事業計画

国の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」に基づいて、2001(平成13)事業年度における原子力発電環境整備機構(以下「原環機構」という。)の事業計画を次のとおり定める。

I 概要調査地区等の選定に係わる事項

今後、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(以下「法」という。)第6条第1項に規定される概要調査地区の選定を進めるにあたり、まずは文献調査の実施に向けた準備を着実に推進することが重要である。このため2001(平成13)事業年度においては、全国レベルの既存情報を収集・整理し、データベース化を行ってその基礎資料を整理する。また、概要調査地区の選定手順について検討するとともに、法に定める概要調査地区の選定要件に基づき原環機構が選定を行う際に考慮する事項(以下「選定上の考慮事項」という。)の設定、地質環境パターンに応じた処分場概念の構築を行う。

2001(平成13)事業年度中に選定手順を公表することとし、2002(平成14)事業年度以降、選定上の考慮事項を公表する際に地質環境パターンに応じた処分場概念も併せて公表する。

1.全国レベルの既存情報の収集・整理

2000(平成12)事業年度に引き続き、地震、噴火、隆起、侵食その他の自然現象(以下「地震等の自然現象」という。)や活断層等に関し、全国レベルの既存情報の収集を行い、文献調査の実施及び概要調査地区選定のための基礎資料として活用できるようデータベース化を行う。

既存情報の収集とデータベース化にあたっては、地震等の自然現象、活断層等のさまざまな項目に関し、わが国全体を網羅した公開情報に基づき、統一的な視点で資料を収集・整理する。さらに、概要調査地区選定の基礎的な検討に必要となる情報については、それら多様な情報を図形等のデータにより複合的に扱うことのできるシステムであるGIS(地理情報システム)等を活用しながらデータベース化を図り、データの編集、相互比較等が容易に行えるようにする。

これらの成果を踏まえ、地震等の自然現象や活断層等に関する個々の調査・研究結果、各種の地質図等、さらに収集が可能な公開情報についても全国を対象として情報の追加、更新等を行い、データベースの充実を図る。

また、日本列島の隆起や海水準変動、日本列島を取り巻くプレートの運動様式等に関する地質学的変遷に関する情報を収集し、データベース化を図る。

2.概要調査地区の選定手順及び選定上の考慮事項の設定

法第6条第1項に掲げる概要調査地区の選定を適正かつ円滑に行うため、具体的な選定手順及び選定上の考慮事項について検討を行う。

選定手順の検討にあたっては、選定上の考慮事項の公表、文献調査を実施する地区の選定、文献調査の実施、概要調査地区の選定までに必要となる基本的なスケジュールとその進め方、各段階における検討事項等についてとりまとめることとする。また、概要調査地区の選定を進めていく上で、関係住民及び国民の理解と協力を得ることが極めて重要であるため、の2で示す理解増進活動を実施する。

選定上の考慮事項の設定にあたっては、地震等の自然現象や活断層等、概要調査地区選定に際して調査が必要と考えられる事項を抽出し、各事項に対する評価の考え方、基準等について具体化を図る。この際、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」(核燃料サイクル開発機構)の成果をはじめ、「地質環境に係わる文献調査データの評価手法の高度化(の2)」の成果等を適宜反映する。

概要調査地区の選定手順及び選定上の考慮事項の検討結果については、国内外の専門家の評価を受けた後、情報公開の徹底と透明性の確保の観点から、公表するものとし、2001(平成13)事業年度においては選定手順の公表を行う。また、2002(平成14)事業年度以降、選定上の考慮事項を公表する際には、地質環境パターンに応じた処分場概念(の3)も併せて公表する。

2002(平成14)事業年度以降に実施する文献調査や概要調査地区の選定等は、これら選定手順及び選定上の考慮事項に従い実施することとなる。

3.処分場の概念構築

選定上の考慮事項の公表と併せて、様々な地質環境パターンに応じた処分場概念とそれらに対しての1で検討する安全性に関する考え方で評価した性能(以下「概略の安全性能」という。)を示して処分場の全体像を描いておくことが必要である。そのため、わが国で考えられる地形、地下水や岩石の種類等の地質環境条件に応じた人工バリアと処分施設からなる処分場概念を構築する。構築された処分場概念については、「概念カタログ」(地質環境パターン毎に整理・分類して総合的に示したもの)として取りまとめ、選定上の考慮事項とともに公表する。概念カタログに示された処分場概念について、その時点で得られる情報を基に概略の安全性能の検討を行うものとする。なお、処分場概念とその概略の安全性能については調査の進展に応じた情報を基に適宜見直しを行う。

