地層処分技術コミュニケーション
-包括的技術報告書と地層処分の安全性に関する対話のあり方-

「地層処分技術コミュニケーション
-包括的技術報告書と地層処分の安全性に関する対話のあり方-」
開催報告


開催日:2019年4月20日(土)
場所:三田NNホール&スペース 多目的ホール(東京都港区)

 「地層処分技術コミュニケーション-包括的技術報告書と地層処分の安全性に関する対話のあり方-

昨年11月、NUMOは「包括的技術報告:我が国における安全な地層処分の実現-適切なサイトの選定に向けたセーフティケースの構築-」(レビュー版)を取りまとめ、公表しました。この包括的技術報告書は、地層処分の実施主体としてどのようにサイトの調査を進め、安全な処分場の設計・建設・操業・閉鎖を行い、閉鎖後の長期間にわたる安全を確保しようとしているのかについて、これまでに蓄積された科学的知見や技術を統合して包括的に説明することを目的としたものであり、現在、日本原子力学会による技術的なレビューを受けているところです。
NUMOでは、この包括的技術報告書を作成した意義と主要なメッセージについて幅広い皆さまにご紹介するとともに、安全性に関する対話促進のための取組みのヒントを探る目的で、「地層処分の安全性について、どのように対話することが必要か」をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。
このパネルディスカッションにあたっては、まず包括的技術報告書作成の目的及び主要な成果について、NUMO技術部 藤山 哲雄よりご説明し、続いて、経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長 吉村 一元 氏から「地層処分の安全性コミュニケーションに関する国際動向について」と題する講演をいただきました。講演後にパネルディスカッションを行い、8名のパネリストにより意見交換が行われました。当日は約70名の方のご参加をいただき、会場からの質疑応答も行われました。また、インターネットによるライブ配信も行いました。

以下、講演及びパネルディスカッションの概要、講演資料についてご紹介します。

 

 当日のプログラムと資料

 

開催日時:2019年4月20日(土)13:30~17:00

場  所:三田NNホール&スペース 多目的ホール(東京都港区)

 

開会挨拶

 近藤 駿介(NUMO 理事長)「開会挨拶」(PDF形式:1.75MB)PDF

 

プレゼンテーション1

「『包括的技術報告:安全な地層処分の実現』の概要」(PDF形式:2.69MB)PDF

 藤山 哲雄(NUMO 技術部)

 

プレゼンテーション2

「地層処分の安全性コミュニケーションに関する国際動向について」(PDF形式:2.90MB)PDF

 吉村 一元 氏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長)

 

パネルディスカッション

「地層処分の安全性について、どのように対話することが必要か」詳細はこちら

 コーディネーター:

  八木 絵香 氏(大阪大学COデザインセンター 准教授)

 パネリスト(順不同):

  新野 良子 氏(柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会 初代会長)

  井川 陽次郎 氏(読売新聞東京本社 論説委員)

  佐々木 隆之 氏(京都大学大学院工学研究科 教授)

  寿楽 浩太 氏(東京電機大学工学部 准教授)

  伴 英幸 氏(原子力資料情報室 共同代表)

  渡辺 凛 氏(アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)研究員)

  吉村 一元 氏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長)

  梅木 博之(NUMO 理事)

 

 開催挨拶

 

近藤 駿介(NUMO 理事長)

近藤 駿介(NUMO 理事長)

本日お集まりいただいた皆さまに感謝申し上げる。NUMOは、地層処分の実施主体として、科学的特性マップの公表以降、文献調査の開始に向け、地層処分の重要性・安全性について日本各地で様々な方との情報共有を進めてきた。地層処分の実現のためには、文献調査、概要調査など、調査を受け入れていただく地域の皆さまをはじめとして、国民の皆さまの幅広いご理解を得ながら段階的に進めていくことが重要であり、そのためにはNUMOが信頼される組織になる必要がある。一方で、地層処分の安全性について国民の皆さまに伺った結果からは、地層処分の安全性に関する情報が十分に届いていないことが示唆されていると考えている。このことを原子力事業者として反省し、地層処分という取組みを安全に実現することが可能であり、それに誠実に取り組んでいることをお伝えする努力を続けて参りたい。昨年11月に包括的技術報告書を公表した。これは、安全性について根拠ある説明をしていくうえで、NUMOにとって重要なステップである。本日のパネルディスカッションでは、包括的技術報告書の公表を踏まえて、地層処分の安全性について今後どのように情報発信や説明・対話をしていくべきか、ご意見をいただきたい。

映像をご覧いただけます。

 

 プレゼンテーション1

 

「『包括的技術報告:安全な地層処分の実現』の概要」

 

藤山 哲雄(NUMO 技術部)

