高レベル放射性廃棄物を題材とした授業研究(全国)

2020年度 エネルギー環境教育 「全国研修会」

開催日時 2021年3月7日(日)13:00~16:05
会場 オンライン配信方式(Zoom)
内容 1.開会挨拶
2.情報提供「地層処分をめぐる最新情報」
3.セッション
 (1)セッション1「小学生への展開の可能性」
 (2)セッション2「教科連携による取り組みの課題」
 (3)セッション3「放射線学習の発展としての取り扱い」

全国研修会の様子

 2021年3月7日(日)、オンライン会議ツール「Zoom」で、2020年度エネルギー環境教育「全国研修会」を開催いたしました。全国各地の小学校・中学校・高等学校の先生方や教育関係者の計92名の方々にご参加いただきました。今回は、3つのテーマに沿った授業実践発表およびパネルディスカッションを行いました。

 開会挨拶として、NUMO理事長の近藤駿介が登壇。持続可能な社会の実現に向けては様々な選択が求められており、理解や関心を持ってもらうべく、教育現場における取り組みを支援していること、また、その一環として作成している『「高レベル放射性廃棄物の処分問題」を学ぶ基本教材』の改訂を行ったことを説明しました。
 次に、NUMO広報部長の中山隆志から、地層処分をめぐる最新情報について情報提供を行いました。高レベル放射性廃棄物の最終処分における、処分地選定プロセスと文献調査の位置づけや、北海道の2つの自治体に「対話の場」としてのコミュニケーション拠点を開設する予定等について紹介しました。

セッション1「小学生への展開の可能性」

 静岡県の小学校の先生からは、4年生の社会科「ゴミのゆくえ」の学習において静岡市内の家庭や事業活動で出るゴミの最終処分場について学んだ後に、NUMOが提供している小学生向けの基本教材の表紙に描かれている「原子力発電所のゴミのゆくえ」の部分を、よりわかりやすく作り変える課題に挑戦して、児童がお互いに評価をし合いながら高レベル放射性廃棄物の処分問題を考えるという事例が紹介されました。

 京都府の小学校の先生からは、4年生の社会科の時間と総合的な学習の時間の中で、情報収集や意見交換を繰り返しながら処分方法についての意思決定を繰り返す実践が紹介されました。「健康なくらしとまちづくり」では、水道・電気・ガス・ゴミ処理の学習をしてから、高レベル放射性廃棄物の性質から理想的な処分方法に関する選択を行い、その後、ニュース映像や中学生・高校生による解説を聞くなど、様々な情報を整理する中で、あらためて処分方法に関する選択を行ったことが紹介されました。

 2つの実践を聞いたコメンテーターの先生(宮城県)からは「小学生は意思決定まで行う必要があるのか。情報を「知る」だけでよいのではないか」という問題提起や、「選択・意思決定をする内容について、処分方法を選ばせるのか、エネルギー環境教育として発電エネルギーのベストミックスを考えさせるべきか、地域や時代によって課題の設定を変えてもよいのではないか」といったコメントがなされました。

 質疑応答の時間では「高レベル放射性廃棄物の処分問題は、集団合意形成の問題にも関わるテーマであり、少数派で価値観や感情を受け入れてもらえない人についても考えるために、特別活動の時間などでも行っていけるのではないか」という意見が寄せられました。「小学生の段階では意思統一をさせることなく、色々な考え方や価値観を知ることに重きを置いたほうがよい。多数派・少数派ではなく、すべての意見を認めることが、エネルギー環境教育の価値である」という意見も出ました。他にも「授業を行った後で児童が保護者と話し合う機会ができたため、保護者も勉強になったという声を聴いた。良い悪いではなく、色々な人の価値観を知りながら、子供自身が「判断する力」を育むことが大切だ」という先生のコメントがありました。
 また、NUMO職員の出前授業を活用した小学校の先生からは、あらかじめ教員から児童に適切な情報提供を行い、興味関心を持ったうえでNUMO職員の授業を聞くことで質問や意見交換をスムーズに行うことができたという事例が紹介されました。

