度化及び職場総合力の向上と活性化を図る」ことについては、次に詳述する事案に鑑み、原因の究明に基づく再発防止と抜本的な見直しを行った。

【意見交換会の不適切な参加者募集に関する事案と再発防止等に向けた取組み】

 マップの提示後、国と機構は9月から全国9ブロックで自治体説明会を実施し、10月からは全国の都道府県庁所在地において意見交換会を開始した。これに関し、11月、参加者募集の委託業務等において不適切な取扱いが行われていたことが判明したため、評議員会に調査チームを設置し事実関係の究明と再発防止策の検討をしていただいた。

 調査チームからは、再委託先から参加者の一部へ謝金・サービスの提供を約束した参加の呼びかけが行われたこと及び機構職員から電力関係者に参加を要請したメールを発信したことが判明し、いずれも発言誘導の事実は認められなかったが、リスク管理体制の確立やシンポジウム等の告知や参加呼びかけに関し、その内容、対象者の範囲及び方法等について明確な基準を定め、内部に周知徹底することが必要、との調査報告を受けた。

 また、評議員会からは、

▶ 地層処分事業においては事業遂行の各過程において常に公正性と信頼性が確保される必要があるところ、業務委託のあり方に問題が存在したのみならず、リスクマネジメント体制が不十分であることから、多様なリスクを予見し組織としてその顕在化を未然防止する仕組み等を強化する必要があること

▶ 意見交換会においてはその趣旨目的に照らして適切な設計や運営がきめ細かく検討されるべきところ、ともすれば供給者目線に偏っていることから、活動目的の明確化と参加される方々の目線に立った創意工夫を行い、対話活動のあり方を改革していく必要があること

等が指摘され、今回の意見交換会の実施方法をいったんリセットすることと、「再発防止の徹底」、「対話活動の改革」、「組織改革と人材育成」の三点からなる「再発の防止及び組織の改革に向けた提言」をいただいた。

 この提言を踏まえて、再発防止の徹底に関しては、理事長直属の「リスク管理室」を設置するとともに再発防止に係る諸対策(業務委託を含む業務におけるリスク管理、説明会等のルールの整備及び試行、対話活動改革チームの設置、報告・連絡・相談の文書化・共有化の徹底、組織改革と人材育成、など)を取りまとめ、これらを可及的速やかに実施し、中長期的な対策については「2018事業年度事業計画」へ反映して継続的に取り組むこととした。

 対話活動の改革に関しては、これまでの取組みを反省して、開催趣旨や目的の明確化、会合の公正性を確保するための運営ルールの策定、参加される方々のニーズ・目線の重視や「手作り・直営実施」を基本とする運営方法の再検討等を行った。そして、これらの見直し策を反映した会合として対話型全国説明会を試行してその妥当性を検証する等、再開に向けて準備を進めた。これらに加え、「対話活動改革チーム」を設置し、これまでの対話活動を振り返り、その課題の分析・評価を行うとともに、外部専門家の助言や類似公益事業における事例等を参考に検討を重ね、IT・インターネットの双方向通信機能を活用した新たな取組みに挑戦すべき等の提言を取りまとめた。これらの検討結果については評議員会に報告し、その審議を踏まえて「対話活動改革アクションプラン」として策定した。

 組織改革と人材育成に関しては、地域交流部から総務部への報道業務の移管、リスク管理室によるリスクマネジメント活動の強化、更には、規程類の改定による業務委託管理の強化等を図った。また、職員のプロパー比率の向上や中長期的に実施していく海外実施主体等との人材交流、専門能力を有する職員の採用等に関しては「中期人材確保・育成方針」へ反映して着実に取り組んでいくこととした。

1.2017事業年度における個別業務の実施状況

1-1 幅広い対話活動の継続

  • 1) 全国各地を対象とした多様な対話活動の継続
    • マスメディア・Webメディアを活用した広報活動
       地層処分の安全性や必要性等に関する全国的な認知を高め、関心を喚起してご理解を獲得するため、多様なメディアを複合的かつ効果的に活用して広く情報提供を行った。メディアの活用に際しては、年代や性別等により異なっている利用状況や費用対効果等を踏まえ、伝えたい相手に伝えたいことが届くよう効率的に媒体を選択した。
      • マスメディア広告等
         意見交換会等の開催に際しては、以下のとおり開催都市をはじめとする周辺地域のみなさまへ広くお知らせし、関心の喚起と参加の呼びかけに努めた。
        <全国シンポジウム開催時(5~6月)>
         新聞広告(地元紙9紙)、テレビCM(地元局8局)自治体ホームページへのバナー広告(開催都市8自治体)、その他Web広告、ポスティングを実施。
        <意見交換会開催時(10~11月)>
         新聞広告(地元紙等26紙)、自治体広報誌、自治体ホームページへのバナー広告(開催都市19自治体)、ポスティングを実施。
         また、マップの提示前には、マップの意味をはじめ地層処分に関する様々な情報を提供するため、オンライン版を含む複数の新聞等を組み合わせ、報道や解説記事、有識者の鼎談やインタビュー記事等からなる多様な広告を実施した。
      • ホームページ
         国によるマップの提示と同時に機構ホームページ上にマップに関する特設ページを開設し、マップや各種パンフレットなどを掲載した。また、カラー表示のマップを白黒でも判別できるよう新たに作成して追加掲載するなど、利用者の利便性を考慮した改善を図りながら、タイムリーな情報発信を行った。
         また、次世代層向けに「夏休み大作戦2017」特設ページを開設し、機構が開催する夏休みイベントや自由研究テーマ等を紹介した。
         更に、「よくあるご質問(FAQ)」について、掲載内容を順次拡充するとともに毎月の注目ワードランキングを表示するなど、利用者の利便性の向上を図った。
         これらのほか、過去のコンテンツの見直しやデザインの変更、スマートフォンへの対応等により改善を進めた。
      • SNS及びメールマガジン
         メールマガジンは月2回の定期発行をベースに継続的に発信し、各種のイベントに関する情報や事後広報等を行った。
         Facebookは週1~2回の記事投稿を行うとともに、新たなSNSとしてInstagramを開始した。
    • シンポジウム、意見交換会の実施
       地層処分事業に関する説明と少人数形式での双方向対話を行う意見交換会等を全国で開催した。地層処分の安全性(リスクとその安全確保策)や必要性に加え、マップの意味、事業の進め方や地域との共生の考え方等について説明し、参加者の関心や疑問にお答えするとともに、少人数のグループ質疑で全員が意見を述べ合い議論することを通じて参加者と機構が相互にコミュニケーションを深めるなど、きめ細かな対話に努めた。
      • 全国シンポジウム
        いま改めて考えよう地層処分 ~科学的特性マップの提示に向けて~
        (9都市、参加者数1,390人)
        (主催) 国と機構の共催
        (時期) 2017年5~6月
        (開催都市) 東京、富山、福岡、札幌、高松、仙台、名古屋、広島、大阪
        (概要等) 国及び機構からこれまでに取り組んできた対話活動の内容やマップの意味について説明し、マップの提示後の対話活動の進め方等に関してパネルディスカッションを実施した。
         マップの提示への関心の高まりから、多くの報道機関から取材を受け、地方紙を中心に全国紙や全国放送局においても報道された。

