地層処分について

エネルギー資源に乏しい日本では、原子力発電で使い終わった燃料のうち95%から97%は燃料としてもう一度利用できるため、リサイクルして再び燃料として使うことにしています。

一方で、リサイクルした後に残る廃液は、再利用できないことに加えて強い放射線を出します。

私たちは、これを安全に処分できるようガラスと混ぜて固めたものを、地下深くの安定した岩盤に閉じ込めて処分するための事業に取り組んでいます。この処分方法を「地層処分」といいます。

なお、原子力発電に関連する放射性廃棄物であっても、福島第一原子力発電所の事故で発生したいわゆる「デブリ」や、原子力発電所の廃止に伴って発生する廃材、また原子力発電の通常運転から発生する放射能レベルの低い廃棄物は、地層処分の対象ではありません。

地層処分は、地表から300メートル以上深い岩盤の中で行います。

そのような地下深くの岩盤には、酸素がとても少ない、地下水の流動距離は1年間に数ミリメートル程度と非常に遅い、という特徴があります。

したがって、酸素が少ないため金属のさびなどモノの変化が生じにくく、地下水と一緒に流れるモノの動きも非常に遅いものになります。

このような環境は、物質を長期にわたって閉じ込めておくことに適しており、高レベル放射性廃棄物の処分方法として地層処分が選ばれたのです。

地層処分以外にも、これまで色々な方法が考えられてきました。

  • ロケットで宇宙へ飛ばす「宇宙処分」
  • 海の深いところに捨てる「海洋投棄」
  • 南極の氷の下に埋める「氷床処分」
  • 地上で管理し続ける「長期管理」

しかし、これらの方法は、国際条約による制限や、実現可能性、将来数万年にわたる管理負担などの課題があります。

このようなことから、地層処分が高レベル放射性廃棄物の処分方法として最適であるということが、国際的に共通した考え方になっています。

高レベル放射性廃棄物は強い放射線を出しますが、安全に処分するため、さまざまな対策を行います。

まず、ガラスと混ぜて固めます(固めたものを「ガラス固化体」といいます)。ガラスは水や薬品に溶けにくいなど、非常に安定しており、長い期間高レベル放射性廃棄物を閉じ込めておくのに適しています。

さらに、ガラス固化体を厚さ約20cmの金属製の容器(「オーバーパック」といいます)に入れて密封します。
オーバーパックは少なくとも1000年の間、地下水がガラス固化体に触れないよう設計されており、その1000年の間に、ガラス固化体の放射能は99.9%以上が減少します。

そして、オーバーパックと岩盤の間に、緩衝材として特殊な粘土を厚さ70cm程度に敷き詰めます。この粘土は、水を吸収すると膨らんで水を通しにくくする性質や、汚れなどの物質を吸着する性質を持っています。この性質を利用して、地下水を内部に流れにくくするとともに、万が一、放射性物質が地下水に溶けだしても、それを吸着することができます。

このような対策を人工バリアといい、岩盤という天然バリアが持つ「モノが変化しにくく、モノの動きも非常に遅い」という性質とあわせて、高レベル放射性廃棄物を人間の生活環境から隔離し、閉じ込めます。

地層処分の取り組みは、日本だけではなく、原子力発電を利用する世界各国で進められています。

各国の状況としては、既に処分地が決定している国から、どのように地層処分を行うか検討している国まで様々ですが、地層処分の実現という課題は共通であり、各国は協調しながら最大限の努力をしています。

なお、日本では、地層処分する場所はまだ決まっておらず、今後調査を行って地層処分に適した場所を選ぶ必要があります。

◆スウェーデンで地層処分を受け入れた自治体市長の言葉

「候補地選定プロセスでは、自治体の自主性が尊重される仕組みであったこと、公開性・透明性が確保されていたことなどが重要な要素になりました。

また早い段階から社会経済面の影響について調査・分析を行い、処分場の立地によって“ゴミ捨て場”ではなく“ハイテク技術が集まる工業地帯”になることができるという前向きな評価・認識を市民と共有できたことも重要でした。」

(エストハンマル市長 ヤーコブ・スパンゲンベリ氏)