4.地域共生策の検討

概要調査地区等の選定に向け、地域共生策の在り方及び費用の確保策についての予備的検討に着手する。

II 拠出金の徴収に関する事項

法第11条の規定により、発電用原子炉設置者から拠出金を徴収する。

III 特定放射性廃棄物の最終処分に関する国民の理解の増進

1.国民全体を対象とした理解増進活動

最終処分を国民一人一人の問題として認識してもらうため、国民全体を対象に特定放射性廃棄物の地層処分の必要性等に関する事項についてマスメディア等の活用による理解増進を図るとともに、地層処分の概要に関するビデオ、パンフレット等の広報素材を充実させることにより、積極的な情報の提供を行う。また、関係機関と協力してシンポジウム等の対応を積極的に行う。

2.全国を対象とした地域単位ごとの理解増進活動

処分事業を円滑に推進させるため、概要調査地区の選定手順の公表後、事業内容の更なる理解促進のために、全国を地域単位 ごとに分け、各々を対象としてマスメディア等の活用による理解促進を図るとともに、事業概要の説明、パンフレットの配布等を実施する。

3.適正で積極的な情報の公開

原環機構の情報公開規程に則り、情報の公開に適正に対処する。これに加え、インターネットホームページの内容の拡充等により、概要調査地区等の選定に係わる業務や地層処分に関する技術開発等の原環機構の事業内容について、事業報告書等を通じて積極的な情報の公開に努める。

IV 特定放射性廃棄物の地層処分に関する技術開発

事業化のための技術開発にあたっては、これまで核燃料サイクル開発機構等で行われてきた技術開発において得られた幅広い地質環境に対する基盤的な技術情報をもとに、特定の地質環境に対応できる具体的なものへと移行させるために技術の高度化を図る必要がある。

技術開発においては当面の目標である概要調査地区の選定に向け、選定手順や選定上の考慮事項の検討に必要となる手法やデータの整備を行うとともに、地質環境条件に応じて類型化された処分概念の提示を行うための手法やデータの整備を進める。

1.地層処分の安全性に関する情報の収集、整理

概要調査地区等の選定を進めるにあたっては、選定上の考慮事項の策定及び処分場の概念検討を行うために必要な地層処分の安全性に関する基本的な考え方、また、国民が地層処分に対して安心感を得られるようにするために必要な基本的な考え方を技術的観点から取りまとめ、原環機構としてこれらの考え方に基づき事業を進めることが重要である。そのため、[1]ICRP(国際放射線防護委員会)等の国際機関における安全性に関する検討状況、さらに[2]諸外国が地層処分事業を進めるうえで基本としている安全性に関する考え方やその背景並びに[3]社会的安心感を得るために必要とされる技術的な検討事項等について、最新の情報を収集、調査する。これらを踏まえ、原環機構としての地層処分の安全性に関する基本的な考え方を検討する。なお、今年度はその成果 をIの3の処分場の概念構築に活用する。

2.地質環境に係わる文献調査データの評価手法の高度化

2000(平成12)事業年度に引き続き、概要調査地区選定にあたり、地質環境の長期安定性及び地質環境特性に関する文献データの評価手法の高度化を図る。

  1. (1) 地質環境の長期安定性に係わる評価手法の高度化

    既存情報により伏在断層の存在可能性を把握する手法についての検討、単成火山(ある火道からの噴火が1回限りである火山)(群)の活動様式に関する検討、内陸部の隆起(侵食)特性の検討等を行い、地質環境の長期安定性に係わる評価手法の高度化を図る。