NUMO 技術部 藤山 哲雄

包括的技術報告書について、これを作成した意義や目的、伝えたいメッセージを中心にご紹介するとともに、地層処分の安全性を伝えていくための取組みについて、いくつか事例的にお話ししたい。

 

●包括的技術報告書作成の目的、意義
地層処分は、高レベル放射性廃棄物やTRU等廃棄物を極めて長期間にわたり人間の生活圏から安全に隔離するという、人類がこれまでに経験したことのない初のプロジェクトである。この安全性に対する信頼を確保するためには、地層処分事業の各段階において、最新の科学的知見に基づいて事業の安全性について繰り返し説明していく必要があり、これを材料としてステークホルダーが次の段階に進んで良いという判断を行うことによって、初めて事業を次の段階に進めることができる。諸外国においても、こうした安全性を説明するための技術的な根拠を報告書として取りまとめており、「セーフティケース」と呼ばれている。セーフティケースは、ステークホルダーとの安全性に関する対話の土台となるものである。
昨年11月に公表した包括的技術報告書は、NUMOが安全な地層処分をどのように実現しようとしているかを説明したもの、つまりセーフティケースと呼ばれるものであり、安全確保に必要となる技術的な内容や事業を進めるための技術的なマネジメントなどを詳細に記述したものである。諸外国の例を見ても、セーフティケースの内容は、例えばサイトや地層の種類を特定しないジェネリックなものから、サイトを特定したサイトスペシフィックなものまで、事業の進捗状況に応じて変化している。NUMOにおいても、事業が進み、処分地が段階的に選定されていけば、その各段階でセーフティケースを作成していく予定である。包括的技術報告書はこうした将来のセーフティケースの出発点となるもので、文献調査に入る前段階のセーフティケースという位置づけである。包括的技術報告書の構成は国際的な指針を参考にしており、地層処分の安全性を説明するのに必要な技術的項目を網羅している。NUMOは包括的技術報告書のなかで、事業を文献調査以降に進めるための技術的な準備が整っていると結論付けている。

 

●地層処分の安全性に関する対話活動への包括的技術報告書の活用について
包括的技術報告書が、地層処分の技術や安全性について、ステークホルダーとの対話の土台となるためには、まずその技術的妥当性が確認されていることが基本となる。そのため、関連する学術分野の専門家や国際機関による包括的技術報告書のレビューを行っていくこととしており、幅広い分野の専門家を対象とした説明会も実施予定である。
NUMOでは、包括的技術報告書を基盤として地層処分の安全性について社会に伝えるための取組みを進めていこうとしているが、包括的技術報告書には専門家を対象とした技術的に高度な情報が掲載されている。安全性について、広く一般の方々にも説明するためには、専門性や関心に応じて情報を提示していく必要があり、原子力委員会では読者の関心にあわせて階層的に資料を整備することが提言されている。地層処分に関する資料は、現状ではパンフレット等の平易な説明資料はあるものの、包括的技術報告書のような専門家向けの情報との橋渡しとなる適切なものがないと考えている。そのためNUMOでは、単なる包括的技術報告書の要約ではなく、報告書作成の意義と主要点を平易に伝えることを目的とし、こうした橋渡しとなるような文書を作成することを計画している。
本日のパネルディスカッションでは、専門家ではない一般の方々と地層処分の安全性に関して対話を進めていくために、包括的技術報告書をどのように活用すれば良いか、パンフレット等の既存資料に加えて足りないものはなにか、等について皆さまからご意見をいただき、それを参考にさせていただいて今後の対応を検討していきたい。

 

質疑応答


Q:
安全評価の基本は、最大事故の際の影響を評価することであると考えている。活断層が処分場に直撃した場合を想定して実施した安全評価について、具体的には、廃棄体が全量破壊することを想定しているのか。

A:
活断層が処分場の中心部を直撃し、直撃した活断層の大きさの範囲に含まれる廃棄体が破壊されると想定して安全評価を実施した。

 

Q:
安全性を示す目安の被ばく線量について、ICRPが提示している個人の線量限度を参照しているとのことだが、集団線量を使用するべきではないか。

A:
安全評価については国際的にみても様々な考え方があり、現在進めていただいている包括的技術報告書の原子力学会のレビューや予定している国際機関のレビューのなかで、ご指摘の点もレビューされることになると考えている。私どもとしては、現在のICRP勧告の考え方に基づいて代表的個人の線量を評価しているが、いずれ国内の規制としても評価の考え方は示されることになるものと考えている。

 

Q:
包括的技術報告書は誰が作成したのか。第三者によって作成されたのか。

A:
第三者ではなく、NUMOの技術部が作成した。

 

