「特定放射性廃棄物処分の概要調査等の選定手順の基本的考え方」について

2001年10月29日

  

当機構は、2001年10月29日(月)、特定放射性廃棄物処分の概要調査地区等を選定する方法、時期等を含めた、選定手順の基本的考え方を発表しました。選定手順の基本的考え方の内容は以下のとおりです。

  

「特定放射性廃棄物処分の概要調査等の選定手順の基本的考え方」について

 

平成13年10月29日
原子力発電環境整備機構

 

特定放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物)の処分地については、概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施設建設地(以下「概要調査地区等」)を順次選定していくこととしております。

原子力発電環境整備機構では、処分地選定の過程の透明性を確保するとともに、広く国民の皆様、地方公共団体の皆様及び 各地域の住民の皆様の理解と協力をお願いする観点から、今般 、概要調査地区等を選定する方法、時期等を含め、選定手順の基本的考え方を作成し別 紙のとおりとりまとめました。今後、選定手順等について理解を得るための諸活動を進める中で、皆様方のご意見等を踏まえ、さらに詳細な検討を行い、事業を 進めてまいりたいと考えております。選定手順の基本的考え方の概要については下記のとおりです。

なお、皆様方の理解を得るための諸活動の一環として、今年12月から、全国の都道府県において、フォーラム「エネルギー、将来の世代のために-電気のごみについて考えてみませんか-」を開催することとしています。

 
◎「特定放射性廃棄物処分の概要調査地区等の選定手順の基本的考え方」の概要
1. 概要調査地区等の選定時期
概要調査地区の選定は平成10年代後半を目途とする。
また、国の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」に従い、「精密調査地区の選定」は平成20年代前半、「最終処分施設建設地の選定」は平成30年代後半、「最終処分の開始」は平成40年代後半を各々目途とする。
2. 概要調査地区の公募
概要調査地区を公募し、応募していただいた地区及びその周辺の地域について文献その他の資料による調査を行い、その地区の中から概要調査地区を選定する。
3. 応募の主体
市町村(連合体を含む)。
4. 公募の開始時期
平成14年度目途に条件が整い次第開始。
5. 公募の方法
公募に当たり、「応募要領」、「処分場の概要」及び「概要調査地区の選定上の考慮事項」並びに「地域共生の取組み方」(いずれも仮称)を公表する。
各々の概要については以下のとおり。

(1) 応募要領
応募方法、応募の際に対象として必要な面積の目安、文献その他の資料による調査の内容等、公募に関する詳細事項を記載する予定。
(2) 処分場の概要
地質環境や立地場所の状況に応じた最終処分施設の概念仕様及び概念図、安全性、輸送手段等、概略的な全体像について、"処分場概念カタログ"の形でいくつかの例をとりまとめる予定。
(3) 概要調査地区の選定上の考慮事項
法令に基づく選定要件を基本として、原子力発電環境整備機構が概要調査地区の選定にあたって考慮すべきと考える包括的な諸条件をとりまとめる予定。
(4) 地域共生の取組み方
地域の皆様の意向を十分尊重できるような将来にわたっての地域共生の在り方についてとりまとめる予定。

 

6. 応募から概要調査地区選定までの手続き等
概要調査地区選定のための手続きは、[1]文献調査の実施と選定評価、[2]報告書の作成及び送付、[3]報告書の公告及び縦覧、[4]説明会の 開催、[5]報告書に対する意見書の提出、[6]意見書の概要及び原環機構の見解の送付、[7]実施計画の変更申請、[8]概要調査地区の決定の順で進め ることとしている。
文献調査は、地域の専門家、研究者、有識者等の協力を得て実施することを考えている。
また、処分地選定の各段階における調査にあたっては、地域住民の皆様の理解と協力が不可欠であり、そのため、各年度ごとに調査計画の事前説明及び事後報告 を行うとともに、関係都道府県及び市町村等により現場確認の申し入れがあれば、それに応じる。また、随時、現場及び関連施設を見ていただくことも考えている。


以 上

 

 

特定放射性廃棄物処分の概要調査地区等の選定手順の基本的考え方

 

原子力発電環境整備機構

 

わが国では、発電電力量の3分の1以上が原子力発電によって賄われています。
原子力発電を行いますと、使用済燃料中に高レベルの放射性物質が生じます。これを使用済燃料のまま処分することとしている国もありますが、わが国では、使用済燃料を再処理してウラン及びプルトニウムを抽出し、再度原子力発電用燃料(原子燃料)として利用するリサイクル方式をとり、資源の有効利用を図る方針がとられています。エネルギー資源に乏しく、その海外依存度の高いわが国では、将来にわたって電力を安定供給するために、原子燃料のリサイクルが極めて重要です。