        全国シンポジウム(札幌会場)
      • 科学的特性マップに関する意見交換会
         「科学的特性マップ」をきっかけに、高レベル放射性廃棄物について、一緒に考えましょう。(28都市、参加人数1,611人)
        (主催) 国と機構の共催
        (時期) 2017年10~12月
        (開催都市) 東京、栃木、群馬、静岡、愛知、和歌山、大阪、奈良、兵庫、埼玉、神奈川、山梨、福岡、熊本、岩手、秋田、岡山、広島、佐賀、長崎、三重、宮城、長野、山形、山口、大分、鹿児島、宮崎
        (概要等) 第一部で国及び機構から地層処分事業の概要、マップの内容、今後の対話活動について、また電力会社(発電用原子炉等設置者)から対話活動の取組みについてそれぞれ説明し、質疑応答を実施した。第二部では少人数グループに分かれて質疑応答や意見交換をきめ細かく実施した。
         参加者アンケートでは、地層処分事業に対する肯定的な意見が説明前と比較して説明後にはほぼ全ての項目で上昇した。一方で否定的な意見は説明前と比較して説明後には全ての項目で減少した。(表1)
         また、機構職員の対応姿勢等に関する肯定的意見は、ほぼ半数の方から評価をいただいた(表2)。

        <表1「地層処分に関する考え方」の説明前後の変化(第二部までの参加者:単位%)>

        ※数字は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計
         カッコ内数字は「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」の合計

        表1「地層処分に関する考え方」の説明前後の変化(第二部までの参加者:単位%) <表2 機構職員に対する肯定的意見の割合>
        表2 機構職員に対する肯定的意見の割合
        なお、当初計画では福島県を除く46都道府県庁所在地で開催することとしていたが、前述の事案が発生したことから、28都市での実施をもっていったんリセットした。

        意見交換会(仙台会場)
      • 「自治体説明会」への参加
         マップの提示の前後に国主催で実施された「46都市都道府県自治体説明会」及び「9ブロック自治体説明会」に地層処分事業の実施主体として参加し、事業の概要や地層処分のリスクと安全確保策、マップの提示後の対話活動の進め方、地域との共生に向けた考え方等について説明した。
    • 報道関係者への情報提供
       地層処分事業に関する話題を報道で取り上げていただくため、全国紙及び地方紙等の記者を対象に勉強会や施設見学会を開催した(勉強会:24回、施設見学会:2回)。勉強会等に参加した記者からは「地層処分は技術的に難解なところがあるので勉強会で理解が深まり大変に満足」等、高評価を得た。
       また、意見交換会等の開催に際しては、開催地域の記者会などを事前に訪問して取材案内を行うとともに、地元の新聞社へ機構幹部が訪問して地層処分事業の現状や機構の取組み、意見交換会等の開催目的や実施概要等を丁寧に説明するなど、タイムリーな情報提供に努めた。その結果、事前告知記事の掲載や開催結果の報道につながった(告知記事53件、開催結果記事251件)。
       このほか、包括的技術報告書等の技術開発に関する取材や役員へのインタビュー等の個別取材についても丁寧に対応し、記事化につなげた(記事化14件)。
    • 各地の勉強会・団体への継続した支援と拡充
       地層処分を自分のこととして考えていただくことを期待して、全国各地の諸団体に対し適切な学習活動支援を行うとともに、その活動成果が広く社会と共有され地層処分に対する関心喚起につながるよう情報発信への支援にも取り組んだ。
      • 学習の機会提供事業
         地層処分に関する勉強会等を自主的に行う全国各地の諸団体(111団体)の活動に対し、勉強会、施設見学会、情報提供等の支援を行った。今年度より企画書の提出を参加要件にして支援する仕組みとしたことや活動成果の情報発信に精力的に取り組んでいただくよう提案したことから、複数の団体で発信力のある活動(シンポジウムの開催や活動内容を紹介するネット動画の制作等)をしていただいた。更に、当初の想定を超える申込を受けたことから、期中に支援枠の追加を行って事業の拡充を図り、諸団体のニーズに対応した。
         年度末には諸団体の代表者等が一堂に会する交流会(国が実施する同様の事業との合同開催)を東京で開催し、活動成果の発表やグループ討議、有識者からの講評等を通じて、機構職員と諸団体の間、また諸団体同士の間での関係づくりを行った(76団体参加)。過年度より継続して取り組んできたことから多様な人的ネットワークが構築され、「更なるエネルギー教育が重要」「若い世代も大切だが、シニア世代の活力を生かすべき」「推進・反対と態度決定する前に自分ごととして考えることが重要」等、有意義な意見交換を行うことができた。
      • 経済団体等の勉強会・施設見学会開催への支援
         全国各地の経済団体(108団体)に対して、説明会(出前説明)や施設見学会を支援するとともに、マップの提示に際しては全国シンポジウムや意見交換会の事前事後に訪問して開催案内や実施結果説明を行うなど、きめ細かな情報提供を行い、事業に対する関心喚起とご理解の獲得に努めた。
    • 次世代層向けの対話活動の継続
       地層処分事業は現世代を超えて長期にわたることに鑑み、次世代層向けの対話活動に継続的に取り組んだ。親しみやすく分かりやすい情報発信に努め、各種のイベントへの出展、体験型コンテンツの工夫、教育関係者とのワークショップ等を展開した。
      • 地層処分模型展示車(ジオ・ミライ号)イベント等の実施
         次世代層やその家族との対話機会の拡大を図るため、これまでイベント等の出展実績がなかった10県へ地層処分模型展示車やベントナイト実験等のブースを出展するとともに、経済産業省子どもデー、東京国際フォーラムの夏休みイベント「丸の内キッズジャンボリー2017」へのブース出展、科学技術振興財団や日本原子力学会との協働による夏休み特別イベント「地層処分わくわくポイントラリー@科学技術館」の主催などにより、全国各地で次世代層向けのイベントを開催した(35か所、60日間、25,980名参加)。展示車を使用したイベントでは、3Dアニメーションの上映やベントナイトを用いた理科実験等を通じて体験型で親しみやすい情報提供を行うとともに、新たに「放射線測定器」、「霧箱」や関連パンフレット等を用いて放射線に関する情報提供も行った。
         また、数千万年前に形成された岩盤や一万年前に降った雨水、地下世界の特徴や研究の様子を親子で実感していただく取組みとして、昨年に続き日本原子力研究開発機構の協力を得て瑞浪超深地層研究所の見学会(「親子サマーツアー 2017」)を開催した(9組18人参加)。参加者からは「高レベル放射性廃棄物の地層処分のことや現在の保管状況などを色々な人に知ってもらいたい」(中学生)、「地上に置くより地下に埋めるほうがよい。高レベル放射性廃棄物の出ない安定した発電方法ができるといいと思う。以前は心配だったが、地下を見て不安がなくなった」(小学生)等の感想を得た。

