ナグラ(Nagra)との技術協力協定の締結について

平成13年6月5日
原子力発電環境整備機構

 

原子力発電環境整備機構とナグラ(Nagra:放射性廃棄物管理共同組合、スイス:参考参照)は、高レベル放射性廃棄物管理分野における技術協力協定を下記のとおり締結いたします。

  


1.締結日
平成13年6月5日(火)[日本時間18時00分締結予定]

 
2.場所
ナグラ 本部 (ベッチンゲン、スイス)

 
3.締結者
原子力発電環境整備機構 理事長 外門一直(ともん かずなお)
ナグラ ハンス・イスラー理事長(Mr. Hans Issler)

 
4.目的
原子力発電環境整備機構とナグラは、相互の利益、公平性及び互恵主義に基づき、高レベル放射性廃棄物管理分野における相互に合意する項目に関して協力を行う。

 
5.協定の概要
原子力発電環境整備機構及びナグラは、追跡性・透明性の確保に配慮することを基本方針として、技術協力を進める。
協力の範囲


1. 地質環境の選定と特性調査に関わる方法論及び手法
2. 処分場と人工バリアに関する工学技術
3. 地層処分システムの性能評価に関する方法論と手法
4. 情報の品質管理と品質保証
5. パブリックアクセプタンスと信頼性の形成
6.その他


外門理事長は、ナグラ訪問に先立ち、平成13年5月30・31日、スウェーデンで開催された放射性物質環境安全処分国際協会の会議(エドラム:EDRAM)に参加した。
同会議では、原子力発電環境整備機構の加盟が認められ、外門理事長から、日本の地層処分に関わる法律、今後の処分スケジュール、資金の管理の概要を説明した。


以 上

 

(参考)NAGRAの概要(2001年5月現在) 

1.設立 1972年


2.役割

スイスで発生する全ての放射性廃棄物処分に係わる研究開発と地層処分のスイス国内での実現性明示、処分サイト選定とその適合性評価、予定地での特性調査に係わる許認可申請と調査、および処分に関する社会的合意形成のための活動を展開している。


3.組織構成

処分全体を管理する部として、処分プロジェクト部、放射性廃棄物管理部、国際支援・プロジェクト部、科学・技術部がある。これらを支援する部門として、法務・総務部、財務・経理部、広報部、および品質管理部門からなる。


4.従業員数

約80名(2001年4月、内65名が科学・技術スタッフ)


5.所在地

Hardstrasse 73, CH-5430 Wettingen, Switzerland


6.処分費用

ナグラの経費およびプロジェクト費用は、国および電力が負担。処分事業費は、原子力法の改訂(2002年)に伴い、電力料金からの基金として徴収する計画である。1996年時点の見積もりでは、3973億円である。


7.スイスの原子力事情

原子力発電所5基
ベツナウ1号(PWR、37万kW)、ベツナウ2号(PWR、36万kW)、ゲスゲン(PWR、97万kW)、ライブスタット(BWR、103万kW)、ミューレベルグ(BWR、36万kW)
スイスの総発電電力量約600億kWh、原子力の総発電電力量 約240億kWh(総電力量の約4割)


8.高レベル廃棄物処分プログラムの経緯

・ スイス連邦政府は、1977年、原子力発電所新規の許認可および運転許可の延長承認にあたり、1985年までにスイス国内での放射性廃棄物処分実現性を保証する報告書を電力と国に求め、その責任主体としてナグラを指名した。
・ ナグラはスイス北部の花崗岩を対象に5本の深層ボーリングを行い、 地層処分の技術的実現性を示す報告書として1985年 "プロジェクト・ゲヴェェール1985(Project Gewehr 1985)"を作成し、政府に提出した。本報告書は、1988年連邦議会で地層処分による廃棄物問題解決の実現性を示した報告書として承認された。ナグラ は、花崗岩だけでなく他の岩種についても処分可能な地域がスイスに存在することを示すことを要求された。
・ ナグラは1987年以降、高レベル廃棄物処分の候補岩種である花崗岩および堆積岩(泥岩)を対象に物理探査、ボーリング調査を行い、スイス北部の5x5kmの候補地域をそれぞれの岩種ごとに選定している。
・ スイス政府は、1997年に使用済み燃料を海外に再処理することを委託する方針を変更した。それに伴い、処分の対象とする高レベル廃棄物は、返還ガラス固化体と使用済燃料(MOXを含む)となっている。
・ 1999年、連邦政府の諮問機関エクラ(EKRA)は、スイスにお ける放射性廃棄物の最終的な解決策として、長期の中間貯蔵ではなく地層処分とすることを勧告し、処分に至るまでのプロセスとして、処分と平行して同じ地下 空間での長期監視による安全確認の段階を設置することを求めた。
・ ナグラは、これらの勧告を受け、2002年を目途に、処分概念を構築し、スイス国内における地層処分の実現候補地が存在する報告書を作成中である。
・ スイスの高レベル放射性廃棄物処分プログラムは、返還ガラス固化体 及び使用済み燃料の中間貯蔵施設(ZWILAG)が操業され、今後40年ほどの貯蔵能力があることから、経済的な判断も含めて処分そのものは2040年か ら50年頃の開始を計画している。また、プログラム全体の規模が小さいこともあり、基本的にはスイス国内での処分を原則としているが、共同で処分できる概 念についても選択肢としている。


9.地下研究施設

ナグラは、候補岩種に対応して2つの地下研究施設での技術開発を進めている。

・グリムゼル(Grimse)研究施設:1983年アルプス山中の花崗岩帯にナグラが建設。現在フェーズ?として国際共同での実験が進められている。

・ モンテリ-(Mont.Terri)研究施設:1995年スイス北部の堆積岩(泥岩)に数カ国の共同事業として建設され、ナグラを中心に国際共同プロジェクトとして実験が進められている。