 

使用済燃料の再処理の過程で、高レベルの放射性物質は高レベル放射性廃棄物として分離されます。この廃棄物の放射能レベルは、時間とともに低下していきますが、寿命の長い放射性物質も含まれているため、その低下には長い年月を要します。このため、高レベル放射性廃棄物は、人間の生活環境から隔離して最終処分することが必要であり、現在、原子力発電を行っている各国でも、地層処分(地下の深い安定した地層中に隔離することをいいます。)することが共通 の考え方となっています。わが国では、その方法として、高レベル放射性廃棄物を安定な形態(ガラス固化体)に固形化し、30~50年間程度貯蔵して冷却した後、国内で地層処分する方針です。

 

わが国では、このための制度づくりが他の国より遅れていましたが、平成12年5月に、国会で「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下「最終処分法」といいます。)が成立し、特定放射性廃棄物(発電用原子炉の使用済燃料の再処理後に残存する高レベル放射性廃棄物を固形化したものをいいます。)の最終処分を計画的かつ確実に実施させるために必要な措置等が制度化されました。また、同年10月に、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」(以下「最終処分計画」といいます。)が、閣議の決定を経て定められました。

 

この最終処分事業を実施するための機関として、最終処分法に基づいて、同じく10月に、「原子力発電環境整備機構(略称:「原環機構」)」が設立されました。また、原環機構は、最終処分法に基づいて、処分のための資金として電気事業者等から拠出金の徴収を始めています。

わが国においても、原子力発電は、すでに30年以上にわたって行われ、今も電力を供給し続けていますが、これに伴って使用済燃料も蓄積され、その再処理によって発生する特定放射性廃棄物の量 (今後の見込み量を含みます。)も増加してきています。これを長期にわたり安全・確実に最終処分することは、原子力発電による電気を使用している私たちの世代の責任と負担によって行われるべきであると考えられています。

 

原環機構は、こうした考え方のもとに、今後その事業を進めてまいります。事業の運営にあたっては、最終処分法等に従って、安全の確保を旨とし、適切な情報の公開により透明性を確保するとともに、国民及び地域住民の皆様の理解と協力を得るように努めてまいります。すでに、原環機構は、情報公開規程を定めており、積極的に、正確でかつ分かりやすく、情報の公開を行い、また、求められる情報の提供に誠実に対応しています。そして、主要な情報は、インターネット上のホームページで公表しています。また、国は、特定放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定過程や選定の理由等について外部から確認するため、総合資源エネルギー調査会原子力部会の下に「高レベル放射性廃棄物処分専門委員会」を設置し、同専門委員会は、本年4月から活動を開始しています。

 

特定放射性廃棄物を地層処分し、長期間の安全を確保する方法及び技術については、多くの研究成果が積み重ねられています。原環機構が最終処分を行う場合についての安全の確保のため、別に法律が制定され、規制が行われることが最終処分法で定められています。また、原子力安全委員会では、そのための検討が開始されています。

 

最終処分事業は、概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施設建設地(以下「概要調査地区等」といいます。)の選定、最終処分施設の建設、最終処分、最終処分施設の閉鎖そして閉鎖後管理と進められていきます。その最初にして最大の課題は、概要調査地区等の選定であり、以下の記述は、その選定の過程の透明性を確保するとともに、広く国民、自治体及び地域住民の皆様の理解と協力をお願いする観点から、原環機構が概要調査地区等を選定する方法、時期等を含め、基本的な手順を説明するものです。

 

1. 概要調査地区等の選定の重要性
特定放射性廃棄物の深い地層への処分は、これを受け入れていただける適切な地域があって、はじめて可能となります。そのため、最終処分法では、当該地域住民の皆様等の理解と協力を得ながら、段階を踏んで概要調査地区等の選定を進めることを規定しています。

 

また、受け入れていただける地域に対しては、最終処分事業の実施に伴い生じ得る経済的効果 とは別に、選定の各段階に応じて、その地域の発展や生活環境の改善に寄与する施策が講ぜられるべきであり、原環機構としては、地元の状況に応じた施策について地域住民の皆様と協議、検討し、その実現に向けて努力していきたいと考えています。なお、原環機構は、「電源三法」すなわち「電源開発促進税法」、「電源開発促進対策特別 会計法」及び「発電用施設周辺地域整備法」に基づいた交付金制度から施策に充当されるよう国に要望しています。

 