        ジオ・ミライ号での実験(広島)

        丸の内キッズジャンボリー2017への出展

        わくわくポイントラリー@科学技術館の主催

        アドフェスへのテーマ提供
      • 教育関係者ワークショップ
         学校教育の場においても地層処分を取り上げていただけるよう、全国の教育研究会組織等(10地域10団体)が行う授業研究に係るワークショップ活動に対し、資料の提供、関連施設の見学等の支援を行った。年度末には東京で全国研修会(183名参加)を開催し、全国各地12校の先生方から、小学校・中学校・高校の各段階における理科・社会科・家庭科・総合的な学習の時間などの授業実践に関して多岐にわたる報告をいただき、熱心な質疑や意見交換が行われた。過年度より継続して取り組んできたことから先生方とのネットワークが構築され、授業化の実践のみならず様々な相談や意見交換を行うことができた。
         加えて、地層処分に関する授業実践を勧奨するため、全国の教育委員会やエネルギー教育モデル校など約1,500か所へ基本教材や学習指導案を紹介する案内状を送付するとともに、実際に取り組まれているモデル授業の紹介動画(小学校用及び中学校用)を作成し、ホームページで公開した。
         更に、教育関係の学会や業界新聞へ積極的に情報提供したほか、専用ホームページ(エネルギー教育支援特設サイト)の過去のコンテンツの整理やデザイン変更等を行い、教育関係者だけでなく一般の方々にも分かりやすい情報提供に努めた。
      • 出前授業
         全国の小学校・中学校・高専・大学の授業等に機構職員が出向き、学生の知識や関心に応じてベントナイト実験やグループワークを取り入れるなどの工夫をしながら、高レベル放射性廃棄物や地層処分に関する説明と情報提供を行った(39回、約1,700名参加)。
         授業という形式で次世代層からの質問等を直接聞きその場で応答したことから、多様な情報提供が出来た。実施後のアンケートでは「よく理解できた」「自分たちも無関心ではいられないことが分かった」等、高評価を得た。
      • ディベート授業
         千葉大学及び長岡造形大学にて地層処分事業をテーマに実施(計116名受講)され、事業に関する説明や資料提供、関連施設への見学会等の協力を行った。特に施設見学会では、「ディベート試合の論旨の組立てをするうえで参考になる」「ディベート授業そのものの質の向上にもつながる」等、高評価を得た。受講した学生からは「将来、先生になったらこの問題を教えたい」等の意欲的な声も聞かれた。
      • 次世代層との協働
         大学の広告研究会が、企業等の提供するテーマに関して広告企画を競う「アドフェス」にテーマ提供企業として協力した。広告企画の検討に際して事業に関する説明や施設見学会を行うとともに優勝チームの広告企画を複数の大学生協等で実施した。一連の取組みについてはWebニュースや新聞等で記事化され、広く社会に情報発信することができた。
         また、映像メディアなど最先端のデジタルコンテンツを学習するデジタルハリウッド大学との協働により、デジタルコンテンツを通じて地球規模で存在する課題の解決を試みる「デジタルハリウッド・アースプロジェクト」にテーマ提供企業として協力した。動画制作に際して事業に関する説明を行い、地層処分に関する一般の方々向けの動画を制作していただいた。特設サイトに掲載された動画は約40万回再生され、関連するFacebookやその他のSNSでも関心の高まりが見られた。
         これらの取組みにおいては、機構からの一方的な説明ではなく学生自身の問題意識や自由な発想を通じて、自分たちも関わる社会的な問題であるという観点から地層処分を考えていただいたことで、ご理解の一層の深化につながった。
  • 2) 各種対話活動を更に充実させるためのマネジメント
    • 双方向対話と相互理解に資する丁寧な運営と迅速な対応
       マップの提示に対応した対話活動を円滑かつ適切に進めるため、対話活動に関するマネジメントを強化した。
       具体的には、中期事業目標に基づいて定める「対話活動計画」を策定し、対話活動を進めるうえでの基本的な考え方や主な訴求事項等を定め、機構ホームページで公表した。
       また、マップに関する問合せに対し電力会社(発電用原子炉等設置者)と緊密に連携して対応するため、各社に問合せ窓口を設置し、各社のホームページに掲載していただいた。
       更に、機構ホームページにマップに係る特設ページを開設したほか、新たに各種のパンフレットやリーフレット類(「総合パンフレット」、「地層処分の安全確保の考え方」)を分かりやすく作成し、マップの提示後には理事長挨拶文を添付して速やかに全国の自治体等へ送付した。
       また、意見交換会等の開催に向けて説明資料等を着実に準備するとともに、これらのパンフレット・資料類は意見交換会等へ参加されなかった方々も容易に入手できるようホームページに掲載した。
       このほか、問合せの増加に万全の対応を期すため、電話回線を増設して5名体制での電話対応を行った。
       また、意見交換会の運営においては、地層処分セミナー(2016年度)の経験を活かして少人数形式での双方向対話を充実させ、参加者の様々な関心や質問にフェイストゥフェイスでお答えした。前述のとおり、参加者の過半から「分かりやすかった」「誠実だった」等の評価を得た。また、開催の都度、担当した職員全員で事後ミーティングを行い、次回の開催に向けて業務品質の向上に努めた。
    • 実施結果に関する効果的な事後広報や情報提供
       シンポジウム、意見交換会、国際講演会等のイベントには参加者数に限りがあることから、社会のみなさまにそれらの実施結果をタイムリーかつ効果的に伝えるため、機構ホームページに当日資料、動画、議事録を速やかに掲載するなど、ホームページ、メールマガジン、Facebookを活用して迅速かつ詳細な事後広報を行った。
    • 情報提供内容の深化に資する研究・情報提供の取組み
       マップの提示により地層処分事業が地域の社会・経済に与える影響に対する関心が高まっていくことを想定し、これらの関心への高まりに的確に対応できるよう、関連する専門家との意見交換を複数回実施した。またこの意見交換等を踏まえて、地層処分の社会科学的な側面に係る調査・研究を支援するためのスキームや研究スコープについて検討を重ね、実施に向けて準備を進めた。
       また、海外における取組み事例等を広く社会へ情報提供するため、ベルギーの地層処分実施主体の前理事長ジャン=ポール・ミノン氏を招き、国際講演会を開催した。更に、フィンランドの国立ユヴァスキュラ大学社会学部教授のタピオ・リトマネン氏を機構へ招き、同国で進められた地域社会の合意形成事例等を講演いただき、職員の知見を蓄積した。