Q:
包括的技術報告書はいつ公開したのか。NUMOのメールマガジンを受け取っているが、わからなかった。

A:
昨年の11月21日にNUMOのホームページ上で公開した。同時期にNUMOのメールマガジンでもご案内している。

 

Q:
包括的技術報告書に関して、専門家向けの説明会があるとのことだが、すでに案内はされているのか。

A:
専門家向け説明会のご案内はまもなく行う。ぜひご参加いただきたい。

 

Q:
断層直撃シナリオの安全評価の結果について、被ばく線量は最大で14ミリシーベルト/年とのことだが、「最大で」とはどういった意味か。「最大」の値を提示する場合は、すべてのパラメータについて最も保守的な値を使用するべきである。

A:
1年間の中で、最大となる被ばく線量を最大の線量として提示している。どのような条件で評価したのかの説明は時間の関係で省略させていただいたが、保守性には十分注意して条件やパラメータの設定を行っている。

 

Q:
埋め戻した坑道が処分場の閉鎖後に水みちとなる可能性について、「適切な止水プラグを設置することで対応する」と包括的技術報告書で述べているが、止水プラグが何年機能を維持すると考えているのか、どのように適切に設置するのかといったことが記載されていない。また、現在の包括的技術報告書では埋め戻した坑道が水みちにならないことを大前提として安全評価が行われているが、水みちとなった場合にどの程度の放射性物質が生活圏に達するのかという評価をセーフティケースには含めてほしい。

A:
適切な位置に設置するというのは止水の効果が最も効果的となるように設置するということである。埋め戻した坑道への対応については、引き続き技術課題として取り組むが、包括的技術報告書ではベントナイトを用いた止水プラグを使用することとしていることから、人工バリアの緩衝材と同様に、長期間にわたって機能を維持すると考えている。このようなことについて、ご指摘のとおり、根拠を示しながら説明していきたい。

 

 

映像をご覧いただけます。

 

 プレゼンテーション2

 

「地層処分の安全性コミュニケーションに関する国際動向について」

 

吉村 一元 氏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長)

経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長 吉村 一元 氏

本講演では、地層処分の理解を得るために諸外国が対話活動において、どのような工夫をしているか、その事例を紹介させていただく。最終処分は原子力エネルギー利用国にとって国際的な共通の課題である。各国で課題解決に向けた取組みを加速するため、対話活動で得られた知見や経験を共有し、相互に学ぶ国際協力が重要である。我が国でも積極的に進めている諸外国の知見を取り入れる国際連携の取組みにも触れつつ、海外での対話活動の事例を具体的に紹介したい。

 

●世界各国及び国際機関との連携
これまでに実施してきた対話型全国説明会でいただいたご意見でも、諸外国での対話活動の取組みに関心が寄せられている。こうした声を踏まえ、国としても諸外国の取組み・経験や知見を共有し、それを活用していけるように、国際協力を進めてきている。昨年には経済産業省と経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)との間で国際ワークショップを開催し、海外8か国の参加の下で、対話活動や理解活動について知見・経験を共有した。各国の事業の進捗は異なり、国民の信頼獲得に向けて様々なアプローチをとっているが、その本質的な部分は共通していた。ステークホルダーからの信頼獲得のためには、その声に耳を傾けることが重要であり、そうした大前提のうえで、住民の理解を助ける様々な工夫をしていること、地下研究所は安全性評価に関する技術的情報を提供し、信頼を獲得していくうえで効果的なプラットフォームとなると考えていること、今後も国際連携により対話活動等の成功事例を相互に学び続けることが重要であると位置づけていること等の意見が共通点として挙げられる。OECD/NEAの放射性廃棄物管理委員会(RWMC)及びステークホルダーの信頼に関するフォーラム(FCS)やセーフティケース統合グループ(IGSC)においても、セーフティケースに関する対話について長年議論されてきており、その中で、対話活動においては、相手の専門性に合わせた説明や資料に基づく対話が重要であることが議論されている。

 