  2. (2) 地質環境特性に係わる評価手法の高度化

    岩体の形状と地下水の諸特性の推定手法やデータ補完方法について検討し、地質環境特性に係わる評価手法の高度化を図る。

  3. (3) 概要調査地区の選定上の考慮事項に係わる評価手法の体系化

    (1)及び(2)の成果を基に、文献データの評価手法の体系化を図る。

3.概要調査技術の高度化のための事前検討

概要調査地区で実施する概要調査に備えるため、様々な条件に対応する調査計画を体系的に検討するとともに調査技術及び評価手法の課題抽出を行う。調査計画の検討は、ボーリング調査、物理探査等必要となる要素技術に関する国内外の関連諸機関での技術開発状況等を踏まえ、最先端技術に基づき実施するものとする。検討により抽出された課題については、事業スケジュールに沿って技術開発を実施していくものとする。

4.処分場の設計および性能評価手法の高度化

人工バリア及び処分施設の概念仕様作成に必要となる設計・性能評価に係わる手法開発とデータ整備を行うことにより、今年度は概念カタログ作成に資する。

  1. (1) 人工バリアの概念仕様作成に必要な設計・性能評価手法開発とデータ整備

    人工バリアについては、岩盤の力学特性など処分場周辺の地質環境条件毎に、建設・操業方法の検討及びこれら閉鎖に至るプロセスが閉鎖後の処分場の性能に及ぼす影響を検討し、概念仕様の作成に必要な設計・性能評価手法の開発とデータ整備を行う。

  2. (2) 処分施設の概念仕様作成に必要な設計・性能評価手法開発とデータ整備

    処分施設については、地形や地下水流動など広域にわたる地質環境条件毎に、将来的に変化する地質環境などが処分場の性能に及ぼす影響を検討し、概念仕様の作成に必要な設計・性能評価手法の開発とデータ整備を行う。

  3. (3) 処分場概念に影響を及ぼす仮想事象に関する評価手法の高度化

    火山活動・断層活動などの自然現象や将来の人間活動がの3で構築する処分場概念に及ぼす影響を定量的に把握するため、これら仮想的な事象に関する評価手法の高度化を図り、今年度はこの成果を概念カタログに適用する。

  4. (4) 地下水による放射性物質移行評価モデルの高度化

    地質環境条件に応じた放射性物質移行メカニズムがの3で構築する処分場概念に及ぼす影響を定量的に把握するため、これら放射性物質移行評価モデルの高度化を図り、今年度はこの成果を概念カタログに適用する。

  5. (5) 地層処分の人間環境への影響に関する評価手法の高度化

    想定される将来の地表環境条件毎に、地層処分された特定放射性廃棄物の人間環境への影響を評価するために、必要となる手法の高度化を図り、今年度はこの成果を概念カタログに適用する。

  6. (6) 処分場の設計・性能評価支援システムの構築

    上記(1)~(5)にて作成される個別の手法、データを体系的に組み入れたコンピュータによる解析システムを構築する。今年度行う概念カタログの構築にこのシステムを利用する。なお、データとしてはIVの5で整備するデータベースを用いる。

5.地層処分情報システムの整備

処分場設計や性能評価に当たっては、データの品質管理が重要であり、このために追跡性(トレーサビリティ)や透明性を高めることを目的としてデータベースシステム(地層処分情報システム)を整備する。このシステムによって、今後調査の進展に応じて蓄積される地質環境情報、最新の科学技術、国際的な動向を適切に取り込むことができるようにする。また、このシステムを利用して課題やその対策なども含め必要となる技術情報の調査、抽出を継続して実施する。

V 国際協力、技術協力

  1. (1) 海外関係機関との技術協力

    概要調査地区の選定や技術開発を的確かつ効率的に実施するため、処分事業や研究開発を積極的に進めている海外の実施主体と技術協力関係を構築するとともに、OECD/NEA(経済協力開発機構原子力機関)及びIAEA(国際原子力機関)の進める国際共同研究に積極的に参加し、処分事業の円滑な実施に資する。

  2. (2) 国内関係機関との技術協力

    処分事業を進める上で必要となる技術開発を的確かつ効率的に実施するため、核燃料サイクル開発機構、電気事業者等の国内関係機関と技術協力関係を構築し、処分事業の円滑な実施に資する。

  3. (3) 技術評価に対する体制の整備

    概要調査地区の選定や技術開発などの的確かつ効率的な実施に向け、国内外の専門家から意見を聴取する場として技術評価委員会(仮称)等を設置し、処分事業の円滑な実施に資する。