      国際講演会の開催(ベルギーの実施主体元理事長の公演)
    • 活動成果の評価と取組みの向上と改善及び蓄積
       対話活動の一層の改善や機構職員の対話スキルの向上等を目的として、意見交換会等を開催する都度、担当した職員全員で事後ミーティングを行い、気づきや改善点、参加者から寄せられた関心やニーズを共有するとともに、必要に応じてQ&Aを更新するなどして、充実した運営の向上に努めた。
       また、2016年度の対話活動成果の自己評価と評議員会による評価・提言を踏まえて新たな活動目標を設定し、対話活動に取り組んだ。
  • 3) 対話活動を実施するための人材の育成と体制整備
     対話活動を効果的かつ継続的に実施するため、機構職員の対話能力向上を目的に、技術系職員が講師となり、地層処分の個別の専門分野に関する知識・理解を深めるための勉強会(深掘会)を6回開催した。また、意見交換会等において参加者のニーズへ的確に対応するため、ファシリテーション能力の向上に資するロールプレイング研修を外部の専門家を招いて2回開催した。
  • 4) 対話活動改革の取組み
     事案への対応として対話活動の改革を進めるため、機構の若手職員を中心とする部門横断による対話活動改革チームを設置し、これまでの対話活動を振り返るとともに、外部専門家へのヒアリング、関係団体や大学生との意見交換等を行い、チームによる複数回の会合において課題の分析・評価と改革案の検討を行った。
     これらの検討の結果、各種イベントにおいては参加者の興味や関心に応じて意見交換ブースを設置したり、IT・インターネットを活用してリアルタイムでの配信を行ったり双方向通信機能を用いて遠方の方へも参加機会を提供したりすべきこと、また、既往のセミナーや意見交換会型の情報提供手法とは異なるアプローチ手法を検討すべきこと、更に、機構の情報発信や取組みに目を留めていただけるよう「面白い」と感じていただけるような新たな取組みに挑戦すべきこと等からなる「対話活動改革のための提言」を取りまとめた。
     他方、意見交換会の取組みを反省して、「手作り・直営」の運営を志向した「対話型全国説明会」を試行的に5回実施した。実施に際しては、開催趣旨や目的、会合の公正性を確保するための運営ルール等を定め、あらかじめ公開して公正かつ適切な運営に努めるとともに、参加される方々のニーズを踏まえて開催の曜日や時間帯、説明内容や時間配分等を工夫した。
    • 「対話型全国説明会」 科学的特性マップに関する対話型全国説明会【試行的実施】(5か所、参加人数115人)
      (主催) 国と機構の共催
      (時期) 2018年2~3月
      (開催都市) 港区(東京)、さいたま市(埼玉)、国分寺市(東京)、横浜市(神奈川)、千葉市(千葉)
      (概要等) 開催会場(公的施設や貸会議室等)、曜日(平日/土日)、時間帯(午後/夜)を様々に組み合わせて開催日時を設定した。
       第一部では国及び機構からマップに関する説明、専門家から地層処分の技術的な内容に関する説明をそれぞれ行い、全体質疑を実施した(横浜市を除く)。第二部ではテーマごとに設置したテーブルへ自由に着席していただき、関心のあるテーマについて意見交換、質疑応答を実施した(港区、さいたま市、国分寺市を除く)。また、参加者からいただいた意見等を踏まえ、順次、説明方法や展示物の設置(バーチャルリアリティ体験コーナー)を改善し、質疑の時間も拡大した。
     上述の対話活動改革チームによる提言や対話型全国説明会の試行的実施の結果等を評議員会に報告し、その審議を踏まえて、「これまでのセミナー・意見交換会の改善」「地層処分への関心を更に広めるための取組み」「中長期的取組み(人材育成に関する研修実施等)」からなる対話活動改革アクションプランを策定し、ホームページに公表した。

1-2 技術的信頼性の向上と技術開発の牽引

  • 1) 地層処分技術に対する一層の信頼性の獲得
    • 包括的技術報告書の取りまとめ
       我が国における地層処分の技術的信頼性の向上を図る目的で作成している包括的技術報告書については最終的な取りまとめ段階にあり、報告書として更なる信頼性向上に向けて、地質環境の多様性を考慮した安全評価の追加解析を行い、その成果を反映した。この解析結果については国内外の専門家による合同技術アドバイザリー委員会(3)01参照)等から妥当であるとの評価を得た。
       あわせて同報告書の付帯文書(要約編及び付属書)を修正し、同報告書の完成と公表に向けて準備を進めた。公表後は日本原子力学会及び経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)によるレビューを得るため、そのスケジュールを調整した。
       これらの取組みと並行して、同報告書や付属書を基に、専門家以外の方々に対しても分かりやすく情報提供するため、同報告書の導入編ドラフトを作成した。また、更に広く社会と積極的にコミュニケーションを図るため、同報告書を中心とする技術開発成果を機構ホームページ上で提供する「コミュニケーションツール」の整備を進め、閲覧者の関心やニーズに応じた様々な情報がその根拠とともに容易に閲覧できるよう、参考文献情報とその検索機能を拡充した。
    • 多様な分野の専門家・学会等とのコミュニケーション
       技術者・研究者向けのワークショップや学会発表、論文投稿等を通じて、多様な分野の専門家・学会等とのコミュニケーションを図り、地層処分に関する技術的な信頼性の向上はもとより、技術開発成果の透明性の確保に取り組んだ。

