国際シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分 ~世界の取り組みから学ぶ~」
国際シンポジウム
「いま改めて考えよう地層処分 ~世界の取り組みから学ぶ~」
開催日:2016年3月28日(月)
高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力を利用してきた全ての国に共通する課題です。これまでの全国の皆様との対話活動の場においても、国際的な議論の経緯や諸外国の取り組み状況に多くの関心が寄せられてきました。
こうした関心に応えるべく、2016年3月に、スウェーデンから、高レベル放射性廃棄物の処分場建設候補地があるエストハンマル市(自治体)のヤーコブ・スパンゲンベリ市長と、地層処分事業の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)のサイーダ・エングストレム副社長をお招きし、地層処分に関する国際シンポジウムを開催し、約270人が参加されました。
このページでは、基調講演・パネルディスカッションの概要や、当日の模様(動画)をご紹介します。
>開会挨拶 鈴木淳司経済産業副大臣、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使
開会挨拶 | |
![]() |
|
![]() |
開会に先立ち、鈴木淳司経済産業副大臣、マグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使から、それぞれ開会の挨拶をいただきました。
|
![]() |
|
![]() |
![]()
|
![]() |
|
基調講演 | |
![]() |
|
![]() |
■基調講演1 増田 寛也(総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物WG委員長) 「地層処分に向けた世界の取組と日本の針路」
|
![]() |
![]() ●高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法として「地層処分」が最も適切な処分方法であることが、世界的にも共通した考え方になっている 特に、日本がこれから最終処分の実現を目指していくためには、海外と連携・協力し、安全に関する信頼、対話の積み重ね、地域との共生、を追求し、加えて、原子力行政、事業者、関係者に対する信頼を、取り戻していくことが重要と述べられました。
|
![]() |
>資料はこちら(PDF形式:683KB) |
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
■基調講演2 サイーダ・エングストレム(スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社) 副社長) 「スウェーデンの放射性廃棄物管理プログラム ステークホルダーとの対話」
|
![]() |
![]() 同氏は、地域における住民との徹底した対話活動が極めて大切であったとした上で、 ●国(特に規制当局)と産業界の役割分担が明確であったこと 等を紹介されました。 ●実施主体が課題を明確化し、情報を積極的に提供する、そして、意思決定ができる能力・知識を自治体に提供する。 最後に、同氏は、この問題の解決に向け、とにかく辛抱強く、根気よく、例えるなら100m走ではなくマラソンであると思って取り組むことが重要である、我々スウェーデンはまもなくゴールしそうだが、同じような仲間が増えていくことを願っている、と講演を締めくくられました。
|
![]() |
>資料はこちら(PDF形式:2.09MB) |
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
■基調講演3 ヤーコブ・スパンゲンベリ(スウェーデン エストハンマル市長) 「エストハンマル市」
|
![]() |
●自治体の自主性が尊重される仕組みであったこと また、早い段階から社会経済面の影響について調査・分析を行い、処分場の立地によってエストハンマル市が"ゴミ捨て場"ではなく"ハイテク技術が集まる工業地帯"になることができるという前向きな評価・認識を市民と共有できたことも重要であったと述べられました。
|
![]() |
>資料はこちら(PDF形式:3.72MB) |
![]() |
|
パネルディスカッション | |
![]() |