●世界各国における対話活動の取組み
続いて、各国における具体的な対話活動の取組みや、昨年の国際ワークショップで発信された各国からのメッセージをご紹介したい。スウェーデンからは、安全性の理解には長期にわたる忍耐強い対話活動の継続が重要であることが指摘された。実際に、日本より事業が進捗している諸外国においても、処分地を決めるまでに、全国的な適地に関するマップの提示等を経てから30年程度の長い時間を要しており、その間に地道な対話活動を進めてきている。また、ベルギー、フランス、英国などからは、「伝え方」に関するメッセージが発せられた。例えばフランスでは、地層処分に関する理解が深まるほど事業に賛成する人が増える傾向にあるとのアンケート結果が示された。そのため、様々なツールを用いて知ってもらう、関心をもってもらうための情報発信や、相手の知識量に応じて段階的に活用できる情報提供ツールを整備して取り組んでいるとのことであった。また、スイスからは、ステークホルダーが確実にプロセスに関与できるように役割を明確にし、関係性を構築していくことが重要とのメッセージが、スウェーデンからは、極めて専門性の強い情報であるが故に、それを身近なこととして理解してもらうため、技術情報や不確実性の範囲の見せ方として、その全体的規模感(放射線量と時間軸)を共有するために工夫して編み出した図の事例等が具体的に示された。
最後に各国との意見交換から学んだこと、共有したことをまとめると次の三点となる。まず地層処分の理解活動に関しては、自分事として事業を知っていただき、早い段階から事業に関心をもち何らかの関わりをもっていただくことが重要であり、そのためには、様々な情報発信ツールの適用や理解度に合わせた説明内容の工夫が必要であるということである。二つ目として、セーフティケースに基づいた対話活動については、相手の習熟度に合わせた説明内容の工夫が必要であるとともに、ステークホルダーは事業のプロセスやセーフティケースの改善に関与できるという役割を認識することが重要であるということが挙げられる。第三に、規制面で早い段階での制度設計が必要であり、セーフティケースを通じた規制者とのコミュニケーションも重要であるということである。
我が国でも、各国の知見や経験を学びつつ、分かりやすく誠実にセーフティケースを伝え、理解していただけるよう、また、自らの経験を諸外国とも共有し国際連携を積極的に進めつつ、今後も対話活動を継続していきたい。

 

質疑応答


Q:
どの国も、自治体による反対を経験し、それを踏まえて代替シナリオを組んできたと思う。日本でも2015年の最終処分基本方針の改定を受けて、廃棄体の回収可能性の話が突然出てきたように思う。そのようにシナリオにまで立ち返ることについて、どのように考えているのか。

A:
地域から反対を受けた経験について、日本でも、高知県東洋町の事例がある。この事例では「危険なものをなぜ受け入れなければいけないのか」という住民の意見が多かったことが背景にある。この経験を踏まえ、現在は地層処分に関する説明会を全国各地で開催して、地層処分の必要性や安全性に関する理解を全国的に広める取組みを行っている。この問題は、我が国のどこかで必ず処分しなければならず、避けては通れない問題であることについて理解いただき、その前提で、仮に受け入れを表明する市町村が現れた場合には、尊敬しつつ、感謝の念をもって受け入れられるような環境を作っていきたいと思う。また、回収可能性については以前から議論はなされており、地層処分の代替となるより良い処分方法が確立された場合には、処分方法も変更できるようにするため、最終処分基本方針の改定では可逆性と回収可能性を担保することを明記した。地層処分事業を進めるなかで、最新技術が利用可能となればそれを反映して事業を進めていくといった計画の柔軟性は維持している。

 

Q:
日本の地質の特殊性に関する説明が不十分ではないか。日本は変動帯に位置しており地下水も多く、海外とは異なっている。日本のように地質が不安定な場所では地層処分ができないのではないか。

A:
地層処分を実施するにあたっては、地下水の動きが緩慢であること、また火山や断層を避けることなどが重要であり、このような特徴を踏まえた研究の成果として、日本においても地層処分に必要な性質を有する地下環境が数多く存在することが専門家によって結論付けられている。しかしながら、そのような説明に対して「納得感がない」、「説明されてこなかった」という意見があることも事実である。具体的な研究成果や科学的根拠を明確に示した情報の方が、納得感が得やすいとも思うので、今後はそうした技術情報の提供にも配慮した説明を行うなど工夫を図っていきたい。

 

 

映像をご覧いただけます。

 

 パネルディスカッション

 「地層処分の安全性について、どのように対話することが必要か」

八木 氏

会場の皆さんで、先ほどのNUMOによる説明が分かりにくいと感じた方は手を挙げていただきたい。

 

(会場の方々が挙手)

 

八木 氏

(約70名中)10名弱の方々が挙手しているようだ。これくらいの人数の方々が分かりにくいと感じたことを踏まえて、パネルディスカッションを行っていきたい。

 

新野 氏

先ほどのNUMOの説明には、これまでの我が国における地層処分に関する取組みの経緯や、リスクについても内容に組み込んだほうが良かったのではないかと思う。経緯とは、1999年の第2次取りまとめの公表、原子力施設でのデータ改ざん問題、2011年の福島第一原子力発電所での事故発生、といったことなどとの関係性であり、そうしたものも含めて今回のレポートを作るに至った経緯や考え方をもっと知りたかった。

 