      <論文投稿・学会発表・ワークショップ 実績>

      論文投稿・学会発表・ワークショップ 実績
  • 2) 長期にわたる事業展開を見据えた技術開発
    • 中期技術開発計画の改定
       地層処分研究開発調整会議において、リーダーシップをもって関係機関と協議・調整を進めるとともに、外部有識者からもご意見を伺い、2018年度以降の次期5ヶ年において国及び関係研究機関並びに機構が実施する技術開発を一体化して整理した「地層処分研究開発に関する全体計画」(以下、「全体計画」という。)を策定した。全体計画は、経済産業省ホームページで公開された。
       策定にあたっては、包括的技術報告書の作成過程で明らかとなった課題のほか、これまでの研究開発の過程で抽出された課題、国の審議会等で抽出された課題等を網羅的に集約したうえで、今後技術開発すべき項目を整理するとともに、これらの各技術開発項目の相互関係を示した。また、事業実施に必要となる技術マネジメント能力の向上や人材育成、国際連携・貢献に関する事項についても全体計画に含めた。
       また、この全体計画を踏まえ、機構が次期5ヶ年で担当すると考えられる技術開発について、その目的や実施概要等を示す「中期技術開発計画(2018年度~2022年度)」のドラフトを策定した。
    • 地層処分事業の安全かつ円滑な実施並びに経済性・効率性の向上に資する技術開発
       地層処分事業の安全かつ円滑な実施並びに経済性及び効率性の向上に資するため、現在の「中期技術開発計画(2013年度~2017年度)」を基本に、以下に記す技術開発を実施した。
      • 地質環境特性の調査・評価
         地質環境特性の調査・評価技術の高度化を目的に、堆積岩類を対象とする大深度ボーリング調査技術の整備に係る一般財団法人電力中央研究所との共同研究(3)02参照)を実施するため、国内外の専門家との技術検討会及び意見交換を通じて、資機材の調達や実施体制及び安全管理を考慮した実施計画を作成した。また、地下水の長期モニタリングやボーリング孔閉塞等について開発すべき技術の仕様を見直した。このため、これらの技術開発への着手は2018年度からとした。
         また、自然現象の影響評価技術の体系化について、火山性熱水や深部流体の影響の調査・評価・モデル化技術の高度化を目的に、必要となる情報収集とモデルの構築を行うとともに、断層及び断層破砕帯における水理及び力学的な挙動を評価するための解析コードの修正に係る米国ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)との共同研究(3)03参照)を進めた。
         更に、テクトニクスの変遷や地質構造発達史に係る情報収集・整理の準備を進め、プレート運動に関する最新の科学的知見を取りまとめた。また、数十万年という長期間の隆起・侵食や地形的に不明瞭な活断層についての地形発達史や地形構造を考慮した評価手法を作成した。
      • 人工バリアの設計・施工技術等の工学的対策
         炭素鋼オーバーパックの合理的な代替材料の可能性を検討することを目的に、昨年度の鋳鋼製オーバーパックの実規模試作から継続して、同材料の長期腐食挙動の評価に係る日本原子力研究開発機構(JAEA)との共同研究(3)02参照)を開始した。また、機構が国際共同研究として参画しているスイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)のグリムゼル試験場でのMaCoTe(Materials Corrosion Test)プロジェクト(3)03参照)において、鍛鋼及び鋳鋼の原位置腐食に関するデータ取得を開始した。更に、鋳鋼の溶接方法等に関し電子ビーム溶接の手順や実施条件を設定して溶接を行った結果、有意な溶接欠陥がないことを非破壊検査により確認した。
         炭素鋼オーバーパックの代替材料概念として、銅コーティングオーバーパックの適用性に関する検討をカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)との共同研究(3)03参照)により開始した。
         更に、安全性を最優先に、調達性や経済性も考慮して緩衝材や埋戻材の候補材料の選択肢を拡げるため、数種類のベントナイトの性能確認試験を電力中央研究所との共同研究(3)02参照)により実施することとし、実施計画について同研究所と調整を行った。また、ベントナイト材のレファレンスとしてデータが取得されているクニゲルV1に関して、長期変形挙動に影響を与える変形の進行(二次圧密現象)に関するデータを拡充するため、JAEAとの共同研究(3)02参照)により長期圧密試験を開始した。

        カナダ国立研究機関(NRC)コールドスプレー研究室
        銅コーティングオーバーパック
      • 事業期間中の安全確保に関する対策
         事業期間中の安全確保を一層向上させることを目的に、TRU等廃棄体パッケージの充填材(モルタル等)から生成する放射線分解ガスの影響対策について、充填材の仕様を水密性やひび割れ防止及び自己充填性確保の観点から検討し、その適切な配合条件について知見を得た。
         また、建設・操業期間中に発生するリスクを考慮して、火災が及ぼす影響を評価するための手法等の信頼性を向上させるため、火災源となり得る廃棄体搬送車両を想定したうえ、これに基づき最も火災継続時間が長い場合の伝熱解析を行い、この場合の廃棄体の健全性を確認した。
         更に、諸外国における操業安全の考え方等について、OECD/NEAのワーキンググループEGOS(Expert Group on Operational Safety)(3)03参照)の活動を通じて各国の知見を収集し、機構が主体的に同グループとしての報告書ドラフトを取りまとめ、論拠整備を進めた。
      • 閉鎖後長期の安全性評価
         人工バリアシステムの超長期間にわたる変化の移り変わりを予測するための手法等の信頼性向上を目的として、JAEAとの共同研究(3)02参照)及び、NAGRAのグリムゼル試験場での国際共同プロジェクトとして進められているコロイド生成・移行挙動(CFM)、岩盤中マトリクス拡散(LTD)、セメント系材料中におけるヨウ素及び炭素の移行挙動に関する新規プロジェクト(CIM)への参加(3)03参照)を通じて、論拠の拡充及びモデル評価の高度化に資する情報の取得を進めた。
         また、核種移行データベースの拡充・更新を目的に、多様な地質環境条件を考慮した核種の収着分配係数や実効拡散係数に関して、JAEAとの共同研究(3)02参照)を通じ直接実験によりデータを取得するとともに、関連する文献データの収集を進めた。
         これらのほか、包括的技術報告書における地層処分システムの性能評価の信頼性を向上させるため、処分場の設計仕様を従来以上に現実的に反映した核種移行解析モデルの高度化を検討した。また、TRU等廃棄物に含有する硝酸塩が処分場の性能に及ぼす影響を評価するためのモデルの精度を向上させた。
         更に、生活圏における核種移行や被ばくを評価するための手法等の高度化に向け、人間の年齢に応じた放射線感受性や飲食物摂取量の違いを考慮して、被ばくプロセスモデルの改良を進め、そのモデルを用いて生活圏への核種の移行率から線量を簡易に算出するための係数(線量への換算係数)を算出した。

        JAEAとの共同研究
      • 調査・評価に係る品質確保
         地質環境の調査・評価に係る品質確保の仕組みを国際的基準に準拠して構築するため、NAGRAとの共同研究(3)03参照)に若手職員を派遣する(4)参照)等を通じて技術移転を図り、品質保証の考え方や進め方を整備した。
         また、文献調査から精密調査に至るまでの長期にわたる各事業段階で取得される様々な地質環境データを柔軟かつ容易に入力し管理できるよう、機構が有する他のデータ管理システムとの互換性も踏まえてデータベースとしての管理を検討し、その管理システムの基本構成に係る技術情報の収集を進めた。
         更に、安全評価作業の品質管理の向上を目的として、地下水流動・物質移行解析や物質の移行の過程で生じる化学反応を考慮した解析コードの内製化に向け、これまで評価に用いてきた解析コードを機構内で自ら使用できるように導入・整備するとともに、それらの基礎理論や利用法について、若手職員を対象に研修会(4)参照)を実施した。
      • 多様なステークホルダーのご理解獲得を目的とした情報の収集と整理
         地層処分技術に関する多様なステークホルダーによる理解の促進に資するため、機構以外の関係機関の取組みとして、基盤研究開発機関が実施する技術開発に関する検討委員会にアドバイザーとして出席(3)02参照)し情報収集を行うとともに、回収可能性の維持に関わる湧水量の低減対策とその効果確認のための評価技術の開発を進めた。また、様々な条件に柔軟に対応するための処分場概念オプションの検討に向けて、諸外国の処分場概念とセーフティケースに関する情報の収集と整理を進めた。更に、包括的技術報告書で検討している処分場の仕様に対して、安全性の確保を第一として様々な合理化対策を取り入れ、処分場の設計の最適化を図るべく検討を開始した。
         更に、中深度処分の規制制度の策定に係る国内の規制基準の検討状況に関する情報収集を行った。
  • 3) 技術開発のマネジメント
    • 外部専門家による指導・助言等による信頼性確保
       技術アドバイザリー委員会を以下のとおり開催し、包括的技術報告書や技術開発計画に対する指導・助言等を得ることによって、機構の技術開発の進め方の妥当性を確認し、内容の適正化を図った。
      <技術アドバイザリー委員会 開催実績> 技術アドバイザリー委員会 開催実績
    • 国内関係機関との情報交換、共同研究等
       地層処分に関する技術開発の効果的かつ効率的な推進を図るため、国内関係機関との情報交換や技術連携に努めた。具体的な取組みは以下のとおり。

