事業計画

国の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」および「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」を基本に、2008(平成20)事業年度における原子力発電環境整備機構(以下「機構」という。)の事業計画を以下のとおり定める。

機構は、2001年10月に概要調査地区等の選定手順を公表、2002年12月には全国の市町村を対象に「高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の設置可能性を調査する区域」(以下「応募区域」という。)の公募を開始し、応募に向けた、広聴・広報を基本とする理解活動および概要調査地区選定に必要な技術基盤の整備等に取り組んできた。

その結果、最終処分事業に関心を有する地域が複数出てくるなど、少しずつ成果が現れ、昨年は、高知県東洋町から文献調査への応募を得た。しかしながら、東洋町の応募は取り下げられ、文献調査を進めるまでに至っておらず、これ以外にも、これまで関心を持っていただいた地域での経緯等を踏まえ、最終処分事業に対する理解を広げ、より一層踏み込んだ取り組みが必要となっている。

こうしたなか、国の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会放射性廃棄物小委員会において2007年11月、「放射性廃棄物小委員会報告書 中間とりまとめ」が取りまとめられ、最終処分事業を推進するための強化策が示された。

機構は、この中間とりまとめを踏まえ、国および電気事業者との連携を一層強化するとともに、最終処分事業に関する広聴・広報活動および同事業に関心を持っていただいた地域に対するきめ細かな広報活動を充実させるための活動を強化していく必要がある。

2008(平成20)事業年度は、最終処分事業を推進するための取り組みの強化として、広く全国のみなさまにご理解をいただくための広聴・広報活動のさらなる充実により、新たな応募獲得に向け最大限努力していく。

最終処分事業に関心を持っていただいた地域および周辺市町村、ひいては都道府県域における広報についても、これを充実させることで、文献調査に着実につなげるとともに、これら地域の発展や福祉の向上につながるような地域振興構想の提示とその実現に努めることにより、最終処分事業と地域の共生について、理解と協力を得られるよう取り組んでいく。

また、最終処分事業を円滑に進めるため、これらの基盤となる技術開発および国際的連携の推進については、引き続き長期的に取り組んでいく。

なお、国が前面に立った取り組みとして「放射性廃棄物小委員会報告書中間とりまとめ」に示されているところの、国が文献調査の実施の申入れを行い、市町村が受諾した区域についても、「応募区域」と同様に取り扱うものとし、本事業計画に記載されている活動内容を実施していく。

これら取り組みを効果的に行うために、国・電気事業者との連携を強化し、有識者とのネットワークの構築・活用による、体制の整備、機能の強化に向けた検討を進め、機構内における人材育成を、長期的な観点から見据えて行っていくとともに、応募の状況や国における政策検討の進展に応じ、業務の見直し等が必要な場合には、適切かつ柔軟に対応していくこととする。

I 概要調査地区等の選定

概要調査地区の選定を的確に進めるため、応募区域およびその周辺の地域に関する文献調査を計画に基づいて実施する。また、応募区域に対応した処分場概念等を検討していく。

1.文献調査の実施

  1. (1) 文献調査計画の策定

    文献調査に先立ち、収集すべき文献の種類や文献の収集方法等を取りまとめた文献調査計画書を応募区域ごとに作成し、公表する。

  2. (2) 文献情報の収集・整理

    応募区域の概要調査地区としての適性を評価するため、「概要調査地区選定上の考慮事項」を基に必要な文献等を収集し、情報を抽出・整理する。なお、情報・データを管理する地質環境データ管理システムおよび地理情報システム(GIS)は、引き続き整備を図る。

  3. (3) 地質環境特性の分析・評価

    「概要調査地区選定上の考慮事項」に示した評価の考え方に基づき、地質環境特性等に関する文献情報の分析・評価を実施する。分析・評価にあたっては、既存の評価手法やこれまで開発を進めてきたデータ評価手法等を活用する。

    なお、文献情報の品質・信頼性の評価および文献の分析・評価の結果等は、外部の専門家を交えて評価することで客観性・透明性を確保するとともに、出典・検討経緯を含めてデータベースに整理する。

2.応募区域に対応した処分場概念等の検討

概要調査地区の選定に資するため、文献調査によって得られる情報等に基づき、設計・性能評価に必要となる地質環境特性を検討するとともに、応募区域の条件に対応した処分場概念を検討する。また、次段階である概要調査の計画立案のため、応募区域における調査の進め方等について検討する。