井川 氏

私は包括的技術報告書が公表された際に、NUMOが自らの手で報告書を取りまとめたことについて、やっとできた、基盤ができたと感じ、社説にもそのように記事を書いた。包括的技術報告書を取りまとめたのは、地層処分の実施主体として、技術者として、有意義なことであると思う。ただ、本日の説明で残念だったのは、相対的に経緯や目的などの説明ばかりが多くて、最も重要な長期の安全性についての説明が少なかった点である。やはり長期の安全性については社会の関心も高いと思うので、本日のNUMOの資料に示されている将来の不確実性を考慮した様々な解析ケースについては、分かりやすく丁寧に説明してほしかった。

 

佐々木 氏

報告書をどのように使うのか、ということが会場の皆さまにどのように伝わっているのか興味がある。また、最新の知見や技術がどのように反映されているのか、その経緯が分かるようにすること、そしてその際には、最新の技術を反映した前後の比較を示すことが重要と考えている。

 

寿楽 氏

セーフティケースを作成して、それを踏まえて社会に問いかけるにあたっては、誰がこれを求めているのか、また、NUMOとしては何が必要と感じて、どういう相手にコミュニケーションを行いたくてこれを作成したのか、といったことを作成者であるNUMOがまず明確にし、それをきちんと説明することが必要と考えている。日本では他分野も含めて、一定の基準に対してそれを満たすかどうかで安全性を判断するのが一般的な通念となっている。安全性の論拠を総合的に示すことで社会のステークホルダーの合意、了解につなげるというセーフティケースの考え方自体に馴染みが薄い。今回のセーフティケースを作成した当事者としてはどのような狙いをもってこのような大変な作業を行ったのかを聞きたい。

 

伴 氏

パネルディスカッションが設定された理由を知りたい。包括的技術報告書は技術的な専門家向けに作成したものであり、NUMOとしても専門家ではない方々向けの資料は別途作成するとのことである。専門家ではない方々向けにどのような資料を作るべきであるかを議論するのであれば、それをまず作成したうえで議論したほうが良いと思う。また、第四紀の未固結岩はサイトの候補から除外するということだが、第四紀の固結岩に対してはどう対応するのかがわからない。

 

渡辺 氏

セーフティケースは本来、証拠を含めた主張、つまりアーギュメント(論証)であるということが本質であり、その際には「本来危ないものであるにもかかわらず、なぜ安全といえるのか」というロジックが重要であると思う。しかし、包括的技術報告書からはそれが伝わってこなかった。ちなみに海外では、セーフティケースの悪い例として、この「なぜ」という根拠が弱いことが挙げられていた。また、包括的技術報告書がステークホルダーとの対話の土台となることを意図しているとのことだが、この報告書は安全に対して責任を有している事業者が、規制者との議論を通じた意思決定をする際に利用するものであり、一般的な国民との対話に用いるもののようには思えない。

 

八木 氏

まず、パネルディスカッションの目的について、NUMOとしては、分かりやすい導入編を作るにあたって、一般の方に示すより前に、我々のような直接の専門家ではないが、報告書を読むであろう人からの意見を聞いておきたい、ということと理解している。本日のこの場では、まずは「現在の説明ではこういったことが抜けている」といったことなどを議論するのだと思う。

 

梅木 理事

まず、セーフティケースを作成する目的は、事業者が説明責任を果たす、つまり、最新の科学技術的な知見を踏まえて、論を尽くして説明するということである。多くのことが説明されているセーフティケースの中で、一般の方々が求めていることは何なのかを、NUMOとしても知りたい。例えばパンフレットを作成するとしても、セーフティケースの内容については、厳密には包括的技術報告書で600ページにもわたって説明が必要なものであり、パンフレットで説明することはそれが難しい。先ほど、渡辺氏がセーフティケースの本質としてアーギュメントを明確に示すことの重要性についてご指摘があったが、これを端的に示すにはどうすれば良いか、そういったことについてどのように取り組んでいくべきか、いかに伝えるかについて、このパネルディスカッションで議論していただければと考えており、八木氏のご理解で結構である。伴氏の質問された第四紀の未固結岩の扱いについては、第四紀の未固結岩は科学的特性マップでも地層処分にとって好ましくない特性があると推定されることから排除されており、報告書でも検討の対象としていない。また、日本地質学会の分類による7岩種のうち、処分場の設置に適さないと想定される2岩種(第四紀堆積岩類(一般に強度が小さく未固結堆積層を含んでいる)、第四紀火山岩類(火山近傍に分布する))は検討の対象としていない。他の5岩種については、報告書で検討対象母岩として取り上げた3岩種で対応できる。

 

