人工バリアの小型化でさらなる安全性・効率性向上を目指す横置き・PEM方式の改良
高レベル放射性廃棄物を埋設する際に考慮すべき事項のひとつとして、地下水への対応があります。廃棄物を覆う人工バリアは、ガラス固化体、オーバーパック、緩衝材で構成し、緩衝材の主成分であるベントナイトは天然の粘土で吸水すると膨らむ性質があるため、地下水を通しにくくすることが期待できます。
埋設方法の検討も重ねられており、従来の「竪置き・ブロック方式」に続き、1998年に日本とスイスが共同で「横置き・PEM※方式」を考案しました。この方式では、地上で人工バリアを一体化し容器に入れて地下に運ぶため、坑道内に湧き出る地下水の量にかかわらず、追加の対策なしに施工することが可能です。2021年にNUMOがまとめた「包括的技術報告書」において、有望な処分方法として公表しています。
さらに一層の安全性の向上を目指して「横置き・PEM方式」を改良し、2025年1月に報告書としてまとめました。安全機能を満たしつつ、人工バリアの総重量を約1/3に削減し小型化を実現しました。組み立て・搬送・定置が容易になり、操業時の安全性・効率性の向上が期待できます。
私は、入構以来培った地下施設レイアウトの検討や湧水の影響評価などの経験を生かし、プロジェクトチームの一員としてこの報告書の作成に携わりました。何度も議論を重ね、湧水量の低減が期待できる坑道掘削計画の検討や、地下施設レイアウトの図面作成を行いました。チームで力を合わせてひとつの報告書を完成させることができ、大きな達成感を感じています。今後も、安全な地層処分の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。
※PEM:Prefabricated Engineered Barrier System Module


報告書作成プロジェクトチーム一同(前列右から2人目が市村)