2瑞浪超深地層研究所視察

2瑞浪超深地層研究所視察

5月12日瑞浪超深地層研究所地下500m体験

主に花崗岩を対象とした「地層科学研究」に取り組む

 NUMO訪問に続き、キャンスコ部員の藤原拓郎さんと多々見英里さんが、岐阜県瑞浪市にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の瑞浪超深地層研究所を訪問しました。同研究所が取り組んでいるのは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の基盤研究として、地下の環境や地下深くでどのような現象が起こっているのかを研究する「地層科学研究」。具体的には主に花崗岩を対象として実際に地下に研究坑道(立坑および水平坑道)を建設し、岩盤の強さ、地下水の流れ、水質などの調査方法の研究・開発をはじめ、様々な研究に取り組んでいます。

地下500mにある研究坑道へ

 見学当日、まずは研究所の職員の方から施設や研究の中身についての説明を聞きました。その後、作業着に着替え、いよいよ地下500mの研究坑道へ。坑道までは専用のエレベーターを利用し、約5分かけて地下深くまで降りました。そこから「ビル8階分くらいある」という高さの螺旋階段を降り、ようやく地下500mの研究坑道に到着です。

 研究坑道では、実際の研究現場や地下500mの岩盤などを目の前に、研究所の職員の方がそこで行われている研究の中身や成果について詳しく解説。「地層処分で最も注意すべきリスクは、地下水によって高レベル放射性廃棄物の中の放射性物質が流されることだと伺いました。その対策として何重ものバリア(多重バリア)を施し地下300mよりも深い所に処分するそうです。また、地下深くになればなるほど水の流れは遅くなり長期に渡り放射性物質の動きを抑え閉じ込める性質があるそうです。」(藤原さん)。ただ、あまり深すぎると地層の熱が高くなって人工のバリアに悪影響が出る可能性があります。瑞浪超深地層研究所では地下300mと500mに水平の研究坑道が作られています。

坑道内で行われる様々な実験

 地下水の水圧を観測する実験では、坑道内に止水壁を設け、その中を地下水で冠水させ、「坑道内冠水に伴う坑道周辺の地下水の水圧や水質の変化」を調査。この「再冠水試験」によって、大規模地下施設の建設によって変化した坑道周辺の地質環境について、坑道閉鎖時の環境回復能力を調べます。

 具体的には、「割れ目が存在する不均質な環境で、水圧はどのように回復するのか?」「坑道に閉じ込められた酸素を含んだ地下水は、還元状態(酸素を含まない状態)になるのか?」といった現象の観察・確認のほか、実験から得られた知見は、坑道閉鎖時の周辺岩盤の力学・水理・化学環境変化の観測に必要な調査解析技術の開発にも活かされることが現場で解説されました。

見学を通じて感じたこと、これからの課題

 最後に、瑞浪超深地層研究所の見学を体験した藤原さんと多々見さんに、感想を聞きました。

――地下500mの研究坑道に実際に行ってみた感想は?

藤原研究坑道自体かなり広かったですが、実際の処分場はこれよりはるかに大きくなると聞き、単純に規模が大きく、すごいプロジェクトなんだなと改めて思いました。

多々見500mってビルにしたら何階分くらいになるんだろうとか、私も規模の大きさには驚きました。5分間エレベーターに乗り続けた体験も人生で初めてで、貴重な体験となりました(笑)。

――現場で研究のことについて説明を受けられていましたが、印象に残ったお話はありましたか?

藤原地層がズレた場所(断層)や岩盤の割れ目から水が流れ出すということを聞きました。ただ、すべての割れ目から水が出るわけではなく、10本に1本くらいの割合とのこと。その原因や仕組みを調べるため、割れ目を数千本調査をしているということを聞き、地道な研究が続けられていることがよくわかりました。

多々見岩盤の割れ目につまっている鉱物の種類によっても、水の通しやすさが変わってくるみたいです。その調査をはじめ、食塩水などを坑道内に入れ、その濃度の変化の測定なども行われているそうで、様々な角度から実験に取り組まれていることが伝わってきました。

――高レベル放射性廃棄物の地層処分問題について、個別に質問されたことがあれば教えてください。

藤原最終処分地が決定しているフィンランドの事例に対し、なぜ住民の方が受け入れたのかについて尋ねました。その理由として、実施主体や規制当局が地層処分の問題をしっかりと国民に伝え、双方向で話し合いを進めていく中で各人が問題意識を高めていったという背景があり、それが処分場建設の受け入れへとつながっていったようです。それに比べ、日本は一般の人の認知度がまだまだ低いように思います。

多々見確かに、日本は専門的に関わっている人と、一般の人々との情報格差が大きいように思います。高レベル放射性廃棄物の問題は、日本では一部の高校や大学で取り上げられているようですが、義務教育の現場などでも伝えていくべきだと感じました。

藤原私自身、今回の取材をさせていただくまで地層処分の問題を知りませんでした。多々見さんが言ったように、教育の現場をはじめ、もっと多くの人にこの問題を伝えていかなければなないと強く感じました。その意味では、キャンパス・スコープでの特集やNUMOさんが主催されているシンポジウムの活動などは、意義のあることだと思います。

多々見今稼動している原子力発電の問題もありますが、それ以前に、すでに「原子力発電のごみ」は現実問題として存在しています。いつまでも地上で管理することはリスクが高いと思うので、その処分の問題について国民全員が考えないといけないと、今回の取材を通じて強く思いました。

NUMOはみなさまの「知りたい!」「学びたい!」を応援します!

地層処分に係る学習を希望される団体等を対象に、勉強会や地下研究所の見学会等の活動を支援します。

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