渡辺 氏

実際の本文を読んでみて、ロジックが書かれていることは分かるが、「なぜ安全と言えるのか」という中心的ロジックを技術報告が支えているというよりも、技術報告メインになっているのではないか。「これらの安全対策を検討しました」という項目のリストが大事なのではなく、なぜそれらの項目でよいのか、という説明の方が重要である。

 

伴 氏

今回の報告書について、ある人が知りたいと思って深く読んでいくと情報にたどりつけるようになっていると良いが、現在、安全性という一番関心のある部分、6章・7章の付属書は後日公表となっている。知りたい人の要望に早く応えてほしい。稀頻度事象について、10のマイナス10乗の頻度とのことだが、それが発生した場合の影響が非常に重要である。福島第一原子力発電所の事故を経験した我々としては、稀頻度だから絶対に起こらないとはもはや思えない。その場合、稀頻度事象発生時に想定されている14ミリシーベルト/年という線量を受け入れる人がいるのだろうか。文献調査を受け入れる人がいるとは考えにくい。したがって、もっと線量を下げるような技術開発をすべきと思う。また、ICRPが提示しているめやす線量を利用しているとのことだが、この基準は原子力利用を前提としてどこまでリスクを低減できるかということが論じられているのだが、地層処分の長期の安全性を考える場合は、この前提が成立しないと考えている。

 

梅木 理事

これが安全であるという説明責任を果たすためには、まず、どのような安全基準を用いているかを説明すべきということはご理解いただけると思う。原子力規制庁でこれから議論が進められることになっており、日本での規制基準をどうすべきかについて、答えを持ち合わせていないが、十分に議論されるべき。現状では、ICRPの考え方がいろいろな国にも受け入れられているということから報告書での議論のためにこれを用いた。ただし、この考え方がそのまま受け入れられるということではなくて、ICRPの基本的な考え方を各国で適用するときにはそれぞれの状況に応じて基準として策定されるということを念頭においておく必要がある。日本でいえば、その部分を原子力規制委員会、原子力規制庁が担うことになる。NUMOとしては、自分達が説明責任を果たすうえでの判断の目安ということでこの国際基準を使っているという趣旨を報告書では十分に注意して記載しているつもり。だからといって、ただちに安全であるというように断定していないつもりである。

 

伴 氏

私が言いたいのは、場所が決まれば、そこに合わせてふさわしいセーフティケースが作られるのだと思うが、そのような状況に至る前に、報告書で示された稀頻度事象シナリオの 14ミリシーベルト/年という数字を見て、調査を受け入れるという気持ちにならないだろうということ。安全であるとは受け取らないのではないかと思う。

 

渡辺 氏

ここまでのやり取りから感じたこととして、日本の原子力業界での事故が実際に起きてしまった今、国際的な基準や水準を満たしていることをいくら主張して、一般の方のみならず専門家であっても安全であると納得できるのかどうかが気になる。規制基準の考え方やいわゆる純粋な科学技術の話だけでなく、マネジメントの観点から、過去にトラブルが起きているのになぜ地層処分が安全に実施できると言えるのかをセーフティケースのなかで説明することも重要と思う。

 

新野 氏

地層処分に関心のある人が、いつでも情報を閲覧できるような透明性を持たせることや、何が論点になるのかを知らしめていくことで、一般の方々が事業の流れを共有できるようにすることが重要だと考えている。

 

井川 氏

一般の方々からのQ&Aをデータベース化して、包括的技術報告書の補足資料として拡充し皆が利用できるようにしていくことが、この報告書の使い道の一つと考える。また、実際のサイトについて事業の認可を受ける段階になれば、原子力規制庁との対話の際には、今回の報告書で示されている安全評価のケース以上に、様々なパターンでのいろいろな試算を膨大に求められるのではないかと思う。これも報告書の使われ方の一つであり、様々な使い方の可能性を議論していくことが理解につながっていくのではないか。

 

寿楽 氏

地層処分が「できる」ということを、論理を尽くして主張する文書がセーフティケースだ。作成者は、その時点での見識を丁寧に示すことで、予測を超える事態も含めて、このような方向性で取り組めばきっと大丈夫だという見通しについて社会の信任を得る必要がある。例えば、高い被ばく線量を示す予測があっても、なぜ全体としては十分に安全といえるのか、人々は知りたいと思うであろう。文書の書き方として、主語がもっと前に出て、なぜ大丈夫と考えるのか、また、どのような判断をしているのか、というロジックが見えるようにすべきと思う。海外では、ステークホルダーだけでなく、規制側との対話にも有効であるとされている。本日のような場に、規制側もいて意見交換を行っている例もある。

 