さらに、応募区域における環境保全策や自主的な環境影響調査・評価の計画を検討するため、応募区域およびその周辺の地域における環境の現況や規制に関する情報を調査する。

II 最終処分に関する相互理解活動

国や電気事業者との連携を強化し、広く全国のみなさまにご理解をいただくため、マスメディアを活用した広報や座談会等による対話型理解活動等を実施する。また、早期に応募をいただくため、最終処分事業に対する問い合わせに的確に対応し、関心を持っていただいた地域には積極的に出向き、事業概要の説明や関係施設見学会等を実施するとともに、多様なメニューによるきめ細かな理解活動を適時適切に実施していく。

そして、応募をいただいた後は、応募市町村および周辺市町村、ひいては都道府県域のみなさまからさらなるご理解とご協力をいただき、信頼関係の維持・向上を図るため、地元マスメディアの活用、座談会や関係施設見学会の実施等、様々な理解活動を引き続き進めるとともに、地域イベントの共催や地域共生への取り組み等により地域のみなさまとの交流を深めていく。

1.応募をいただくための積極的な相互理解活動

  1. (1) 全国のみなさまに対する広報活動の強化

    最終処分事業を進めるにあたっては、全国のみなさまから最終処分事業に関する一層の理解を得る必要がある。そのため、以下の取り組みを行う。

    1. [1] 新聞(全国紙、ブロック紙、地方紙)および雑誌への広告掲載や地方局等におけるテレビCMの放映など、マスメディアを活用した積極的な広報活動を実施する。
    2. [2] 最終処分事業への理解を地域に拡げていくため、全国各地において座談会の開催を継続し、地域のみなさま、専門家やオピニオンリーダー等を交えたディスカッションを行い、その結果を紙面での紹介を通じて広く周知する。
    3. [3] 地域のオピニオンリーダーや商工会等、地域団体関係者に関心を持っていただくため、引き続き関係団体の機関紙等へ広告を掲載するとともに、機構広報誌「NUMO-NOTE」を送付し、定期的に活動状況等を配信する。
    4. [4] 全国のみなさまと同じ目線に立った広聴・広報活動の展開に努め、市民活動の実施組織との懇談会を開催するなど、草の根レベルでの理解活動を実施する。
    5. [5] マスメディアに対して、説明会や懇談会の開催等により積極的な情報提供を行う。
      また、科学的に誤った情報が発信された場合、国、電気事業者等と連携し、正確な情報を適時発信することに努める。
    6. [6]電気事業者との連携を強化し、PR施設で最終処分事業に関わる訴求内容を充実させる。
  2. (2) 応募促進に向けた理解活動と地域における広報活動の充実

    最終処分事業の必要性、安全性や地域共生への取り組み等について、問い合わせに的確に対応する。

    最終処分事業に関心を持っていただいた地域に対しては、事業概要の説明、関係施設見学会の開催、地域共生モデルプランの提示など、応募促進に向けた積極的な理解活動を展開するとともに、多様な広報メニューを揃え(説明会、講演会、シンポジウム、対話集会、技術セミナー等)、地域の実情に応じ、きめ細かな一連の理解活動を適時適切に実施する。

    また、周辺市町村等においても、同様に理解活動を実施する。

2.応募市町村や周辺市町村等における相互理解活動

  1. (1) 地域における理解活動

    応募市町村や周辺市町村、ひいては都道府県域のみなさまから、引き続きご理解とご協力をいただき、信頼関係の維持・向上を図る見地から、現地事務所を設置して、地域のみなさまとの対話活動を進めるとともに、地域のみなさまとのふれあいの輪を広げていくための地域イベントの共催や、最終処分事業への理解をより深めるための関係施設見学会等を実施する。

  2. (2) 地域共生に向けた活動

    応募市町村や周辺市町村、ひいては都道府県域における地域共生関係を築いていくため、地域のみなさまの自主性を尊重しながら、より地域の実情にあった地域共生プランづくりとその実現に努める。

  3. (3) マスメディアの活用等による広報活動

    応募市町村や周辺市町村、ひいては都道府県域において、最終処分事業に対する理解を促進するため、新聞、テレビ、ミニコミ誌等の地元マスメディアや応募市町村を対象としたミニ広報誌等を活用し、きめ細かな情報提供を実施する。また、座談会やフォーラムの開催により、地域のみなさま、専門家やオピニオンリーダー等を交えたディスカッションを行い、その結果を紙面での紹介を通じて広く周知するとともに事業活動に反映する。

