3シンポジウム参加

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いま改めて考えよう地層処分~科学的特性マップの提示に向けて~

 5月14日、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで「いま改めて考えよう地層処分~科学的特性マップの提示に向けて~」と題したシンポジウムが開かれました。取材に取り組んでいたキャンスコ部員3名も参加。シンポジウム終了後に、登壇者である德永朋祥氏と崎田裕子氏にインタビューも行いました。

高レベル放射性廃棄物の地層処分について、国・NUMO、有識者、参加者が意見を交わす。

 シンポジウムでは、地層処分に今、取り組む必要性や、今後国から提示される予定の「科学的特性マップ」の意義や提示後の対話活動などについて、資源エネルギー庁・NUMOの職員による説明が行われました。その後、専門家を交えたパネルディスカッションや参加者との意見交換・質疑応答が行われ、地層処分について深く議論が交わされました。

 科学的特性マップは、地層処分に関する地域の科学的特性について、全国地図を色分けする形で分かりやすく示そうとするものです。自治体に処分場や調査の受け入れの判断を求めるものではなく、提示をきっかけに、国民の方々に関心を持っていただき、全国各地できめ細かな対話活動を丁寧に進めるものです。それぞれの地域が地層処分に本当に適しているかどうかを評価するためには、その地域で綿密な調査を行い、地下環境等をしっかり把握する必要があります。

 有識者として登壇した徳永朋祥氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)が、地表に比べて自然現象に左右されにくい地下深部の特性などを科学技術的な視点から解説。一方、崎田裕子氏(NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長)からはご自身が係わった対話活動を通じて上がってきた市民の声の紹介や、対話や教育の重要性などについて語られました。

キャンパス・スコープの学生が登壇者にインタビュー

(左から)多々見 英里さん、徳永 朋祥氏、小出 果菜子さん、崎田 裕子氏、武田 健吾さん

もしこんなことが起きても大丈夫か? と安全サイドに立って考える。

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
德永 朋祥

多々見数万年スケールで見た時に、地下の安定性はどのようにして予測できますか?

德永何万年後のことを明確に予測するのは難しいので、さまざまなシナリオを考え、その中で地下の状況の変化を一定の幅を持って想定します。極めて危険な状態が発生しないような場所選定や工学対応をしたうえで、予測の幅の中で極めて危険な状況になったとしても、私たちの生活圏内に影響を及ぼさないということを基準に安全性を評価していきます。

多々見最悪のケースは、放射性廃棄物が容器から漏れることなのでしょうか?

德永高レベル放射性廃棄物の地層処分では、オーバーパックや粘土から構成される「人工バリア」を施します。厚さ約20cmのオーバーパックの1000年間の腐食量は大きく見積もっても3cm程度ですが、1000年後にはオーバーパックが閉じ込め性を失ってしまうことを想定します。その場合でも、地下300m以深の地下水の流れが遅い安定した岩盤(天然バリア)に埋設することで、放射性物質の移動は抑制され、将来の人間の生活環境への影響は限りなく小さいと考えられています。

武田適性があると想定される場所は、日本にどれくらいあるのでしょうか。

德永現段階で具体的な数を答えるのは難しいですが、必要な地下のスペースは約10km。空港ひとつ分くらいですので、規模的には探すことは可能だと思います。

小出これから先も、地層処分がもっとも確実な高レベル放射性廃棄物の処分方法だと思いますか?

德永今後より良い処分方法が実用化された場合に、将来世代が最良の方法を選択できるように、施設閉鎖までは、安全が確保できる範囲で廃棄物を回収できるようにすることになっています。私個人の見解としては、地層処分が将来にわたっても安定し、最も良い方法だと考えていますが、100年後に地層処分に替わる技術が確立されていても驚きません。

まずは自ら学び、対話を重ね、双方向に話し合う姿勢が大切。

NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長
崎田 裕子

多々見科学的特性マップの公表について、私たちはどう受け入れ、どう考えるべきだと思いますか?

崎田まずはみんなで学び合うことが大切です。対話を重ねる中で理解を深め、その上で自分たちの住んでいる地域の特性がどうなのか、それをどのように考えていくべきなのかなど、各地域によって議論が進んでいくと思います。

小出マップによって、「好ましい特性がある」と提示されたところと、そうでないところとでは、問題意識に対する温度差が出るようにも思います。

崎田自分たちの住んでいる地域がどういう特性であっても、みんなで考え、学び合う姿勢は大切だと思います。仮に自分たちの地域が好ましくない特性があると推定される地域であったとしても、将来的に別の地域で関心が高まったときに、「この問題は日本の課題解決にとって、とても大事なことだ」と気づける視点が得られるはずです。

武田本日シンポジウムを拝聴して、教育の場で正しい情報を伝えることの大切さも感じました。

崎田そうですね。小学校から中学、高校と段階的に放射線や地層処分の問題を授業の中で伝えていくことの必要性も感じますし、そこで正しい知識を持つことが風評被害の抑止にもつながると思います。

小出この問題を多くの方に関心を持っていただき、一緒に考えてもらうにはどのようなことをすればいいとお考えですか?

崎田国やNUMOが本日のような意見交換を定期的に開催し、しっかりと地域の方々と双方向の対話の場を持つということが基本になるでしょう。その上で、全国各地の大学や地域の方が主体となり、勉強会や話し合いを行う場を作っていくことが大切だと思います。皆さんにも、その担い手になっていただくことを期待したいですね。

  • 地層処理の大切さが分かりました

    法政大学
    武田 健吾さん

     今回取材させていただいたことで、高レベル放射性廃棄物の問題を初めて知りました。キャンパス・スコープの活動などを通じて、今後この問題を一人でも多くの人に伝えていくのはもちろん、個人レベルでも友人たちなどと議論を重ね、考察を深めたいと思います。

  • 後世の人たちにも選択肢が残されている

    慶應義塾大学
    多々見 英里さん

     地層処分をしても、私たちが決定したものに対して、次世代に責任を負わせているのではないかという印象を持っていました。将来別の判断があれば回収できるようにするという「回収可能性」の方針を伺い、選択肢を後の世代の人にしっかりと残しているということが理解でき、新たな視点が得られました。

  • 主体的に情報を求めることの大切さを実感

    東京女子大学
    小出 果菜子さん

     国などから発信される情報を受け取るのはもちろん、私たちが主体的に情報を求め、理解を深めていくことの大切さを実感。また、日本全体の問題を地域から解決していくという視点を、今回のシンポジウムやインタビューを通じて学ぶことができました。

NUMOはみなさまの「知りたい!」「学びたい!」を応援します!

地層処分に係る学習を希望される団体等を対象に、勉強会や地下研究所の見学会等の活動を支援します。

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