      ▶ 資源エネルギー庁委託調査事業に関する委員会にアドバイザーとして出席し、研究成果の共有と機構の技術開発ニーズの提示を行った。

      ▶ JAEAとの共同研究により、JAEA核燃料サイクル工学研究所の研究施設を利用したガラス長期溶解挙動試験、鋳鋼製オーバーパックの長期腐食挙動試験、オーバーパック/緩衝材及び緩衝材/セメント相互作用に関する長期試験、緩衝材の長期圧密試験及び核種移行データベースの拡充のためのデータ取得試験を実施した。

      ▶ 電力中央研究所との共同研究に向け、大深度ボーリング調査計画の立案のために必要な地質環境調査・評価技術や人工バリア材料としてのベントナイトの選定に係る情報共有を図り、協力協定に基づく技術連携を推進した。

    • 国際的技術交流
       諸外国の地層処分実施主体や関係機関との交流、国際プロジェクトへの参加等を通じて、国際的な技術情報を収集するとともに各組織との協力関係の強化に努めた。具体的な取組みは以下のとおり。

      ▶ OECD/NEAの放射性廃棄物管理委員会(RWMC)、セーフティケース統合グループ(IGSC)等の会議体や関係プロジェクトのもとで、国際的な重要課題(操業安全性(5月、10月)、泥質岩の調査や性能に係る検討会(9月)、結晶質岩の調査や性能に係る検討会(4月、12月)等)への取組みに参画した。また、ステークホルダーの信頼獲得に関するフォーラム(FSC)/IGSC合同ワークショップ(9月)やIGSC定例会議(10月)に参加した。

      ▶ 国際原子力機関(IAEA)の技術会議・専門家会議に出席し、国際的な重要課題(サイト調査技術(5月、2月)、処分コストと資金制度(5月)、ステークホルダー関与(6月)等)への取組みに参画するとともに、放射性廃棄物の安全性に関する国際会議(11月)に参加した。

      ▶ 各国の実施主体で構成される放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)の春季会合(5月)・冬季会合(11月)において情報交換を行うとともに、処分コストに関する報告書の作成を分担した。

      ▶ グリムゼル国際共同プロジェクトとして参画しているCFM、LTDの各プロジェクトの検討会合(5月、9月)に参加し、プロジェクトの進捗状況の把握や機構ニーズとの調整を行った。材料腐食試験に関して、原位置における試料設置に立会い、状況を確認した(3月)。また、CIMに参画した(3月)。更に、ベントナイトの高温変質挙動に関する新規プロジェクトHotBENT準備会合(6月)に出席した。

      ▶ エスポの情報と成果の利用に関する協定に基づき、技術セミナー(6月)及びパートナー会議(2月)を開催するとともに、運営会議や技術情報会合、ワークショップ(いずれも10月)に参加し、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の活動状況に係る情報や最新の科学的知見などの収集を進めた。

      ▶ 地質環境の調査・評価に関する品質マネジメントシステムの整備に係るNAGRAとの共同研究を、若手職員の派遣(9~12月)や技術検討会議(10月、1月、3月)を開催し、技術移転を図りつつ効果的かつ着実に進めた。

      ▶ 地震に伴う断層及び断層周辺の水理特性や力学特性の変化に係るLBNLとの共同研究を進捗状況や技術的な課題等を適宜確認しつつ着実に進めた。

      ▶ NWMOと協力協定を新規に締結(6月)した。この協定に基づいて、NWMOが開発を進める銅コーティング技術の日本における地層処分への適用性について共同研究を実施した。定例会議を開催し、機構及びNWMOの検討結果について情報共有を進めた(6月、3月)。

      ▶ フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)との協力協定を更新した(3月)。

      ▶ 米国NPO法人核脅威イニシアチブ(NTI)との共催で地下研究施設の役割や知識マネジメント等をテーマとしたワークショップを開催した(5月、東京)。

      ▶ 台湾での地層処分セミナー(12月)、米国との共同研究に関する技術ワークショップ(2月)、米国で開催された放射性廃棄物管理に関する国際会議(WM 2018)に出席し(3月)、技術情報に関する意見交換を実施した。


      NWMOと協力協定を新規締結

      ANDRAとの協力協定更新
    • 地層処分技術情報に関する整備と体系的な提供
       包括的技術報告書を中心に関係機関の発行する報告書や技術開発成果等の技術情報に関し、様々な場面に応じて提供できるよう、コミュニケーションツールを活用した知識マネジメントシステムの整備を進めた。また、これまでにいただいた様々な技術的問合せをQ&Aデータベースとして整理し、同ツールに収録することによって対話活動現場において容易に活用できるよう、タブレットを用いてアクセス可能な機能を付加した試行版を作成した。
    • 業務品質保証の充実への取組み
       昨年複数の製造業において発生した品質マネジメントに係る不祥事等に鑑み、委託業務等の業務品質保証の取組みのより一層の充実を図るため、監督管理、設計管理、是正措置・予防措置等に係る業務プロセスの見直しなど、品質マネジメントシステムの整備を進めた。
  • 4) 地層処分に関する人材確保・育成
     地層処分事業が長期にわたる事業展開であることを見据え、新卒・キャリア採用に取り組み、新卒2名の技術系職員を採用した。
     また、職員の技術能力の強化を目的として、特に若手職員の育成を重点的に進め、研究インフラを有する国内外の関係機関(JAEA及びNAGRA)との共同研究や国際共同プロジェクトに派遣し、ガラス溶解に係る長期挙動試験や地質環境調査・評価に係る品質マネジメントシステムの構築等を行った。
     更に、関係機関や学会等が開催する各種の研修会や放射線測定実習への参加、学会への論文投稿・発表、機構自身が主催した各種勉強会・講演会・施設見学会へ積極的に参加することにより、基礎的知識や専門的知識の習得に係る取組みを拡充した。