3.情報公開制度およびホームページによる情報提供

  1. (1) 情報公開制度の適切な運用

    情報公開規程に基づき、情報公開請求に適切に対応するとともに、その運用について一層の充実に努める。

  2. (2) ホームページによる情報提供

    事業の透明性を確保し、全国のみなさまからのご理解に資するよう、引き続き内容の充実を図り、積極的な情報発信を実施していくとともに、利用者にとって分かりやすく、見やすく、使いやすいように構成の充実にも努めていく。

III 最終処分に関する技術開発等

概要調査地区等の選定に必要な技術の整備を行うとともに、長期にわたる最終処分事業を的確かつ効率的に推進するため、長期的展望に立った技術の開発を継続する。

また、技術情報に関して、より一層の信頼を確保するため、品質保証活動に取り組む。

1.段階的な事業の展開に必要な技術開発

技術事項に関わる意思決定やその検討内容について、事業の各段階において的確に管理していくための支援システムとして、処分場概念等に関わる各要件やその関連情報をデータベース化し、意思決定等のために活用していく機能を持たせた要件管理システムの開発を引き続き進める。さらに、処分場概念の段階的な構築に向けた戦略と計画に関する検討を行う。

2.精密調査地区選定段階の計画を進めるための技術開発

  1. (1) 精密調査地区選定において考慮すべき事項および概要調査計画の検討

    概要調査を円滑に進めるため、精密調査地区選定において考慮すべき事項の検討を進める。また、多様な地形・地質条件に対応できる概要調査の計画立案の検討を行うとともに、地質環境調査技術・評価手法の開発・実証において得られた知見等をこれらの検討に反映する。

  2. (2) 概要調査技術・評価手法の開発・実証

    概要調査における地質環境の長期安定性、地質環境特性の調査技術・評価手法の開発を進めるとともに、引き続き調査技術・評価手法の実証を行う。また、概要調査の管理やモニタリングの概念構築に関する検討を行う。

  3. (3) 概要調査に対応する処分場の設計・性能評価手法の開発

    概要調査結果に対応する処分場の概念設計やその性能評価を行うため、地上・地下施設や人工バリアの設計に関わる技術、並びに処分場の建設・操業・閉鎖を実施するための技術を対象に、それらの成立性、信頼性や安全性について検討するとともに、必要な性能評価手法を開発する。

  4. (4) 安全確保に向けた方策の整備、信頼構築方策の検討

    精密調査地区選定段階における、機構としての安全確保の目標や基本的な考え方(安全確保の自主基準)を策定するため、放射線防護等に関する国際動向の調査を行いつつ、地層処分への適用性について検討するとともに、高レベル放射性廃棄物処分の技術要件等に関する最新の情報を収集・評価する。

    また、最終処分事業を推進するため、理解増進活動に有効な技術的支援方策を開発していく。

3.技術情報の品質確保と品質保証体系の運用

技術情報の客観性・中立性を担保するため、技術アドバイザリー委員会等において、技術的業務の品質について助言を受けるとともに、技術情報の信頼性を確保するため、品質マネジメントシステムを適切に運用していく。

IV 最終処分に関する技術協力

機構および国内外の関係機関が有する成果等を積極的に情報交換することにより、最新の技術開発の成果を反映し、概要調査地区選定に必要な知見や概要調査以降に必要な技術を的確かつ効率的に整備していく。

1.国内関係機関との技術協力

協力協定を締結している日本原子力研究開発機構および電力中央研究所、並びにその他の国内関係機関との間で、サイト選定に必要な地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する技術情報の交換、共同研究等を引き続き実施する。

2.海外関係機関との技術協力

地層処分に関する技術は国際的に共有できるものも多いことから、協力協定を締結している海外の実施主体等との間で、地質環境評価、地層処分の工学技術、安全評価等に関する情報交換、共同研究等の技術協力を引き続き実施する。

3.国際機関等との協力

各国の地層処分実施主体で構成される放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)において、実施主体間における積極的な情報交換を行う。

国際原子力機関(IAEA)および経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等が進める国際共同プロジェクトに積極的に参画し、最終処分事業の円滑な実施に資する。

V 拠出金の徴収

「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」第11条の規定により、発電用原子炉設置者から拠出金を徴収する。