2. 概要調査地区等の段階的選定
概要調査地区等選定の最終目標は、特定放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定ですが、国民及び地域住民の皆様の理解と協力を得ながら、計画的かつ確実に選定する観点から、最終処分法では、3つの段階を経るべきことを定めています。各段階ごとに精査が行われることにより、最終的に最終処分施設建設地が選定されていくことになります。

 

(1) 第1段階(文献その他の資料調査による概要調査地区の選定)
原環機構は、概要調査地区に応じていただける地区及びその周辺の地域について、過去における地震、噴火、隆起、侵食等に関する記録、文献その他の資料により、法令で定められた事項について調査(文献調査)を行い、調査を行った地区の中から概要調査地区を選定します。
原環機構としては、平成10年代後半を目途とします。

 

(2) 第2段階(ボーリング等の調査による精密調査地区の選定)
原環機構は、概要調査地区について、地表踏査(地表面 の現地調査)、物理探査(人工震源、電磁波等を利用して、空中、地上又は水上から行う地下の調査)、ボーリング、トレンチの掘削(地表に溝を掘って行う調査)等の方法によって、法令で定められた事項について調査(概要調査)を行い、概要調査地区の中から精密調査地区を選定します。国の最終処分計画に従い、平成20年代前半を目途とします。

 

(3) 第3段階(地下施設を設置して行う調査による最終処分施設建設地の選定)
原環機構は、精密調査地区について、地下施設を設置して、地層を構成する岩石の強度調査、地層内の水素イオン濃度の測定、地下水の水流の調査等の方法によって、地層の物理的及び化学的性質等に関し、法令で定められた事項について調査(精密調査)を行い、精密調査地区の中から最終処分施設建設地を選定します。国の最終処分計画に従い、平成30年代後半を目途とします。

 

それぞれの段階で次の段階に移行する過程では、後述のように、最終処分法で、原環機構は、段階ごとの調査結果 を報告書にまとめ、公告・縦覧等を行い、これに対する地域住民の皆様等の意見に配意することになっているとともに、経済産業大臣が概要調査地区等の選定を承認する際には、概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重して行うことになっています。

 

なお、調査にあたっては、地域住民の皆様の理解と協力が不可欠と考えており、各年度ごとに調査計画の事前説明及び事後報告を行うとともに、関係都道府県及び市町村等により現場確認の申し入れがあれば、それに応じていきます。また、地域住民の皆様に理解を深めていただくため、随時、現場及び関連施設を見ていただくことも考えています。

  

3. 第1段階(概要調査地区の選定)
概要調査地区選定の手続きは、最終処分法及び同施行規則で定められています。これらに従いながら、原環機構としては、具体的に次のような手順で選定を進めていきたいと考えています。

 

(1) 概要調査地区の公募
概要調査地区は、公募することとし、公募に応じていただいた地区及びその周辺の地域について文献その他の資料による調査を行い、その地区の中から概要調査地区を選定します。
応募の主体は、市町村(連合体を含む。)とします。
公募は、平成14年度を目途に条件が整い次第開始したいと考えています。 原環機構としては、公募前、公募中にかかわらず、質問・要望等があれば、自治体の皆様等に対し説明させていただきます。

 

また、全国各地でフォーラムを開催する等により、広く国民及び地域住民の皆様の理解と協力をいただくための活動を展開していきます。

 

(2) 公募の方法
公募にあたっては、「応募要領」、「処分場の概要」及び「概要調査地区の選定上の考慮事項」並びに「地域共生の取組み方」(いずれも仮称)を公表します。

 

「応募要領」には、応募の方法、応募の際に対象として必要な面 積の目安、文献その他の資料による調査の内容等を記載すると同時に、公募に応じていただけるよう説明の実施等公募に関する事項を詳細に盛り込む予定です。

 

最終処分施設は、地域の地質等の環境や立地場所の状況により地上施設の配置等が変わることが考えられます。このため、「処分場の概要」には、その状況に応じた最終処分施設の概念仕様及び概念図、安全性、輸送手段等、概略的な全体像について、"処分場概念カタログ"の形でいくつかの例を取りまとめる予定です。

 

特定放射性廃棄物は、地下の深い安定した地層中に処分する必要があります。このため、「概要調査地区の選定上の考慮事項」には、地層の著しい変動の記録、未固結堆積物の記録、鉱物資源の記録等法令に基づく選定要件(末尾の「参考」を参照)を基本として、原環機構が概要調査地区の選定にあたって考慮すべきと考える包括的な諸条件を取りまとめる予定です。

 