    NAGRA グリムゼル試験場におけるSummer School

    品質管理についてのワークショップ
  • 5) 対話活動に係る取組み
     意見交換会等において模型展示物や少人数によるテーブル質疑における技術的な説明等の対応を行った。また、マスコミ向け、大学等での出前授業を行った。
  • 6) 文献調査への準備
     文献調査への準備として、関係するパンフレット等の作成、全国規模の文献・データの収集やGISデータの整理など地理情報システムのメンテナンスを行った。また、文献調査計画書の検討を行った。更に、文献調査中に行う概要調査計画立案のための準備として、調査技術等に係る情報収集・整理を進めた。

1-3 事業基盤の更なる高度化を目指した組織運営

  • 1) 単年度及び中長期的な視点のもとでのPDCAサイクルの定着
     中期事業目標を実現するための中期的な各種計画に関しては、文献調査の受け入れと円滑な実施を目指す対話活動計画を策定し、マップの提示とともに公表した。また中期技術開発計画(2018年度~2022年度)については、関係機関と協議・調整しながら全体計画の取りまとめを進めつつ、策定に取り組んだ。中期人材確保・育成方針については、事案の再発防止と組織改革の取組み及び対話活動改革の取組みを反映して策定に取り組んだ。また、これらの計画内容並びに組織改革に係る中長期的取組みを踏まえて2018事業年度の「事業計画、予算・資金計画」を策定し、遅滞なく経済産業大臣の認可を得た。
     PDCA活動に関しては、2016事業年度業務実施結果を自己評価したうえ、対話活動評価委員会及び技術開発評価委員会における審議を経て、評議員会から評価・提言を受領した。これを踏まえて、事業運営の改善に速やかに着手し、その改善内容を評議員会へ報告するとともに、2018事業年度「事業計画」にも反映した。また、2016事業年度の財務諸表を作成して遅滞なく経済産業大臣の承認を得るとともに、機構の事業活動を分かりやすく情報提供するため、ホームページに挿画入りで事業報告を公表した。このほか、機構自身による自己点検を適宜実施し、業務実施状況の確認並びに改善策等の検討を鋭意進め、きめ細かな業務改善に取り組んだ。
  • 2) 内部統制・ガバナンスの高度化
    • 理事会による職務遂行状況の確認等
       理事会を9回開催し、理事の職務遂行状況を定期的に確認するとともに「業務の適正を確保するための体制の整備について」の決議を行った。事業活動を適切かつ円滑に実施するため、また事案への対応として経営理念や組織権限規程(報道業務の地域交流部から総務部への移管、リスク管理室の設置等)及びリスクマネジメント規程(リスク管理室設置に伴う事務担当部署の変更)を改定し、事業実施体制の整備等を行った。
       評議員会を8回開催し、2016事業年度業務実施結果に対する評価・提言や2016年度財務諸表、2018事業年度の「事業計画、予算・資金計画」について審議していただいた。その他、事案への対応として、調査チームの設置及び調査結果の審議とそれに基づく「再発の防止と組織の改革に向けた提言」等の取りまとめ、機構としての再発防止策や対話活動改革の内容(対話活動改革アクションプラン)に関する審議等をしていただいた。
    • リスクマネジメント活動の強化
       リスクマネジメント活動の確実な実施を目指して、リスク管理状況を確認し改善を図るリスクマネジメント委員会を開催したが、事案の発生により理事長直属のリスク管理室を設置して、機構内のリスク管理状況やベンチマークとなる他機関の取組み状況等に関するヒアリング調査を実施し、外部アドバイザーから指導・助言を得て、リスクマネジメント強化策を策定した。
       また、今後の取組みとして、リスク管理室は各業務におけるリスクマネジメントの実施状況の恒常的なモニタリングと指導・助言、外部のリスク事例の調査や機構内周知、関連する職員教育等を実施すること、また、万一問題が発生した場合には、危機管理体制の構築等を行うこととした。これらは2018事業年度 事業計画に定めた。
    • 内部監査の実施
       「個人情報の保有・管理状況」について、機構内で保有するデータ及び管理状況を把握し、規程等に基づく適切な管理状況を確認した。あわせて、管理職に対しヒアリングを行い、個人情報の管理に係るポイントや注意点を共有した。更に、過去に実施してきた内部監査の提言への対応状況を管理職へヒアリングし、適切に実施されていることを確認した。
    • コンプライアンス徹底の取組み
       各種ハラスメントの防止、定期異動に伴う情報紛失の防止、労働時間管理の適正化、情報流出の防止等について、内部周知やグループディスカッション、eラーニング等により役職員の意識向上を図った。
    • 情報セキュリティの強化
       機構内サーバーの業務関係情報の整理、出張時における情報管理の徹底周知、サイバー攻撃に対する訓練を行い、情報セキュリティに対する役職員の注意を喚起するとともに具体的な対応策を強化した。
    • 効率的な業務運営とコスト削減への取組み
       部門横断の業務効率化ワーキンググループにおいて、印刷費等の事務経費や出張旅費に係るコスト低減策を機構大で展開し、取組み状況をフォローしたほか、業務委託に係る仕様書の改善策の検討、予定価格積算方法の検証等を進めた。
       また、一者応札が多い状況への改善に向けて、調達予定件名の公開や事業者への入札参加の呼びかけを継続して実施することに加え、競争参加者の拡大に向けた取組みとして、各種事業者を対象とする「事業説明会」を開催して機構事業の最新状況を紹介し、あわせてアンケート調査を実施して事業者側のニーズ等の把握に努めた。更に、一般競争参加資格の未登録事業者に対して新規登録を勧奨し、事業者16社から競争参加資格の新規登録を得た。その結果、一者応札率は66%から38%へと対前年比で28ポイント低減した。
    • 再発防止への取組み
       事案の発生を踏まえて業務委託の管理徹底と強化に向けて、直ちに関連する規程の整備や契約書雛形の改定等を進め、機構の経営理念と委託先の事業方針との整合性の確認、書面による重要事項の指示や約定内容の記録作成等を定めた。
       今後は、専門性及び費用対効果やリスク等を十分に考慮して委託案件を慎重に選定するとともに、委託先の業務管理状況を内部監査や立入検査等で確認する仕組み、業務完了後に実施内容を振り返り評価する仕組みの整備等を進めることとし、これらは2018事業年度 事業計画に定めた。
       更に、外部専門家等の知見や他の類似事例から学び、その成果を組織として共有する「学習する組織」づくりをはじめ、チーム意識の向上に資する組織運営の工夫等も進めることとし、これらについても2018事業年度 事業計画に定めた。
  • 3) 人材確保と育成、マネジメントの徹底
    • 中長期的視点に基づく人材確保・育成計画の策定
       部門別の長期的な人材育成計画である「目指すべき人材像と部門別育成計画」を策定して役職員へ配布したほか、事案の再発防止と組織改革の取組みを反映して中期人材確保・育成方針の検討を進めた。
    • 人材の計画的な確保
       新卒者採用(3名)や出向者のプロパー化(2名)に加え、再雇用嘱託の雇用期間延長制度を制定する等して人材確保を着実に進めた。
       また、2018年度定期採用に向けて機構内外で定期採用に係る説明会を実施し、6名の内定者を得た。内定者に対してはモチベーションの向上に資するよう関連施設への見学会を開催し各種関連イベント情報を提供した。
       更に、2019年度定期採用に向けて大学への訪問、関連セミナーへの参加、説明会等の開催を行い、採用活動を着実に進めた。
    • 各種の研修を通じた人材育成等
       グループ活動支援を盛り込んだ自己啓発支援制度の拡充やeラーニングの導入を進めたほか、マネジメント力を向上させる等を目的とした新任管理職研修、グループごとにテーマを定めて調査研究や提案等を行わせる若手職員・新入職員研修及びその成果発表会を開催し、職業人としての自覚や人間的魅力・実行力の向上を図った。また、メンタルヘルスケアや個人情報保護法に係るeラーニングプログラムを全職員対象に受講させて効果的な活用を促した。
       これらのほか、コンプライアンスの観点及び職員の健康管理の観点からの過重労働の防止と労働時間の適正管理、育児・介護に関する法改正に対応した規程類の改定、保健師の配置による健康相談や保健指導のきめ細やかな実施、衛生委員会における健康関連情報の提供や働き方に関するディスカッション、定期的なストレスチェックの実施等を通じて、「働き方改革」やワークライフバランスを意識した働きやすい職場環境作りを進めた。