|
![]() |
■地層処分の安全性 -長期的な安全性について、どのように説明しているのか ![]() エングストレム氏) 長期間何も起こらないことを保証することはできないが、何かが起こった時には最新の科学に基づいて、最も安全と目される解決策を必ず実現することを保証すると説明しています。また、私たちの事業は必ず規制当局の確認を受けます。つまり、私たちが安全対策を怠れば、許可は下りません。そのため、安全に対する分析を徹底して行い、長期的なリスクも踏まえた対策を講じることとしています。
-スウェーデン特有の地質や自然環境の不安はあったか エングストレム氏) スウェーデンでは、例えば氷河期が到来した後、氷河が溶解することで地盤が隆起し巨大地震が引き起こされることを想定し、地層へ埋設する際は、それに耐えうる人工バリア(キャニスタやベントナイト)を施すこととしています。
|
![]() |
-地域住民の受け止めは スパンゲンベリ氏) SKB社が、地域に根ざした活動を続けてきたことが、信頼に繋がっていると思っています。エングストレム氏) 信頼は時間をかけ、勝ち得ていくものです。人は人を信頼する。何度も何度も繰り返し、きちんと質問に答えて、オープンで透明性があるということを示すと信頼されるようになると思っています。私自身、何年もかけて、「SKBが言っていることは信頼できる」という関係をつくるよう努めてきました。
-規制当局の役割 ![]() 増田氏) 安全性に対して高い知見を有する専門組織が、この問題にしっかりコミットしていくことが非常に重要であり、この点、スウェーデンからきちんと学ぶことが重要ではないかと思います。
|
![]() |
-NUMOにおける行動方針 ![]() 近藤氏) 私たちの説明が伝わるためには、私たち自身が信頼される組織でないといけない、ということを対話を通じて感じています。そのため、我々は、技術力を絶えず磨き続けるとともに、事業に関する情報は透明性高くオープンに説明する、地域の皆さま、国民の皆さまの声を真摯に受け止め、一緒に考え、決定していくことを目指すとする行動方針を決め、その方針の下、全力で取り組んでいくこととしています。
![]() |
![]() |
■国民理解・地域理解と合意形成 -国民や地域の理解を得るためには エングストレム氏) NIMBY※問題は原子力に限らず、どこにでも存在し得るものです。日本だけで起きている問題ではありません。私たちは、倫理や世代間の公平性に関する対話活動(セミナーやディスカッションなど)を4、5年かけて行い、理解を得てきました。※NIMBY(Not In My Back Yard):「必要なのはわかるが自分の裏庭・近所以外にして欲しい」という意味の略語 ![]() 秋庭氏) 日本では負担の公平性の観点から、例えば電気を大量に消費している東京に処分場を造るべきという声も聞きます。他方、この問題は、国民みんなが電気の恩恵を受けているので、みんなで考えていく必要があると思っています。スウェーデンでは、全国規模の情報提供、広報をどのように取り組まれたのでしょうか。エングストレム氏) 私たちは全国規模での取り組みは行っておりませんが、地域での初期の対話においては、なぜストックホルムに置かないのかといった声がありました。しかし、この最終処分場というのは、何より安全第一で考えなければいけません。それに加え、環境面、経済効果、こうした要素も組み合わせた実現可能性も十分考慮する必要があることを、説明するようにしています。秋庭氏) この問題は、現世代の我々がまずはしっかり理解することが大事ですが、100年にもわたる長期事業であることから、次の世代の人たちにも理解してもらうことが必要だと思います。次世代向けの教育はどのように行われているのでしょうか。
スパンゲンベリ氏) セミナー、学校での講義の他、SKB社による研究施設の見学ツアー等、様々な取り組みを実施しています。エングストレム氏) SKBでは、教育者向けのプロジェクトと、16歳以上を対象としたプロジェクトがあります。後者については、セミナーなどで直接お会いすることで、好奇心を持ってくれるようになりますが、若者の中ではこの問題を大きな問題と捉える方はまだまだ少ない印象です。
![]() 小林氏) 日本もスウェーデンの過去をたどっているところがあります。我々の取り組み状況としては、全国各地に足を運び、なるべく多くの方にまずはこの問題について知って頂きたい、関心を持って頂きたい、ということで全国的なシンポジウム等を進めてきたところです。どうして将来に先送りせずいま解決を目指そうとしているのか、そのようなところから、皆で一緒に考えましょうと呼びかけています。