原環機構は、国民及び地域住民の皆様とともに歩みたいと考えており、「地域共生の取組み方」には、地域住民の皆様の意向を十分尊重できるような将来にわたっての地域共生の在り方について取りまとめる予定です。

 

(3) 概要調査地区選定のための手続き
[1]文献調査の実施と選定評価
原環機構は、概要調査地区の公募に応じていただけた地区及びその周辺の地域について、文献その他の資料による調査を実施し、法令に基づく選定要件及び原環機構が定める概要調査地区の選定上の考慮事項との適合性を評価します。調査にあたっては、地域の専門家、研究者、有識者等の協力もいただきたいと考えています。

 

[2]報告書の作成及び関係都道府県知事及び市町村長への送付
原環機構は、概要調査地区を選定しようとするときは、文献その他の資料による調査の結果 に関する報告書及び要約書を作成し、関係都道府県知事及び市町村長に送付します。

 

[3]報告書の公告及び縦覧
原環機構は、報告書に関して公告し、関係都道府県内において、報告書及び要約書を縦覧に供します。

 

[4]説明会の開催
原環機構は、関係都道府県内において、報告書についての説明会を開催し、地域住民の皆様に対して報告書の記載事項の周知に努めます。説明会は、大規模、小規模を含め各種行いたいと考えています。

 

[5]報告書に対する意見書の提出
原環機構は、報告書に対し、意見のある方から意見書の提出をお受けします。

 

[6]意見書の概要及び当該意見についての原環機構の見解の関係都道府県知事及び市町村長への送付
原環機構は、提出された意見について概要を取りまとめ、これに関する原環機構の見解を付して、関係都道府県知事及び市町村長に送付します。

 

[7]実施計画の変更申請
報告書に対する意見にも配意して、原環機構は、文献その他の資料による調査を行った地区の中から概要調査地区を選定し、最終処分法に基づいて、原環機構が定めることとされている実施計画(最終処分事業について具体的な内容を定めるもの)の変更という形式で、経済産業大臣に対し、地区選定の承認を申請します。

 

[8]経済産業大臣による実施計画の変更承認による概要調査地区の決定
概要調査地区の決定には、経済産業大臣による国の最終処分計画に記載されることが必要です。

 

その際、最終処分法により経済産業大臣が概要調査地区等の所在地を定めようとするときには、概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならないと定められています。

 

こうして経済産業大臣が最終処分計画を変更し、原環機構の実施計画変更申請を承認することにより、概要調査地区の選定が最終的に決定します。なお、経済産業大臣が最終処分計画を変更するときには、原子力委員会の意見を聴くとともに、閣議の決定を経る必要があります。

  

4. 第2段階(精密調査地区の選定)及び第3段階(最終処分施設建設地の選定)
(1)  3. の手順を経て概要調査地区が決定した後、原環機構は、2.(2)で述べたとおり、ボーリング等により地層の調査を行い、概要調査地区の中から第2段階の精密調査地区の選定を行います。 精密調査地区を選定しようとするときにも、概要調査地区の選定と同じく、3.(3)[2]~[8]と同じ手順を踏んで精密調査地区が選定されます。

 

(2)  以上のような手順を経て精密調査地区が決定した後、原環機構は、2.(3)で述べたとおり、地下施設を設置して、精密調査を行い、精密調査地区の 中から第3段階の最終処分施設建設地の選定を行います。この場合にも、上記概要調査地区及び精密調査地区の選定と同じ手順を踏んで、一歩一歩、着実に進め ていくことになります。
5. 最終処分施設の建設及び最終処分
最終処分施設建設地が決定したときには、原環機構は、最終処分施設の建設を行い、国の最終処分計画に従い、平成40年代後半を目途に、最終処分を開始する予定です。

 

以上

 

[参考]

概要調査地区の選定の要件

最終処分法及び同施行規則により定められている概要調査地区の選定要件の内容は、次のとおりです。

[1] 地震、噴火、隆起、侵食その他の自然現象(地震等の自然現象)による地層の著しい変動の記録がないこと。
[2] 地震、噴火、隆起、侵食その他の自然現象(地震等の自然現象)による地層の著しい変動の記録がないこと。
[3] 最終処分を行おうとする地層が第四紀の未固結堆積物(約170万年前以降に堆積し、著しく強度が劣る地層)であるとの記録がないこと。
[4] 最終処分を行おうとする地層において、その掘採が経済的に価値が高い鉱物資源の存在に関する記録がないこと。
※ 本文中に使用されている用語は、特に定める場合を除き、「最終処分法」における用例によるものです。