      若手職員研修
  • 4) 適切な情報公開
     情報公開請求58件を受け、情報公開審査委員会を開催し、「情報公開規程」に基づき順次対応した。

1-4 拠出金の徴収

 2017年度の拠出金納付対象事業者は5法人であり、拠出金(151億円:第一種最終処分業務分92億円、第二種最終処分業務分59億円)を徴収し、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた。

2. 当該事業年度の理事会の開催状況及び主な議決・報告事項

 2017年度は、9回の理事会を開催し、経済産業大臣への認可・承認申請に関する事項等、機構の業務運営の基本的な事項について議決した。理事会の開催状況及び主な議決・報告事項は、次のとおりである。

  • 第78回 理事会 2017年4月25日
    • 2016年度 業務執行状況及び今後の取組み
    • 対話活動計画(案)の概要について
    • 第7回リスクマネジメント委員会実施結果について
    • 情報セキュリティ確保への対応状況について
    • コンプライアンスの遵守及び推進に係る実施状況について
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第79回 理事会 2017年6月14日
    • 2016(平成28)事業年度財務諸表(案)
      (添付書類:事業報告書、決算報告書、監事意見書、監査報告書)
    • 「業務の適正を確保するための体制の整備について」の決議について(案)
    • 監査報告
    • 2016年度業務実施結果に対する評価・提言について
    • 2017年度 業務執行状況及び今後の取組み
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第80回 理事会 2017年9月14日
    • 職員就業規則及び再雇用嘱託就業規則の改定について
    • 2016事業年度評価・提言への対応について
    • 2017年度 業務執行状況及び今後の取組み
    • 中期事業目標に基づく個別計画の策定状況について
    • 第8回リスクマネジメント委員会実施結果について
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第81回 理事会 2017年11月28日
    • 「科学的特性マップに関する意見交換会」における不適切な参加者募集に係る対応について(案)
    • 2018事業年度 事業計画策定の方向性(案)
    • 2017事業年度上期 業務執行状況及び今後の取組み
    • 第9回リスクマネジメント委員会実施結果について
  • 第82回 理事会 2017年12月5日
    • 報道に係る業務の移管について(案)
  • 第83回 理事会 2017年12月27日
    • 調査報告書  調査チーム
    • 再発の防止及び組織の改革に向けた提言
    • 原子力発電環境整備機構における再発防止の基本方針
  • 第84回 理事会 2018年1月30日
    • 提言を踏まえた再発防止策等の検討状況について
    • リスク管理専門部署の設置について(案)
    • リスクマネジメント規程の見直しについて(案)
    • 対話型全国説明会の試行的実施について(案)
    • 対話活動改革チームの設置について
  • 第85回 理事会 2018年2月22日
    • 2018(平成30)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • 2017(平成29)事業年度 業務執行状況及び今後の取組み
    • 「経営理念」見直しの検討状況について
    • 対話活動改革チームによる提言の方向性
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第86回 理事会 2018年3月28日
    • 対話活動改革アクションプラン(案)
    • 経営理念の見直しについて(案)
    • 対話型全国説明会試行的実施結果概要
    • 対話活動改革のための提言
    • 機構業務に関連する最近の状況について

3. 当該事業年度の評議員会の開催状況及び主な審議事項

 2017年度は、8回の評議員会を開催し、機構の運営に関する重要事項について審議した。評議員会の開催状況及び主な審議事項は、次のとおりである。

  • 第47回評議員会 2017年6月13日
    • 2016(平成28)事業年度 財務諸表(案)
      (添付書類:事業報告書、決算報告書、監事意見書、監査報告書)
    • 2016年度業務実施結果に対する評価・提言について
    • 監査報告
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第48回評議員会 2017年9月13日
    • 評価委員会の委員選任について(案)
    • 2016事業年度評価・提言への対応について
    • 中期事業目標に基づく個別計画の策定状況について
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第49回評議員会 2017年11月30日
    • 「科学的特性マップに関する意見交換会」の参加者募集に係る発生事案への対応について
  • 第50回評議員会2017年12月20日
    • 中間報告(案) 調査チーム
    • 「科学的特性マップに関する意見交換会」の参加者募集に係る発生事案への再発防止策について(案)
  • 第51回評議員会 2017年12月27日
    • 調査報告書 (案) 調査チーム
    • 再発の防止及び組織の改革に向けた提言(案)
  • 第52回評議員会 2018年1月30日
    • 提言を踏まえた再発防止策等の検討状況について
    • 対話型全国説明会の試行的実施の概要
  • 第53回評議員会 2018年2月20日
    • 2018(平成30)事業年度 事業計画・予算・資金計画(案)
    • 「経営理念」見直しの検討状況について
    • 対話活動改革チームによる提言の方向性
    • 機構業務に関連する最近の状況について
  • 第54回評議員会 2018年3月28日
    • 対話活動改革アクションプラン(案)
    • 対話型全国説明会試行的実施結果概要
    • 対話活動改革のための提言
    • 経営理念の見直しについて
    • 2017事業年度業務の評価・提言に係る進め方について
    • 機構業務に関連する最近の状況について

Ⅲ.2017年度資金計画実績表

Ⅲ.2017年度資金計画実績表 Ⅲ.2017年度資金計画実績表

(お断り)
本事業報告書は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(第六十五条)に基づき、経済産業大臣の承認を得ておりますが、画像(写真)及びその説明は、承認を得た事業報告書には含まれておりません。