佐々木 氏

600~700ページあるものをただ圧縮しても、分かりやすい資料にはならない。一般の方に、何をどう考えたのかを分かりやすく説明する資料・材料を作っていかないと伝わらない。一般の方向けの内容に応じた適度な分量というものがあると思う。

 

八木 氏

稀頻度事象を書くようにしている点は、これまでの原子力事業の取組みと変わっていると思う。この稀頻度事象が、どのような考え方で設定されているのかが伝わるようにすることが重要と考える。

 

梅木 理事

ご指摘のように稀頻度事象については、どのように設定しているのか、どれくらいの頻度で発生すると考えられる事象なのか、そして、そのうえで計算した結果がこれだけの線量であり、どの程度の影響であるのか、といったことを説明することが重要と考えている。ここまでのお話を伺っていて、稀頻度事象について恐れずに説明すること、十分に説明することが重要と改めて感じた。

 

渡辺 氏

稀頻度事象についても、NUMOがどのような戦略で臨もうとしているのか、すなわち安全性に関するロジックを説明することが重要であると思う。たとえば、その事象に何らかの対策を施した場合にどの程度リスクを下げられるのか、対策の実施にはどのようなリスクが伴うのか、といったことを体系的に議論するべきではないか。

 

伴 氏

目標線量を達成するにあたってどのような課題があるのか、といった点も説明されることが必要である。

 

八木 氏

ここまでのやり取りを聞いていると、稀頻度事象に関するNUMOの現状の説明は、頻度が小さいから大丈夫である、というメッセージ性を帯びてしまっており、その点が問題視されているのではないか。

 

寿楽 氏

発生頻度が小さいから大丈夫、というメッセージだけでは、一般の方は納得しない。地層処分はこれから行う事業であるため、現時点までの実績に基づいて社会の信任を得るのは難しい面がある。だからこそ、事業者は論証と取組みの姿勢をはっきりと社会に示すことによって信頼を得ていくことが必要である。今日の説明についても、そういった点が見えるものであればよかったと思う。

 

新野 氏

現時点では、包括的技術報告書は一般に向けての説明にはならない。一般の人に向けて、この報告書をどう使うかというところはよく考えてほしい。

 

八木 氏

技術の話とコミュニケーションの話が切り離されがちであるが、同時に進めていくべき。各段階で繰り返し説明しコミュニケーションを図っていくことで理解も進むと思う。

 

井川 氏

原子力を取り巻く世の中の状況が変わっている時期を前提に、一般の方々とのコミュニケーションを丁寧にとっていくべきであり、稀頻度事象の評価も含めて、このような時期に包括的技術報告書を公表されたのは良いことである。

 

渡辺 氏

今後どのような研究をしていくのか、という研究課題の整理を国民と一緒に行っていくことが重要ではないかと思う。また、核燃料サイクルが今後どうなっていくのか、という国民の疑問についても答えていくことが重要と思う。

 

吉村 氏

研究課題は、国の立場からも、どのような研究をすべきか整理がなされており、それに基づいて研究を進めている。その研究の成果を、包括的技術報告書に反映して研究成果の重要性について確認をしていくことが大事である。

 

会場の参加者からのご意見等


  • ●包括的技術報告書には、安全評価の手順は書かれているものの、評価に使用したモデルやパラメータが具体的に示されていない。評価の手法や結果などを具体的に示さないと、社会に受け入れられないのではないか。
  • ●NUMOの説明会で発言すると、言いたいことを全部は話すことができない。パネリストだけでなく参加者との意見交換も必要。
  • ●本日の「対話」という言葉について、対話に関する思いが、会場と企画者側で乖離があると感じている。参加者からの思いが汲み取られていないように感じる。NUMOが開催している説明会では、参加者からの意見がそのまま生データとして公開されていない。お互いが、対等な意見を出し合い、そのうえで、納得しあうことが重要であると思う。また、吉村室長の資料には、出典がないものがある。
    • ⇒事実を確認したい。NUMOが開催した説明会で参加者から出されたご意見は公表していないのか。(八木 氏)
    • ⇒参加者からのご意見については概要を公表している。生データは公開していない。(梅木 理事)
  • ●報告書のなかで、想定されるリスクをどのように抽出したのかといったことなどを、リスクマネジメントの観点から説明した方が、聞き手として受け取りやすく検証もしやすいのではないかと思う。
  • ●過去の事案について「反省している」とのことであるが、信頼を得るために、今後の対話集会で具体的に何をするのかを説明しなければならないと思う。例えば、私がこれまでに参加した説明会の場では、まずは原子力発電所の再稼動をやめて、最終的に処分が必要な廃棄物の量を明らかにするという学術会議が示した総量規制の考え方を取り入れることが大事であると思うとの意見が多かったが、それについての議論が本日もなされていないと思う。また、国の審議会においては、従前の原子力業界の取組みについて慎重派の意見を取り入れていなかったこと、科学的知見には限界があるということ、廃棄物の総量規制の導入の必要性が指摘されているので、そういった点を今後の取組みにおいては活かしてほしい。
  • ●わずかでも地表に放射性物質が到達してしまうことが不安要素なのではないかと思う。地表に放射性物質が到達しないことを目標とすることが必要ではないか。そのように目標設定したうえで、頻度の低い事象が発生した場合には地表に到達してしまうということであれば、受け入れる余地も生まれるのではないかと思う。また、本来であればもっと技術的な内容について議論する時間が必要ではないか。