![]() ■地域共生 -立地候補地のメリットをどう考えていますか ![]() スパンゲンベリ氏) メリットについては一人ひとり考え方が違うと思いますが、エストハンマル市は失業率が2%しかなく、経済活動も十分あるとともに、雇用の機会も近隣の都市含め豊富にあります。それでも大きな投資がなされることは、それ自体地元にとってメリットとなるし、大きな投資があれば、さらにそれに関連して様々な投資も誘発されることが期待できます。例えば、将来処分場ができるということで、関連する研究者や見学者が世界中から訪れるでしょう。日本からも既に様々な人が訪れていることからもわかるように、既にエストハンマル市では、訪問者の数がかなり多くなっています。
-風評被害を含むデメリットについてどう受け止めているか スパンゲンベリ氏) SKB社によって毎年行われている住民の意識調査においては、もともと多くの住民は受け入れに強い考えを持っていたわけではありません。しかし、SKB社が風評被害等を懸念して反対する人の考えも尊重し、意見にはいつでも丁寧に耳を傾けていたこと、彼らを説得するのではなく、状況について十分に情報を与える取り組みを続けていた結果、好意的になっていきました。当初は、本当に安全なのだろうか、本当に全部の情報が入ってきているだろうか、というような懐疑的な向きもありました。しかし、自分たちには最終的に自ら判断する権利があることを市民に理解してもらう努力をしたことで、懐疑的な人もまず話を聞いてみようということになり、その上で、SKB社が情報を全てオープンにし、住民が自ら考えて判断をすることができるよう努めた結果、大部分の住民が今では前向きに受け止めていただけています。
|
会場からの質疑応答 | ||
![]() |
||
![]() |
■質問1 男性
小学校の教員をしているが、原子力発電による電力の恩恵を十分に受けていない世代に対し、"恩恵を受けた現世代の責任"という観点から地層処分を教えていくのは難しいと頭を悩ませています。どうすればスウェーデンのように前向きに捉えられるのでしょうか。
|
|
![]() |
エングストレム氏)
その悩みは良くわかります。ただ、世代間の公平性は、数年という単位ではなく長期的に考えていく必要があります。例えば、火力発電所も、化石燃料によって気候変動が引き起こされたと多くの研究者が答えますが、当時は対処法がなく、その後の研究成果から、今、対策が講じられている状況です。このように似た事例は多く、例えばイタリアでは現在原子力発電所は稼動していないが廃棄物が残っており、深刻な問題になっています。世代間の公平性は、短期的な公平ではなく、長期的に考えて公平なものにしていくことが重要だと思います。
|
|
![]() |
||
■質問2 女性
東京電力福島原子力発電所事故の以前と以後で、スウェーデン国内では何か変化があったでしょうか。
|
||
![]() |
スパンゲンベリ氏)
福島の事故後、処分場に対しての反対意見が増加していることはありません。また、処分場に関する議論ができなくなったということもありません。この問題は世代間の問題であり、子どもや孫のために取り組んでいくべき問題と捉えられています。 |
|
![]() |
エングストレム氏)
安全性に関していえば、逆に議論が深まったと思います。福島の事故の大きな原因は津波であったと思いますが、使用済燃料は地表近くのプールに保管されているため、津波の影響を受けます。だからこそ深い地下に埋設すべきだという、もう一つの理由ができたと言えます。 |
|
![]() |
日本へのメッセージ | |
![]() |
|
シンポジウムの終わりにスウェーデンからお越しいただいたお二方より日本へのメッセージをいただきました。 | |
![]() |
|
■スパンゲンベリ氏![]() |
|
![]() |
|
■エングストレム氏![]() |
|
![]() |
当日の模様(映像) | |
当日の映像は下記よりご覧いただけます。
|
当日使用した資料一覧 | |
![]() |
|
![]() |
シンポジウムに関する資料は下記よりご覧いただけます。※全て日本語版
|
![]() |
【基調講演資料】 >増田寛也氏 (PDF形式:683KB) >サイーダ・エングストレム氏(PDF形式:2.09MB) >ヤーコブ・スパンゲンベリ氏(PDF形式:3.72MB)
【参考資料】 >海外の取組状況(PDF形式:680KB)
|