セッション2「教科連携による取り組みの課題」

 富山県の中学校の先生からは、クロスカリキュラムの取組みが紹介されました。小学校・中学校の9年間の学びの連続性(縦軸)と、各教科の学習を横断させる(横軸)ための実践の中で、高レベル放射性廃棄物の処分問題をテーマにされていました。教科を横断した学習をするための手法には「異教科TT(チームティチング)」「異教科(学習成果)活用」「合科」の3つがあることが紹介され、具体的には、社会科の「国際社会のよりよい発展」の単元で、持続可能な社会の実現に向けての資源・エネルギーの有効活用について、多面的・多角的に考えさせる授業を行ったことが報告されました。社会科の先生がエネルギー問題や持続可能性の観点から授業を進め、地層処分場の誘致に対する論点(メリット・デメリット)を整理した後、理科担当の先生から、放射線の人体への影響や特徴についての補足の説明をしたそうです。そこで「自分たちの住んでいる地区が地層処分場を誘致する場所になることの是非」について、意思決定と意見交換を行ったことが紹介されました。その後、NUMO職員のオンライン授業で処分場を誘致することによる地域活性化や対話の必要性などの説明後、あらためて同じ課題について意思決定と意見交換を行ったところ、NUMOのオンライン授業前後で生徒の思考の深まりや、意見の変容などが見られたことが報告されました。

 広島県の中学校の先生からは、社会科と理科の先生がチームを組んで学習を進めたことが紹介されました。社会科の先生から、NUMOの『「高レベル放射性廃棄物の処分問題」を学ぶ基本教材』の中学生版を活用して発電による廃棄物とその処理方法について学習させた後、理科の先生から関連した科学実験が行われたことが紹介されました。さらには「科学的特性マップ」の情報なども見ながら「自分たちの住んでいる地区が地層処分場を誘致する場所になることの是非」について検討していったこと、そして2030年の日本のエネルギーミックスの理想的な配分について、グループで検討していく活動に進んでいったことが紹介されました。考えるために「3E+S」「持続可能な社会」「現実性」「効率」「公正」という5つの視点を提示することで、多様な観点から検討された授業の様子が紹介されました。

 中学校では各教科の専門性を持った先生方がいるため、エネルギー問題や環境問題について話をしてみると、英語の授業でも今後のエネルギー問題について考えて英文で記す学習をしていたり、国語の読解文にも関連する内容が出てきたりする事例が報告されました。
 コメンテーターの先生(鹿児島県)からは、小学校の段階から中学校・高等学校に至るまで、あらゆる教科の様々な学習内容がつながっていることの解説もありました。

セッション3「放射線学習の発展としての取り扱い」

 北海道の中学校の先生からは、これまで取り組んできた授業の実践に加え、学習指導要領が改訂され中学2年生から放射線について学習するようになったことや、クルックス管を使った実験をコロナ禍でも安全、かつ効果的に行う方法などが紹介されました。

 次に、東京都の中学校の先生からは、小学校・高等学校の先生と学習の連続性について検討したことが報告されました。中学2年生の「電流」の単元では、光やX線、ガンマ線について学びますが、2年生の授業で急に扱うのではなく、身の回りにあるものを考える視点で見直すと、1年生のときに「動物のなかま分け」を学習する際、X線写真(レントゲン写真)でセキツイ動物と無セキツイ動物を見分けるため、X線写真のことは知っていることに気づいたそうです。同じく1年生の「光と音」の単元で、可視光線とそれ以外の光(紫外線・赤外線)を説明する際にX線やガンマ線が登場することにも気づいたことで、学年の垣根を超えて学習に連続性が出るのではないか、という提案がなされました。そして、もともと3年生で行ってきた放射線の学習につなげていくことができ、さらには高等学校では、物理だけでなく生物の「遺伝」の学習でも「ハーシーとチェイスの実験」に放射線が活用されていることなど、中学校・高等学校との接続の視点も紹介されました。

 島根県の中学校の先生からは、学習指導要領の改訂を見据えて、中学3年生には放射線に関する実験などで学習した直後に高レベル放射性廃棄物の処分問題について学習したことや、中学2年生には、次年度の学習を見据えて2年生の段階から放射線について学習し、実社会の中で放射線が活用されている具体例を調べることで、3年生で改めて放射線を学習する中で高レベル放射性廃棄物の処分問題について考えることが紹介されました。中学2年生と3年生では、同じ学習内容でも理解度が異なるため、今後も内容を検討しながら実践を進めていくことが報告されました。

研修会全体を通じて

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2年ぶりの開催となったエネルギー環境教育「全国研修会」でしたが、学習指導要領の改訂への対応や学校内のオンライン環境の整備によって、教科を横断した様々なカリキュラムを実践できる可能性が紹介されました。
 地層処分の候補地選定に向けたプロセスが動く中で『「高レベル放射性廃棄物の処分問題」を学ぶ基本教材』に加え、NUMO職員の出前授業などを通じ、この問題を自分ごととして考え、対話を進めることで深い学びを全国各地で実現できる道筋が示された研修会となりました。

以 上