 

 

八木 氏

最後に、会場からのご意見にできるだけ応えるかたちで、各登壇者から一言ずついただきたい。

 

新野 氏

会場の皆さまとしては、幅広い見地から議論したいのだと感じた。また、それをしなければ深まった議論にはならないのではないかと感じた。

 

井川 氏

会場から、対話の時間が十分でないとの意見があったが難しい問題である。対話の機会を設けるにあたっては、会を開催したり、インターネット上に対話の場を設けたりと、いろいろなチャンネルを設けることが重要ではないかと思う。

 

佐々木 氏

専門家は付属書を積み上げていく地道な作業をしている。そうした過程ができるだけ外部からも見えるように残しているというのが、今回の包括的技術報告書である。一般の方にそこまでたどりついていただくのも難しいが、見えるように工夫しているところであり、それを汲み取っていただけるとありがたい。全体の感想としては、どう伝えるか、伝わるかという問題意識をもって、対話やコミュニケーションを見直して取り組んでいきたいと改めて思った。

 

寿楽 氏

セーフティケースという海外の概念に翻弄されないようにしないといけないという印象をもった。内容について、個別具体的に議論を深めたいという意向があるように思うが、セーフティケースというのは、リスクマネジメントとしての文書の見方もできるのではないかとのご意見もあったように、セーフティケースがリスク評価書と異なるのは、価値観や判断の部分を前面に押し出すところであり、異なる打ち出し方となっていると理解している。一般の方との対話も改めて機会を設けると良いのではないかと思う。

 

伴 氏

本日の資料に記載があったが、橋渡しとなる資料を作成していくべきと思う。また、会場からのご意見にもあったが、意見が一方通行で、丁寧に説明をしていけば理解を得られるという直線的な考えに基づいて事業が進められており、いろいろな意見が出てもフィードバックする仕組みができていない。違う意見が出てきた際に、フィードバックする仕組みができていないということが問題であると思う。また、基本方針に書かれている可逆性について、誰から発議され、どのように反映するのか、という制度設計が現状なく、これを速やかに解決していくことが重要と考える。

 

渡辺 氏

対話について、広く国民から意見を聞くという姿勢は見て取れるが、意見を反映する取組みをすべき。エネルギー政策や放射性廃棄物を広く議論できる仕組みが必要であり、そのための制度設計を考えるべきではないか。そうした場がなければ信頼は生まれないと思う。

 

吉村 氏

本日は、多くの方にご参加いただき感謝申し上げる。パネルディスカッションにおいて、また、会場からいただいた多くの意見を真摯に受け止めたいと思っている。NUMOの事案についてのご意見があったが、信頼を失ったことを当事者が痛感して、信頼回復に取り組んでいると私は思っている。また、出典が記載されていないというご指摘については、可能な限り加筆したうえで本日の資料としてホームページに掲載したい。また、信頼を得るため、対話の中で出てきた議論をフィードバックする仕組みを作っていきたい。

 

梅木 理事

事業者として、包括的技術報告書、つまりセーフティケースを取りまとめることが説明責任を果たすことであることを説明させていただいたうえで、本日、多くの方々からご意見をいただくことができた。今後も、様々な観点で工夫をさせていただき、今日いただいたコメントに応えられるようにしていきたい。過去の対話活動に関するご指摘もあったが、NUMOとしても信頼を得ていくことが大事であると強く認識し努力している。まだ至らない部分もあると思うが、NUMOがどういうことを行っているかを率直にお伝えして、それに対する様々なご意見を頂戴できたことは、今後の糧になるものと思っている。

 

八木 氏

信頼を構築していくことについて思うことは、事業者側が国民を信頼しきれていない面があるのではないかと思っている。国民の方とゼロから話をして本当に良いものができるのかということについて、どこか信じきれない部分がある結果として、信頼が得られていないという側面もあるのではないか。まだ先の道のりは長いが、本日の議論がそこにつながる一つのきっかけとなれば良いと思う。以上で、ディスカッションを終了したい。

 

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 閉会挨拶

 

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